▼衣装指定15題
└03:スーツ


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「あ…あ!」
誰もいない秘書室の片隅で、竹本の嬌声が響く。
部屋の電気は消されていたが、彼の机の上の電球は明かりを点していた。
机から離れた箇所に椅子がある。
「しゃ、社長…!」
竹本の腕が伸びて、自分の上にいる人の背中に当てた。
背広に皺が寄るのを恐れ、握らずに抱きしめる。
「あぁっ。」
強引に内部に侵入されて、竹本は全身を仰け反らせた。
自分だけが全て脱がされて、当の孝平はスーツを一切脱がないなんてことはよくあること。
竹本はそれでも彼が自分を抱いてくれるのならば、何も気にすることはなかった。
仕事能力は尊敬するに値して、セックスもこんなにうまい人物とは今後いくら待っても巡り合えないだろうと思う。
この年齢の割りに力強く、それでいて的確に自分を酔わせてくれるのは彼しかいないと信じている。
だから自分以外の人間が彼に酔わされているなどとは考えたくもなかった。

「社長…もっと…!あ、あぁ…!」
「欲張りだよ、竹本。」
「し、下の名前で呼んでください…。」
「…伸彦。」
「あぁぁぁ…ッ!」

孝平の圧力的な声の感じに、興奮する。
耳元で囁かれると、自分でも信じられないほどの情欲が掻き立てられる。
「く…う!」
孝平がギリギリまで抜いた。
竹本の脚を持って身体を反転させる。
竹本は苦しそうに肘をついて身体をささえ、自ら腰を動かして孝平を飲み込んだ。
「こら…もうちょっとおとなしくできないのかい。」
「だ、だって…社長は最近、あまり抱いてくださらないから…!」
「まあ、そうかもな。今日もあまり時間がない。一度きりだ。いいね。」
「は、はい…。あぁ…あ、はぁっ!」

孝平が抱いてくれないということは、自分以外にもこういう風に組み敷かれて、彼の意のままに喘がされている人物がいるということ。
それを考えると、竹本は毎回嫉妬で来る狂いそうになった。
「しゃちょう…社長!あぁっ。」
「なんだい。」
「前が…いいです。後ろからでは貴方の顔が見えない…。」
「そうだね。」
「アァッ!」
頷いたものの、孝平は後ろから揺さぶる体勢を変えなかった。

なぜか。

顔を見られたくないから?
後ろからの方が好きだから?
俺が嬉しくてスーツを握り締めると、消えない皺が残るから?

考えれば考えるほど、涙が出てきた。
いつかこの人を自分だけのものにできる日が来るのだろうか。
それはいつ?
竹本は孝平の名を叫びながら、長い時間我慢していた欲望を吐き出した。


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