20年以上の歴史を持つRPGには色々な“お約束”がある。
こういった即死魔法もそのようなお約束の1つだろう。だが、“お約束”だからといって何の考えもなしに自分のRPGに要素を追加していくと、結果として無駄の塊になってしまう。即死魔法をゲーム中に登場させるなら即死魔法の出番を意識しながらデータを作っていくといい。
一般論として、
- 即死魔法は成功判定に失敗すると敵に何の被害も与えられない
- 確実性の観点からいうと物理攻撃や攻撃魔法のほうが使いやすい
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物理攻撃や攻撃魔法で十分に倒せるモンスターには即死魔法の出番は殆どない。
そのため、ゲーム中に即死魔法を登場させるならば、
- 物理攻撃や攻撃魔法よりも即死魔法で責めたほうが効率のよいモンスターを用意する
- 即死の判定に失敗してもそれなりのダメージを与えられるようにする
- 相性をはっきりさせる
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何らかの工夫を施すべきだ。
1番目の工夫の分かり易い例がDQ3のクラーゴンだ。
クラーゴン | ・HP450で3体同時に出現するうえに3回攻撃。 ・DQ3は最強呪文ギガデインすら200程度のダメージ。 ・まともに戦うとつらすぎる。 ・しかしザラキならば一撃で倒せる。 |
クラーゴン戦はザラキの見せ場。
2番目の工夫の分かり易い例はFF8のST攻撃Jデス。
ST攻撃Jデス | ・単体に物理攻撃+即死の追加効果。 ・もし即死しなくても通常攻撃分のダメージを与えられるので使い勝手がよい。 |
3番目の工夫で分かり易い例は女神転生のハマとムドだろう。
ハマ | アンデッド系に成功率が高い。 |
ムド | 天使系に成功率が高い。 |
DQの二フラムもこのカテゴリーだね。ドラゴンゾンビやソードイドはニフラムでさくっと倒したほうが楽。
基礎
例えば、DQ型のシステム(ダメージ値=攻撃力÷2-守備力÷4)で、
| HP | MP | 攻撃力 | 守備力 | 補足 |
勇者 | 260 | 100 | 250 | 150 | ベホマズン(消費30) |
戦士 | 300 | 0 | 250 | 100 | 賢者の石を所持 |
僧侶 | 230 | 150 | 150 | 100 | ベホマラー(消費15) |
魔法使い | 200 | 150 | 100 | 100 | メラゾーマ(消費20) バイキルト(消費10) ルカニ(消費3) ピオリム(消費4) |
このようなパーティーが、
- メラゾーマとルカニは効く
- 毎ターン全体に150ぐらいのダメージを与えてくる
- 凍てつく波動は使わない
- 戦士のみピオリム状態じゃないと先に行動できない
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このようなラストボスと戦うとする。
このラストボスはHPをどれぐらいに設定すれば、手に汗を握るバトルが期待できるか。
まず味方パーティーの回復に掛かるコストだが、
賢者の石 | 全体のHPを70〜80回復(DQ3仕様の場合) |
ベホマラー | 全体のHPを70〜80回復(DQ3仕様の場合) |
ベホマズン | 全体のHPを全快 |
僧侶のMPは150で、ベホマラーの消費は15なので、10回ほど使用できる。勇者のMPは100、ベホマズンの消費は30なので、3回ほど使用できる。
ラストボスの攻撃は全体150ダメージなので、賢者の石はベホマラーを併用しなければ回復が追いつかない。僧侶のMPが尽きたら勇者のベホマズンに回復を切り替えることで、10+3の合計13ターンはHPを回復しながら戦える。MPが尽きたら玉砕覚悟で全員攻撃するのであれば、計16ターンがパーティーのタイムリミットということになる。
続いて、相手に与えるダメージだが、
勇者の攻撃 | ルカニ+バイキルトで250ダメージ |
戦士の攻撃 | ルカニ+バイキルトで250ダメージ |
魔法使いの攻撃 | メラゾーマで180 |
ただし、メラゾーマはMPの都合で5発しか使えない(バイキルト3回とルカニとピオリムでMPを37失うため)。
このようなとき、各パーティーの最適な行動は、
| 勇者 | 戦士 | 僧侶 | 魔法使い | ダメージ | 総計 |
1 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | ルカニ | 125 | 125 |
2 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | 勇者にバイキルト | 250 | 375 |
3 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | メラゾーマ | 430 | 805 |
4 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | メラゾーマ | 430 | 1235 |
