◇恭平くん、聡平くん、明美ちゃん、杉野くんで良平くん談義


【お茶会議】



「はい。どうぞ。」

杉野、聡平、明美の順に、恭平から湯気の立った湯飲みが渡される。
1月の末、昼下がりの午後。窓の外は少し強めの風が吹いている。

「ありがとうございます〜。」
「兄さん、お茶菓子なかったっけ。」
「ああ…あるよ。ちょっと待って取ってくる。」
「ええ?明美さっきもなんか食べてたじゃん。そのままだと太るぞ。」
「うるさいわね。聡ちゃんも食べればいいのよ。」
「解決になってない…。」
「えーとね、おせんべいとチョコレートとどっちがいい?」
「せんべい。」
「おせんべいがいいです。」
「……。」
「明美は?」
「……どっちでも…」
「俺、チョコ食べる。」
「じゃあ明美も☆」
「兄貴〜。また甘やかす〜。絶対太るからな。」
「太らないもん!」
「はは。」

それぞれに茶菓子が配られる。
杉野、聡平はお煎餅、恭平と明美はチョコレート菓子。
恭平が着席すると同時に聡平が話し出す。

「さて、今日は何の集まりなの?」
「杉野くんがね、相談したいことあるんだって。」
「え?なんですか?」
「実は……」
「“男が好きなんです”?」
「え?!!明美ちゃん?!」
「明美……」
「それ、どこで。」
「明美ね、学校でそういう噂聞いたことあるんですよ。というか、杉野先輩はよく男の人から誤解されるって。」
「ご、誤解…?」
「はい。先輩優しいから。重い荷物持ってる人がいたら、男女問わず替わってあげたりするでしょう?」
「うーん、そりゃ、俺の方が大概背が高いしねえ。持ってあげなきゃ可哀想かなあって。」
「そういうのを見て、特に男の人が勘違いしちゃうらしいです。」
「へえ?あはは、なんかそれ、疑わしいなあ。冗談でしょ?」
「違いますって。例えば良ちゃんとか。」
「は?!?!」
「明美…っ……?」
「それ、いつから。」
「いつから…ってわかんないけど。良ちゃんって他人のこと信じてないじゃない。信じてるのは兄さんと聡ちゃんと、瑞樹くんと先輩だけだよ、明美の見たところ。」
「…そう?」
「うーん。…それは俺もそう思うかなあ…。友達は多いんだけど、っていうか良のこと友達と思ってくれてる奴はそれこそ腐るほどいるんだけどさ。主に男だが。」
「そう。良ちゃん自身が認めてる他人はそういない。兄さんもそう思うよね?」
「俺?…明美の言う通りかもねえ。俺はよくわからないよ、そういうことは。」
『兄貴(兄さん)友達いないもんね。』
「おいっ!それ俺に失礼だろ?!」

「…で、明美が思うのは、兄さんと聡ちゃんは兄弟だからいいとして。瑞樹くんは幼馴染みたいなものだからいいとして。…先輩ってすごいなあ、と。」
「そ、そう?」
「ですよ。言わば人間不信の良ちゃんが、なついてるんですよ。何回も家に連れてきたり、行ったりしてますよね?」
「まあね。」
「それは杉野先輩が優しいからだと思うんです。良ちゃんはそんな杉野先輩が好きなんですね。」
「はあ…。」
「好きって、明美。」
「あ、そこは普通に!最近話題のホモだとかゲイだとかって言ってるわけじゃないよ。」
「……。」
「……。」
「……。……それで?」
「つまり言いたいことはですね。話題のホモとかゲイだとかっていう人たちに先輩は好かれてるわけですよ。」
「おい、今この瞬間に理論が破綻したぞ。いいのか。」
「聡ちゃんは黙ってて。それでね、そういう人に告白されて、先輩も男の人が好きになっちゃったんですっていう悩みを、ここで暴露してくれるのかと。予想するんですけど。」
「……。」
「明美、」
「聡ちゃんは黙ってて。」
「…。」
「なるほどね〜。でももし杉野くんがそういう悩みを言ったとしたら、明美はどう答えるつもりなわけ?」
「…。」
「兄貴、ナイス発言。」
「恭平さん、ナイス切り返し!さすがです…!」
「明美?」
「明美なら……。良ちゃんを推します。」
「え?!?!」
「明っ…」
「なんで?」
「なんとなくです。」
「…なんとなく…?」
「なんとなくです。それに先輩を他の男に渡すくらいなら、うちの良ちゃんで手を打ってもらいます。」
「自分の妹ながら無茶苦茶言う女だなお前…。」

「…で、めでたく妹からお墨付きをいただいた杉野先輩、本当の悩みってなんですか。」
「嫌味か。でもマジにさ…微妙に言えなくなったんだけど…」
「えっ?それじゃあ本当に」
「明美、杉野くんが話せなくなるから少し黙ってなさい。」

