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└6位:孝×恭で「孝平以外との関係」


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自分が何をしたいのか、これからどうすればいいのかわからない時に、あいつに出会った。
佐久間恭平。
彼は誰にでも好かれそうな優しい雰囲気を醸し出しながら、どこか回りから距離をおいた場所から涼しげな顔をして眺めているイメージがあった。
学科が同じこともあり、よく大学生協の学食で一緒に昼飯を食べたりした。
俺は聞かれてもいないことをスラスラと喋っていたから、きっと聞き上手なのだろう。
それとも俺が舞い上がっていただけか。
あいつの笑顔を見ていると、俺まで嬉しくなってしまうんだ。
惹きつけられるような不思議な魅力が彼にはあった。

また、爽やかな顔をして実は女たらし、というのが密かな噂として出回っていた。
付き合う女とことごとくうまくいかず、何が悪いのか、三か月ほどで彼の方から別れを告げてくるらしい。
俺が知っている中でも数人、あいつに振られたって泣いてた女がいる。
別れた後でも友達を続けているのは美咲くらいのものだろう。
彼女は何かを知っているみたいだった。

俺があいつの性癖について知ったのは、彼が何人目かの彼女と別れた直後だった。
突然俺の住む寮へとやってきて、泣き付いてきたのだ。
何があったのか、何を言われたのか、事態はまったく飲み込めなかったが、俺は彼をしっかりと抱き留めていた。
むしろ彼が俺を頼ってくれたことが何よりも嬉しかったのだ。
その気持ちだけが真実。
彼が男だとか、自分も男だとか、そんなことは一切関係なかった。
疑いようのない気持ちだったんだ。

だから、その日俺はあいつを抱いた。

あいつはキスがうまかった。
何度重ねてもスルリと逃げて、たまに思わせぶりな素振りを見せては驚くほど積極的に応えてきたりする。
身体の細部は今まで抱いてきた女の誰よりも敏感で、喘ぐ鳴き声は最高の興奮剤となって耳に残った。

受け止めるのも慣れていたのだろう、俺は初めてなのにすんなりと一つになって、我を忘れた。
抱き合いながら、彼の反応を見て、きっとこれが原因で女と長く続かないのだろうと悟った。
かわいそうな奴。
でも、そんなあいつを極上に綺麗でカワイイと思ってしまった自分も、充分あいつと同等だ。

俺はあいつと付き合う内に、どんどんあいつにのめり込んでいった。
彼の心に興味があった。
どう感じ、何を思い、そして誰を想うのか。
彼の人生そのものを知りたいと思った。


俺はそれがあって学科を転じ、今は心理学を専攻してる。
大学を受け直して精神科医にもなろうかと思ったが生憎そんな賢い頭は持ち合わせていないから。

あいつは順調に大学を卒業して、笑顔で俺の前から去っていった。
それはそれでいいと思う。
不思議と独占欲のようなものはなくて、身体を合わせたのもあの時一度だけだったから。

でも…
時々、ふと写真を取り出しては、ぼんやりと思い出すことがある。
あいつは今どうしているのか。
困って泣いてはいないだろうか。
もしまた俺のことを頼ってきてくれるのならば、今度はあの時とは違った関係を築きたいと思う。

刻み込まれた一夜の夢。
お前の笑顔をいつもすぐ近くで見ていたいと言おう。


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