5 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | メラゾーマ | 430 | 1665 |
6 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | メラゾーマ | 430 | 2095 |
7 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | メラゾーマ | 430 | 2525 |
8 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | 戦士にバイキルト | 250 | 2775 |
9 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | 僧侶にバイキルト | 250 | 3025 |
10 | 攻撃 | 賢者の石 | ベホマラー | ピオリム | 250 | 3275 |
11 | ベホマズン | 攻撃 | 攻撃 | 攻撃 | 450 | 3725 |
12 | ベホマズン | 攻撃 | 攻撃 | 攻撃 | 450 | 4125 |
13 | ベホマズン | 攻撃 | 攻撃 | 攻撃 | 450 | 4625 |
14 | 攻撃 | 攻撃 | 攻撃 | 攻撃 | 450 | 5075 |
15 | 攻撃 | 攻撃 | 攻撃 | 攻撃 | 450 | 5525 |
16 | (死亡) | 攻撃 | (死亡) | (死亡) | 250 | 5775 |
17 | (全滅) |
理想的な行動をすれば5775ダメージ与えられるが、そこまで理想的な戦いかたが出来るプレイヤーばかりではない。また、会心の一撃という要素もある。その辺を考慮して、だいだい、ラストボスのHPを5000程度に設定すれば、死闘という言葉に相応しい戦いが味わえるだろう。幅広い層に遊んでもらうならHP4200ぐらいがベストか。
このように、オーソドックスなRPGで、ぎりぎりのゲームバランスを設定するのは、それほど難しいことではない。
MP回復アイテムの重み
では、もし仮に、上記のバトルに、MPを全回復するエルフの飲み薬(DQ5)を持ち込んだら、どうなるだろうか。
- エルフの飲み薬1つにつき10ターンほど耐久ターンが増加することになる。
- 会心の一撃がどんなに高確率で決まっても、エルフの薬1つに敵わない。
- エルフの飲み薬の所持数のみで勝負が決まってしまう。
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これは、FFのエリクサーにおいても同様のことが言える。
MP回復アイテムの数で勝負が決まってしまうという問題を解決するには幾つか方法がある。
- A、一定の強さを持たないパーティーではどんなに長期戦になっても倒せないようにする
- B、戦闘中に使用できるアイテムの数に制限を設ける
- C、安定した長期戦を挑めないよう、ラストボスの攻撃を激化させる
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Aは、DQ3やDQ5で主に使用されている。DQ3ではボスモンスターがターンごとに自動回復し、DQ5のラストボスは数ターンに1回のペースで瞑想を行う。どんなにMP回復アイテムを所持し、長期戦を挑める状態でも、こちらの攻撃が貧弱では倒せない。
Bで有名なのはロマサガ、サガフロンティアシリーズだ。これらの作品では、武器と回復アイテムを合わせて4つまでしか装備できない。装備していないものは戦闘中に使用できない。このようなシステムのもとでは、回復アイテムがたとえ1000個あっても、その全てを1戦闘の中で利用することはできないわけだ。このシステムには『歯応え』を維持し易いという利点がある。
Cは、例えば前述のバトル例に基づいて説明すれば、『ラストボスが1/5の確率で250ダメージの打撃を誰かに放つ』といった要素を追加するということだ。戦士と僧侶が協力してパーティーのHPを回復させているとき、ラストボスが打撃で僧侶を殺してしまうと、急にパーティーは不安定な状態になる。仮に、僧侶がザオリク、勇者がザオラルを取得しているのであれば、僧侶が死んだ次のターンに勇者がザオラルで僧侶を蘇らせ、次の次のターンで魔法使いが死亡(戦士の賢者の石だけでは回復が足りない)、次の次の次のターンで勇者がベホマズンを唱えている隙に僧侶がザオリクを唱えて魔法使いを蘇えらせるという作業が必要になる。
実際はa〜cの方法を組み合わせて使うことが多い。例えばDQ3ではA+B、ロマサガ2ではB+Cだ。
簡単に。
ぶっちゃけた話RPGの本質的な部分のプログラミングってアクションゲームなどに比べてずっと簡単。
といった部分を除けば、1日まっとうに教えてもらえば、小学生でも作れる程度(地味な作業が多いので完成する前に飽きちゃうかもしれないけどね)。