▼エロポイントで10題
└4.首筋
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沖縄に出張に出ていた孝平が、空港に到着するなり自宅に電話をかけてきた。
まだ昼間だったので、家には恭平が一人で留守番をしているはずだ。
何度目かのコールの後、受話器の上がる音がして予想通りの声が聞こえてきた。
『もしもし』
「恭平か。私だ。」
『父さん?お帰り、今どこ?』
「羽田だ。ところで悪いんだが、今すぐコートを持って迎えに来てくれ。こっちは寒くて敵わん。」
『えぇ?そう…わかった。行くよ。』
恭平は呆れたような声で応えてから、電話を切った。
孝平の横で立っていた竹本が、腕を擦りながらその様子を見ていた。
恭平が空港に到着し、孝平の姿を確認するなり言った。
「父さん!馬鹿だな、もう寒い季節なのは当たり前だろ!」
「怒るなよ。出発した日はそんなでもなかったんだ。」
恭平は孝平に持ってきたコートを渡して、その時初めて隣にいた竹本に気付いた。
「あ、あれ…竹本さんもいらっしゃったのですか。」
「ええ、いましたよ、初めから。」
竹本はいつものように目を細めて笑った。軽く肩をすぼめる。
恭平は竹本も父と同じくらい薄着なことに気付いた。
言ってくれればもう一着コートを持ってきたのに。
恭平は自分のしていたマフラーを外した。
「あの…ごめんなさい知らなくて。よかったら、これ。」
言って竹本の首にマフラーを巻きつける。
竹本が驚いて目を見開いた。
マフラーが外された恭平の首筋は、外気に触れて寒そうだった。
「いいですよ、耐えられます。」
「遠慮しないでください。俺にはコートがありますから。」
恭平は自分の着ている黒いコートを叩いて笑った。
フードについた黒い毛で隠れた下に、白い肌が覗いている。
竹本は、その首筋に目を奪われている孝平に気付いた。
途端にむっとして、恭平に撒いてもらったマフラーを外して恭平にかけなおす。
「あの…。」
「恭平くんに風邪をひかれては面目がたちません。どうぞ、お気になさらずに。」
「え…でも…。」
反論しようとする恭平から目を離して、孝平を見上げる。
孝平がその目線に応えて竹本を見つめ返した。
「それでは社長。また、明日。」
「ん。ああ。」
孝平の返事は短いものだったが、長年一緒に仕事をしてきた竹本にはそれで十分だった。
足早に去っていく竹本の背を、恭平がぽかんと見つめていたら、孝平が肩を叩いて言った。
「その寒そうな首筋をしまえ。…帰るぞ。」
振り向いた恭平が、静かに微笑んで頷いた。
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