ピンクの頂



 ぼくが可愛いばっかりに、学園を牛耳る不良グループみたいな生徒会役員みたいななんかよく分からんけど権力を持っている集団に目をつけられてしまって一週間。電光石火の早業で肉便器という役職をもらってしまった。
 それから2か月ほど、放課後の生徒会室、体育倉庫、空き教室、男子トイレ、校舎裏……TPOもお構いなしに複数人で行われるセックスに次ぐセックスにいじられたおした三点や股関節は常に地味に痛い。
 今日も今日とて右手にちんぽ、左手にちんぽ、結腸を責められながら口にもちんぽ、アナルアクメに乳首イき、中出しされて潮噴きしてのフルコースが終わったところだ。
 イきすぎて指先までかすかに震え起き上がるのも億劫な身体を同級生の真郷くん……乳首担当の真郷くんが拭き清めたり乳首やアナルに薬を塗ってくれる。
 ぼくは真郷くんに恋をしている。昨日、今と同じように薬を塗られながら気付いてしまった。
 真郷くんは乳首を担当しているだけあって軟膏を塗られながら甘勃起したぼくのちんぽはガン無視で執拗に乳首にだけ薬を塗り続けた。
「真郷くん、ちんぽとおしりも薬塗って……」
「え……これちんぽに使っていいのかな……」
 そう言って真剣な目で効能書きを読み始めたのでぼくはもう夢中になってしまう。
 結局アナルには薬を塗ってもらえたけど指の刺激に射精したぼくに「まだ出るの?」とちょっと迷惑そうな顔をしてウエットティッシュで飛ばした精子をぬぐっていた。
 そんなこんなあって今ぼくの頭は恋心で爆発している。
「真郷くん、好き……」
「は?」
「真郷くんのこと、好き」
「は?」
「同じこと言わせないで。アイ、ラブ、ユーって言ってんの」
「え、俺?」
「アイ、ラブ、マゴーって言えば分かるかな?」
「いや……、え、俺?」
「おまえだよ! しつこいな!」
「え、おかしくない? なんで俺?」
「優しいし……」
「俺が?」
「オレオレオレオレってナルシストかよ」
「だって接点なくね? 俺たち」
「あんだけ乳首いじくりまわして接点ないことなくない?」
「確かにそうだけど」
「みんなやりっぱなしで帰るのに真郷くんだけ薬とか塗ってくれるし」
「一番後輩だし片付けして帰るでしょ、普通」
「やめろやめろ、部活かこれは」
「でも実際そんな感じだし……」
「とてよ」
「とて?」
「ぼくの好きって気持ちは本当だよ!」
「いや、無理でしょ」
「おい、せめて5秒は考えろ。即答すんな」
「だって会長マジっぽいしそろそろ俺たち呼ばれなくなりそうだなって話してたし」
 会長とはぼくのアナルに異常に執着しているアナル開発挿入担当のことだ。確かに彼のマジっぽさがゆえにぼくは一ヶ月と経たずにおしりでイくようになってしまった。そんなことよりも。
「俺たちってなに。誰と相談してんの?」
「え、嶋野だけど」
「嶋野って誰? どこポジションにいる人?」
「えー、脇、かなぁ?」
「あー、脇コキの人か。なんで脇コキの人とそんな話するの? 友達?」
「おまえ同じクラスじゃん。バイトない日普通に片付け一緒にやってるんだけど」
「あー、あいつか。ってぼくを備品扱いしないで」
「っていうか会長はどうなの」
「え、無理」
「5秒は考えろよ」
 確かにアナル開発挿入担当の会長は顔、頭脳、ちんぽどれをとっても秀でているがぼく自身なにもかもに秀でているタイプだからか無個性無味無臭な真郷くんのような人に惹かれてしまう。
「ぼくは真郷くんが好きだって言ってるの! 会長なんて関係ないじゃん!」
「でもさぁ、会長にキスハメされてだいしゅきホールドしてるやつと付き合えないよ俺」
「真郷くん……、それはそれ、これはこれ」
「いやいや割り切れないでしょそこ」
「仕事とプライベート混同するとしんどいよ」
「仕事じゃねーしこれ」
「ぼくはさ、肉便器って仕事をちゃんとやっていくつもり。でもプライベートだって充実させたいわけ」
「意識高っ」
「普通のことだよ、真郷くん。自分の人生は自分のものなんだから」
