第13話 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
作者:
ディー
2005年07月01日(金) 21時36分35秒公開
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神降ろし、巫覡の行なう最大の秘儀。 身を清め、神楽を舞い、神を我が身に降ろす。 巫覡の一族は、それを事前の儀式と血の契約による一種の呪詛の使い、舞のみで神を降ろすと言う技術を確立した。 その効果は前回の戦いを見ての通りだ。火之迦倶槌神、日本でも結構有名な火の神、一説によると火山を司る自然神。 京都愛宕神社の祭神で火防の神として祭られている、他には鍛冶の神、焼き物の神様としても有名だ。 祭具の種類により降ろせる神も違うのだがそれは追々出てくると思うのでここは割愛させてもらう。 私はマキリの蟲人形とやらを殲滅する為に全力でその技を使いマキリを追い詰めた、が見事に脱出に失敗。 焔から身を守るにしても全力を使い果たしていて身を守る事も出来ず全身大火傷、一部炭化、本当に死ぬかと思った。 ローストチキンになる前に何とか脱出、車まで何とか到着してホテルまでたどり着く。 途中見つかって警察に通報されるも、何とか部屋に帰ってきた。冷蔵庫に入れておいた食べ物を食べ眠りについたのは何時だったか? 「フウウウゥゥゥ。」 胸に溜め込んだ息を大きく吐き出す。肺まで焼かれ一時は息をするのもきつかったが、大分身体の調子は戻った。カーテンの所為で薄暗い部屋、テレビが光を出して時刻を朝の7時半を知らせている。 腕を見る、所々火傷の後はあるが目に見えるスピードでゆっくりとではあるが常人を凌駕する回復能力で治っていっている。 「相変わらずの体・・・か。」 そう相変わらずの化け物の身体、十年前のあの男の質問に答えてしまった結果だ、メフィストフェレスと契約した男も同じ気持ちだったのだろうか? ナノマシン、その小さな機械達は俺の体と同化し今もなお、体を再生し続けている。ライダー達のナノマシンと違い、このマシンは違う。俺の身体の中のナノマシンはマシンではない。 正確にはウイルス型の使い魔をナノマシンの代わりとしている、身体の中に入れると大量に増殖、細胞と同化、状況によって活動すると言う優れものだ、機能的には同じだが構成は違う物だ。 ちなみにライダー達のナノマシンは次世代型の完璧なマシンロボットだ、ただし通常のナノマシンと一つだけ普通と違うのはマシンデザインと主設計が青崎燈子作だと言う事だけだろうか、それ故に魔具の作成も分子的なものから可能になった訳だろうが・・・・・交渉する為に見つけるのに苦労したのを今も覚えているなあ。 「アハハハ、何よそれ? おっかしいの。」 唐突に部屋に響く声、誰か居る!?いくら戦闘から暫く離れていて勘が鈍っているとは言えども、この距離に近づくまで気付かなかったのか? 「あれ? 起きた?」 丁度テレビの対角の位置に椅子の背に抱き付いてテレビを見ている人物、見た事のある髪の長い女性が目に入る。 ・・・気付かない訳だ日常に違和感を、異常を感じる事は無い。 「双葉? おまえ、何でここに?」 「誰の所為よ。どっかの誰かさんがドジ踏むから。」 中性的な顔とハッキリと女性と解る声、そんな嬉しそうな表情でキッと睨まれても怖くは無いが、言いたい事は伝わる。 「あー、俺の所為か?」 「その通りよ、今日から休みだって言うのに休暇返上で探しに来たの、このホテルのニュース見て簡単にわかったけど『何でここに?』って酷いんじゃない?」 「すまん、全身火傷の所為でまだ頭がぐらぐらしてるんだ大目に見てくれ。何しろ足なんか炭化してたぐらい。」 「自業自得でしょ? こっちにアインツベルンから連絡入ってきてるから全部筒抜け、細目部長怒ってたわよ『連絡をしろ』ってさ。」 頭痛くなってきた、帰って部長の長い小言を聞かなきゃいかんとは。 「後、開発部の主任も連絡くれって召喚したサーヴァントの大まかな状況を聞きたいって。それと盗られた物はちゃんと取り返せって。」 「解った、二人には後で連絡しておく。で? ここにはヤッパリ会長からの命で?」 当たり前の事だが、確認しておこう。 「当然!! 私達、執行部を動かせるのは会長だけよ。あと会長からも言付け仲良くするのも良いが程々にだって、ばれてるわねぇ。」 「それはヤッパリ私たちの関係がばれていると解釈してもいいのかな?」 顔が自然と引きつる、社内恋愛禁止なのによりにもよって会長にばれるとは・・・・・。後で何を要求されるかわからん所が怖い。 「ところで、調査はどこまで? これからどうするの?」 情報をある程度聞いた後、双葉は器用にも椅子に座り半ば乗り出すように聞いてきた。 「お前、やる気か? 『殲滅』の双葉には探索は無理だろう。」 「うっさいわね、やるって言ったらやるの。『滅紫』の紫門だけじゃ心配だから。」 口を尖らせて上目遣いで、こっちを睨む。 こうなったら、私でもこいつを何とかするのは無理だ。こいつの双子の兄貴か執行部の誰かじゃないと止められない。何を意地になっているのやら。 「あー、解った解った。