DQのシステムがWizardryの強い影響を受けているというのは有名な話だ。
だが、Wizardryにあった、
こういったシステムがDQ1では削られているのが興味深い。
製作者のインタビューによると、DQ1はTVゲーム用RPGの第一号だったため、初めてRPGに触れるプレイヤーが混乱しないよう、敢えて複雑なシステムの搭載を避けたそうだ。
DQ1 | はじめてのRPGなので難しい要素を出来るだけ省いた |
DQ2 | パーティー制の導入 |
DQ3 | キャラメイク制&転職制の導入 |
DQ1〜3にはWizardryという手本があったため迷いのないストレートな進化を遂げることが出来た。しかし、DQ3でWizardryに並んでしまったため、DQ4以降はWizardryにはない面白さをプラスしなければならない。こうしてDQの試行錯誤の日々が始まることになる。
DQ4 | AI戦闘 |
DQ5 | モンスター仲間 |
DQ6 | 自由転職 |
要するに、
DQ3以前 | Wizardryの面白さをどこまで一般向けに分かり易くアレンジできるかの歴史 |
DQ4以降 | Wizardryにはない独自の面白さを表現しようという試行錯誤の歴史 |
DQというと見た目などの点から保守的なイメージがあるけど、まだまだ将来どう転ぶか分からない未知の可能性を秘めている。
特にDQ2〜3は容量との戦いが熾烈で、製作者のインタビューによると、
- DQ2は容量の都合で当初の予定の半分の規模になった(当初2Mの内容を1Mに)
- DQ3は容量の都合で当初の予定の半分の規模になった(当初4Mの内容を2Mに)
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だそうだ。
DQ2では、
- 階段が逃げるダンジョン(すごく面白そう…)
- 大王イカやサウロスロードなどのモンスター(この2体はそれぞれDQ3とDQ5で復活)
- イベントで挿入される予定だった一枚絵(FC版の説明書などで使われている)
- お祈りをする等のコマンド
- 愛の思い出のイベント(DQ3で復活)
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DQ3では、
- タイトル画面
- バラモス曲その他数曲(オルテガ曲も入れたかったけど容量が足りず入らなかったという話)
- タワーオブアイなどのモンスター
- 小さなメダルや死のオルゴールなどのアイテム
- マクロベータなどのモンスターグラフィック(もともとマクロベータには独自のグラフィックあり)
- ユニコンラットなどのモンスター名(容量の都合で「ユ」が使えなかったため一角ウサギに変更)
- 幾つかの街やダンジョン
- ノアニールの村のイベント(もともとはメインに絡む必須イベントだったらしい)
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こういった要素が削られていることが明らかになっている。公になっていない没ネタはもっとたくさんあっただろう。
少しコンピューターに詳しい人なら「容量が足りないなら圧縮したらどうだろう?」と思う人もいるかもしれないが、実はDQ2〜3には既に圧縮が施されている。
たとえばDQ2ではフィールドを圧縮して1/8ぐらいにしている。
- 圧縮の手法を簡単に説明すると「山山山山山山樹樹山山山山」という地形があった場合。
- そのままだと12マスのデータが必要だが、それを「山6樹2山4」といった形で表記する。
- この手法はシンプルだが広大な海のあるRPGのフィールドデータではかなり効果的。
- ファミコンの性能だともっと複雑な圧縮を採用すると処理速度的につらい予感。
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またダンジョンなんかは、少し遊べばすぐ分かるだろうけど、
- 2マス単位になっている。
- これで1マス単位でマップを構成しているときに比べて1/4に圧縮できる。
- 3マス単位にすれば1/9に圧縮できるけどそれはさすがにつらい。
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他にも、これは1作目からだが、
- モンスターの色違いなんかも容量節約には効果的
- 色違いを1体出せばモンスターのグラフィックに費やす容量が1/2
- 2体出せばモンスターのグラフィックに費やす容量が1/3…etc
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面白いところでは、
- DQ3ではタイトルロゴを削ったお陰で街を4〜5個分のデータを確保できた。
※これはよくよく考えると恐ろしい。だってタイトルロゴを削らなかったらアレフガルドの街が…(ry
- DQ3で勇者を女にしてもみんなが男扱い(個別に台詞を用意する容量がない)
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まあ、この辺は微々たるものだけどね。塵も積もれば山となる。
ちなみに、具体的にどれぐらい容量が切羽詰っていたかというと、
- コンピューターの容量の単位はバイト。
- Windowsでは全角文字1つで2バイト、半角文字1つで1バイト必要。
- DQ3は空き容量が数バイトしか残ってないらしい。DQ2は不明。
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台詞を1行追加することも色違いのモンスターを1匹追加することも難しい。…すごすぎ。
特にDQ3では容量との戦いが熾烈だったみたいだけど、それでもなお、
- アッサラームのぱふぱふやインチキ商人は削らないで残す
- 危ない水着やぬいぐるみは削らないで残す
- 遊び人の遊びは削らないで残す
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この辺に製作者のこだわりを感じる。