「でも普通の神経してたら恋人が別のやつとセックスしてるの嫌じゃない?」
「プライベートセックスとパブリックセックスは違うじゃん」
「なんだよパブリックセックスって。同じだよ」
「全然違うよ! 好きな人とするセックスと仕事でするセックスは!!」
「普通に気持ちよさそうじゃん」
「全然気持ちが違うよ!! 同じにしないで!!」
「すみません」
「分かってくれたらいいけど!」
 言うて好きな人とセックスなんかしたことないけど多分そうでしょという雰囲気でものを言っている。ぼくの初めてはアナル開発挿入担当の会長だったけど多分好きな人としたらもっとすごいとお姉ちゃんの部屋にある少女漫画に描いてあった。
「ちなみに真郷くんの好きなタイプはどんな人? ぼく?」
「え……、……乳首でイくとき母乳出す子」
「経産婦じゃん」
「経産せずとも出せる子だよ!」
「真郷くん……、エッチな漫画の読みすぎ」
「ううううるさいな! いるかもしれないだろ!」
「オッケー分かった、ねぇ真郷くん、ぼく、出せると思わない、母乳?」
「……」
「……」
「……だ、出せそう……」
「出すよ、ぼくは! 経産せずに母乳を!」
 これから二人で頑張っていこうね! と微笑むと真郷くんは真剣な顔をしてぼくを見た。
「いや、無理」
「無理じゃねーよ!」
「無理無理だって会長、寝取られ趣味はあってもガチの寝取られはNGな人だから」
 知らねぇ〜っていうか興味ねぇ〜って感じで埒のあかなさにうんざりしてくる。ぼくが好きだって言ってるんだからやったー! 嬉しい〜! で抱けばいいんだよ抱けば。
「あーあ、今度輪姦されたとき真郷くんの名前一杯呼ぼうっと」
「おい!」
「もうぼくどうなっても知らないからね!」
「本当に止めてくださいお願いします」
「なんでもするって言ってみて」
「い、いやだ……」
「おしりでイくとき真郷くんの名前呼ぼうっと」
「なんでもする……」
「やったー! 嬉しい〜! 今日から恋人同士だね!」
「うううううううう」
 一生うめいているつもりかと思った真郷くんは諦め果てたのかうんと頷いた。うんって。可愛いな。
「真郷くん、ぎゅうってして!」
「えぇ……」
 嫌そうながら抱きしめてくる。いつも背中を温めている胸に頬を寄せる。
「もっと!」
 言うと戸惑うように強く抱きしめられた。異常なほどの快感とイきすぎた身体におかしくなった神経はずっとふわふわ実感がないけれど、痛いくらい抱きしめられるとぼくの身体が全部ちゃんと真郷くんの腕の中にあるんだって感じられる。
「もういい?」
「もっと」
「ええぇ……」
 真郷くんは全然気付いてないけれど、ぼくはセックスするよりずっとドキドキしてるし耳まで全部赤くなってる気がするほど頬がほてっている。そんなことに全然気付いてほしくなくてぼくもぎゅっと真郷くんを抱きしめる。
 一生このままでいられたらいいのにって思う。
「会長が卒業するまでえっちしないからね」
「は? なんでだよ」
「普通に嫌だからだよ!」
「やだやだやだやだ」
「俺も嫌だからそれは」
「真郷くんさぁ……」
 嫌だからなんて子供みたいなことを言わないで仕事とプライベートは割り切ろうよ、と諭そうとしたぼくの顔を額が触れ合う近さで覗きこんでくる。真郷くんの無個性無味無臭フェイスがぼくにだけ向き合っている。マジ超普通。超普通に好き。
「土曜日デートする?」
「しゅ、しゅる〜!」
 かっこよさげな声を出しやがって。なんだそれはカッコイイな。結局好き。結局好きなんだよぼくは。このなんにもないゼロベースみたいな男が。
 デートどこいこっか? などと話しながら一緒に帰り、駅で別れ、浮かれ気分で家に帰りつきお風呂につかって深く息を吐いたところで誤魔化されていることに気付くほどぼくの頭は恋心でアホになっていた。
 風呂上り、化粧水を浸したコットンを乳首に貼り付けぼくは前途多難な恋に強く立ち向かっていく決意を固めた。ぼくの恋はまだ始まったばかりだ!



(22.3.9)
置場