第07話(前半) | |||||||||||||||||||||||||||||||
作者:
タイロ
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2007年03月18日(日) 20時42分58秒公開
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月の高い夜だった。 重力を感じさせない動きでグラウンドに降り立ってくる二つの人影。 小柄な人影は前に進み出て、気取ったしぐさで腕を組んだ。 幽玄な青白い光の中、その細いシルエットは士郎たちに三日月のような笑みを向けている。 薄闇の中、その姿の詳細までは見て取れないものの、紅い口腔だけがやけに鮮やかに浮かび上がっている。 「慎……二?」 問いかける声がひび割れている。 士郎は、知らず喉がからからに渇いているのを自覚した。 「どうしたのさ、衛宮ぁ? ハトが豆鉄砲くらったような顔しちゃってさ」 男にしては甲高い、少し鼻にかかった独特のアクセントのある声。 月光が刺して―― 見間違えようの無い、特徴のある巻き毛を持った容姿を照らした。 「冷たいなぁ。ボクの事、忘れたわけじゃないだろ?」 どちらかというと撫で肩が女性的な、無骨なところが見当たらないほっそりとした体躯。 女性の心をさざめかせる甘く端正な顔立ちだが、奥には複雑で酷薄そうな独特の光をたたえている瞳。 士郎が大きく息を呑むと、夜のひんやりとした空気が肺にしみた。 ――ああ、慎二だ。 屈折を抱えた歪んだ笑みや、前髪をかき上げるキザったらしい動作までもが、どうしようもなく間桐慎二だった。 「今まで、どこに行ってたんだよ? 慎二」 頭を漂白されたように感じた士郎の口から、やっと出たのはそんな言葉だった。 「話したい事が、たくさんあるんだ」 フラフラと、二・三歩慎二に近づく。 「シロウ、待って」 ダイの押しとどめる声で、士郎は慎二の傍に寄り添うように立つ青年の姿にあらためて気づいた。 優男風な慎二とは対照的な精悍な雰囲気の持ち主で、金髪碧眼の端正な顔立ちをしていたが、太い眉と引き締められた口元のあたりに物凄く頑固な感じを漂わせる青年である。 手には―――異様な長物を従えている。 それは矛なのか? 槍なのか? 一見無骨な鈍器に見えるが、およそ巨大すぎて実用に足るとは思えぬ形状をしている。 東西の武器に精通する士郎にも、まったく用途が思いつかない不気味な武具であった。 「ヒュンケル……どうやって此処に?」 「久しいな、ダイ」 「慎二、お前どうして――」 「いやだなぁ――そんなの、決まってるじゃないか」 かって良く見知った二組の親友同士。 それぞれの言葉と共に、様々な思いが交差する。 「僕は、お前を殺しに来たんだよ」 「そんな事はどうでもいい。今は――こうして」 ヒュンケルというその青年は、一度首を振り。 「再びあいまみえる事が出来るとは思わなかったぞ、ダァィィッ!」 瞬時にしてその姿が沈んだかと思うと、地面を蹴立てて水平に跳んだ。 ただ一直線に、体勢を信じられないほど低くして地面を滑空するようにダイに向かって異様な長物を振りかざす。 「シロウ、下がって!」 言い捨てながら、ダイがその健康な子犬のようシルエットからは想像出来ない速度で突進する。 中空で鋭い先端を持つ光が閃いた次の瞬間には、二騎のサーヴァントは凄まじい干戈を交わし始めていた。 やがて両者の動きは加速を増し、士郎の常人に数倍する反射神経すら凌駕して、中空に掻き消えた。 空中に派手な火花を散らしながら、幾筋もの火線が交錯する。 