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◇相田×鈴木(恋人同士)でどこかにお出かけ
先週、見合いをした。
相手方は小柄でちょっとぽっちゃりしていたけど、可愛らしい目をした人だった。
親が会うだけ会えと言うからその通りにしただけだったんだが、話しているうちに結婚も満更ではないのかもしれない、とそんなことを思ったら、胸がちくりと痛んだ。
あいつが泣くだろうか、と思った。
「せんせ!今日はどこ行く?」
日曜日、ニコニコした笑顔で鈴木が言った。
高校を卒業し、一年間の浪人生活を経て大学生になった今でも、かつての担任教師だった相田のことを鈴木秀人はセンセイと呼ぶ。
相変わらずの無邪気な笑顔ですり寄って来るのだ。
「どこ行く?どこ行く?買い物?博物館?」
「…どこでもいいよ。」
「えー。俺も先生と一緒なら。」
「…そういえば、今日、ヤクルト巨人戦やってるんじゃないか。」
相田は新聞を取り出してスポーツ欄を開いた。
寝起きの相田に比べて、外からやってきた鈴木は落ち着かないように地団駄を踏んだ。
「先生、早く着替えて!」
「えぇ?待てよ…夕方からでいいだろ。あ、ほら、野球やるよ。…デイゲームだ。」
「ほら!早く行かなきゃ始まっちゃう!!」
鈴木が嬉々として洋服箪笥を開け放った。
「ただでさえ先生、先週は実家に帰っちゃってて会えなかったんだから。今日くらい俺の相手してよっ。」
「電話してやってたろ。」
「違う!電話とデートとは違うっ!」
引き出しから取り出したズボンとポロシャツを投げ付けて、鈴木はヒステリックな声を出した。服に埋もれた相田にそのままタックル。
「ぬぁわ!?」
「先生!!エッチしよ!!」
「…またか…。やだ。」
「しよ!するったらする!」
「今度な。」
「この前も今度なって言ってたし!!」
「また今度っ!」
鈴木の体をペイッと剥がし、相田はパジャマを脱ぎ始めた。悲しそうな視線を感じる。
目の前でお着替え中の相田先生。裸の相田先生。丁寧に可愛がってあげると驚くほど敏感に反応を示す相田先生。…の体。
目の前にあるのに、お預け状態。
「………。」
「……………鈴木。」
「………え。はい?」
「そんな飢えた目で見るな。着替えは終わったぞ!!」
はっとすると部屋の入口で相田がジーパンに財布をしまってこちらを見ていた。
慌てて立ち上がる鈴木。
「行くよ。」
「はいっ!!」
相田は、飼っている犬を散歩に連れて行くような気分になった。
野球の試合は八回裏まで0対0の引き分けだった。
ホットドックやドリンクを買って大いに盛り上がった鈴木だったが、さり気なく気付いていた。
相田が時折ぼんやりと遠くを眺め、思い悩む素振りを見せていることに。
テンションの差はいつも通りだったけど、何かあったに違いない。
そんなことを思っていたら、二人の応援していたチームの四番がサヨナラホームランを打った。
わっと会場全体が盛り上がり、相田も興奮して立ち上がった。
「やった!!」
満面の笑顔に、鈴木も微笑み返したのだった。
野球観戦の後、太陽の出ている内は、買い物したりカフェに入ったりした。
パソコンを買いたいという鈴木に付き合って電器屋へも行った。鈴木曰く、大学生ともなると、パソコンは必需品なんだそうだ。
「すげぇ!先生!俺コレ欲しい!」
「こら、そっちはデジカメだろ?」
「写真取りたいの!先生の。」
相田はヒッと硬直した。
まぁた何か、イヤラシイことを考えているに違いない……
相田が黙っているので、鈴木はデジカメから目を離して相田を見た。
「それか先生、毎日そばにいてくれる?」
「……貯金して買いなさい。」
「絶対買う!バイトしよ。」
バイトなんてしなくても、お金なら自分の元にあるのに。相田はそう思ったが黙っていた。
そこに甘えないのが、鈴木のいいところだ。
「なんで、そんなに欲しいんだ?急に寂しくなったか。」
一応、聞いてみた。
担任を終えた時から、鈴木のわがままはできるだけ聞いてやっているつもりだ。
…肉体関係を除いて。
鈴木は邪気のない無垢な笑顔で、目を細めた。
「だって先生、そのうち俺のわがままは聞いてくれなくなるでしょ?」
「え…?」
心を見透かされたような気がした。
親に言われるがままに見合いをしたことを知っているのだろうか。
どうして?どうやって知った?
どこか後ろめたい気持ちがするのは何故だろう…?
鈴木は、すぐに「転勤しちゃったりするかも、って意味だよ」と付け足していたが、相田の耳には慌てて本当のところを誤魔化したように聞こえた。
…まったく。
馬鹿な奴……
相田が黙ったので、鈴木は遠慮がちに顔を覗きこんだ。
「先生…?」
相田が顔を上げる。まっすぐに鈴木を見た。
それに慌てて、頬を赤らめる鈴木。
「あっ、大丈夫?疲れてるみたい…それか、あれでしょ。」
「アレ?」
「あれ。明日の数学の授業の予習、またやってないんでしょ。」
「な゛。」
「だめだよ〜っまた計算ミスするよ!衝動的に宿題にするのだけはやめてあげて!生徒が可愛そう!」
勝手なことを言ってくれる。
まあ…予習してないのは事実ですけど!
そんなことはどうでもいい、と相田は思った。
先にデジカメ売り場から離れてパソコンの元に行く鈴木の背中を追って、相田は言った。
「秀人。」
呼ばれた本人は目を丸くして相田を見た。口も開いてる。
「せ…せんせ…今…」
「今日はホテルに泊まろうか。」
「…へ?」
鈴木の口はあいたまま。
見開いた目が点になった。
「先生…今、なんて?」
「聞こえなかった?ならいいや。帰って授業の予習しよう。」
「あああ!!待って待って待って!」
鈴木は派手にわめいてから相田の肩を掴み、今度は小声になって囁いた。
「せ、先生が抱いてくれるの?」
「……さあ、どうだろ。」
「いけずぅ。」
「…そんな単語どこで習ったんだ…」
「俺、先生に抱かれたい。セックスした〜い!」
「おいっ、大きい声を出すな……お預けにされたいのかっ?」
「………!!!」
鈴木が信じられないものを見るかのような顔をして絶句した。
…おいおい、それはオーバーリアクションってやつだ。
「夢じゃない。夢じゃないんだ!先生、先生…!!」
がばっと大きな手を広げて、鈴木は相田に抱きついた。
…おい。電気屋の中で男に堂々と欲情するんじゃありません!!
相田は鈴木の腕に力いっぱい抱き締められながら、今回の見合い話をどう断ろうか、そればかりを考えていた。
***
◇後書き
リクエストありがとうございました。
恋人同士の相田先生と秀人くん!!体の関係は相変わらずそうですけど、相田先生がちょっと寛容になったみたいです(笑)行け!押せ!がモットーだった秀人くんは大学生になって若干落ち着きました。先生にだけは甘えんぼさんなのは昔のままにしたかったです…無事にホテルまで行ければいいですね★(*^-^*)その後はムフフ♪でお楽しみを!
いかがでしたででしょうか?
これからもマイペース更新を続けるつもりの管理人ですが、
三年目もゆったりまったりなお付き合いをよろしくお願いします。m(_ _)m
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