共犯者 つまらないことでビクトールと喧嘩をした。 いつもなら、意地を張るフリックにビクトールの方が先に折れ、酒場にでも誘いをかけて、仕方がないというふりをしながらもフリックがそれに応じ、他愛ない話をするうちに喧嘩のことなど忘れてしまうのが常だった。 けれど、今回はどうやら本気でビクトールを怒らせてしまったらしく、ビクトールの方から先に折れる様子もなく、さらに悪いことに、喧嘩をした直後にリーダーのお供で交易に出ることになってしまったため、仲直りのきっかけを掴めないまま、二人は時間と距離を置くことになってしまった。 眠れない夜が続いた。 何でもないことだと思う反面、もしかしたらこのまま喧嘩別れをしてしまうこともあるのだろうか、という不安も胸の中で渦巻く。 フリックはビクトールが帰ってきたら、ちゃんと自分の方から謝ろうと思っていた。 そう、ビクトールの顔を見るまでは本気でそう思っていたのだ。 だが、交易で大儲けをして、晴れやかな表情で帰城したビクトールが、フリックを見たとたん不機嫌そうに眉をしかめたのを目にしたとたん、そんな思いは吹っ飛んだ。 絶対に自分から謝るものか、と再び意地っ張りな性格が顔を出す。 結局、仲直りできないまま、時間だけが過ぎていった。 「ずいぶんと浮かない顔をしているんですね」 顔を上げると、柔らかな笑みを浮かべたカミューがフリックの傍らに佇んでいた。 「あぁ…お前か……」 「お前か、とはご挨拶ですね」 苦笑しつつ、カミューがフリックの隣に腰を下ろす。薄っすらと紫色に空が色を変えていく時刻。人など滅多に来ない本拠地の庭の片隅でぼんやりしているフリックを見かねて、カミューが声をかけてきたのだ。 「まだビクトール殿と仲直りされていないんですか?」 「……何で喧嘩したこと知ってるんだ?」 「おやおや、城中でそのことを知らない人がいると思っている貴方も相当鈍いですね。皆ずいぶんと心配しているんですよ」 「…………」 黙りこむフリックに、カミューは薄く笑いを浮かべる。 「仲直りなんて、きっかえさえあれば、簡単なんですけどね」 「………きっかけ?」 「そう、例えば、フリックさんの方から誘いをかけてみるとか」 カミューの言葉に、フリックはかっと頬を赤らめた。 「ふざけるな、そんなこと……っ」 「別に今さら恥ずかしがることでもないでしょう。それに、喧嘩のあとのセックスはずいぶんと燃えるものですし」 「なっ……」 「試してみてはいかがですか?」 フリックが立ち上がろうとするより早く、カミューがその肩を強く押さえ込み、圧し掛かるようにしてフリックに覆い被さった。 「んぅ……っ!」 逃げようとするフリックの顎を、右手で強く掴み、カミューは強引に唇を合わせてきた。抵抗する暇もなかった。叫ぼうと開いた唇を割って、カミューの舌が咥内に押し込まれる。 フリックは両手でカミューの身体を押しのけようと試みたが、上から強く押さえつけられびくともしない。 「んっ、んぅ!!」 カミューの舌がざらりと上顎をなぞり、そのまま喉の奥まで舐め上げてくる。巧みな口づけに、フリックは頭の芯が痺れるような不思議な感覚に陥った。 何かが、ぐっとフリックの喉の奥に差し込まれた。 はっと目を開けると同時に、何か小さな塊がフリックの喉を流れていった。それを確認したカミューがフリックの身体を離した。 とたんに振り上げられたフリックの手首を簡単に掴み取り、カミューは濡れた口元に満足そうに微笑んだ。 「……な…に飲ませた……?」 「仲直りができる薬です」 別に危ない薬じゃないですよ、とカミューが楽しそうに笑う。 「何も考えずに、素直になれる薬です。今の貴方には一番必要なものだと思いますが?」 立ち上がろうとしたフリックの足元がくらりと揺れる。胃の辺りに火が点いたような熱さが湧き上がり、それが徐々に身体中に広がっていくような気がして、フリックは口元を押さえた。 「う……っ……」 「さ、部屋まで連れて行ってさしあげますよ」 がくりと膝の崩れたフリックの腕を取り、カミューが耳元で囁く。 「お望みなら、何も考えられないようにしてあげてもいいんですけどね」 フリックは信じられないものでも見るようにカミューを睨んだ。何か言わなければ、と口を開いたが、ぼやけていく視界に地面に手をつくのが精一杯だった。 カミューは力の入らないフリックの身体を抱きかかえ、引きずるようにして城の中へと向かって歩き出した。 