LIFE 10
2005.06.11
=ズル休み=

健一は滅多な事では体調を崩さない。
昔から育ち盛りの弟三人を抱え、忙しい両親に代わって家事をこなしていたから休む訳にもいかなかった。
実家を出た今でも暴れるばかりで料理の一つも出来ない拓斗のお陰で風邪も引いてられない。

「なあ、健一腹減った」
だが普段張り詰めているだけに、やる気の糸がプツリと切れる事もある。
そろそろ起きて食事の支度をしなくてはと思っていても身体が鉛のように重く起きあがる気力も湧かない。

「起きたくない……何もしたくない……」
ベッドを揺すって腹が減ったと訴える拓斗をチラリと睨み、静かにしてくれと頭まで布団を被る。

「どうした? 腹痛いのか? 怒ってんのか? なあ、健一っ!」
一瞬の間を置いて、いつもと違う健一の反応に驚いた拓斗の声が騒がしく響いた。
体調が悪い訳では無い、何か不満がある訳でも無い。
ただ、やる気が出ないだけだ。
一日放って置いてくれれば元に戻るからと拓斗を宥めて健一は目を閉じた。


いつの間にか眠っていたようで、構内から聞こえてくる昼のチャイムで目を覚ました。
目の前には心配そうに健一の顔を覗き込んだ拓斗がチョコレートを齧っている。
「起きたか? 腹減ってるだろ?」
拓斗が叱られた子供のような表情で食べかけのチョコレートを差し出す。
もう少しマシな物は無いのかと思ったが、さすがに腹が減って拓斗の差し出したチョコレートを齧った。

「どうしたんだよ? お前、赤ちゃんみたいだぞ」
チョコレートを食い尽くして指まで舐めると拓斗はくすぐったそうに笑う。
普段は甘えられる事が多い健一だが、無条件で子供扱いされるのも悪く無い。
そのまま拓斗の指に吸いついて舌を絡ませると、彼は照れたように健一の髪に触れ耳元でクスクスと笑う。

「こらっ、もう離せって……」
そう言って拓斗は指の代わりに唇を重ねて舌を入れてきた。
健一に刺激されて興奮しているのか、絡まる舌はいつもよりも熱い。

「やだ。したくない……」
ベッドに入ってきた拓斗が健一を抱き、指先が敏感な部分を刺激しようとすると健一は拓斗の唇を軽く噛んで止める。
煽られて昂揚している拓斗は一瞬だけ不満そうな顔を見せたが、仕方ないなと溜息をついてそのまま健一を抱き締めた。
「今日はホントにどうしたんだよ……」
拓斗の胸に顔を埋めてしがみ付くと困ったように拓斗が呟く。


「風呂に入りたい」
拓斗が用意したバターを塗っただけのトーストで腹が満たされると、汗をかいてベタついた身体が気になった。
話しかけても碌に返事もせず、思いついたようにポツリと漏らす健一に呆れたように溜息をつきながら拓斗は風呂場へ向かった。
一人じゃ入れない、明るいと嫌だ。子供のような我侭に文句も言わず、拓斗は健一の要求通りに働いた。

「痛っ……。そんな強く擦るなよ」
暗い風呂場の中、身体を洗う力が強過ぎると健一は不貞腐れた。
散々振りまわされて拓斗も嫌気が差したのか、よく見えないんだから仕方が無いだろうとタオルを投げつける。

「……っ……何だよっ……」
殴られるかと思ったら柔らかい感触に包まれた。
泡に包まれた拓斗の指が健一の肌の上を優しく撫でながら敏感な部分に向かって滑らせていく。

「これでいいんだろ? まったく文句ばっかり言いやがって……」
湿った空気、水の落ちる音。時間が止まったような空間の中に響く乱れた息遣い。
暗闇の中で感じる拓斗の指がやけにリアルだ。

「……っぁ………たくと……」
逃げ場を探して崩れ落ちる健一を受け止めた拓斗が今度は全身を使って泡を滑らせる。
唇を塞ぎ、持て余した指は健一の中に入り込もうと入り口を広げている。
「キレイに洗ってやるよ」
不敵に笑って唇を塞いだかと思うと、拓斗は健一の入口を広げながらも器用に硬く持ちあがったモノを包む。
「………ふっ……んっ……」
そんな気は無いと抵抗しながら拓斗の愛撫から逃れられない。
徐々に追い詰められる感覚に震えながら絶頂に向かって声を上げた。

「……やめろよ……っ……ぁ………ああっ……」
健一の限界を察したのか拓斗の指は動きを加速させて絡みついた。
拓斗もそろそろ中に入りたいのか、中を刺激する指は入口を広げるように動かしている。

「もう駄目なのか? だらしねぇな……ほら、出しちゃえよ」
普段とは立場が逆転したように余裕を見せる拓斗にしがみ付いて健一は最後の瞬間を迎えた。
泣いてるような、くすぐったいような声を上げて、快楽に包まれた青臭い液体を風呂場のタイルに向かって吐き出した。

「何だよ、まだ足り無いのかよ?」
余韻に喘ぐ健一の中を掻き回しながら、拓斗は返事を聞く前に硬く持ちあがったモノで入口を塞いだ。
声も出ない程に苦しくて首を振るだけの健一の腰を掴むと拓斗は満足するまで腰を振り続けた。

行為の後、身勝手に欲望を吐き出した拓斗を何度も叩いて怒った。
それでも拓斗は悪びれもせずに元気出たじゃんと逃げ回って笑う。
拓斗なりの乱暴な励ましだったのかと納得する訳も無く、健一は逃げ回る拓斗を追いかけて締め上げた。
もう二度と家事をサボって拓斗に甘えたりしないと心に誓いながら……。



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