士郎の目からはそうにしか見えないが、人ならぬ者たちが、人ならぬ技で激しい干戈を交わしているのだろう。 「痛づっ!」 突如として出現した死んだはずである慎二と、目の前で始まった激しい戦いに呆然としていた士郎の腕に痛感が駆けた。 人知を超えた速度で交わされる干戈の幾筋かは、士郎に向かっての曲線を描いていた。 ――俺を狙っている!? 「くうっ」 うめき声を発しながら、後転して距離をとる。 人間は、サーヴァントには絶対敵わない。士郎の胸に、苦みと共に前戦争の教訓が去来した。 ならば、せめて邪魔になってはいけない。 今、俺が出来ることは―― 様々な思考は、ダイの小柄な体が無骨な凶器に殴り飛ばされ、石ころのように吹き飛ぶのを視認すると一色に染まってしまった。 「ぅうおおおっ!!」 腹の底から鋭い気勢とともにスペルを詠唱すると、直後に両手に握られているのは白黒の対照的なコントラストが、鮮やかな二振りの剣である。 士郎は瞬時にして足の筋肉を強化した。地面を押すように蹴る。猛烈な勢いで景色が横に流れ始める。顔にあたる風が痛いほどだ。 「む?」 ヒュンケルは、突如割りこんできた闖入者の斬激を槍の石突で受け止めると、表情に微苦笑を滲ませた。 「やれやれ……ダイ、お前のマスターとやらは魔法戦士か? この世界の『魔術師』というのは、まったく」 槍の騎士が武器を軽く一薙ぎするするのを必死で回避すると、強烈な擦過音が頭上を通過していった。 ヒュンケルにとっては、攻撃ともいえない何気ない行動だったのだろうが、それだけで首から上が無くなってしまいそうであった。 士郎は戦慄を覚えながらも、ダイを抱えあげると地面を転がって距離をとり、立ち上がる。 「何故だっ! ヒュンケル、何故俺を襲う!?」 問うダイの声にヒュンケルは答えず、無言で切っ先を向ける。 その後ろから実に場にそぐわない軽薄な笑いがかぶさってきた。 「ヒハハハハハッ。それがさあ、衛宮。実に笑える話でさ……」 慎二はヒュンケルのそばに近寄ると、実に気安い動作で肩に手を回してポンポンと叩く。 「……あんなイヤそうな顔したヒュンケル見るの、ミストバーンに身体乗っ取られそうになった時以来だよ」 ダイが口と眉を八の字に曲げて言う。 あの人好きのするダイに一目で嫌われるとは……相性の悪さもあるのだろうけど、これはこれで特殊な才能と言えるのかもしれない。 「むろん、令呪で従うように強制はしたさ。だが、コイツの笑えるところは『戦いたいから戦う』ってことさ」 「それは、どういう――ことだ?」 「ヒュンケル、なんでだよっ。仲間だったじゃないか! まさか操られて――」 ヒュンケルは慎二から体を離すと静かに語りだした。 「ダイよ――仲間だったこそだ」 ザン、と巨大な凶器が杭のように大地に突き立てられる。 「少し、昔話をしようか。あの最終決戦、バーンパレスでの戦いで、全ての力を使い果たし武人としての俺は死んだ」 問い返そうとするダイを、深い色をした静かな視線一つで黙らせるとヒュンケルは続ける。 「お前が、虚空に消えてしまった後の話だ。仲間たちは各地に散り、俺は友ラーハルトと共に旅立った。修行は続けたが、結局俺の両腕に昔の力が戻ることはなかったよ」 ヒュンケルはしばらく追憶を噛み締めるように瞑目したかと思うと、カッと両目を開き、視線でダイを突き刺した。 視線はダイを刺し貫き、士郎は自らの心臓にまで達したように感じた。 幾たびもの死線を越えた者しか持てない目。 千里を見渡すという、鷹の目。――あの、『アーチャー』と同じ目。 「俺はやがて指導者となった……アバン先生のようにな。たくさんの若者たちを育てたよ。才能を導き、慈しみ、開花させるのは楽しかった。