今の状況から話そう。」 途端に嬉しそうに笑い出す、全くこいつと言ったら・・・・・。 「ちゃんと聞けよ、解ってるのか?今の状況はそっちから聞いた情報によるとサーヴァントが六騎召喚されたんだな・・・多分バーサーカー以外召喚されたんだろう。」 「何で?」 「復活にはルールがあるんだ消滅間際の御霊を移す、それがまず一つ。それともう一つ復活後は消えた、要するに死んだ直前からはじまる。」 「それがどうしたの?」 「最初から狂っているバーサーカーを誰が止めるんだ?」 「ああ、そっか。」 そう、死ぬ直前の英霊を強制的に持ってくる、逆に言えば死ぬ直前の記憶で、その時の状態で現れる。 ライダーやランサーは消滅直前、死を覚悟した時に呼び出したが、バーサーカーはそうはいかない。 事前調査で『止めておこう』と思っていたクラス、何せ復活した時点で狂ってる。 一体誰が止めるんだ? そんな面倒な事は死んでもやりたくない。例え止められたとしても被害は甚大だし、話は最初から聞けない意味が無い事この上ない。 まあ、令呪があれば別なんだが、それも無いしな。 「あと戦力は偏ったと言っても過言じゃないな。」 「マキリ?」 「そう、マキリ側だ。アインツベルンのお譲さんの話によるとマキリの目的は聖杯。ならば、手に入れる為に安全策をとるならどうする?」 「聖杯確保に必要なための陣地、戦力もしくは火力、敵の情報を基本に戦術を練る。」 「その通り、今回の状況で一番手っ取り早く有利になるのは戦力の確保、その為にホムンクルスセットを奪い、サーヴァントの召喚をおこなった。」 「でもそう考えるのは安易じゃない? マキリに従っているとは限らないでしょ? 紫門が失敗したのもあるし。」 そう私は最初から失敗した、と言うか開発部の奴ら束縛の方法考えてなかったのが原因だが。サーヴァントと言えども元は人間、簡単に言う事を聞くわけは無い。だがマキリはサーヴァント召喚と令呪を担当した系譜だ何かしらの方法で束縛している可能性がある。 「確かにね、まあ今日はマキリの戦力と陣地を調査するが双葉、お前には頼みたい事がある。」 「なあに?」 「アインツベルンとの繋ぎ頼む、何だか知らんがあいつ等携帯持ってないみたいなんだ。いざというときに連絡が取れなかったらたまらない。」 「何それ? 本当に現代の人間なの?魔術師は頭硬いわねえ。しかも探索の仕事じゃないし、これでやっている事が戦闘関係だったら、いつもの仕事と変わんないじゃない。」 「そう不貞腐れるな。あっちに何かあったら、等価交換にならんだろ?だったら。」 あからさまに肩を落とす双葉、お前に任せてたら戦闘ごとが多くなるんだ。 「ハイハイ解った、行って来るわよ。それと、もう一つ聞きたい事があるわ、本調査の特異点はどう?」 「残念だが『種』は見つかってない。見つかったら、そっちの仕事だすぐに連絡する。」 「了〜解。ああ、言い忘れていた、部長に頼まれて貴方の装備品を色々持ってきたわよ、後で持って行ってね。」 「了解。さて行動開始と行くか。」 話は一段落した後は事態が動くのを待つだけだ、ベットから出て・・・ん? 「何だ?」 「二ヶ月ぶり会った恋人にそれだけ?」 そう言いながらベットに腰掛けてくる。まったく、仕事中だというのに・・・・・。 久々の感触と香りに笑みがこぼれた。 双葉と別れ繁華街を歩く。 朝のワイドショーを見て知った公園の大量殺害現場を見てこようと思ったからだ。 「とうとう、見境がなくなってきたな。」 愚行、そんな事をすれば協会と教会の二つから狙われると言うのに。 だが、その愚行のお陰でマキリの状況は読めた。 「決戦が近いな。」 その愚行を裏返しに考えると解る、後を考える必要がないと言う事だ。 後先を考えない程の目的が目の前にあり、尚且つ事を起こしても持ちうる戦力で蹴散らす事が出来る。 全く厄介な蟲だ・・・・。 魔術師。 私達、神との対話で世界との同化を目指す神官とは違う『根源』へと至る道を目指す者達。 『根源』に至って何をしたいのだろう。其処にあるのはゼロなのかもしれないのに・・・。 好奇心と知的欲望がそうさせているのだろうか、彼らの行き着く先は何処へと繋がるのだろう。 その時鼻腔に何かを感じた。 蟲?蟲の匂い? イランイランやバニラ系・・・いや催淫系、興奮系のフェロモン・・・・。 匂いの元をたどる。 移ろいながら強くなり弱まる・・・どこだ? 歩く、匂いをたどりながら、匂いの誘惑を断ち切りながら。 「祓へ、トホカミエミタメ」 意識をもって行かれない様に、唱え、歩く。 頭の中では『襲え、犯せ、突き立てろ。』と繰り返し響く。 本能に直接くる。 下唇をかみ締め、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く、歩く。 そしてやっと辿り着いたそこは 『冬木中央公園』 その一角に見えたものは・・・・戦慄するほどの『穢れ』。 いいだろう、いい加減、我慢の限界だ。 この匂いが言う様に突き立ててやろうじゃないか・・・・この魔剣をな。 |
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