第11話
作者: ディー   2005年07月01日(金) 20時40分30秒公開
遠くから響く爆発音。
遠雷の様ににも聞える銃声。
「どうしたの志貴?」
「どうしましたか兄さん?」
四つの目が此方を向く。
「いや、最近のアトラクションショーの練習って、やけにリアルっぽくないか?」
「兄さん・・・本物の銃の音を知らないのに、どうして解るのですか?」
う・・・そう言われてみればそうだ、生まれてこのかた銃声なんて聞いたことは無い。
もう一度、作りかけのビルを見る、フロアの一つから今だに白煙が昇っている。
「あはは〜変な志貴。今さっきスピーカーで職員の人が言ってたじゃないの『アトラクションの前準備の為大変ご迷惑をおかけします、安全管理の為に工事中のホテルには近づかないでください』って。」
「お前に変って言われる俺って・・・でも、なんでだろうな、妙に気になるんだ。」
ジッと目を凝らす、やっぱり何かおかしい。
「何か見えるんですか兄さん? 私には何も見えませんが。」
そうだ、アルクエイドなら何か見えるかもしれないな。
「アルクエイド、何か見えないか?」
演技かかったような仕草で遠くを見るアルクエイド。
「ん〜ん、全然。見えたとしても何も無いわよ、何も感じないしね。」
「そうか、お前が感じないんじゃ何も無いんだろうな。ん?」
ミキサーの音を大きくしたような機械の回転音、その後。

ドドドドドドドド

爆音の様な銃撃音。
「ほんとに凄いな。機関銃の音かな? にしても大きすぎるような。」
「本当に何の音でしょう? 少し音が大きすぎますね。」
「・・・・・秋葉?」
「何です兄さん。」
今、秋葉の横顔が一瞬、険しく見えた。
「何か心配事でもあるのか?」
「別に、ありません。」
・・・・・・・そうか。
「あえて、言うなら兄さんの女性関係ですね。いい加減にあの二人に『付き纏うな』と言って貰いたい物です。」
「あ、秋葉。」
ヤバイ地雷踏んだ。この場合は薮蛇か?
「最近では、翡翠や琥珀までに色目を使っているみたいですが・・・・・私の・・・・。」
「アー、アルクエイド今度はあっちの。」
「兄さん!! 何処に行かれるのですか? 私の話はまだ終わっていません。ちょっと兄さん!1」
「どれに乗るの志貴?」
のんびりとしたアルクエイドの手を取って走り出す、眼鏡の横からビルが見えた。

黒い線が集まった闇があった。


12月25日(追記)
残り二つの特殊部隊の詳細の割り出し、銃器の出所、白翼公の時計塔への浸透度の確認を要請。
・・・・さすがに、航空機搭載の機関砲とはもう戦いたくない。
以上。


ガガガガガガガガガガガガ
「三剣!!」
ガガガガガガガガガガガガ
「何だー聞えないぞ!!」
作りかけのビルのフロアに機銃の音が鳴り響く。お互いの声が聞えない位の大音量が反響して身体を断続的に響かせる。
ガガガガガガガガガガガガ
「何か手は無いんですか!!」
「無理に決まってるだろうが!!」
顔も出せない、今出て行ったらやられる、蜂の巣どころかボロキレになる。
二人で隠れているコンクリートの柱が削られていく。
「弾切れを狙うしかないだろうが、このままじゃ・・・!!?」
音が止まった。
こちらを見るエレイシアの目が大きく見開かれる、ゆっくり視線の先へと振り返ると。

