神様の言うとおり!〜フェラチオ編〜



 便所なう。丸川が排尿している隣なう。俺に尿意はないけれど。
 丸川が便所へ入るのを目撃し思わず入ってしまったのだ。今朝見た夢のせいである。
 フェラチオの神がいう、三日以内に丸川にフェラチオをせよ、さもなくば俺のテレビが死ぬという理不尽な指令を実行しようというわけだ。
 最早丸川とはアナルセックスをしているのだ、今更フェラチオくらいサッと終わらすことができるだろう。
「なに?」
 丸川は用を済ませると手を洗い、一向に尿をしない俺に不審げに問う。確かに尿もしないのに尿をしている人の隣に率先して立つなどホモすぎるし不審すぎる。
「実は……」
 改めて言うとなるとフェラさせてくれって言いづらいな。丸川は真面目な顔をして俺の言葉を待っている。そんな真面目に聴く話じゃないんだ。また例のトンチンカンな神様のやつなんだ。
「フェ……、あの、あの神様いるじゃんあの、あれ」
「ああ……、セックスしろってやつ?」
「そっ、そう! はっきり言わなくていいんだけど……、その神様の一味っていうか、新たな刺客が現われて……」
「おまえの人生なんかすごいよな。で? どんなやつ?」
「あの、フェ……、あの、口でするやつ、あの……」
「フェラ?」
「そう!」
 なんで俺が真っ赤になっているのに丸川は平然としているんだ。一回やったからか。一回やっただけでこんなに玄人感出してくるか。さすがだ。
「今?」
「早い方がいいかなって」
「俺小便したばっかなんだけど」
「うっ……ウエットティッシュとか……」
「あるの?」
「ない」
「期限は?」
「今日から三日以内」
「早っ」
「早いんだよー」
 丸川は少し考えるように視線を彷徨わせると一つ息を吐いて個室へ俺を促した。やっぱりやるのか。
「しゃがんで」
「えっ」
 いいから、と肩を押され俺は狭い個室の中でしゃがんだ。尻を浮かせ踵を上げた姿勢は長時間厳しい気がする。という以前に目の前に丸川の股間という状況が凄まじく嫌な感じがする。
「うっ、ウエットティッシュないよ」
「別に今しゃぶれとか言ってないから」
 じゃあなんなんだ、このシチュエーションは。
「いきなり舐めるのって結構きついと思うんだよな」
「そうかな?」
「イメトレっていうか? 舐めて」
 そう言って丸川は人差し指を差し出した。
 いきなり指を舐めろと突き出されても、どんな顔をして舐めろというのだ。きっかけが掴めない。すごく恥ずかしい気がする。しかし時間は刻一刻と過ぎていく。別にちんこを舐めるわけではないのだ、さっさとやってしまえ、と思うものの指をしゃぶるのだって大概難しい。
「無理?」
「待って、やるやる」
 丸川の股間辺りで差し出された指を舐めるため、その手を支えるため手に触れる。こんなシチュエーションで手と手を触れ合わせるのもなんだか恥ずかしくて、爪の整えられた小奇麗な男の手に息が詰まる。
 ちらりと上目で丸川を窺うと無理か、と目で問われる。できるよ、やるよとアイコンタクトを送るべく気抜けた笑みが出る。胸に詰まった息を吐き出し口を開け、丸川の人差し指に舌を這わす。
 口に含まないまま指先から付け根まで舐めおろし、また指先へ上がっていく。ダメか、これじゃ。
「フェラしてもらったことある?」
「ん、ない」
「なんとなくわかるでしょ」
 中指と人差し指の二本を揃えて爪の先で唇を撫でられるとくすぐったい気がして口を噤んでしまう。けれどすぐに気付いて唇を開く。
 ものを想像しながら第一関節の辺りを舌先をでくすぐった。唾液が垂れ落ちそうで吸うといやらしく音が上がる。ああそうか、吸った方が気持ちいいかなと舌を蠢かしながら吸い付いていく。指と指の狭間を裏筋に見立てて尖らせた舌を這わせる。
