プロローグ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
作者:
ディー
2005年07月01日(金) 21時11分51秒公開
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「はい、解りました。早急に処理します。」 窓一つ無い暗闇、映える白い肌。 「前回の聖杯戦争の経緯は、ロンドンに送り込んでいた者に命じて詳細をコピーさせました。はい、今回の報告書に添付しておきます。」 部屋の奥、中央に置かれた荘厳な机。椅子に深く腰掛けた声の主は受話器に当てた薄い唇を歪めた。 「その件に関しては、もう少し御待ち下さい。何分相手が相手ですので・・・・。」 机の置かれたマウスを動かす細く病的と呼ぶほどの白い指。画面がスタンバイ状態から起動し部屋を照らす。 「はい、調査班が戻り次第、彼を送ります。」 ディスプレイ上に映る社員表の一つにカーソルを合わせる。 「彼が前回調査した南米の遺跡のファイルは目を通されましたでしょうか?」 顔写真が大きく表示される。面長の顔と髪を後ろに束ねた長髪、唇が皮肉げに笑っている写真の下には名前がローマ字で書かれている。 SIMON SHITINAGI 「見ていませんか? まだ南米から未だ戻ってきていませんが、面白い仮面を持ち帰ってくるそうです。 現地住民の話では『神の仮面』とか・・・・いえ、それは研究室で見てみないと何とも言えませんが。 はい、執行部の方は今動かせる状態ではありません。全員、任務に付いています『消滅』の部隊は、中央アジアで支部の警護と遺跡の調査を『潰滅』はアフリカの方のレアメタル採掘場の制圧を『焼滅』は引き続き三咲町の監視を・・・はい、あそこは色々な意味で重要地域になっていますので、『真祖の姫』『代行者』『遠野』と裏の者達にとっての最悪の場所になっていますから。」 遠くから笑い声が聞こえる。 「・・・・・笑い事ではありません。結託でもされたらパワーバランスが崩れます。ええ、はい、今回の聖杯戦争の件が終り次第、三咲町の調査も行ないます。予定としては八月位を目安に考えていますが。 ・・・・わかりました、その線で行なわせていただきます。では失礼します。」 受話器を置くと一つ息を吐く。と、その時、扉が開かれ光が入り込む。 「社長!!・・・・・すまない、光は駄目だったのをすっかり忘れていた。」 扉から入り込む光を浴びて浮かび上がる人影。 病的なほど白く抜けた肌と深紅の瞳、ダークブルーの背広が光を遮る。 その姿を見たものは一瞬『ある者』を思い浮かべるだろう。 扉を開けた男は部屋に入り込み扉を閉める、部屋は再び闇に飲まれる。 「今、ライトをつける」 部屋が月明り程の光に包まれる。 「すまない、体質の事を失念していた。」 「構わない、それより南米の報告を・・・君が慌てるぐらいだ面白いものが見つかったみたいだね。」 男がニヤリと笑い小脇に抱えた者を机に置く。 「これだ、解るか?」 「・・・・・丸太?いや、この組成は見たことが無い植物だ。」 「見たことも無いのは当たり前だ、日本にも以前生えていた妖木『御魂喰い』。日本では絶滅していて今じゃ古い儀礼用の能面にしか見れない物だ。南米のジャングルに生えているとは思わなかったから持ってきた、ついでに種も。」 「まるでプラントハンターだ。お手柄だ、ご苦労さん。」 社長は男に労いの言葉をかけると一枚の書類を手渡す。 「?」 「辞令だ。」 「・・・・・冬木? 今回は日本・・・・・聖杯戦争、また厄介な物を・・・・。」 「厄介だからお前に頼むのだよ。今回の目的は二つだ、よく読んでやってくれ。」 「了解。出発は明後日でいいかな? 一回、博多の家に戻りたい。」 「こちらの予定としては、来週の連休からと考えていたので全然構わない。寧ろ、南米の疲れを取る意味でゆっくり休んで来い。」 「ああ、ゆっくり温泉にでも漬かって来るさ、ではな。」 男は重い腰をゆっくりとあげ、扉を開けずに出て行く。 そんな状況を、当たり前のように見つめた社長は置きっ放しの丸太を見て何か思いついた様に電話の内戦のボタンを押した。 「研究室の重金主任と蹈鞴副主任を呼んでくれ。」 そのときは誰も思っていはいなかった、これが始まりだったと誰一人。 |
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