▼やさしい恋・10題
└4.だから、怖い


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高校生の恭平が過労で倒れたあの日。
孝平は初めて家族を、恭平を、気遣うということの意味に気付かされた。
亡き妻が生涯に渡って孝平に伝えようとしていたこと。
忘れていたことを、思い出した。

それからというもの、恭平が熱を出したりして寝込むと孝平は少し緊張する。
仕事をしていても、食事をしていても、会議で発言している最中も。
何をしていても、恭平が今どうしているか、少しはよくなったか、気になるようになった。

正直なところ、愛に似てよく体調を崩す恭平に苛つくこともある。
仕事第一、それに健康体である孝平にとっては健康管理は基本中の基本である。
今でこそ少しは考え方が変わったが、もっと若い時はそう信じていた。
しかも愛は女で仕事もなかったが、恭平は男で一応仕事もあるのだから、なおさらだ。

そうは思っても、弱っている恭平を見ると今までに感じたことのないくらい、胸が締め付けられる思いがする。
「ごめんね…父さん。」
熱っぽい顔でそう謝られると、いたたまれなくなる。
自分にとって恭平はかけがえのない大切なもので、守ってやらなければならないと痛感する。
同じような状況で、愛にしてやれなかったことは山ほどある。
恭平、お前は……

「謝らなくていい。早く治しなさい。」

だから、怖い。
お前まで失いたくない。
良平も聡平も、明美だって、失いたくない。

できることならば、いつまでも自分の目の届くところにいて、守ってやりたいと切に願う。


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