| 闘神都市2/その男、ビルナス |
| 作者:
TAKA・S
2008年05月26日(月) 00時02分29秒公開
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その男、ビルナス 「というわけで、よろしく頼むわね」 「お前に頼まれなくても分かってるさ」 シード・カシマが旅立つ少し前。 瑞原道場から少し離れた木の下で二人の男女が話し合っていた。 「それにしても、いいの?」 「何がだ」 「シード君に道場継がせるつもり?あんたも結構いけると思うんだけどなー」 「…シードか。今のままでは不安だな」 強面の男が更に顔を渋くして答えた。 それに気の強そうな女性が同意する。 「まあね、この旅で成長してくれればいいんだけど…」 弟のようにかわいがってきた子の行方は女性にとっても気がかりの一つらしい。 だからこそ、彼女がシードに同行することになったのだが。 「それよりも、ビルナス。あんた本当に道場継ぐ気は…」 「ない」 きっぱりと言い切った男、ビルナス。 「道場を継ぐということは葉月お嬢様の伴侶になるということだ。俺はお前以外は考えてない。」 「ちょっと、ビルナス…」 照れもなく平然と言い放つビルナスに、かすかに照れたように顔を背ける女性。 「嬉しいけど、一ついいかしら?」 「なんだ?」 「闘神都市大会のルールって、知ってる?」 その女性の言葉を聞いて、慌てて闘神大会マニュアルを取り出し、ざっと読んでみるビルナス。 〜勝ち進んだ者は相手のパートナーを一日好きなように出来る〜 「…………」 沈黙。 「…知らなかったのね」 女性はビルナスの額に浮かんだ一筋の汗を見逃さなかったらしい。 「…心配するな、男に二言はない」 ざかざかざかと道場に凄い勢いで帰っていくビルナスだった。 「さあ、好きなようにしなさいよ!」 ビルナスは難なく勝ち続け、そしてこの時間がやってくる。 負かした相手のパートナーを好きに出来る時が。 女性も腹をくくったのか、自分から下着姿になってベッドに滑り込んだ。 だが… 「…そういう気はない」 「へ?」 自分から脱いだのに馬鹿みたいじゃないか、女性はそう思った。 というよりも、一晩好きにしていいと言うのなら何をするのだろうか。 まさか、通常のシチュエーションじゃ満足できないとか。 過剰なくらい相手を痛めつけるのが趣味とか…。 そこまで考えて、女性はぶるると体を震えさせた。 「あの…出来ればあまり痛いことはしないでほしいかなー、なんて…」 言いにくそうにぼそりと呟く女性に、ビルナスはふうとため息をつく。 「とにかくそっち方面からは離れてくれないか」 「りょ、了解。でもあなたが勝ったんだし、私も何かしないと気がすまないんだけど」 その女性の言葉を聞くと、ビルナスは少し考え込んでこう答えた。 「そうだな…一応好きにしていいとのことなら、一晩話し相手にでもなってもらおうか」 ぽかんと口を開けて呆けたようにビルナスを見る女性。 「あの…失礼かも知れないけど、もしかしてあんたって、不能だったり」 「しないが、一度決めたことはやり遂げる性質でな」 「何?どういうこと?」 女性としてはいけない理由でもあるのかしら。彼女の目が輝く。 「聞きたいか?」 「うーん…ちょっと興味はあるわね」 「よし、それでは今から遡ること○年前の事だ…」 以下延々と彼女との出会いからノロケ話まで一晩まるまる聞かされたパートナーの女性。 彼女は全てを理解したが、時既に遅し。 次の日にはやつれた姿で現れた。 後に彼女はこう語る。 絶対ビルナスは奥さんの尻に敷かれると。 その後も彼は、酒につきあってもらったり等して一度もパートナーの女性に手を出すことはなかったらしい。 なんとも涙ぐましい努力であった。 そして、シードがめざましい成長を遂げ、ビルナスを見事打ち倒し、闘神大会を制した時。 ビルナスも自分の役目は終わったと胸を撫で下ろした。 やっと彼女、セレーナと一緒になれるとも…。 だが、そこに待っていたのはシードとセレーナの消息不明という知らせだった…。 「そんな…シード」 がっくりとうなだれる葉月。 「落ち込んでる暇はない、助けに行きましょう」 力強く葉月の肩を掴むビルナス。 「ビルナスさん…」 (そんなにシードの事が心配だったのかしら。後輩思いのいい人なんだ…) 葉月はこう考えていたが、実際ビルナスの頭の中はこうだった。 (セレーナ…無事でいてくれ!…ついでにシードもな) 見事に「セレーナ9:1シード」の割合である。 そんなこととは露知らず、葉月はビルナスの思いに感謝しながら領主の館へと駆け出していった。 これが、闘神大会決勝戦で惜しくも敗れた男、ビルナスの物語の一部である。 また別の話もあるのだが、それは次の機会にとしておこう。 |
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