▼強気受けで10題
└4.愛を見せれば許すけど


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約束の時間に待ち合わせ場所へ先に現れるのは、ほとんどの場合良平の方。
杉野は遅れるわけではなく、決まってぴったりか、3分前くらいに現れる。
良平がそれよりも早いだけの話なのだが。

「…またか…。」

良平はまたもや先に着いてしまったことに肩を落とした。
まったく、あの男は遊ぼうと誘っておいた時に限って自分より早く来た試しがない。
一発がつんと言ってやらねば。

良平がそんな決意を固めているとは夢にも思わず、杉野はヘラヘラと笑顔で改札出口から現れた。
良平の姿を見つけるなり、嬉しそうに走りよってくる。
傍から見れば友達同士で相手を見つけた、というシチュエーションなのだろうが、良平の目には好きなものを見つけた犬っころが尻尾を振って走りよってくるように見える。

「おはよ、良平っ。」
「おす。…ってか遅い!」
「えっ?」
杉野は慌てて自分の腕時計を見て、それから駅の壁に掛けてあった時計を見上げた。

「…まだ4分前だよ。」
「俺より遅いっ!」
「えぇ〜?だって、良は何分にきたの?」
「2分前。」
「…あんま変わんないし。」
ぼそりと言った杉野がいけなかったのか、良平はうがっと大きな口を開けて怒鳴った。

「いつもいつも俺のほうが先じゃねぇかっ!ちょっとは根性見せやがれ!!」
「わぁ。うるさいよ、良平、近所迷惑。」
「知るかっ!」
相変わらずの短気っぷりに、杉野は頭をかいて苦笑した。
かといってこれ以上早く来る気はない、ある意味度胸のある男・杉野拓巳。

杉野はどうにか機嫌をとろうとあれこれ思考をめぐらしてみた。
「…良ちゃん、ジュース買ってあげようか。」
「いらんわボケ。子供かっ。」
「じゃ今度一本映画おごってあげる。」
「金じゃねぇっ!気持ちだ気持ち!!」
「確かに…。そいじゃ、ぎゅって抱きしめてあげようか。」
「公衆の面前で恥を晒す気はサラサラねぇ。」

「じゃあ。」

なかなか機嫌のよくならない良平に、杉野はついに強行突破に出た。
良平の腕をぐいっと引っ張り、人気のない、駅ビルの非常階段の方へ出た。
「いて…いてぇよ!放せ!」
「そんなに怒るなら、俺の気持ちを見せてやるよ。」
「はぁ?」
「キスさせて…今ここで。」

良平は不測の事態に、慌てて辺りを見渡した。
なるほど、確かに誰も通らなそうだ。
それを確認すると、みるみるうちに良平の頬が真っ赤に染まった。
悟られまいとむっと眉を寄せて、口を噤む。
しばらく考えて、良平は再び杉野の顔を見上げた。

「…そりゃな、愛を見せれば許すけど…あ。」

けど、それとこれとは別問題。

言おうと思った言葉は宙に出ることなく二人の間に消え去った。
…まあ、いいか…。
良平は杉野の柔らかい唇を感じて、静かに目を閉じた。


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