空間が歪んでいる、その中で機銃の銃口が────

「まずい。」

─────見えた。

前に転がるように逃げる。
ガガガガガガガガガガガガ
「何だあれは、反則だろうが!!」
「空間を歪めて、弾道を変化させているんです!!」
「解ってるよ!! 愚痴りたいだけだ!!」
少し離れた柱の影からエレイシアが叫ぶ。
「弾切れまで待てませんよ、三剣いい手は無いですか?」
「そう言うお前は何か無いのか?元々お前が、ああ言う相手が専門なんだろうが!!」
そう、代行者と言うモノはかくしてそう言うモノだ。
教会における異端審問員で、教義に存在しない異端を排除するモノたちの総称。
その異端審問員達の中でも実力主義で魔を狩る組織、『埋葬機関』に属し『弓』と呼ばれる第七位の代行者。
それがシエルことエレイシアの今だ。
「こう言う事に関しては貴方は引けは取らないはずです。『戦闘旅団』の隊長でしょうが!!」
「あーもう、正体ばらすな!!」
一体なんの為の変装だ。
ガガガガガガガガガガガガ
身体の真横を跳弾が通り過ぎる。
チッ弾がまだ尽きんか、あれだけ撃っておいて未だ続くとは、どれだけ弾を持ち込んだんだ?
「・・・・もう一寸持たせろ、弟君が何か持って来るそうだ!!」
そう、兄が機関砲を持ち込んでいたように弟もある物を持ってきていた。
「ならば私が囮に!!」
ガガガガガガガガガガガガ
再び始まる銃撃。
・・・・来る、今さっきと同じ空間を歪ませる気配だ・・・・時間が無い。
「俺が囮になる。弟君には魔術が使える人間がサポートした方がいい!!」
「しかし、貴方はどうやって防御するのです? 魔術は使えないのでしょう?」
「何とかなるさ!! いいから俺が飛び出したら階段の所で待機してろ!!」
目で合図して飛び出す瞬間エレイシアの背後で空間が歪む。
それを見るより前に、歪んだ空間のその先にある機銃に向かって発砲した。

攻撃は最大の防御だ。


囮になって貰っている間に銃弾を避けながら階段のある場所まで移動する。
「全く、死徒相手に無茶しすぎです。」
援護してあげたいのは山々ですが、攻撃してしまうと此方の位置が判明してしまう。
「囮になったのが無駄になりますから、死なないでくださいね。」
寧ろ今死んで貰った方が私としては後腐れないのですが。
その時、銃弾の音と違った階段を駆け上る音が聞えた。
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・!!」
息を呑む声。
「待ちなさい、私はみ・・・・あの仮面の男に協力をする事になりました、良いですね今回だけです。」
息を整えながら少年の面持ちを残した顔面を蒼白にさせながら頷いてくる。
「貴方の名前はヨハンでよろしいのですね。」
「はい。」
躊躇いがちに答えるヨハン、年は遠野君と同じ位でしょうか? ・・・・遠野君より幾分か利発なような気がしますが。
「仮面の男によると貴方が、この状況を打破できる物を持って来ると言う事ですが。」
ヨハンの背に背負われた担いだ本人すらも覆う大きな円形状の板・・・・金で縁取られ、裏は牛のなめし皮、表は青銅を磨いた物でしょうか?
・・・・まさか。
「ペルセウスの楯。いえ、アイアスの楯ですか!?」
ゆっくりと此方に楯の前面を見せてくれた。
「透かし彫りでアテナのレリーフ。しかし・・・裏面を考えればアイアスの楯・・・・。」
「どちらも正解であり、間違いでもあります。私の家系の事を知っているようですから話は割愛します。ヘパイトスの神の家系とテュキオスの家系はそもそも違うと言う事を考えてみてください。」
「では、この楯は?」
「私の家系の始まりは千年前のビザンツ帝国にあった魔術・・・・いえ此処も割愛しますね。」
そうです今の状況を考えると説明の時間は少なめにお願いします。
「・・・・まあ色々な事がありヘパイトスとテュキオスの家系はその時繋がったのです。そして両者の繋がりの証がこの楯です。」
かなり端折りましたね、ですがこれが証ですか・・・・それにしても。
「それでは、この楯は二つの楯を?」
「ええ、その通りです。作り直したペルセウスの楯にアイアスの楯の牛革を敷き詰めました。『至高なる無敵の楯』と文献には載っていました。」
なるほど、ならばこの楯は。
「全ての攻撃を無効化する概念兵器、いえ英霊が持つという宝具ですね。」


ジャキ
残り少ないマガジンを交換する。
「ったく。幾ら弾を持ってきてんだよ、二千は超えてるぞもう。」
恐らくは吸血鬼の怪力を利用して持ってきたんだろうが。
「弾代も馬鹿にならんだろうに。」
銃撃の合間を利用し柱の影から影へと移動しながら発砲。
だが、『歪んだ楯』によって弾かれる。
柱の陰に隠れる直前にポケットの中のペットボトルを投げる。
「爆ぜろ!!」

ドオオン!!