 段々息が苦しくなって乱れてくる。指を舐めているだけなのにいやらしいことをしているような雰囲気になって居た堪れない。
「なんかエロいな、これ」
「ん、んう……、あっ、ん」
 丸川が指をゆるく出し入れし始めたせいで舌を絡めたり吸ったりするペースが乱される。丸川の手を支えていた手は縋るように丸川の腰にあったし片膝は丸川の靴を踏んでいた。
「んっ!」
 口内の気持ちのいいところを指が掠ったせいでとりわけ高い声が出た。ピストンしていた指は涎を引いて抜け出ていき、俺はよろけるように一歩下がり、立ち上がる。運動不足のせいで脚に微かな疲労を感じ個室の壁に寄り掛かった。
「気持ちよかった?」
「ん、結構……」
 改めて言われると恥ずかしくて耳まで熱くなるが、否定しても変な声を出していたのは聞かれているし認めざるを得なかった。
 個室を出るとハンカチで口を拭い、丸川はまた手を洗う。
「明日の夜空いてるんだけど、大丈夫?」
「あ、うん。大体いつも用ないから……」
「じゃあ明日済ませようぜ」
「あ、はい。よろしくお願いしまーす」
 じゃあな、と言うと丸川はさっさとトイレを出て行った。鏡に映った俺の顔は赤くなって、口の中はまだむずむずする。
 明日か。いきなりすぎる気はするがフェラチオ神のいう期限を思えば妥当なところか。明日丸川のちんこを舐めるのか。ちんこか。そうか。拭いきれない抵抗感を減らすにはどうしたらいいのだろうか。味でもつけるか。えぐいな。目隠しして舐めてみるか。いや、アブノーマルすぎるだろ。素のちんこを素で舐めるのが一番ダメージが少ないのか、結局。素のちんこを素で舐める。まじりっけないフェラチオにほかならないな。フェラチオなんだけど。
 そんなこんな考えているうちに終業し、帰りにアイスバーを買っていやらしい感じに食う練習をした。二本も食べると身体が冷えてきて、ハッと自分のバカさに気付かされた。一番の問題はヴィジュアルとにおいだ。形状はさして問題ではない。

 翌夜。俺は丸川宅にいた。なんてことはない。ちんこを洗う、というプロセスのためだ。
 散らかっているけど、という丸川の部屋は確かにシャツやなんかが投げ出してあったりはするものの俺の部屋の散らかり方とは根本的に違う感じがした。片付けられなくて汚い部屋ではなく、片付ける時間がない片付けられる人間の部屋だ。ベース自体は片付いている。
「風呂入る?」
「え、いい。帰るし」
「泊まっていけば?」
「いい。帰るから」
「あ、そう? じゃあ俺風呂入ってくるから適当にやってて」
 なにを? とは思ったが適当に生返事をして丸川を見送る。
 背広を脱ぎ、ネクタイを外し、適当な感じを装うためにテレビを観る。ゆるいバラエティだ。別に絶対観たいわけではないがなんとなく観てしまう。面白いか、と言われればまあまあ、という程度だがテレビがなくなったら寂しくなるなと思う。
 丸川宅への道すがら夕飯は済ませていたし、部屋の温度が暖かいせいで少し眠たくなってきた。帰るのかったるいな、とは思うが丸川の家に泊まるほど仲良しなわけでもない。
「なに観てるの?」
 いい感じにまったりしてきたところで丸川が風呂から上がってきた。
「10番」
「今5チャンな」
 タオルで髪を拭きながら冷蔵庫から水を出し飲んでいる。Tシャツにスウェットパンツというごく普通の部屋着でありながら背が高いせいなのかちょっと小粋な感じに見える。なんでだ。俺も家では同じ恰好をしているはずなのになんで丸川だとかっこよく見えるのだ。
「なに?」
「なんでもないです」
「飲む?」
「いらないです」
「じゃあ……」
「あ、はい」
「やろうか」
「よろしくお願いしまーす」