掠れた意識が次第にはっきりとしていく。 フリックはゆっくりと目を開けたが、自分がどこにいるのか分からずに視線を泳がせた。自分の部屋じゃない。見慣れない天井に、違和感のある部屋の空気。 「んっ……」 身体を起こそうとしたとたん、ずくっと身の内が疼いたような気がして、フリックは息を飲んだ。 覚えのある感覚。 「目が覚めましたか?」 ぎしっと軋んだ音がして、横たわっていたベッドが深く沈み込んだ。恐る恐る視線を向けると、そこにはカミューがいた。 「カミュー……?」 「なかなか目を覚まされないので、ちょっと心配しましたよ」 言いながらカミューはフリックの頬に触れた。 「ここ…ど、こだ……?」 「私の部屋ですよ」 カミューの指がつっとフリックの喉元を辿る。その感触に、フリックはぎょっとした。慌てて肘をついて半身を起こすと、自分の衣服がほとんど脱がされていることに気づいた。 羽織らされたシャツは恐らくカミューのもので、釦はすべて外されていた。履いていたズボンはベルトが引き抜かれ、ジッパーは中途半端に下ろされたままで…… 「お前っ……なに…し…」 叫ぼうとして、呂律が回らないことにフリックは驚愕した。指が震える。ちゃんと起き上がることもできない。声も出ない。乱された衣服と、熱く疼くと身体と…… 「言ったでしょう、素直になれば仲直りできるって。でも、貴方のことだから、ビクトールさんの前で素直に抱いて欲しいなんて言えないでしょうから、私が嫌でも言えるようにしてあげますよ」 ふざけるなっと暴れるフリック。けれど、力が入らずほとんど抵抗らしい抵抗にはならなかった。カミューはあっさりとそんなフリックの身体に跨った。 シャツの胸元から手を差し込んで何度か肌触りを確かめたあと、上体を屈めて首筋に唇を寄せる。びっくりしたフリックが大きく目を見開いた。 「や……っ…!」 濡れた感触が耳元から首筋を何度も行き来した。たったそれだけで、全身に痺れるほどの快楽が走った。それは確かに快感だった。自分の意志とは関係なく感じてしまったそれを振り払うように、フリックはカミューの身体を押し返そうと試みる。 「やめろっ……カ…っ……」 名前を呼ぶ前に、唇が塞がれていた。 カミューの熱い舌先が逃げる舌を絡めとり、強く吸い上げ、時折からかうように甘噛みする。その口づけの甘さにフリックの抵抗はやがて途絶えた。流れ込む唾液を必死に飲み干して、フリックはいつの間にか夢中で自らカミューの唇を貪っていた。 唇が離れると、ぴちゃっと濡れた音が聞こえ、その音にフリックははっと我に返り、かっと頬を染めた。 「何で……っ」 自分がしたことが信じられなくて、フリックは緩く首を振る。 「……そんな顔しなくても……薬のせいで、正直になっているだけですよ、何も怖がることなんてありません」 カミューは滑らかなフリックの肌を下から撫で上げると、両肩からシャツを落とした。 「ビクトールさんと仲直りする前に、少しだけ楽しみましょうか。違う男の味を知るのもいいかもしれませんよ」 「やめ……っ」 カミューが何をしようとしているのか分かり、フリックは身を捩った。けれど、薬のせいでロクに動くこともできない。 カミューは薄く色づくフリックの胸の尖りを弄った。指の腹で押しつぶすようにして何度かくすぐると、ぴくりとフリックが肩を揺らした。 「ここですか……?」 「ぅ……あっ…!」 掠めるようにくすぐるカミューの手のひらのせいで、フリックのそこは徐々に固く立ち上がっていく。 触れられていないもう片方の胸に顔を近づけ口を開くと、カミューは尖らせた舌先で小さな尖りを舐めた。 「いやっ……!やめ……はぁ…!」 くちゅくちゅとわざと音を立てて尖りをしゃぶられ、フリックは激しく首を振った。怖いくらいに感じるのは薬のせいだ。 分かっていても、いつもよりも感じてしまう自分の身体にぞっとした。たっぷりと濡れた乳首に歯を立てられ、フリックは大きく背を仰け反らせた。 「あ、あぁ…っ!」 思わず漏れた声に、カミューは笑いを洩らした。 「ココだけでそんなに感じちゃうなんて……やっぱりあの薬はよく効くんですね、それとも貴方の感度がもともといいんでしょうか……?」 カミューがぺろりとフリックの耳朶を食む。 「……でも、こんなもんじゃないですよ、あの薬は……」 楽しそうに囁き、カミューはフリックの下肢へと手を伸ばした。引き締まった腹部から腰をなぞり、そのまま下衣を乱暴に引き摺り下ろした。 