重低音の爆発音と共に水蒸気を撒き散らす。
重ねるように再び発砲。
幾ら打ち込んでも効きゃしない、弾がもう無い残りマガジン二本。まだかあの二人は!!
その時、目の端に法衣と大きな楕円形の物が写り込む。
目を凝らす・・・・とそこには水蒸気に紛れて近寄ってくる二つの影があった。
「遅くなりました。」
「もう一寸で蜂の巣だ。で? 一体何を持って・・・・楯?」
実用性に欠けると言わんがばかりの巨大な楯、ヨハンの身体がスッポリと隠れている。
「何の楯だ? ・・・牛革? アイアスの楯か?」
「効果は見てからです。用意は良いですか?」
「無理、弾がもう無い。囮役はやったんだから俺はもう下がらせてもらう。ヨハン、一族最後の人間としてけじめをつけろよ。」
頷くヨハンを見て、俺はその場を離れる。
「待ちなさい、貴方どこに行くのですか!?」
「後始末の用意だ、君が付いていれば負けることはあるまい? 埋葬機関の名に賭けて。」
「勿論です。」
「だったら大丈夫だ。じゃあな。」
手を振り去り際、背中に声がかかる。
「待ってくれ!!」
「ん?」
「ありがとう。」
「気にするな。ああそうだ、シエルこれだけは守れ、真正面から行って最初の一撃目は絶対に避けるな。いいな。」
「ちょっと、待ちなさい!! 一体どういう意味ですか!!」
シエルの怒声を聞きながら階段へと向かう。
さて仕上げだ。



仮面の男の謎の攻撃による白煙が落ち着く。
何度も喰らいながらも観察を続けたが、あの水蒸気爆発と雷と炎の銃弾の魔術がわからない。
魔力の放出もなく爆発するペットボトル、魔術回路の起動も無く雷と炎を纏う銃弾、それを使う仮面の男。
此処に来た理由も居る理由も戦う理由も解らない。
思考の迷宮に入っていた、目の前を見ると薄らと見える二つの影。
重い機関銃を持ち上げ、照準を合わせた。
「終わりにしましょう。兄さん。」
一つは大きな楯を横に構えた憎き弟。
「神に代わり貴方を滅します、贖罪は御許でなさい。」
もう一つは青い代行者。
だが、その対応に、立ち位置に、その言葉に笑いが誘われる。
「状況を見るんだな、ヨハン。周りを見てみろ、代行者。」
だが、すでに準備は終わっている。二人の周りに、いやフロア全域に広がる鏡の結界。
「空間が歪んでいる!!」
「なるほど、先程の攻撃は確実に私達を葬るこれを形成する為の陽動というわけですね。」
そう、あの男との交戦中に少しづつ形成していた鏡の空間。この状態で攻撃をかければ避ける事は出来ない。
「あの男は逃げたようだが、お前らだけでも殺す、そう言う事だ。名付けて『万華鏡』あらゆる方向からの攻撃がお前らに照準が合わさっている。死ね!!」
引き金を引く。

ガガガガガガガガガガガガガガ

ウォォォォン
ガトリングの回転音が収まる。
感じから言って600発余りの銃弾が叩き込まれたはず。これだけ打ち込めば、あいつらも終わりだ。
弟は死んだ、これからは俺の復讐が始まる、家に帰ったら、まず親父を殺してやろう、いや血を吸ってグールに変えても良いな。
代行者を倒したのもいい、時計塔の中での俺の地位も上がる。
今までの俺は最低だった、弟に家督を取られ、ヨーロッパを放浪し、白翼公との取引で俺は吸血鬼と成った。
だが今からは違う、復讐を果たし俺は俺の・・・・何!!
死んだはずだ、あのタイミングでは避ける事も出来ない逃げる事も出来ないはず、まして大きな楯を持っている状態では尚更だ。


「─────古の盟約に従い、楯の一族、鏡の血族の命により起動せよ。ノウブル・アイアス!!」

ドン!!

