何度も見渡して見るが、犯人らしき人物がわからない。
そうしている間にも、佐久間の呼吸はどんどん速くなっていった。
堪らず鞄で顔を隠して、電車が揺れた拍子にビクリと震えたのを見た。
「あ…っ。」
小さな声で、佐久間が鳴く。
俺はその声に欲情しそうになった。
ああ、俺ってば鈴木といい佐久間といい、どうして生徒に欲情したりするんだろう。
…まあ鈴木の場合はある意味別だがな。
「や…やめて…。センセ、助けて…っ。」
佐久間が顔を赤らめて、呼吸を殺し、震えながら俺の横に立っている。
時々ピクリと身体を震わせているのは、どこかイイところを触られているからだろうか。
俺はまともに動けずに、佐久間が痴漢に犯されているのに見とれていた。
俯いた睫毛が揺れて、潤んだ赤い唇が半分開いて熱い吐息を零す。
そのまま抱き寄せて、キスをして、服を剥ぎたい。
今佐久間のどこかを弄んでいる手の持ち主の前で、佐久間を我が物にしたい。
「あ…ん…っ」
今すぐ、その手をどけてくれ!
次は〜駅。〜駅。
車内に次の駅を告げる放送が流れて、はっとした。
佐久間は固く目を閉じて、扉に額を押し付けている。
ガタンと電車が揺れ、反対側のドアが開いた。
人の波が降りていき、車内に少しの余裕ができた。
佐久間は扉に背を向けて、大事なところを隠すように鞄を持つようにして体勢を変えた。
俺の方を見上げて、怒ったように言う。
「…先生、助けてよ。ぼーっと見てないでさっ。」
ぷぅっと頬を膨らませて、上がった呼吸を整える佐久間。
どうやら初めてというわけではなく、こういった痴漢には慣れているらしい。
「ごめんごめん…誰かわからなかったものだから。」
「もういいよっ。先生の馬鹿。」
どうやら少し、嫌われてしまったらしい。
その上喘ぐお前に見とれてたなんてばれたら、一生最低な教師として思い出に残ってしまう。
それだけは避けねば、と俺は決意を固めた。
fin.-22