▼Under Title 15
└12:愛撫
∴∵∴∵∴∵∴
「猫。拾ったんだけど。」
「…。」
ある日突然、そう言って恭平の家に現れたのは沖田雅人だった。
手には二匹の子猫が、ミィミィと鳴き声をあげている。
「なんで、うちに連れてきたんですか。」
「…どっちかでいいから飼って欲しくて。」
沖田はそう言って、申し訳なさそうに両手をかざした。
どちらも三毛猫で、ぱっと見ただけでは区別がつかない。
「そう言われても…。家族と、父さんにも聞いてみないと。」
「お前んち広いから、大丈夫だって!」
「うーん…。」
「頼むっ!なっ。」
そう言って恭平に二匹を押し付け、ぱっと手を離した。
「うわぁ!お、沖田さん…!」
「二日後に一応確認しに来るから!頼んだっ!」
しゅたっと二本の指を上げて恭平に合図し、沖田は反論を受け付けないスピードで玄関を出て行った。
呆然とする恭平の腕の中で、動きのつたない二匹の子猫が鳴きながら暴れている。
「ちょっとぉ…。」
頬を膨らませながら、恭平はその二匹を見下ろした。
ミルクをやって、暴れる二匹をとりあえず小さなダンボールに入れた。
一匹を取り出して、手の中で転がしてみる。
三色の毛がふわふわとしていて気持ちがいい。
鼻のあたりを指で掻いてやると、嫌がって顔を引き、前足で指を押さえようとしてくる。
「ふふ。」
恭平は楽しくなって、しばらくそいつと遊んでいた。
一匹目をダンボールへ戻して、今度は二匹目。
よく見ると毛の生え方が少し違うらしく、しかも一匹目はメスで二匹目はオスだった。
「捨てられちゃったの。かわいそうに。」
声をかけると、興味なさそうに顔を逸らされた。
両手で胴体をくすぐってやると、暴れて反抗してきた。
恭平のフード付きのトレーナーの中に逃げ込み、肌の上で爪を引っ掛けた。
「あいたぁ!このぉ…っ!」
夢中になって二匹の相手をしていると、その日に限って孝平が一番に帰ってきた。
二匹の猫と戯れる恭平を見て、言葉を失う。
「…何をやってる。」
「…沖田さんちの猫を、預かっちゃった…。」
一匹は右手に抱え、二匹目を左手で服から引っ張り出した恭平は、リビングで転がっていた。
服がめくれて、へそが丸見えだ。
孝平が呆れたようにふっと笑って、恭平の脇へしゃがみ込んだ。
引っかかれて少し血の滲んだ肌を指で拭うと、恭平が驚いてぎゅっと目を閉じた。
「ふふ。猫が三匹いる。」
「え…?」
「四匹目は、私かな。」
楽しそうに笑って、孝平は恭平の顔に近付いてその唇を奪った。
恭平の腕に抱えた子猫が押しつぶされて苦しそうにニャアと鳴く。
恭平のトレーナーの中に手を忍ばせて、指でその少し傷ついた肌をいつもの手つきでねっとりと愛撫した。
「あ…ふ…っ!」
ずれた唇の隙間から恭平の敏感な声が漏れる。
力の抜けた恭平の左手からオスの子猫が逃げ出し、気に入った恭平のトレーナーの中に潜り込んで邪魔な孝平の指を噛んだ。
「いっ!」
孝平が顔を歪めて恭平から離れる。
むすっとした顔で指を持ち上げると、噛み付いたままの子猫がブラーンとくっついてきた。
「…。」
「…ぷっ!」
恭平が堪えきれずに噴き出して、お腹を抱えて笑い出した。
「あははは…!」
「…笑いすぎだ、恭平。」
「あは、あはは。ごめん…痛かった?」
「痛いというか…なんだこいつらは。どうするんだ、飼うのか?」
指から子猫を引っぺがし恭平に返した孝平は、やる気が失せたのか恭平から離れ、ネクタイを解いた。
「ううん…返すよ。二日だけだって。」
「そうか。」
「飼ったら、また邪魔されちゃうもんね。」
「ふん。」
一言唸って自室に入っていった孝平と二匹の子猫を順番に見て、恭平は幸せそうに笑みをこぼした。
∵∴∵∴∵∴∵
(c)puyu. All Rights Reserved.