傘が開く音に似た小さな爆発音と共に土煙より迫る大きな楯、その周りに花弁のように開く透明な楯が床と屋根を削る。
何!!
引き金を引く。
だが、銃弾は全て楯に優しく受けてめられその場に落ちる。
「何だあの楯は!!」
「兄さん、貴方はこの家に伝わる楯で終わらせる。」
「は!! 避ければ良い事だ!!」

ダン!!

だが、それは遮られた。降り注ぐ黒鍵によって。
「鏡の防御の弱点は動けない事です。動けば指定していた鏡面から出てしまいますからね。」
近づく楯は止められない、降り注ぐ黒鍵の為にこの場を動けない、銃弾は全てはじかれている。
「クソ!!クソ!!クソ!!」
何故だ何故だ何故だ。

ガチン。

弾切れ。
「何故だ、何故最初の攻撃が入らなかった!!」
「簡単な事、仮面の男の攻撃はもう一手あったのです、高熱と水蒸気による陽炎によって貴方の位置覚が狂わされていた。最初から攻撃する位置が間違っていたのです。」
なんて事、なんと無様。
「貴方の攻撃は全て私達の陽炎に当たっていました、あれが当たれば私達はボロボロになって死んでいたでしょう。ですが、最初の攻撃が当たらなかった、貴方の弟さんが楯を起動した時点でもう貴方は終わっていたのです。」
何て無様。
楯がスローモーションで迫るだが動けない、頭上の数本の黒鍵がそうはさせじと迫る。
目の前の楯が俺の身体を跳ね飛ばす。その先は日の光が差す屋外。
「さよなら、兄さん。」
「クッソオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
体が焼け焦げる。こんな所で死んでたまるか、高速で流れる壁に手をかけ爪を立て、身体を折り曲げ壁を強く蹴る。

バキバキバキ、ドスン

陳腐な音と共に落ちたのは中庭に広がる広葉樹の木の上だった。狙い通りの場所に落ちた。
身体を見ると所々焼け焦げている。擬装用の皮膚が日光を少しながらも防いでくれた。
樹を背に状況を確認、黒鍵は降ってこない、魔術回路の反応なし、気配も無い。
逃げ切れた・・・のか?
木の枝がクッションになった為、体へのダメージは少ない、このチャンスは逃がす事は無いあの二人が此処に降りてくる前に一足飛びで建物の中へと入る。
建物の中を走り向かった先は遊園地との連絡通路がある地下。
退路用に見つけていた物だ。
階段を降り、扉を開け、後ろ手に鍵をかける。
走る、息切れが落ち着く間もなく明かりの無い闇の通路を一人走る。
ここまで計画が狂うとは予定外だ、この先で待機させている分隊と早く合流して撤退しなければ。
ヘッドセットの予備を装着し電源を入れる。
「クソ!! この借りは必ず返す、待ってろよヨハン、『弓』!! こちらA分隊、B分隊C分隊応答せよ」

『無駄だ、残りは君一人だ。』

ヘッドセット越しに聴こえたはずの声が近くで聞こえた、それよりも今の声は? 誰だ? 残りは俺一人? どう言う事だ?