だが、そんな穏やかな日々が続きながらも俺の心はどこか満たされなかった。俺は……最後まで武人でいたかったんだ」 「でも、だからって!」 「ダイよ、何故お前と戦うのかとと聞いたな。こうして、この時代の召還されたも、おそらくは俺が『そう願ったからなのだ』。武人として、全ての力をお前にぶつけてみたいと。俺は今、全盛期の力をもってこうして現界している。そして目の前には、バーンを倒し世界を救った最強の勇者が存在する。それなら、何を戸惑う事がある?」 ヒュンケルが突き立てた凶器を両手で掴むや。 「鎧化(アムド)」 と叫ぶと、巨大な矛がバラバラに分解していった。 「!!」 士郎はもはや驚愕に声も無い。 バラバラになったパーツは甲殻類のような足を張り出し、ヒュンケルの身体に巻きつくたかと思うとカッと光を発する。 光が消えた後、そこにはもう全身をつま先まで完全に武装したヒュンケルが居た。 槍の核になっていた部分はヒュンケルの手に残っており、ゾッとするような怜悧な光を放つ槍となっている。 「凄い……どうも武器としては大きすぎると思ってたら、あの槍自体がそのまま身体を鎧うように構成されたパーツになってたのか」 「ヒュンケルが陸戦騎・ラーハルトから譲り受けた鎧の魔槍だよ。ロン・ベルクさんの傑作だ」 ヒュンケルが槍を構えなおすだけで、切っ先からは一陣の風が巻き起こる。 完全武装した銀に耀くその姿は、闇を切り裂く月光の化身を思わせた。 「今の俺は昔のお前の仲間ではない。サーヴァント・ヒュンケルとして、大勇者ダイとの戦いが望みだ――ダイよ、お前も戦士ならばこの気持ちはわかるはずだ」 息を呑む二人をよそに、張り詰めた空気を壊す軽薄な声と間抜けな拍手。 「やぁ、熱い。無駄に熱いね。僕ぁ嫌いだけどね、こういう少年漫画みたいなノリ。昨今のバトルモノの戦いに挑むモノローグは、もうちょっと、こう、婦女子受けのするトラウマとかを入れてだね、僕みたいな美形を絡ませないと」 「って慎二っ! ……そういえば、なんでお前生きてるんだよ?」 「本当に今さらだね、親友。そこは最初にツッコムところなんじゃないのかい?」 慎二はピクピクと頬を引きつらせた。 ヒュンケルはもはや後方の存在自体を黙殺している。 「お前が。慎二が、本物のはずはないっ。――慎二は死んだんだ」 慎二はパンパンと手をたたきながらあっさりと首肯した。 「ああ、僕は死んだね。見事にね。完膚なきまでに。だけど、生き返っちゃったんだね」 「まいったなぁ宿題忘れちゃったよ」と言い換えても通じそうな軽い口調であっさりと言われて、ダイと士郎の肩は同時に下がった。 「なんだ、それは! 慎二、ふざけてるのか!」 「ふざけてる? ああ、そうかもね。ふざけてるなぁ」 慎二は笑顔のままウンウンと頷いていたかと思ったら、顔を伏せた。 「ふざけて、狂ってるのは――今の、この世界のほうだよ!!」 ガバと再び顔を上げた慎二の顔は真っ白だった。 目は異様な光をたゆたわせながら眼球がはみ出さんほど大きく開かれて、口にはありえないほど歪な笑みが浮かんでいた。 「見ろよ衛宮、この化け物どもを。世界中のあらゆる神話体系を精査しても登場しない、そのくせ過去呼び出されたサーヴァントたちと比べても際立って強力すぎるコイツらは、間違いなく実在の存在だ。使う魔法とやらにしたって、この世界の大源小源から発生するのとはまったく違う、それでいて非常に精緻に構成されたその威力は、この世界の魔術がまるで玩具みたいに見えるほどのモノだ。頭がおかしくなりそうだよ。まるで異世界からのエイリアンだ」 細いシルエットが、けたたましく笑う。 「おそらく、今回の聖杯は暴走している。ようするにブッ壊れかけてるんだ。