▼10万hits記念関連企画
└4位:杉×良で「幼児化良平」
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「おいっ、杉野。起ぉーきぃーろぉー。」
聞いたことないような高くて幼い声に、俺は目を開けた。
目の前にいたのは、俺の膝辺りまでしか背のない男の子だった。
前のポケットにRと書いたオーバーオールのポケットに、生意気に手なんか突っ込んじゃったりして。
キャップのついた帽子を反対に被って俺のことを見つめていた。
…誰?
「はあ?寝惚けてんの?俺だよっ。良平に決まってるじゃん!」
えええええーーっ?!
俺は飛び起きた。
なるほど、確かにその瞳や小馬鹿にしたような表情、そして何より泣きボクロ。
見れば見るほど良平なんだけど…
記憶にある良平よりもちょっと、いやだいぶと年下のような気がする。
気が付けば背景が真っ白だ。
ああ、そうかこれは夢か、と俺は妙に納得した。
「俺さ、おつかい頼まれてんの。シャーペンの芯とね、ガムとね、牛乳。」
んー?どっかで聞いたことある品物の数々のような気も…?
「一緒に買いに行こう。来るよな?」
いいよ、行こうじゃん。
俺は頷いた。
すると背景にさぁっと風が吹いたような気がして、はっと気付くと俺はコンビニの前に立っていた。
たぶん良平んちから駅に向かう途中にある、あのコンビニだろう。
良平はスタスタと中に入っていってしまったので、俺は慌てて後を追った。
良平はキョロキョロと店内を見渡して、小さくてぷっくりとした体でトテトテと文房具のある棚の前まで歩いていった。
シャーペンの芯は上から2段目の高さにあって、彼の今の身長では届きそうにない。
俺は手を伸ばして取ってやろうとした。
すると良平が言う。
「馬鹿。俺が取るんだ。」
えっ?でも、お前届かないじゃないか。
「抱っこして。抱っこ。」
ええええーーっ?!
う、嬉しい。
俺はジーンと感動を噛み締めて、ホロリと涙を拭った。
「馬鹿じゃねぇの。早くしろ早くっ。」
口の悪さは相変わらずのミニチュア良平くん。
俺は彼の小さな体を抱えるようにして抱き上げた。
シャーペンの芯の高さまで屈むと、彼は手を伸ばしてそれを取った。
「次はガム。そっちそっち。」
良平は俺に抱っこされたまま、今度はお菓子売り場の方を指した。
俺は子供の良平の柔らかさに感動しながら彼の言うままに歩き出した。
ガムは抱えられた良平の高さと同じような位置にあった。
手を伸ばしてひょいとブルーベリーガムを取り上げる。
「明美はこれが好きなんだよ。」
ああ、明美ちゃんのなのね。
「そ。あとは牛乳。これは兄貴に頼まれてんの。」
俺は良平に言われる前に、飲料ショーケースの前までやってきた。
良平を片方の腕で抱いたまま、もう片方の手でその牛乳を手に取った。
これでいいの?
「うん。…お前、なんだか力持ちだな。」
それは良平が軽いからだよ。
俺は良平を抱き上げたままレジに並んだ。
お金は持っているのだろうかと思ったところで、いつの間にか良平が手に財布を持っていた。
中には千円札が覗いている。
買い物が終わり、俺たちはコンビニの外へ出た。
「もういいよ。ありがと。下ろせ。」
やだ。
「おい?!下ろせよ!」
やーだっ。良平ちゃんをこんな風に抱っこできる機会なんてそうそうないもん〜!
柔らか〜〜いほっぺた〜〜〜
「おいっ、てめ…こらっ!離せよ〜っ!」
あーっ、暴れたら落ちちゃうだろ!
大事な大事な良平を落とすわけにはいかない。
俺は一生懸命しがみついて、彼を落とさないよう踏ん張った。
やがて暴れるのをやめて、良平は俺の首筋に抱きついてきた。
フワフワの感触に、思わずドキリと胸が高鳴る。
良平の頬に唇を寄せようとした時に、彼はポツリと言った。
「お前…いいお父さんになれるよ。」
…お、お父さん…って……?…ちょっとショッキング…。
「抱っこ上手だね。気持ちいい。」
えーーーっ。マジ?マジ??ソレかなり嬉しいんですけどっっ☆
「杉野っ!」
「え…?」
「杉野っ!馬鹿杉野っ!てめぇ…起きろ!今すぐ起きろ!暑い!!」
「暑い…?」
「こんっの暑い中しがみつくなっ!離せよ〜っ!!」
いつの間にか良平の声はいつもと同じ響きのいいテノールになっていて。
俺は再び目を開けた。
あ、あれ…?
目の前には怒りの形相の良平がいて、俺は、なんとベッドの上で布団ごと良平のこと抱きしめてた。
良平の眉間に皺が寄っていて、笑顔がヒクヒクと引きつっている。
…これはかなり危険だ。
「あ…あはは。良平くん、おはよう。」
「……ッッ!!おはよう、じゃねぇーーーーっっ!!」
ドカッといい音を立てて。
見事に蹴り飛ばされたのは言うまでもない。
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