▼10万hits記念関連企画
└2位:杉×良で「無断外泊」
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ピーッとやかんから湯の沸いた音が鳴り響いた。
杉野は火を止めて、マグカップを二つ、手に取った。
食器棚に無造作に置かれたインスタントコーヒーに手を伸ばす。
良平は黙ってその光景を見ていた。
彼の背中がいつも以上に大きく見えるのはなぜだろう。
「俺は良平にはお前の好きなように、やりたいように、生きていったらいいと思ってる。」
「え…?」
「それが良平なんだ。俺の好きな良平は、まっすぐに前を見て、迷わずに進んでいく、そんな男。」
そりゃ、好き勝手やってるって自覚はあるけども。
そんなにまっすぐじゃないし、迷いだって毎日感じてる。
「だから許すも何も、俺にはお前の行動を制約するつもりなんてないんだよ。」
「でも怒ってるだろ。」
「怒ってない。」
「怒ってるよ!じゃあなんでこっち見ないんだよ!なんで言葉選んでんだよ!なんで…っ」
良平は杉野の腕を掴んだ。
咄嗟のことに杉野が振り向く。
その頬には一筋の涙が浮かんでいた。
良平が動きを止める。
「すぎ…杉野?」
彼の瞳から次から次へと涙が零れ落ちた。
良平にはどうやったらその涙が止まるのか、どうすれば止めることができるのか、わからなかった。
「言って…。言ってよ、良平。他の男なんて関係ない。関係ないんだよ…。」
「杉野。ごめん。杉野。」
良平は躊躇しながら涙を流す杉野の肩に触れた。
暖かい。
「泣くな。ごめん…言うから。聞いて。」
「え…?」
杉野が顔を上げた。
その隙に彼の懐へ飛び込んで、頬を引き寄せてキスをした。
重なる唇。
熱い涙。
杉野の膝がガクリと抜け、二人は台所の床に座り込んだ。
良平に襲われたのは初めてだ。
呆然としている間に、良平の唇は離れていった。
「り…」
「好きだ。大好きだよ。…拓巳。」
良平の顔は採れたての新鮮なトマトのように真っ赤だった。
照れ隠しかなんなのか。
良平は杉野の胸に顔を埋めるようにして杉野の体を抱きしめた。
良平の言葉が脳内を無限回往復する。
その意味をようやく理解して、顔が熱くなるのがわかった。
「り、良平っ。良平っ。」
「なんだよ…二度は言わねぇぞ!」
「今、たくみって言った。好きだよ拓巳、って言った?」
「うるせぇ!言ってねぇ!!」
良平は耳まで真っ赤に染めて、痛いくらい杉野のことを抱きしめた。
「良平、もっかい言って!」
「言わない!馬鹿杉野!」
「良平〜〜〜っ!!」
力なく落ち込んでいた姿はどこへやら。
杉野も負けないくらい、強く強く良平のことを抱きしめた。
++終わり
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