「やめろっ!やめ……っ…」 「フリックさん……だけど、ほら……」 ひんやりとしたカミューの指が、熱を持って震えるフリックの花芯に絡んだ。触れられたとたん、それはひくりと硬度を増し、ほんの少し動かしただけで、先端から蜜が零した。 素直に反応するフリックの身体を目の当たりにして、カミューはいつになく自分が興奮していくのを感じていた。 「あぁ……これじゃビクトールさんが夢中になるのも納得できますね……貴方の身体はとても素敵だ……」 「んっ……あ、あぁ……」 「声、聞かせてください……」 カミューが胸元への愛撫を続けながら、片手でフリック花芯をゆるゆると扱き上げ始めた。濡れ始めた先端を丸く撫で、敏感な裏側を少しきつめに擦ると、フリックは感じ入ったような嬌声を上げた。 「あっ……あ……っ…」 カミューの指が上下に動くたび、ぬちゅっ、ぐちゅっと聞くに耐えない濡音が響く。部屋の中がねっとりとした淫らな空気で満たされ、ただフリックの押さえた喘ぎ声だけが聞こえる。 「やっ…ぁ…ん、んっ……ああっ」 自分に触れている手がカミューのものだと分かっているのか、いないのか、フリックは与えられる快楽にうっとりとその身を任せ、薄っすらを目元に涙を浮かべた。 「あ、んっ…はぁ……ん」 「だめですよ……まだ出しては……」 「や…ぁ…んっ…」 きゅっと根元を戒められ、フリックは息を飲んだ。 痛いほどに張り詰めた下肢から、じわりじわりと背筋を駆け上がる痺れと甘い疼き。満たされないことへのじれったさに、フリックはカミューの胸元のシャツを掴んだ。 「……もうちょっと我慢してくださいね、もうすぐ貴方の大切な人が来ますから……」 カミューは名残惜しそうに花芯から手を離すと、枕元のチェストとから、ごそりと何かを取り出した。見慣れないそれに、フリックが顔色を変える。 「な……っに…いやっ…!」 「大丈夫ですよ」 怯えるフリックを宥めて、カミューはフリックの身体をうつ伏せにすると、両足を広げ、手にした拘束具を手早く装着した。 鉄の棒の両端についた皮のベルトを足首につなぐ。続けて手首にも同じようにベルトをつけ、ベルトについた細い鎖を鉄の棒のフックにかけた。 右手は右足に、左手は左足に繋がれ、閉じようとしても脚は閉じられない。前屈みになった身体は自然と肩だけで支えることになり、腰が高く掲げられる。 屈辱的な格好に、フリックは泣き叫んだ。 「いやだ…ぁ……っ!助け……」 「痛くはないでしょう?……ああ、動かないでください、手首が擦れますよ」 つぶやいたカミューの背後で、かちゃりと扉の開く音がした。 カミューと共にフリックがのろのろと顔を向けると、そこにはビクトールがいた。 「ひっ……あ……」 とたんに、フリックがビクトールの視線から隠れようと、動けない身体を必死で捩った。悲痛な叫びは押し付けた枕に吸い込まれ、身を捩ろうとするたび、手首を戒める鎖が小さく音を立てた。 「いやだぁ……見るな……っ」 「な、にしてんだ………」 目の前の淫らな光景に、ビクトールが呆然と立ち尽くす。 「お待ちしてたんですよ、もうちょっとで貴方の代わりを私がしないといけないところでした」 「何やってんだっ!」 「いつまでたっても仲直りしない貴方たちを見ているのは歯痒いので、手っ取り早く仲直りできるように、と思いまして」 ビクトールが小さく舌打ちして、ベッドに駆け寄る。 「ほんの少し薬を飲ませましたので、いつもよりずっと素直になっていると思いますよ。じゃ、私はこれで。あ、そこのチェストの中のものはどうぞご自由にお使いください。どれも新しいものばかりですので」 今にも殴りかかってきそうなビクトールの横をすり抜け、カミューはゆっくりと部屋を出ていった。 「フリック……」 「いや……だっ…解いてくれっ!!いやだ…っ」 しっとりと汗で濡れたフリックの肌に、吸い寄せられるようにしてビクトールは片足をベッドに乗り上げた。 逃げるように顔を背けるフリックの肩を押して仰向けにすると、露わになった下肢を凝視する。 「見るな…っ…や……ぁ…」 つい先ほどまでカミューにさんざん弄られていた花芯はひくひくと震え、溢れ零れる蜜が広げられた脚の間をぐっしょりと濡らしていた。 赤裸々なその眺めにビクトールはごくりと喉を鳴らした。 「くそっ…俺に隠れて何してやがるんだ」 「や……っ……」 「え、フリック……、そんなに俺が嫌いか?こんなことして、俺を苦しめたいほどに嫌いなのか!」 