「実はね、この前ちょっと仕事で凹んで、良平に会いに来たんですよ。恭平さん、あの時いましたよね?」
「いたいた。」
「そのときにですね…。良平が、」
「良平が?」
「良ちゃんが?」
「…メイド服を……着てたわけですよ。」
「あっ!!」
「な、何、聡ちゃん。」
「まじか〜!あいつ…っ。あれ俺のサークルの忘年会のネタで使うやつだったんですよ!使う前からシワ入ってもー、女子に怒られたし!」
「ごめん。」
「犯人はあいつか!」
「え、待ってよ。メイド服って女の子のだろ?なんで良平が着てるわけ?」
「…兄貴、相っ変わらずボケてんな。」
「えー?」
「それがわかんないから先輩の悩みになってるわけだろ?な、先輩?」
「うん、まあ、そんな感じ、かなあー…」
「え…まだ何かあるんすか。」
「や、何ってわけでもないけど…」
「良ちゃんのメイドってなんか可愛くないー。吐くー。」
「それがさ、妙に似合ってて可愛かったんだ。」
「え?!本当ですか、それ。」
「うん。なあ、聡平?」
「知らないっすよ。俺着てないし。」
「え、聡平が着るはずのネタ服だったんじゃないの?てっきり…」
「違いますよっ!着るわけないでしょ。」
「じゃあやっぱりなんで着たんだろ?」
「…シュミ…?」

しーーーーん


バターン!!!!


びくびくびくっ!
振り返る4人。
杉野の背後に胸の前で拳をゴキゴキ鳴らした良平が立っている。
恭平以外、顔面蒼白になる。

「り、」
「りょうへ…っ」
「良ちゃん…っ」
「おかえり、良平。」
「たぁだぁいぃまぁーー。楽しそうだねーーー。何の話ぃ?」

ゴキゴキ。バキ。

「や、あれだよ、」
「メイド服…むぐっ※△☆…」
「良には関係ない話だよ。」
「へえぇーー?兄貴、何の話してたの?」
「ん。あのね、良平が杉野くんを好きで、杉野くんもどうやら良平のこと可愛いって思ってるみたいだって話。」

『そうそう合ってる!絶妙な具合に的を射てる!』

バキッ。

「そうーー?そんな好きじゃないけどぉーー。」
「えっ?傷つく!」
「うっせ。黙れボケ。バカ杉野。」
「ねえ、良ちゃん。」
「なんだ。」
「メイド服を着たって本当?!」

しーーーーん


「ふっ。」
「(あ、キレた。)」
「すぅ〜〜ぎぃ〜〜のぉ〜〜く〜〜〜ん?」
「はい…っ?」
「ちょぉーっと、来てもらえるかなあー?」
「あ…」
「良ちゃん本当なの?写真撮ってないの?」
「ねぇよ!オラ杉野っ!早く来い!!」
「明美、写真見たい!」
「聡平に着てもらえ!!」
「え。」
「やだよ…。」

ズルズル。
良平に引きずられるようにして茫然自失の杉野拓巳・退場。
恭平、チョコレート菓子の袋をパリッと音をたてて開ける。

「このお茶、静岡産のちょっと高めのお茶なんだ。美味しいよ。」
「…。」
「…。」
「飲まないの?お菓子も食べないの?」
「食べるけど…」
「美味しいよ。」
「メイド服、なんで着たんだろ…?」
「普通に考えたらちょっと変態だな…。いやかなり変態だな。」
「可愛かったって杉野くんが思ったんだからいいじゃない。」
「ん?」
「あ、兄貴。」
「え?」
「ん??ちょっと待って。つまり杉野先輩の悩みって…」
「なんだろうね。」
「つまり良ちゃんのメイド服が可愛くて困ったんだけどどうしようって相談だったの?」
「…。」
「つまりやっぱり男の人を、しかも良ちゃんを、好きになったらどうしようって相談だったの?」
「…。」
「そうなの、兄さん?」
「うーん。」
「そうなの、聡ちゃん?」
「知らないよ…。」
「そうだったらどうしよう?!」
「明美。」
「はい。」
「メイド服みたいな可愛い格好を、他所でも良平がしてたらどうしよう、って悩みだったのかもしれないよ。」
「……。」
「杉野くんが見て可愛いんだから、他の変な人が見てもきっと可愛く見えるんだろう。」
「……明美はそうは思わないけど……。ちら。ねえ聡ちゃん。」
「俺を見るな。俺で想像するな。」
「どちらにせよ、良平が望まない相手に何か変なことをされたら杉野くんじゃなくたって心配するだろう。明美もするでしょ。」
「する。」
「そういう相談かもよ。だからその答えを見つけておいたらいいかもね。」
「そっか。先輩が帰ってきたら、教えてあげよう。」
「無事に帰って来れたらな…(ボソ)」



余計なコトばらすなボケが!ボコボコ。
シュミなわけねーだろーが!ゲシ、バキ、ゴスッ。

ごめ〜ん!
でもなんで着たの?やっぱり登山家だからなの?
あの時俺が来ること知ってたよな?


…、


あ、顔赤いよ?


…何も知らずにあの世へ行け!!ゴスゴスッ☆


暗転




***


◇後書き

リクエストありがとうございました。

台本調にしてみました(^v^;)良平くんの心境はある意味バレバレですが、明美ちゃんがいるために現場が混乱しています。聡平くんは薄々気付いていますが共感できない複雑な心境です。恭平くんはたぶん、共感してます(笑)喜んでくれるなら、まあ……と微妙な心境です(*^3^*)/vv

これからもマイペース更新を続けるつもりの管理人ですが、
四年目もゆったりまったりなお付き合いをよろしくお願いします。m(_ _)m


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