あけおめことよろいつものやつ



 大晦日は夕方から酒を飲み、寿司を食い、酒を飲み、ローストビーフを食い、酒を飲み、ピザを食い、から揚げを食い、酒を飲み、酒を飲み……。
 テレビから聞こえるカウントダウンのバカ騒ぎに乗じて酒を飲み続けたのは覚えている。宴がいつまで続いたのか記憶にないが、確か少し眠たくなって目を瞑ったのは覚えている。
 そのせいなのか。
 何故か上半身裸で両乳首に洗濯ばさみが噛んでいる。何時間そんなことになっていたのか分からないが一瞬痛みもない。身じろぐとジンとした痛みが走る。
 両手は後ろにまとめられ自由もなく、ああこんなことをするのは一人しかいないなとすぐに分かる。
 温情なのかストーブは俺に向けられ肩に毛布が掛けられている。しかしそんな温情を与えるくらいなら服を着せてほしいしなにより今、おまえが寝ている俺のベッドの中で寝かせておいてほしかった、という話だ。
「おい、起きろ」
 両手に自由がないため乳首に洗濯ばさみをつけたまま町田に声をかける。だが町田は頭まで布団を被り聞こえている様子はない。
「おい! おーい!」
 膝でベッドに乗り上がると安いベッドはギシッ、と嫌な音を立てた。
「うーん……」
「起きろって」
 町田が寝返りを打つと布団が俺の足に掛かる。ヤバイ温かい。俺の布団優秀すぎる。冷えた足を伸ばして布団の中に入れると町田の温まった脚に触れたのか急な温度変化に町田の足が縮こまる。
 いくらストーブを向けられてたとはいえ身体は冷えていたのだろう。どうせ起きないならそのまま寝ているといい。男と添い寝する気はさらさらないが人間湯たんぽとしての価値は認めてやろう。乳首の洗濯ばさみは気になるが町田に背を向けて寝れば痛いこともないだろう。脚だけでもぞもぞと布団に入っていく。
「んっ、……なに?」
「はっ?」
「えっ!」
 急に目覚めた町田が布団から顔を出した瞬間パツン、と軽い音がした。音以上の衝撃が右乳首に走った。瞬間涙が浮かんだ。悲鳴すら出る間がなかった。
「バカがっ! バカっ、痛ぇ……」
「あ? ああ、忘れてた」
 なにがだよ。洗濯ばさみか。忘れんなよ。自分の名前を忘れても俺の乳首のことは忘れんなよ。バカじゃねぇの。
「なにしてくれてんだよバカがっ!」
「だって川井寝ちゃうんだもんつまんなくて」
 つまんないからといって他人の乳首に洗濯ばさみを噛ませるバカがいるか。いるのか。こいつか。
「ふざけんなよ。痛ぇ」
「ほんとだ、赤くなってる」
 よくよく見れば薄ら血も滲んでいるじゃないか。こんなバカなことで正月早々乳首から血を流すのかよ。
「腫れてるね」
「誰のせいだよ」
 もういいから早々に両手の拘束を外し、左乳首に噛んだままの洗濯ばさみを外せと言いたい。言いたいが言う間もなく町田の顔が乳首に迫ってくる。
「なっ、舐めるな!」
 痛みに麻痺した乳首がねっとりとした舌に慰められる。快感というよりも痛みが和らぐような気がして腹は立たないがしかし町田に乳首を弄ばれっぱなしという現実に腹が立つ。
「指の方がいい?」
「痛っ!」
 わざとなのか思い切りつねってくる。痛いに決まってんだろ、そんなの。
「どっち?」
「舐めて……」
 言わされた感満載に言うと町田はふふっ、と含み笑いをする。
「まだ酔ってる?」
「酔ってる」
 当たり前だろ。どんだけ飲んだと思ってんだよ。
「こっちは?」
「痛ぁ」
 左乳首に背負ったままのハンデを指の先で弾かれる。がっちり乳首を噛締めたままの洗濯ばさみが揺れるとその分痛みも増幅される。
「優しく……」
「うん?」
「優しくして……」
「いいよ」
 言葉通り、町田はそっと衝撃が少ないように洗濯ばさみを外した。絶対痛くされると身構えていただけにホッとした。
「こっちも腫れてる」
「んっ」
 洗濯ばさみでせき止められていた血が通うのか乳首がジンジンする。熱をもったそこを宥めるように唾液をまとった舌で乳首を慰撫されると時折刺す痛みすらむず痒いような気がしてくる。
