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◇良平くんと聡平くんが仲良くおでかけ、杉野くんヤキモチ
「せぇーんぱい!杉野さ〜〜ん、開けて〜〜〜。」
ドンドンッとドアを叩いて、聡平は中の人間に呼びかけた。
杉野拓巳の家のベッドで眠っているだろう良平を起こすためだ。彼の朝は酷く機嫌が悪いことが多い。
しばらく待つと、眠気眼で寝癖を立てた家主がドアを開けてくれた。
「…んー…何…。休日からうっせー。」
「おはようございます。ところで良平は?」
「ええ?寝てるけど…」
杉野は迷惑そうに顔を歪めて、まあ入れや、と家の中に招き入れた。
室内は薄暗い。
休日といえども、すでに午前11時を回っているのにカーテンを閉め切った部屋は、どこか不健康に感じられた。
「昨日はお熱かったようで。」
「余計なこと言うな。」
杉野は余計に嫌な顔をして、洗面所の電気をつけた。
聡平は靴を脱ぎ、狭いキッチンを通って奥へと入った。
杉野のベッドの上で、さも当然のように良平が枕に頭をうずめて寝息をたてている。
聡平は一瞥して、勢いよくカーテンを開けた。
日の光がもろに顔にあたってもピクリとも反応しない。
とてつもなく深い眠りである。
「おいっ、良平、起きろ!コラ!」
わざと足で腹の辺りをグリグリと押してみるが、当の良平は寝言のように呻くばかりである。
杉野が洗面台から、タオルで濡れた顔を拭きながらやってきた。
「何なの?今日、良平なんかあるの。」
「俺と買い物行くって、約束なんですよ。」
「えぇ〜?買い物?…聞いてないよ。」
「そりゃ…お気の毒です。」
どうせ、良平が約束を忘れているだけだろう。現にこんな時間まで眠りこけている。
数分かかって、二人係で良平を覚醒させた。
彼は不機嫌そうにしていたが、聡平から約束のことを聞くと、態度を一変させて着替えだした。
脱ぐものは何もない。ベッドの上の彼は、正真正銘、裸だった。
良平が身支度を整えた頃には、杉野が恨みのこもった上目遣いで二人のことを睨んだ。
「…聞いてないしっ。良平ちゃん!!」
「ご、ごめんって…悪かった。つ〜か俺も忘れてたんだわ。」
「だと思ったよ。昨日、帰って来ねぇんだもん。」
「聡平も悪かったな。そういうわけだから杉野、今日は本当、ごめんっ!」
手の平を合わせて謝ってみる。
こんなことをしても杉野の機嫌が良くなるとは到底思えなかったが…
「…俺は〜?俺、今日これからマジ暇なんだけどぉ〜。」
やはり、良くならなかったようだ。時代遅れのギャル言葉を使って拗ねてみせている。
良平は困ったな、と頭を掻いた。
「勘弁してよ。な。昨日は付き合ってやったじゃん。」
「そのために付き合ったっていうの?!あんなに気持ち良い顔しといて、ヒドイ!!」
「あっ…いや、だからぁ〜…」
良平は聡平のことを気にしてあたふたと赤面した。
「埋め合わせは今度、絶対するから。頼むよ。」
「…。何しに行くの?」
杉野が演技をやめて顔を上げた。
良平は、聡平と顔を見合わせてはにかんだ。
「それは言えないけど。なっ、ごめん。」
なんで言えないんだよぉーーーー!?!
っていうか何、その、ハニカミーーーー!?!
杉野の悲痛な心の叫びも空しく、良平は杉野の肩をポンと軽く叩いて、聡平に声をかけた。
「行こうか。」
「うん。…先輩、ごめん。」
「てめーっ、聡平、恨み殺すっ!!」
「…。」
最後の一言で、どちらかというと同情的だった聡平にも額に青筋が走った。
「あ〜…良平と二人で出かけるのって、久しぶりだなっ。」
靴を履いている良平に向かって、背後にいる杉野にも聞こえるような声のボリュームで言う。
良平も顔を上げて、にやっと笑った。
「確かに。ここ数年、こっぱずかしくてやってなかったなぁ。」
「じゃ、杉野先輩、いってきまーす♪」
「夕方、帰ってくるからな。」
良平は確かめるように杉野に手を上げて、聡平と共に玄関を出て行った。
ぽつんと残されたは、この家の主、杉野拓巳。
「あれ、最後の、ぜってーわざと…だよな。」
チッと舌打ちをして、もぞもぞと這うように布団に入る。
「良平のにおい〜〜。」
独り言をつぶやいて、兄弟の仲の良さに嫉妬することを馬鹿馬鹿しいと思いながらも、やはり嫉妬してしまう自分に泣きべそをかいた。
***
◇後書き
リクエストありがとうございました。
嫉妬心むんむんの杉野先輩を書かせていただきました。前々から言ってあったらここまで悔しい想いをすることはなかったんじゃないかと思います。良平くんが悪いよ!後で、きっちり埋め合わせをしてあげて欲しいですv
これからもマイペース更新を続けるつもりの管理人ですが、
三年目もゆったりまったりなお付き合いをよろしくお願いします。m(_ _)m
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