▼衣装指定15題
└02:体操着
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高校の時、良平も杉野も大好きだったのは体育祭だった。
二人が同時に過ごした体育祭は1度しかなく、その時杉野は3年生、良平は1年生であった。
「体操着って、なんかそそるよな〜…。脚が丸見えだし。」
ぼんやりと窓の外を眺めながら言った杉野に、保健室の先生で彼の伯父である二宮咲斗が苦笑した。
「ついに拓巳でも受験勉強に疲れて現実逃避か。こわいねぇ〜。」
「逃避じゃなくて。本当に。俺、やばいかなぁ〜。」
「さあ。まあ俺も体操着は好きだよ。」
「……お前と一緒は嫌だ。」
「失礼な…。」
二宮はぼんやりとベッドの上から外を見やる甥っ子の目線を追った。
外では体育祭のために1年生が短距離走のタイムを計っているようだ。
どうして他クラスが授業をしている時間に杉野が保健室にいるかというと、腹痛を理由に授業から抜け出してきているからだった。
二宮の目には健康体にしか見えないので、どうせ仮病だろう。
「俺、受験受からんかもしれん。」
「は?なんで?」
「…受験よりも気になることができた。」
その目は依然と窓の外を見ていて。
二宮が窓に目線を戻した瞬間に、杉野がアッと大きな歓声を上げた。
「咲斗!今、見てた?すげぇダントツ速い!あいつ運動神経マジいいよ〜!」
「え、見てない。誰?」
「ほら、あそこ。今先生んとこ行って…タイム聞いてる。あ、ガッツポーズした。」
「あ。わかった。」
確かに教師のそばでピョンと跳ねた少年がいた。
中肉中背で。
これから成長しそうな気がした。
「…もしかして。気になることって、あの子のこと?」
二宮の問いに、杉野は恥ずかしそうに、むすっとした表情を向けた。
「あ〜そうなんだ、拓巳。もう高校では恋しないと思ってたけど。いいねぇ思春期。」
「…お前のそういう言い方が嫌いなんだっ!ジジむさい!」
「いいじゃん。名前は?あの子の。」
「言ったらお前、横取りするから嫌だ。」
「するわけないじゃん。さすがにそこまで年下には興味ないし。」
「嘘くせ。」
「マジだって。せめて相田先生くらいにまで成長してくれないとねぇ〜。」
「…相田先生が気の毒…。」
「ほら、いいから。言えっていうの、名前。なんなら使いたい時に保健室貸切りさせてやるから。」
「ド変態保健医め。」
「否定しない。で、誰なの、拓巳の心を奪っちゃった少年は。」
杉野は顔を赤らめて、言うのやだ、とひとしきり反抗してから、小さな声で呟いた。
「…佐久間、良平。」
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