▼リクエスト小説
└9位:父親と息子ならでは
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ねえ、父さん
覚えてますか。
俺が初めて、物につかまってだけど、立つことのできた日を。
ちょうど自分の身長くらいだった屑入れに掴まって、俺はしっかりと両足で立ちました。
反対側から屑入れを支えていた母さんが嬉しそうに歓声を上げて、書斎にいた貴方を呼びました。
貴方は今と同じように焦らず騒がずゆっくりと呼んだ母の方へ歩み寄ったのでしょうね。
俺は覚えています。
多分俺の中にある一番古い記憶だと思います。
恐らく無邪気に笑っていただろう俺を見て、父さんが堅い表情を崩して嬉しそうに笑ってくれたことを。
小さな俺の目線の高さまで屈みこんで、優しく髪を撫でてくれたことを。
確か俺はその拍子に屑入れから手を放してしまい、尻餅をついて座り込みました。
すると父さんは俺のことをその大きな手で持ち上げて、高く抱え上げましたよね。
隣で母さんが笑いながら俺が落ちないように手を翳しててくれていたのを覚えています。
ねえ、父さん
覚えてますか。
俺は父さんが喜んでくれたことが何より嬉しかったんです。
覚えてますか?
…お願いだから、忘れないで。
俺の全てを。
忘れないで。
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