個々の内容は他のページで書いているので、ここでは全体的なことを。
“傑作”といっても色々な基準があるだろうけど、とりあえず本ページでは、
ヒット作 | 売り上げランキングで上位に入っている作品 |
人気作 | 人気投票では上位常連、幅広い層から愛されている作品 |
傑作 | そこから先の劇的な発展が望めないぐらい完成度の高い作品 |
このように定義してみたい。
- ヒット作と人気作を分ける理由は、シリーズ最高ヒットのFF8やDQ7を見れば分かると思う。ヒット作=人気作とは限らない。
- 作品の人気をそのままゲームの評価にしないのは、作品の人気は時代によって変わってくるから。例えばDQ5。SFCの頃のDQ5はすこぶる評価が悪かったけど、現在ではDQ3と並ぶ人気作になっている。これはDQ5が変化したのではなく、アクティブなプレイヤーの世代交代が原因だろう。
- 傑作をこのように定義したのは、少なくともプレイしていて『こうすればもっと良くなる』と感じてしまうゲームは傑作とは言えないだろうと思うから。
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例えば、
- 初代スーパーマリオブラザーズはその時点でもうゲームとして完成してしまっている。ゲームの方向性を変えないでプレイ感触を劇的に発展させるのは殆ど不可能。新たな敵やアイテムやステージをどれだけ追加しても質的な変化は期待できない。こういうのは傑作といっていいのではないか。
- テトリスも傑作といってよい完成された作品。新手のブロック等を追加してもプレイ感触を劇的に発展するとは思えない。例えば連鎖の概念などを追加すれば新たな需要を生み出せるかもしれないが、それはもはや元のテトリスとは別のものだろう。
- 真女神転生3は個人的にはすごく好きだけど、まだまだ荒削りで雑。前半より後半のほうが簡単な戦闘バランスをどうにかする、会話システムを充実させる、説明書抜きでも千秋の変化をプレイヤーが理解できるようにする…etcとまだまだ劇的に成長する余地がある。“傑作”の呼称はそういった穴を解消した隙のない改良版か続編まで取っておきたい。
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DQやFFでいうと、DQ3、FF3〜5、FF7、FF10辺りは“傑作”の境
地に達していると思う。
筆者は
FF8は傑作ではないと考える。というのも、
- もっとアビリティやモンスターが増えればゲームが面白くなるな
- もっとキャラクターの感情がこちらに伝わるようにすれば話が分かり易くなるな
- もっと読み込み時間を短縮してバグを除けば良いゲームになるな
- もっとシステム周りのヒントを充実させたほうが幅広い層が楽しめる作品になるな
- もっとゲームバランスを練ってくれれば楽しくなるな
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まだまだ追加や改良を施す余
地がいっぱいあるからだ。
コミュニティをしっかり維持できる程度にファンがいる理由
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例えばFF9は、
- 戦闘のテンポアップとバランス調整が施されるともっと面白くなる
- サラマンダー、フライヤ、クイナ、スタイナーあたりにもう少しエピソードがあるともっと話が深まる
- ATEを充実させて見る見ないの選択をもっとプレイヤーに委ねるといい
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こういう“もっと良くなる余
地”がいっぱいあるという点で、あまり高い点数は付けられないのだけど、だからといってFF9が誰にも見向きされない駄作というわけではない。世の中にはFF9が好きな人はいるし、逆に“傑作”と呼ばれるゲームが好きになれない人もいる。結局のところ、
この2つは別物なのだろう。
FF8は、ある意味でFF9と似た境遇にいて、
- その方向を向いているRPGが実質その作品しかない
- そのRPGの独自の部分に面白さを感じても代用物がない
- だから発売から何年経っても、その独自の味わいが好きな人に今でも愛されている
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実際問題として、
FF8みたいな味わいは