 丸川に促され寝室へ向かう。わざわざ移動しなくてもいいんじゃないか、テレビ観たいし。そういう気持ちはあったが丸川は居間で下半身を露出しない主義なのかもしれないし、普段露出しない場で露出するのは嫌だろうと思うので素直に従った。
「よろしくお願いしまぁーす」
 丸川のベッドに正座し頭を下げる。何故俺は男性器を銜えるために頭を下げているのだろう。何故もない、信仰もしてない神様の無茶ぶりのせいだ。
 丸川は何気ない感じにああと頷く。しかし下半身を露出させる気配がない。これは俺が脱がせた方がいいのだろうか。それとも自主的に脱いでもらうのを待つ方がいいのだろうか。しかし俺は終電までに帰りたい。丸川のタイミングを待っていては帰るのが遅くなってしまうのではないか。となるとやはり俺がパンツを脱がすべきなのか。丸川のパンツを俺が脱がす! 一度やったくらいでそれは差し出がましいのではないか。
「なんか変な感じだな」
「よろしくお願いしまあああす」
 丸川にも戸惑いはあるのかもしれない。しかし俺はよろしくお願いし続けることで丸川の察しを促すしかない。
「つうかおまえも脱げよ」
「えっ、なんで?」
「俺だけ脱ぐの恥ずかしいじゃん」
「やだよ俺風呂入ってないし」
 しかしまあ気分の問題だ、ということになり俺はワイシャツにパンツというなんともいえない恰好をすることになった。これからちんこを出そうという男に配慮しないでどうする。そういう大人の思いやりが生まれたのだ。
「じゃあ……」
「うん……」
 丸川は嫌そげにパンツを下ろす。黒々とした陰毛と……うわぁ。
「うわぁ」
 ちんこだ。ちんこだなぁっていう以外に言葉が出ない。
「ゴムする?」
「あ、どうなんだろう」
 ゴム越しフェラでいいのか、生尺でなければダメなのか。ちょっと待てよ、そうなると精子はどうする。飲むのか? 飲めるのか、俺は。そもそも飲む必要があるのか? 顔射という嗜好もあるではないか。フェラチオ神の要求するフェラがどこまでのものか分からないほどフェラにバリエーションがあるとは、たった今まで気付かなかった。
 正解が分からない以上想定されるすべてを試してみるほかないが、そんなにしゃぶっては丸川に負担が大きすぎるのではないか。というか俺もそんなにちんこばかりしゃぶっていられない。
「と、りあえず、生で頑張ってみます」
「大丈夫か? 無理そうだったらなんか考えるけど」
「なんかって?」
「ファブリーズとか?」
「ちんこに?」
「まあなんかそういうの探すけど」
「大丈夫大丈夫、結構大丈夫」
 よし、と一息入れて丸川の股間へ顔を寄せる。ほんとは全然大丈夫じゃない。あまりにもちんこすぎてほんと辛い。でも舐めなければ仕方ないのだ。舐めるぞ、と意気込んで更に顔を下ろす。
「ちょっと待って」
 下ろそうとした頭を押し上げられ丸川の制止にどうしたと目で問う。
「恥ずかしい」
「えっ」
「普通に考えて恥ずかしいだろ、俺だけフェラされるとか」
「えっと、えーっと、じゃあ目隠しとかする?」
「そういう趣味あんの?」
「ないけど!」
「俺もやるよ」
「えっやだよ、俺風呂入ってないし」
「手コキならいいだろ」
「えっ、えー……」
 正直手コキも嫌だ。嫌だけど、男にしゃぶられる、という更に嫌だろうことをやってもらう以上はある程度丸川の希望に沿うようにしなければならないのだろう。正直嫌だ。そういう前戯っぽいことするつもりで来てないのだから。
「あっ、体勢的に難しいんじゃないかな……」
「足こっちに向ければいいだろ」
「えー……っと、えー……」
 それだと俺の股間が丸川の顔の前になるのか。そんなのシックスティナインじゃないか。すごい嫌だ。嫌だけど、仕方ないのか。
