▼衣装指定15題
└15:メイド


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良平にせがまれて、何年ぶりかのディズニーランドに行った。
高校のときに瑞樹やらなんやらと一緒に行ったことがあったが、それ以来杉野は行った事がなかった。

「ディズニーランドはさ、付き合って初めてのデートで行くと、そのカップルは破局するんだって。」
どこで聞いてきたのか、良平はそんな風に言っていたが、確か瑞樹とトーコは初デートでディズニーランドに来ていたはずだから、絶対に嘘だ。

休日に行ったからかランド内はえらい人ごみで、一つの乗り物に乗るのにやたら並ばなきゃならない。
「これは計画立てて行っても無駄だなー。良平、何に乗りたい。」
「んー、とりあえず、スピード系の制覇だな。」
「ほいきた。」

その日はとても晴れていて、太陽の下にずっといると汗が滲んだ。
午前中に乗り物系を乗り回した杉野と良平は、ポップコーンを購入して、木陰に座った。

「しかし混んでるなー。地球上にはどえらい数の人間がいるって実感するよ。」
「おっさんくせぇな。」
「否定しない。」
杉野はポップコーンを口に放り込んで、地図を広げた。

「次は何に乗りたい?」
「そうだな…。杉野は?」
「どっか…落ち着いたやつがいいな。お化け屋敷とかないの。」
「…お化け?」
良平が顔をしかめて一歩引いた。
ああ、そういえば、こいつ怖いのだめだったっけ。
杉野は意地悪そうにニヤリと笑って、わざとすぐに平然とした顔に戻した。

「ソフトホラーなやつ。ホラー好きの聡平に聞いてくるんだった。あいつ彼女と何回も来てるだろうし。」
「…。」
「良平、なんか知らない?」
「………。怖くない、っていうのなら、知ってる。」
「どれ?」
「…これ。」

良平が指したのは、地図ではなく、目の前に行列のできた建物。
あ、確かに、ホラーっぽい。
「幽霊の住むマンション。」
「ふーん…。じゃ、行こうか。」
「すっ、杉野!考え直さないか。…ミニーちゃんの家に行こう!」
「ミニーちゃんの家はまた後で行ってあげるから。ハイハイ、行くよー。」
「……!」

ああ、ニヤニヤが止まらないっ。
硬直して、見るもの聞くものに怯える良平が早く見たーい♪

あきらめきった顔で、列が進むごとに機嫌の悪くなる良平に少しは遠慮して、杉野が言った。
「んな、乗る前に怒んなよ。」
「べべ別に怒ってなんかねぇ。」
「…。あ、ねえねえ。」
「なんだよ!」
「だから怒るなって…。良平、ココでバイトしたいとか言った?」
「…言ってねぇ。ミニーちゃんになりたいとは言った。」
「ココでバイトしたらさあ、このマンション配属にしてもらったら。」

「嫌に決まってんだろ、ボケが!!」

マンションの入口に近くなるにつれて良平の声も大きくなり、震えてくる。
あ〜。
もう〜。
楽しみ倍増!

「ココのメイド服、ランド内で一番かわいいんだって。良平も着…」
「ぶっ殺すぞぉぉぉ〜〜!!」
「…し、静かに。」
「………!!」

涙目になって杉野を睨んだ良平は、館内のデモテープが流れ始めた次の瞬間、その不気味な声にかなり派手にびくついて、勢いよく腕にしがみついてきた。
杉野の方が驚いて、天井を見上げた。

「は、離れんなよ、杉野っ。」
「ハイハイ。」

杉野は暗がりでニッコリと笑って、良平の肩を優しく叩いた。


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