本来60年周期のものが、前回は10年、今回は数年おきの短いスパンで発現しているのも、それを裏付けてると思うね。聖杯、この究極の願望器は『繋がってはいけないところに繋がってしまった』んだよ。きっと、凄いことになるぜ。もう誰にも止められないだろうな。地獄の蓋はあき始めてる、おまけで僕一人くらいが黄泉還っちまうくらいの事くらい、なんだい?」 慎二は蛇のように首を伸ばして、士郎と目を合わせた。 「さぁて、と。この異常事態は『いったい誰のせい』なんだろうな、衛宮ぁ? まずは第四回に『魔術師殺し』の異名を取る戦闘機械、衛宮切嗣――お前の養父が聖杯を破壊させた。そして、第五回。あれあれ? 前回に続きトドメとばかりに再び聖杯をブッ壊したのは、いったい誰だったかなっ?」 「―――っ!」 じつにわざとらしい慎二の言葉が、鎖のように士郎の心に絡みつく。 酸素不足の魚のように口をパクパクさせる士郎を励ますように、ダイが短剣の切っ先を突きつけて声を張り上げた。 「説明になってないっ! 聖杯がいくらすごい力を持ってるからって、サーヴァントでもない人間が簡単に生き返ったりするもんか」 「そう……だよな」 あんがい理論的なところがあるダイの言葉に力を得て、士郎はマジマジと目の前の慎二を凝視した。 「そうくるか。まだ信じられないんだね、冷たいヤツだよ。じゃあ聞くが、お前は僕が死んだ瞬間を目撃して、死体も確認したのかい?」 「それは―――あとからイリヤに聞かされて」 新都のビルでの決戦。 壮絶な宝具の打ち合いとなったこの戦いは、『セイバー』が聖剣を抜くことによって勝利した。 魔力切れに力尽きるセイバーに駆け寄った士郎は、そのまま彼女と共にビルを脱出したのである。 慎二の葬儀。まだ火葬前なのに小さな箱に納められてしまった『慎二』を悲しそうに撫でる桜の姿が脳裏に去来した。 発見された慎二は肉片だったのだ。 「僕はね、ずっと復讐の機会を伺ってきたんだ。イリヤスフィールは、叩き潰した半死の僕を生死も確認せずに、石ころみたいにかえりみなかったよ。ライダーを失ってノコノコ帰ったら消されるのは目に見えてたからね。現場の偽装を済ませると、僕は冬木を出て潜伏し、泥水をすすり、ゴミを食っても傷を少しづつ治しながら生き抜いた。そりゃあ惨めなもんだったよ」 ……一応、筋は通っている。 しかし……。 慎二のたれ目から狂気がほとばしり、焼け付くようなのろいの言葉がはきだされる。 「衛宮! お前に僕の気持ちがわかるか! 名門魔術師の裔に生まれながら魔術回路を持たず、ずっと厭われながら生きてきた僕の気持ちが! 地獄のような日々だった。だから僕はお前に復讐する権利が――」 「……俺、母さんが殺されて、父さんは人間嫌いになって魔王軍の将軍になって、赤ん坊のとき船が難破して、漂着した島でモンスターの爺ちゃんに育てられたけど、別に復讐したいとか思わないよ」 「……同じく、幼いころ戦渦に巻き込まれて捨てられていたところを、地獄の騎士の骸骨の門番に拾われてモンスターたちの中で育てられた。師を親の敵だと誤解して、その後しばらく悪の道に走ったが、馬鹿なことをしたと思っている。復讐は、なにも生まん」 ………… 一瞬の白々とした沈黙の後、どこかから冷たい風が吹いた。 「殺せえっ! ヤツらを殺せえ!!」 ヒステリックに慎二が叫ぶと、士郎の前方に白色の爆発が生じた。 「くうっ、この逆ギレ。これだけ見ると、実に慎二っぽいっ――」 「シロウ!」 ダイが後ろから抱きつくように士郎の胴に丸っちい腕を回す。 「飛翔呪文(トベルーラ)!」 ダイの呪文(スペル)と共に、士郎を強烈な浮遊感が体を覆う。 