 あー嫌だ。本当に嫌だ。恥ずかしくて死にそう。丸川に促されるまま体勢を変える。顔の前に丸川のちんこがもろに来る。ということは俺のちんこもパンツ越しに丸川の目の前にあるということだ。引き気味になる腰を押し寄せられて、股間にかすかに丸川の息を感じる。風呂入ってないのにどうしよう。
「ひっ、な、なに、なんで」
「なんでちょっと立ってんの?」
 太ももを押し上げられパンツ越しにちんこを掴まれる。なんでだよって思うのになんでって、なんで、俺も知らない。そんなこと訊かれても分かんないし、この状況でちょっと勃起してるとかわけ分かんないし嫌だ。
「ご、ごめん」
「謝んなくていいし。ていうかあれだな、恥ずかしくて立ったんだろうな」
 そんなフォローするくらいなら最初から言うなよ。なんだよもう。なんなんだよ。赤っ恥すぎる。鎮まってほしいのに丸川に握られてちんこはじんじんしてくる。やばい。ダメだ。俺も丸川のちんこを銜えなければ。もうヴィジュアルとか臭いとか言ってる場合ではない。このままではシックスティナインのままちんここかれて終わる。そんなの俺一人の赤っ恥ではないか。
「んっ」
 亀頭の先に唇を引っ付けた。やった。やったぞ俺は。
「本気でいったな」
 いったよ、俺は。ちんこに口つけたよ。そのままベロを出す。茎を支える手を上下させ完全体への変形を促す。風呂に入ってくれたおかげで思った以上の嫌な感じはない。石鹸の香りに包まれたちんこを舐めていく。ピクピクと血流に合わせて体積を増していく丸川のちんこに充実感もある。努力が報われるという簡単なシミュレーションのようだ。
 丸川のちんこはちょっかいを出すうちどんどん育ち、先から雫をあふれさせた。それを舐めとるとまた浮かぶ。握った手の中で血流がすごい。丸川がそれだけ気持ちよくなってるのかと思うと恥ずかしいような嬉しいような気持ちになる。
 丸川にちんこを擦られ、いやらしいにおいに包まれて俺も変な気分になってくる。自然と浮いた腰を押さえるようにケツを揉まれるとそれすら気持ちがよくて頭がおかしくなってくる。
「ひぇ、なっ、なにしてんの」
 丸川の頭をまたぐように脚の位置を変えられたと思った矢先、先っぽにぬるっと来た。手指の感触と違う。ベロっぽい感じが来たのだ。
「待っ、えっ、待っ、風呂、あっ、風呂」
 入ってないから俺。朝から同じパンツ穿いてるし、ウェットティッシュで拭いたわけでもファブったわけでもない。恥ずかしくて心臓が痛いくらい鳴っている。恥ずかしくて頭が痛くなってくる。
 逃げたいのにケツは揉まれ、舐められていた俺のジュニアは丸川の口の中に取り込まれている。逃げたいけど事故が起こりそうで不用意に動けない、そんなことは言い訳で、本当は単に気持ちいいだけかもしれない。
 丸川が腰を突き上げるような仕草をしたから、そうだ俺も舐めないといけなかったとまたギンギンきているものに舌を伸ばす。エロい音とかエロい息とかエロいにおいで一杯になってとんでもないエロいことをしている気がしてくる。
「ふっ、あっ、んっ、ん」
 ちんこ吸われると突き抜けるような気持ちよさがあって、そんなんダメだろっていきたい、いきそうなギリギリの際で俺も丸川のちんこを吸う。
「ん…、ふっ」
 次々に先走りが溢れてくる。丸川の色っぽい呼吸に心臓の辺りがざわざわする。
「んっ、あっ、あっ、あっ……!」
 ベロが絡んで吸い上げられて頭真っ白になって腹筋の辺りに力を込めたけど放出をこらえきれなかった。
「ごめっ、ごめん、ちょっ」
 起き上がろうとした身体を丸川は脚だけで押さえ込む。すごい器用。そんなこと言うてる場合ではなく俺は丸川の口の中に精子を出してしまったのだ。
