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└06:なにげない仕草
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今の時刻、12:39。
社会人の杉野が昼休みを取りに、いつものカフェに座ってる。
ガラス越しにしばらく観察。
メニュー表をじっくり睨んで今日食べるものを考える。
サンドウィッチかカツカレーか、うーんスパゲティもいいな。
喉がかわいてるのか店員が運んで来た水を半分くらい一気飲み。
またメニュー表を睨んで……あ、飲み物なんにしよ。やっぱコーヒーだろ。あのページはコーヒーかワインしか書いてないからな。
さて、店員を……の前に時計をチェック。
今の時間…12:42。
キョロキョロ回りを見渡して……ぅわっ、やべ、目が合っちゃう!
しかしあの顔は「良平遅いなぁ〜」って顔だ。年がら年中、良平〜、だ。俺はお前のペットじゃねぇぞ!!
…おっと、いけね。
さて今の杉野くん、かわいい店員に笑顔で注文頼んでる。口の動きから……ラ・ン・チて・い・しょ・く……コ・ー・ヒ・ー。
なんだ、結局定食かよ。俺の分のオレンジジュース、頼めよ。頼め。頼めっ……
あ。頼んだ。
すげ……
ん、どーでもいいけどあの店員なんか媚びるような笑い方するじゃん………うざっ。うざっ。ほほ笑み返した杉野もついでに、ウザッ!
…はっ。ついつい攻撃的な台詞を。
店員が去ってから、しばらくボンヤリ杉野くん。
右手で左肩をトントンと叩いて、次に反対の手で右肩を叩いて、首をグリンと回してストレッチ。
あー今日も帰りは遅いのかな、はあ。溜め息ついて、尻のポケットから携帯を取り出す。
最近機種を変えたばかりの携帯、操作はちゃんとできてるだろうか。
…お、お。意外と早い手捌き。
ちくしょう、何をやってるんだ。メールか?電話か?スケジュール表か?
気になるな…
あ、さっきの店員が来た。笑顔で水をついでく。
携帯画面から目を離して杉野も愛想よく会釈した。
ちっ…おいっ水はもう飲むな。水太りするぞ!水ぼうそうになるぞ!
…あ、飲みやがった。
…もう、店員どっか行けよぉ。
杉野はまた携帯を見た。
左手でカチカチ打ちながら、右手で頬杖をついて面白くなさそうな顔。
誰とのメールかな…何か困ったことあったのかな?
あ、ランチ来た。
おお〜っ、なんかよくわからんがすげぇボリューム。
ぎゃはは!杉野、目ん玉丸くしてる!ウケる!
キュルル〜
あ…お腹鳴った。
今の時間は…12:50。あれれいつの間にこんな時間に。
杉野は携帯を閉じて箸を取り、袋を開けてパチンと割った。
手を揃えて、いただきます……
オイッ?先食うのかよ!!
マジかよ裏切り者ォ!!
ブーッブーッブーッ
うっひゃあ!携帯が鳴ったぁ!?
もぉっこんな時に誰だよっ…
パカッと開けて、中を見る。
あ、杉野からだ……
なんだよ、相手は俺かよ。
どうせ今どことか早く来いとかどうしたの?とかそんな内容だろ……
さて中身は、と。
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**/** 12:51
Title : 良平へ
From_: 杉野拓巳
そこで何してるの?
先食べちゃうよ。いただきまーす(^O^)
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すっ……
杉野ぉぉぉぉぉぉ!!!!!
待て!おい待て!食うな!食うなよっ先食ったら殺すぞマジで!!
俺は急いで店内に駆け込んで、杉野の座る奥の席へ駆け込んだ。
一気に血圧の上がった俺に、杉野はきょとーんと平然な顔をして、もぐもぐと口を動かした。
食った!先に食ったよコイツ!!マジ許さん!!!
杉野は箸を右手の指先で器用に開いたり閉じたりして、ニッコリ笑った。
「おはよ、良平。」
いつもの挨拶。
不思議とすごく癒される。
水の飲み好きもわざとらしいメールも先に食い始めたことも、許してやるって気になる。
ふん、まあいいさ。
俺は杉野の向かい側に腰を下ろし、メニュー表も見ずに、あのかわいい店員に手を上げた。
追記:
…その後、
「遅かったじゃん、あそこで何してたの?」
とわざとらしく聞かれた。俺がキレたのは言うまでもない…。
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