▼Under Title 15
└15:顔射
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「駄目ったら駄目!!絶対嫌だからなっ!!」
「やっぱり〜……。でっ、でもね、一回だけ…」
「ふざけんなっ!!!!」
さっきから、リビングの周りを良平と杉野先輩がウロウロしてる。
いつものように良平がプンプンと怒っているのだろうと思っていたら、なんだか様子が少し違う感じ。
杉野先輩がこんなに諦めずに良平にねだる姿はあまり見た事がない。
「だ〜〜〜っしつけぇな!!駄目ったら駄目だ!絶交する!!」
「えっ。」
「絶縁だ!!ソレと俺と、どっちか一つ選ぶんだな!」
「…どっちも選んだ結果だよ〜〜!」
「ふ・ざ・け・ん・なっ!!」
良平はかなり怒っているらしい。
双子の弟、俺、聡平はテレビを見ていたわけだけど、二人がこうもわめき散らしながらテレビの前や俺の後ろをウロウロするものだから、ちょっと気になってきた。
痴話喧嘩には口をはさまない方がいいっていうのはわかっているんだけど。
「おい、良平。何がだめなんだ?杉野先輩がこんなにお願いしてるんだから、少しくらい聞いてやれよ。」
「うるせぇ!駄目なもんは駄目だ!!絶対に嫌なもんは嫌なんだ!!」
「…だから何が?」
「…っ。」
何が、と聞くと良平は、さっきまでの勢いはどこへやら、顔を赤らめて黙り込んだ。
後ろで杉野先輩も赤くなって、慌てて助け舟を出す。
「あっ、いや聡平は気にしなくていいよ。俺らの問題だから…」
「そーだっ!てことで諦めろ杉野!!」
「えーっ!男の夢がっ。」
「馬鹿言え!こっちには男のメンツがかかってんだよっ!!」
「そこをなんとか…」
「なんともならんわボケ!!」
どうせくだらないことなんだろう。
男の夢とかメンツとかで張り合ってる時点で、なんとなく予想がつかなくもない。
良平と杉野先輩は、なんだかんだでソッチのアレが好きみたいだし。
何より、実はさっき部屋で漏れてた会話聞いてたんだよな。
「どーせ大したことないことなんでしょ。」
「うるせぇってば聡平!」
「うるせぇのは良平だろ!させてやれよ、顔○くらい。」
「………っ!!!!!!」
良平が俺の顔を信じられないものを見るような目つきで見てきた。
いや、そんなにじっと見つめても同じ顔は同じ顔だから。
「おっおっ…おまっ…本気で言ってんのか。」
「そうだけど。」
「…てめぇ…俺のこと売ったな!!それがどんだけ…どんだけ屈辱的か……っ」
「知らない。俺じゃないもん。」
久々の兄弟喧嘩に杉野先輩の方がオロオロしてる。
会話の内容から言って、兄貴と明美のいない時で良かったと心底思う。
良平はカッと頭に血が上ったら何をしでかすかわからない人物だけど、俺は知ってる。
兄貴と俺と、明美。
一番酷く荒れていた時でさえ、この三人には手を上げたことがないことを。
だから俺は、いつでも良平に強く物を言えたし、ヤバイことをやろうとしている時は身を挺してでも止める事ができた。
俺だけは、なんとしてでも止めてやる。
「…馬鹿野郎!!聡平なんて大嫌いだ!」
他人だったら殴られているかもしれないが、相手が俺だったからか、良平は悔しそうにそう言い放って二階へと駆け足で逃げていった。
たぶん、泣いてる気がする。
「…そ、聡平…。」
オロオロとした杉野先輩が、良平の背中と俺のことを交互に見ながら焦っていた。
俺は溜息をついて、テレビに視線を戻す。
でも、これだけは言っておかなければ。
「先輩。良平にそういうことしたら、俺が代わりに殴りますから。やめてくださいね。」
「……ハイ……。」
何度も頷いてから先輩は良平のことを追いかけて二階へ昇っていった。
こうでもしないと杉野先輩に勝てなかったこと、良平はわかっているのだろうか。
あいつの拒否の仕方はなんとなく甘いから、あのまま行ったらきっとされてただろうな。
俺は大きく嘆息して、下品な言葉を叫んだことを後悔していた。
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