▼やさしい恋・10題
└7.熱の行き場
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満月の夜だった。
父さんに黙って、一人で遊んだ日。
どうしても、我慢できなくなったんだ。
料理をしたり、テレビを見たり、家の外を散歩してみたり。
難しい本を引っ張り出して読んでみたりもしたけど、どうしても、心が鎮まらなかった。
父さんは相変わらず忙しそうにしていたし、弟たちはもう寝ていた。
したらいけないって言われてても、一度くらいはやってみたい。
自然な衝動だったと思う…よ。
「…ん…っ。」
小さく声が漏れた。
それだけで恥ずかしくて恥ずかしくて、溶けるかと思った。
でもなぜか、体は更に蕩けてきちゃう。
顔が、体が、芯から熱く感じるのは恥ずかしさの所為だけじゃない。
次第に呼吸が上がってきて、俺の脳内はスパーク寸前。
頭に浮かぶのは、情事での出来事。
俺を支配し、征服し、陵辱するのはもちろん…父さんしかいない。
「く、は…。あぁん…っ。」
予想外に色っぽい声が出てしまう。
体が中心からビクンと跳ねる。止められない。
部屋には俺の熱っぽい呼吸しか響いてなくて、俺は自分がどこで何をしているのかも思い出せなくなった。
父さん、父さん…
「父さん…っ!!」
うわっと感情が何もかもなくなったような衝撃の後、俺の手の中は暖かい液体で満たされた。
自分の体温をこんなに感じたことはなかった。
こんなに熱いものを俺は毎日溜め込んでいるのかと思うと、なんだか考えるだけでイケナイ気分になる。
「はぁ…はぁ…っ。」
俺の呼吸はしばらく止まらず、体の痙攣も治まらなかった。
父さんと体を交える前までは、イったら比較的すっと気分も冷めたのに。
何かが足りない。
渇望感にかられた。
「父さん…。」
俺はぽつりと呟いて、手の中で冷めて行く熱の行き場に想いを馳せた。
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