▼Under Title 15
└04:欲情


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孝平の弟の孝介は、兄の代わりにその子供たちの面倒をよくみてやっていた。
初めは兄に少し頼まれただけであったのに、しばらくしたら自分からも気にかけてやるようになっていた。
自分には子供がいなく、別に欲しいと思ったこともないのだが、本能的に世話をしてやろうと思っていたのかもしれない。
そんなときだ。

兄と、その長男との情事を垣間見た。
当時高校生だった長男の恭平は、彼の母親に似てよく体調を崩していた。
風邪を引いたというので、見舞いがてらさして連絡もせずに兄の家へ寄ったことがあった。
昼時だったと思う。
普段いるはずのない兄が、たまたま家にいたのだが、いつもの通り寝ているのだろうと思った。
仕事を終えると泥沼のように眠る人だったから。

そう思って無断で家に上がったが、恭平が寝ているはずの彼の部屋から、異様な息遣いが聞こえた。
まるで何かから逃げて走っている時のように速くて、時々甘い色香を含んだ吐息が混じっていた。

「あ…っ。」

耳を疑うほどの信じられない声が聞こえた。
何かを誘うような。
覗かずにはいられなかった。そこで見た光景は、今でも忘れられずに孝介の脳裏に焼きついている。

白く細い健康的な足が、兄の身体に絡んでいて、二人はもちろんのこと全裸だった。
兄の身体の下で、か弱そうな身体が大きく小さく、何度も揺れる。
腰の動きを中心として、興奮を抑えきれない動きをしている。
「いや、あ!あぁぁあぁ…っ!くぅ…はぁ…っ!!」
組み敷かれて身体を開いている人物が、一際大きな声をあげて仰け反る。
兄が彼に何か囁いたが、その言葉は聞こえなかった。
しかし、それを聞いた彼は尚更に大きな声をあげ、ベッドが軋むほど身体を揺らしていた。

ああ、なんて、熱いセックス。

今まで見たことのある中で、一番興奮したような気がする。
あの光景を想像しただけで、幾つもの夜を越えられた。
仰け反った身体が。締め付けた腰が。そして、あの甘く痺れる嬌声が。
頭から離れない。

あれが欲しい。

心からそう思った瞬間でもあった。
目の前に恭平の顔を前にした時、あの光景が脳裏をかすめ、彼の何気ない仕草一つ一つに欲情するようになった。
彼が欲しい。手に入れたい。
自分の下で、鳴かせたい。

酒の力を借りて、初めて彼の寝込みを襲おうと思った時は、あの部屋に行くまで決心がつかずにいた。
兄の物を横取りすることは、これからの生活になんらかの不利益をもたらすだろう。
そう考えていた。

だが。
彼が無防備にもすやすやと眠るその寝顔を見た瞬間に、理性が吹っ飛んでしまった。
あのベッドだった。
兄と恭平が、交わっているのを垣間見た初めてのベッドだった。
その上で彼が安らかに眠っているのかと思うと、いてもたってもいられなくなった。
想像しただけで、欲情する。

快楽に溺れるのは簡単だ。
あの時は、それでもいいと思っていた。
それだけの魔力があるような、そんな身体だったのは紛れもない事実。


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