背後に爆音を聞きながら、二人は空高く飛翔していた。 「ぐももももももももっ!」 景色が滝のように流れていく。 物凄い風圧が顔面を変形させるほど叩いて呼吸が困難になり、士郎は自分の胴に回されているダイの腕を叩いてギブギブとタップした。 「あっ! ゴメン、全力で飛んじゃった」 ダイが速度を手加減してくれたのか、風圧が緩んで士郎は一息をついた。 情けない話だが、一体何で出来てるんだと思わせるダイの世界の住人とは違って、そもそも人間の身体は空を高速で移動する構造にはなっていない。 「クソッ、あの慎二って奴はなんて嫌なヤツなんだっ。絶対友達いないぞ、アイツ」 「……ごめん。俺は慎二と友達だった」 「……ま、まぁそれはいいとして」 「わからない事が多すぎる、慎二のことは置いておいて、だ。あのヒュンケルって戦士なんだけど」 「……ごめん、シロウ」 「戦いたくないんだな? わかるよ。どうやら挑んでくる理由が、純粋に武人としての矜持ってのは嘘じゃないみたいだけど」 それだけにやっかいだな、と士郎は思った。 ―――ただ、戦いのみを求むる。 この手のタイプは強い。戦うモチベーションに代償の欲望が絡まないので、戦意が不純物のない鋼のように硬いのだ。 前回のランサーもそうしたタイプであった。 味方にすれば、これほど心強い者はいないのだろうけど…… 「……よし、決断が遅れるとズルズルと酷いことになりそうだ。ここは退こう」 「わかった、じゃあ家のほうに――」 ザクッ。 士郎を連れて飛び去ろうとするダイの体が、見えない壁にぶつかったように停止する。 中空にパッと血の花が咲いてバランスを崩し、視界が一転したかと思うと二人は墜落していた。 「チィィッ!」 スペルを唱える暇は無かった、士郎は常人なら墜落死間違いなしの高さから落下しながらもダイを抱え込んで庇おうとした。 二人が地面に叩きつけられる寸前、ダイの腕がするすると伸びて地面に短剣を突き刺し、落下の衝撃を腕だけで吸収する。 「クッ、ごめん。空に見えない何かが」 「いいよ、それよりっ!」 士郎があわてて少年の背中を確認すると、顔を思わず青くしてしまうほどの鋭利な傷口があいている。 「大丈夫、そんなに痛くないよ。……ってイテテテテテ」 「そうだよな、こういうスパッといったのって後からジワジワくるんだ」 「逃がさないよ……衛宮ぁ」 憎悪のこもった平べったい声。 慎二は芝居がかった動作で空を指差した。 「この学校の上空一面には、不可視の刃がビッシリと張り巡らせてある。上空から脱出するのは不可能になっているのさ」 ならば、校門から! 頭をめぐらすと、校門の前には完全武装のヒュンケルが仁王のごとき闘志をゆらめかせて立ち塞がっている。 「なにしろ『死んでた』時は暇だったからねぇ。お前を楽しませるための仕掛けはたっぷり用意してあるんだ。ま、じっくりと堪能してくれ」 背中を感電したときのような勢いで走る悪寒。 士郎は負傷したダイを抱え上げると脱兎のごとく駆け出した。 数歩も行かないうちに再び爆発が生じ、士郎はダイごと石ころのように吹き飛ばされた。 「っっ痛づぅうううううううううううううっ」 閃光と白煙に焼かれながらゴロゴロと地面を転がる。 士郎が頭を上げると、目の前には懐かしき学び舎があった。 「くっそう!!」 ―――こんな形で母校再訪問を果たしたくは無かった。 苦味のある感情と共に、士郎は施錠された正面玄関を蹴り破る。 慎二の高らかな嘲笑を背中に浴びながら、士郎は自分が罠に追い込まれる鼠になったような悪寒に襲われていた。 |
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