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◇沖田くん、勘ちゃん、恭平くんで楽しく飲み会を
恭平の携帯電話が鳴った。
平日の昼間、窓を開けたままの部屋で昼寝を貪っていた恭平は、はっと目を開けて枕元に手を伸ばした。
「はい…はい、もしもし。」
『もしもし恭平くん?俺、田嶋だけど。』
「勘ちゃん?うん…どうしたの。」
『なんかさ〜、俺もさっき知ったんだけど、聞いた?雅人の話。』
「えー…何?また猫か犬が増えたの?」
『違うんだよ…野良猫がな、道路に飛び出して来たらしいんだよ。そんでそれを避けた瞬間にすっ転んだんだって、バイクで。』
「えっ?」
恭平は胸がぎゅっと締め付けられて止まるかと思い、勢いよく上体を起こした。
車やバイクで転ぶのは危険だ。そもそも恭平は車道を走る物全般が苦手である。
無意識に右足に手を添えて、携帯電話を握り直す。
言葉を探していると、勘太郎が付け足すように言った。
『足とか肘とか擦り剥いたらしくてさ、痛くて泣きそうだから見舞いに来いってうるさいんだよ。一緒に行ってくれない?』
勘太郎の口振りに、恭平は苦しい溜息をついた。
噂の沖田は、幸か不幸か元気だった。白い包帯やガーゼが目立つけれども。
「勘ちゃぁ〜〜ん!!恭平〜〜〜ッ!!」
インターフォンを押して入ってきた二人に片手を上げて喜ぶ。
始めに勘太郎が差し入れのビールを冷蔵庫に入れながら言った。
「元気そうで何より。」
「元気じゃないよ〜〜痛いよ〜〜」
「もう…お前らしい怪我の仕方だよ。猫の方は大丈夫だったのか?」
「うん。ほら、今恭平が抱っこしてる奴。」
『え?』
恭平と勘太郎は同時に驚いて、同じタイミングで注目の子猫を見た。
座り込んだ恭平の足下では、一度は佐久間家にやってきた二匹の猫がウロウロしている。
「沖田くん…そんな怪我までして、また拾って来たの?」
「拾うために怪我したんじゃないよ!結果的に拾っちゃったんだよ、付いて来るもんだから。」
「あ〜あ…」
恭平は腕の中の子猫を見た。
なんの罪もないと主張する大きな瞳で、子猫も恭平を見つめていた。
「にゃー」
鳴いたので離してやると、先の二匹の後を追いかけてよたよたと走り出した。
恭平は猫たちから目を離して部屋を見渡す。
「この部屋じゃ狭いよねぇ、三匹も…」
「そういえば、雅人が一番初めに拾ったのは、大きな犬だったなぁ。」
勘太郎が思い出したように言った。
「犬?」
「そうそう。大きくて…雨の日に迷子になってたんだよなぁ?」
「そうそう。」
ん?
沖田と勘太郎が一緒になって頷く横で、恭平が首を傾げる。
「あれから俺、やっぱ可愛そうな動物は見て見ぬ振りしちゃだめなんだなーって、思ったんだよ。」
「いくらなんでも怪我してるのは放っておけないよなぁ。足とかだとなおさらなぁ。」
ん??
「ちょっと…二人とも、誰のこと言ってるんだよ?」
「誰?」
「犬の話だよ。」
恭平は眉をしかめて交互に二人を見た。
沖田と勘太郎は楽しそうに笑って、恭平を見つめ返す。
「熱あって大変だったなぁ〜…」
「名前なんだっけ?あの犬の。」
「確か、キョ…」
「わーっ!!」
恭平は二人と出会った時の自分の話をされているのだと確信した。
「二人ともぉ〜〜!もう、その話はやめようよ!!」
真っ赤になって反抗したが、二人はしばらくクスクスと思い出し笑いをしていた。
その後、恭平が三人分の食料を調理し、出来上がった料理と三本の缶ビールを囲んだ。
「二人とも、もう二十歳越えてたっけ?」
「年のこと言い始めるなんて、恭平はもう若くないな。」
「は?若いよ!」
「じゃ、若者三人で、乾杯しようぜ!」
沖田が傷の痛みも忘れて缶ビールに右手を伸ばした。
それを目で追って、恭平がふと口を開いた。
「…手、大丈夫でよかったね。」
言われて初めて気付いたのか、勘太郎も沖田の手を見た。
腕も、指も、利き腕は傷一つなく綺麗なままであった。
すると沖田はニッコリ笑って、自慢するように答えた。
「全身全霊かけて庇ったから。」
いや〜、本能ってすごいね、と言って沖田は声を上げて笑った。
恭平も缶ビールを取り、一つは勘太郎に手渡した。誰が言い出すでもなく、自然に三人ともが缶を開ける。泡の弾ける音が部屋に響いた。
「じゃあ、子猫ちゃんの安全と、沖田くんの無事を祈って。」
乾杯!
三人は同時に、高々と缶を合わせた。
軽快で、平和な音と共に。
***
◇後書き
リクエストありがとうございました。
沖田くんは相変わらず、面倒見のいいお人よしさんでした(笑)猫も犬も人間も、弱ってるものは全部助けちゃう沖田くん。彼を理解してくれる、イイ彼女ができないかなぁ!!笑
ちなみに、沖田くんも勘ちゃんも22歳で、ハタチ越えてますv(*^3^*)/
これからもマイペース更新を続けるつもりの管理人ですが、
三年目もゆったりまったりなお付き合いをよろしくお願いします。m(_ _)m
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