FF8でしか味わえないし、FF9みたいな味わいはFF9でしか味わえない。それが発売から数年経った今でもコミュニティを維持できる程度にファンがいる理由になっている。DQ4〜7も同様だ(※)。
※たとえばDQ5はストーリー主導の内容なのにクライマックスで失速してしまう等まだまだ改善の余
地はいっぱい残されている。それでも、DQ6では
仲間モンスターが少なすぎ、DQ8では
仲間モンスターをメインで使えず、かといってDQMではストーリー性が薄すぎる…みたいに思う人にとっては、DQ5は今でも愛されている。
個人的には
FF8はとても好きなゲームだ。工夫の余
地がいっぱいあって工夫に対する御褒美もしっかり用意されているところがゲームとして楽しいし、シナリオも新鮮でよかった。
ただ、当然のことながら“個人的に好きなゲーム=客観的に優れたゲーム”とは限らない。
- 改良の余地がいっぱいあるFF8は客観的に見て“優れている”ゲームとはいえない
- でも個人的にはそういう欠点を踏まえてもなお好きだと言えるお気に入りのゲーム
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こんなところかな。
FF8の制作者の発売前のインタビューを見ると、
- FF7でグラフィック面で新しい境地を開いた
- さあ今度はシステムやシナリオでも新しい境地を開くぞ
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こういう強い意気込みが見え隠れする。
もともとFFシリーズは、
- 常に実験作
- 実験が受け入れられたら継続
- 駄目だったら1作限り
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結果として受け入れられたので、かえって注目されないけど、
ATB | RPGとしてもACTとしても中途半端すぎると叩かれる可能性があった |
アビリティ | ジョブ制ともどもキャラクターの個性をぶち壊してしまうと叩かれる可能性があった |
ポリゴン | 2Dのほうが良かった2Dに戻せと袋叩きにされる可能性があった |
どれも制作時点では結果の見えない博打。少しでも確実性を求めるなら上記のような変化はなかっただろう。たまたまFF3、4、5、7と成功が重なっていたけど、FF2のように一般に受け入れられなかった例やFF6のように際立った成功を収められなかった例もある。
一か八かの賭けはFFのアイデンティティと言えるようなものなので、その行為そのものを責めても意味がないだろう。
FF8の失敗はファンの望んでいないものを出したことだと言う意見が巷にあるが、それは違う。真の良作は何もないところにファンを作り出す。
FF4 | ・FF4が登場するまでFFにリアルタイム性の導入を望んでいるファンは皆無だった。 ・ATBはそれ自体の面白さでファンを生み出した。 |
FF7 | ・FF7が登場するまでFFのポリゴン化を望んでいるファンは皆無だった。 ・FF7はそれ自体の魅力でその後のポリゴン路線に対する支持者を生み出した。 |
FF8もまた、
- 真の良作なら「今まで興味なかった路線だけどFF8遊んで考えが変わったよ」等となるはず。
- プレイヤーの考えを変えるほどのインパクトと面白さを引き出せなかったことがFF8の敗因。
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簡単に表にしてみると、
(良作) ↑↓ その路線に興味ない人すら引き込む ↑↓ その路線が好きな人なら楽しめる ↑↓ その路線が好きな人でも楽しめない ↑↓ (駄作) |
←FF8はこの位置 |
従来からのファンの支持を期待できる保守的な作品ならばそれぐらいの位置でもいいのだけど、
FF8みたいに大作で新しい路線をやるときは、もう1つ上の
水準が要求される。
ここまでの要点をまとめると、
- シリーズ最高の売り上げを記録した大ヒット作。でも、まだまだ発展途上の部分がたくさんあるので傑作とは言いがたい。
- この路線に興味ない人の心を動かすほどの勢いはない。ただ、この路線が好きな人には今でも手放せない作品にはなっている。
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今の段階でも、好きな人には好きな作品として受け入れられているのだけど、もうちょっと作りこめば、もっと大勢の人に楽しんでもらえるゲームに仕上がったのではないかと思う。そういう意味で
FF8は勿体ない。惜しい。