 舐めてもらえるはずだった右乳首に指が触れるが先程のような痛みはなく、優しく撫でられるとムズムズした痒みが激しくなる。
 町田の膝に跨って乳首を責められている。これじゃダメだと思うのに抜けきらない酒のせいかもっとしてほしい気がしてくる。
「やらしい顔してる」
 そんなの、そっちだって同じじゃん。
 痛みが引き始めた乳首はいつもより感覚を主張して物足りなさが募ってくる。無意識に突き出した胸に町田の指や口は優しさだけではなくなっていく。
 立ち始めたちんぽを揉まれるもうダメだった。ふざけんなよ、と思う反面もっとしてほしくてたまらなくなる。
「こっちも?」
 頷くしかできなくなる。手が自由だったら恥も外聞もなく自らシコっていただろう。スエットごとパンツをずらされて解放されたものは赤く立ち上がり先を濡らしていた。
「僕も」
「ん」
 同じように取り出された町田のものも既にいきり立っていて、二つの竿の先が触れ合うようにされると先走りが混ざり合ってさらに血が通うようだ。
「先っぽ、キスしてるみたい」
「ばっ、バカか! 変態!」
「いっぱい涎垂らしてる」
 亀頭同士を擦り合わせられるのに合わせて辱められると割れ目がパクパク呼吸するように開閉しカウパーを溢れさせる。
「ちゅっちゅって」
 笑い含みに言われて、からかっているんだって分かっているのに腰が震える。町田の手の中で絡み合う刺激にもどかしいほど煽られている。
「足りない?」
「……足りない」
「こっち?」
「そっちは、あっ……!」
 割り開かれたケツ穴に指が触れる。ローション的なものはなにもない。町田の指を濡らす先走り程度だ。
「無理、無理だから」
「指だけ」
「やだ、や、あっ!」
 指の先が入ってくる。ツプツプと排泄口を刺激されるとぞわぞわとした官能が立ちあがってくる。慣らされすぎた感覚に嫌気がさすが身体は燻る快感にのっぴきならぬ限界を訴えてくる。
「動いていいよ」
「ふざっ、ふざけんなバカぁ」
「ほら」
「あっ、あっ、くそっ! クソがっ!」
 促すように亀頭の先を撫でられて高まる射精感に腰を振った。町田に寄り掛かり町田の手の中で擦れ合うちんぽと手の刺激に身体は勝手に動き、町田の服に擦れる乳首が物足りなくてそっちも自然に擦り付けてしまう。腰が動くせいでアナルに刺された指が出入りする。こんな、こんな淫乱みたいなことを正月早々から強いられている。いや、俺自ら行っているのか。
「指っ、指……!」
「入っちゃった」
 入っちゃったじゃねぇよ。二本はきつい。のに、身体は止まらない。ちんぽを握る町田の力が足りないせいか、いききれない。
「もっと、もっと強く……」
「こう?」
「違っ、あっ、あっ」
 中じゃない。中じゃないのに慣らされすぎた前立腺を押し上げられるとちんぽの先は更に濡れた。ちんぽを握る町田の手が外れて刺激の足りなさに焦燥感を覚える。パチン、と音がしたと思うと後ろ手の拘束が自由になったが痺れた腕は感覚がなく、上手く動かせない。
「も、やだ、や、えっ! あっ?」
 町田の膝に跨っていた体勢が後ろに倒される。突然のことに驚いてしがみついてしまった。不覚にも。
「先っぽだけ、ね?」
 ね? じゃねぇよ。指だけって言ったじゃねぇかよ。両足大開脚の俺とギンギンのちんぽをアナルに宛がう町田。いとも容易く挿入体勢になっている。
「全部入れないから」
「嘘、嘘じゃんだって」
 先っぽだけとか無理に決まってんじゃん。指で慣らされ快感で緩んだアナルに亀頭の先が入ってくる。
「無理、無理……あっ、あっ、ああっ」
 速攻嘘吐かれた。乳首もちんぽもむちゃくちゃされて、中もめちゃくちゃされた。
 最悪だ。最悪すぎる。
「いやぁ、いい初夢が見れたなぁ」
「俺は悪夢を見た」
「今年もいい年になりそうだね!」
 ならない。確信を持って言える。服に擦れるだけで痛痒い乳首も未だに熱を持つアナルもイキすぎた倦怠感も、去年と同じかそれ以上だ。
「今年もよろしくね!」
 笑顔いっぱい言われ、諦めに似た乾いた笑いが起こる。そう易々とおまえの思い通りになると思うなよ!



(15.1.1)
置場