「これ飲めねぇよ」
 丸川は咳き込み、ティッシュを引き出す気配がした。申し訳なさと恥ずかしさで死にたくなってくる。視界が滲んできた。賢者タイムか。
「ほんとごめん」
「いいよ。おまえも飲まなくていいからな」
「えっ、あっ、はい」
 そうだ、俺も丸川の精子を出さなければならないんだった。いつのまにか横向きだった身体は丸川の腹の上に乗るような体勢になり、ある意味咥えこみやすい状態になっている。これはもう本気でいくしかない。
 鼻水が垂れるのも構わず、涎は先走りと一緒に吸った。なんとなくイメージで頭を振って唇でちんこを扱く。
「んっ、はっ」
 背後で丸川がケツを押し開く感じがあって、なにしてんだよって思うけどボルテージの上がった丸川のちんこの熱を冷ますのが嫌でアナルを見られたままになる。恥ずかしくてまたちんこがムズムズしてくるけどそんなことより俺は俺のフェラに一生懸命になるべきだ。
 口の中の気持ちいいところをちんこが霞めるとくすぐったくて身体が震える。丸川が玉を舐める。もうギリギリだよそんなところ。
 ちゅうって吸うと丸川の腹筋はガッチガチになって、あ、いくって丸川の声がしたと思ったらビクンビクンしながら丸川のちんこは精子を放った。
 薄かった精子のにおいはぐっと濃くなって、喉に舌に液体というより固体感の強い精が絡みつく。
「ほら、出せ」
 丸川に差し出されたティッシュを受け取り精子を吐き出す。こんなものを飲む人はどんな訓練を受けているのだろう。
 必死過ぎて上がっていて息が落ち着いていくとベッドの上の俺と丸川、という構図が浮かび上がって、どうしよう、なんか言った方がいいのかなとかなんで丸川は黙ってるんだろうとか色々考えてわけが分からなくなってきた。
「えっと、ありがとう」
 とりあえず目的は果たせたから礼を述べると丸川は驚いたような顔をして、なにか間違ったことを言ったかと不安になるが他にどういう言葉が適切か分からない。
「えーっと、あのさ、セックスしねぇ?」
「えっ、えー……っと、えー……」
 微妙に収まらない我がちんこのこともあり、素股なら、とおっぱじめてみたが結局挿入はした。ローションってすごい。なんかその気になってしまった。
 帰るつもりで風呂にも入らなかったのに結局終電を逃し、平日だというのに丸川宅に一泊した。
 その日の夢の中にフェラチオ神が現われたのだ。
「なんじゃそのー、あれはフェラチオというよりシックスティナインではないのかとシックスティナインの神と協議したんじゃがの、初めてのフェラでシックスティナインに持ち込むのもなかなかのものじゃないか、ってことで今回は大目に見ることになったのじゃ!」
 なったのじゃ! ときたか……。というかシックスティナインの神までいるとは細分化しすぎじゃないのか。しかしこれで俺のテレビは壊れずに済むのだ。もうどうでもいい。
「よく頑張ったの。おまけにラジオの感度も上げておいたからの。今後もフェラチオを頑張るのじゃぞ」
 ふぉっふぉっふぉっ……、とフェラチオ神は笑いながら去って行った。もう二度としません。心の中で強く主張しながら俺は笑顔でフェラチオ神を見送った。
 翌朝、別に昨日と同じワイシャツで構わないという俺に丸川はワイシャツを貸してくれた。丸川のワイシャツを着ている、というだけで一日落ち着かずふとした拍子に昨夜の理由のないセックスが思い出されて頬が熱くなった。
 それから一週間後、丸川は神妙な顔をして俺に問うた。
「おまえの言う神様って七福神みたいなやつ?」
 ついに丸川のところに直接行きやがったか、と衝撃に震え、俺は恐る恐る丸川のところに訪れた神の詳細を訊ねるのであった。




(14.3.27)
置場