「誰かいませんかあー!!」
俺の声は倉庫内を反響して、俺の元に返って来た気がした。
くそーっ。
今日は休みだからな。誰も通らない確率は高いな…。
でも、今なら教頭がいないから逃げ出すチャンス。
このままここにいたら何をされるかわからない。
俺はもう一度叫んだ。
「誰かー!!倉庫を開けてくださーい!」
…。
しんとしたまま。
だめか、と溜息をついたら、突然明かりが差し込んできて、ぎーっとさびた金属音を立てて扉が開かれた。
…教頭が帰ってきたか?!
どきりとしてそちらを見ると、制服を着て鞄を肩にかけたうちの生徒が立っていた。
顔にはまだ幼さが残っているから、1年生だろうか。
「…先生、なにしてんの?縛られちゃって。」
きゃはっと笑って近付いてくるその顔には見覚えがあった。
1年の、問題児。トラブルメイカー杉野拓巳。
「SMプレイってやつ?先生にそんな趣味があったとはなぁー。」
「ば、馬鹿。俺は無関係なの!」
「縛られてんのに?」
「俺がやったんじゃない!はやくほどいてくれっ。」
「わかったよー仕方ないなぁ。」
杉野はそれ以上何も言わずに縄を解いてくれた。
太陽の光に浴びて健康的な肌とか匂いとか、きっと女子にモテるだろうなと思う。
「あーあ。先生、縄の跡がついてる。結構赤くなってるよ。」
「本当だ…まったく。」
「保健室行く?咲斗のアホに見てもらえば。」
咲斗のアホ?
ああ、二宮先生のことだ。彼と杉野は伯父と甥の関係だと聞いたことがある。
「そうしようか…。」
俺は頷いて立ち上がった。
そういえば杉野は、俺が誰にこうされたのとか深いことは聞いてこなかった。
彼は一緒に保健室までついてきてくれて、聞くチャンスはいくらでもあったのに。
将来、イイ男になるんじゃないかな。杉野くん。
fin.-8