ボウ

闇に灯る炎。
煌々と赤く光るタバコの火。

「燃えろ。」

呟きのような声と共に次々に割れるビンの音が響く、通路の壁に沿ってに火が灯りテルミットの燃える匂いが鼻を突く。
目の前に男が立っていたゆっくりと寛いでいる様が、壁に身を預けゆっくりとタバコを吸った。
「誰だ、貴様。」
藍色の目と彫りの深い整った顔、肌の色は間違いなく東洋人。
さっきのインカムからの声は間違いなく目の前の男から発されたものだ。
? 白いパンツと黒のコート今さっきの奴か!! だが今はそんな事が問題ではない、先程とはあからさまに違う雰囲気の目の前の男に見覚えがあった。
「戦闘旅団の長。」
時計塔の資料室で見た資料にあった遠距離から撮影された顔写真、この10年で世界各国の特殊部隊を倒している裏の世界で最強と言われている所属不明の部隊の長。
「その機動性と集団戦闘に特化している故に、戦闘旅団と呼ばれている。」
呟き声が届いたか、男の目がこちらを向く。
「知っているなら話は早い。投降しろ。」
「冗談。でもそれで解った、私の仲間は。」
「全員、拘束して、遠野のSSの前に放り投げろと言ってある。」
「俺の部隊が、壊滅か。」
目の前の男が薄く笑う。
「もう一度言う投降しろ。」
目の前の男の雰囲気が益々深くなる。
いや、なんだ? この空気は。
熱い焼ける様な殺気が皮膚の感覚を焦がす。
「馬鹿な事を、日の光が入る作りかけのビルのフロアならいざ知らず、光が一切入らない地下道で吸血鬼と戦う気か?」
だが、身体が震える、心が挫ける。
何だ何なんだ目の前の男は、俺が恐れているのは男の正体不明の銃か? それとも戦闘旅団か? いや違う目の前の男が恐い、身体が自然と後ろへと後ずさる。
逃げ切れる確率が同じゼロに近いとしたら目の前の男により『弓』の方が助かる確率が幾分か高い、そう身体が判断した。
だが、気付いた時は遅かった。
背中を預けていた身体を戻し、真正面に立つ男、逃げ切れない・・・死徒の身体能力をしても目の前の男からは逃げ切れない本能が告げる。
男の持っている口を開けた透明なペットボトルの中の水が、泡立っていた。
「投降の意志は無いな、君は私の姿を見た、ならば・・・」
瞬間、殺気が膨れ上がる。

肺が焼けた様に息ができない。

焼けた身体が引きつる様に身体が動かない。

ここで俺は終わるのか・・・・いやだ!!
本能の恐怖で動かない身体を理性で無理やり動かし、爪を硬化させ飛ぶ。
「死んで!! たまるかああぁぁぁぁ!!」

「灰も残さず燃え尽きろ、焼滅。」

仄かな炎で照らされた通路が閃光で溢れた。



ズウウウン

「うお!!」
一瞬だが大地が揺れ、身体がよろけ近くの街灯に背中をぶつける。
「大丈夫、志貴?」
「ん? ああ、大丈夫だ・・・何かおかしくないか?」
「何が?」
「お前、今日俺の事やけに心配してないか?」
ジッと顔を見る。動揺の色も見せずにアルクエイドは笑って頭を振る、これでもって位に。
「ぜ〜んぜん。そりゃあさ、志貴ったら昨日の夜はとってもはげし・・・モガ。」
慌ててアルクエイドの口を塞ぐが遅かった。
「あら、兄さん昨日はアルクエイドさんと一緒でしたの?」
・・・・・うわ、妹よこんな公衆の面前で髪を赤くしたら・・・・・。
「にい〜さ〜ん・・・・・。」
再びアルクエイドの手を取り逃げる。
「ちょっと志貴!! 今度はあれ乗るんじゃ。」
「却下!! 今は絶叫コースターよりも絶叫するかもしれないから逃げる!!」
「兄さん!! それはどう言う事ですか!! 説明を求めます!!」
走る、冬の風を顔に受けながら。
こう言う日でも、いつもの変らない日常。
生きる事は辛い事だ。

俺はこの時何も知らなかった、いつもの日常を守る人間と裏で行われていた戦いを。
それを知るのは、まだ先だった。

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■後書き
後書きはありません。

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