「違っ……う……違うっ…」 フリックは大きく首を振ってビクトールの言葉を否定する。 「……あやま、らなきゃ…って……」 頬を伝う涙を拭うこともできず、フリックは胸を喘がせながら必死で言い募る。 「……お前の…方が……俺のこと嫌いにな、ったら…て…」 その台詞が終わらないうちに、ビクトールが噛み付くようにしてフリックの唇を奪った。ねっとりと唇で唇を嬲り、生温い塊を咥内に押し込む。強引に歯列を割り、喉の奥まで思うままに蹂躙して、ビクトールは息苦しさに喘ぐフリックの花芯を右手で乱暴に握り込んだ。 「ひぁ……っ…!」 「俺が……お前を嫌いになるって…?」 震える唇を舐めていた唇が濡れた頬を辿り、小さな耳朶を口に含んでぴちゃりと舐めた。フリックがぶるっと身を震わせる。 すでにぐっしょりと濡れた花芯を緩く撫でると、フリックはひくりと喉を反らせた。 「ふざけたこと言うんじゃねぇよ、誰がお前を手放すもんかっ」 ビクトールの言葉に、フリックは何度もうなづく。自由にならない両手が恨めしかった。自由ならば、きつく抱きしめることができたのに。 「すまねぇ、あんなつまんねぇことで意地張って…」 「……っく……」 しゃくり上げるフリックにビクトールが何度も口づける。 「だけど、お前も悪いんだぜ、いつまでも意地張るからよ、俺もつい……」 「ごめ……ん……」 やっと素直に言えた言葉。その言葉にビクトールは満足したのか、口元を綻ばせた。喧嘩なんてするよりも、もっとやるべきことは他にある。 ビクトールは少し身体をずらすと、改めてベッドに横たわるフリックを見下ろした。 「それにしてもフリック……すげぇ格好だな…」 大きく開かれた脚は小刻みに震え、その間の花芯も痛々しいほどに勃ちあがっている。 「カミューに何された?」 低い声にフリックは緩く首を振る。 「言えねぇようなことしてたってわけか?」 「ちが……っ……あっ!!」 唐突に先端をぐりっと撫でられ、フリックは息を飲み込んだ。同時にどくっと勢い良く吐き出された白濁に、ビクトールは小さく舌打ちした。 「あーあ、イっちまったか……びんびんにおっ勃てやがって……そんなにカミューは上手かったのか?」 「いやっ……ちが……」 自分の不貞を詰られているような気がして、大きく胸を喘がせながら、フリックは羞恥に震えた。薬のせいだと、ビクトールは分かっていて責めているのだ。けれど、そうして責められることさえ、不思議と辛いとは思えない。 濡れた指をフリックの口元に差しだし、ビクトールは口を開けろと低く命じた。 「うっ…」 フリックは嫌だというように首を振ったが、ビクトールは半ば強引に、薄く開いた唇に人差し指と中指を銜えさせ、柔らかな咥内をぐちゅぐちゅとかき回した。 「んっ…ぅう……っ…」 「ほら、ちゃんと舐めな、お前のだろ?」 片手で顎を押さえ、苦しさに涙を浮かべるフリックを許さずずっずと指を抜き差しする。含みきれない唾液が口蓋から流れだし、喉元を伝う。どこか恍惚とした表情のフリックにビクトールは下半身に熱が溜まるのを感じた。 「もっと違うもんしゃぶってみるか?え?」 「んんっ……ふぅ……」 「それとも、俺にしゃぶって欲しいか?」 フリックは耳元で囁かれる卑猥な言葉に、無意識のうちに腰を揺らした。もう何が何だか分からない。いつもなら、ふざけるなと怒鳴るようなことでさえも、今なら何でもしてしまいそうな気がして、それが当たり前のことのような気がして、それが怖かった。 自分が自分でなくなっていく。 「可哀想にな…薬使われてちゃあ、何度イっても足りねぇよな」 ビクトールはずちゅっと音をさせて指を引き抜くと、広げられたフリックの脚の間に身を置いた。先ほど放ったばかりの花芯がまだ勃ち上がったまま切なげに震えているのにうっそりと笑うと、ゆっくりと顔を近づける。 「……っ!!やっ…ああっ……!!」 ビクトールの口の中に含まれたとたん、溶けてしまうんじゃないかと思うほどの熱が下肢を包んだ。 たっぷりと唾液をからめて吸い上げられ、裏側を舌で何度も刺激され、フリックはひくひくと内腿を痙攣させた。 「んっ……ぁあ……」 ちゅぷちゅぷとわざと音を立てて花芯を舐め回す音が室内に響く。与えられる快楽よりも、その音の方がフリックには絶えられないほどの刺激となった。喉の奥できつく締め付けられ、フリックは思わず嬌声を上げた。 今まで何度もされた行為だけれど、それでも男の口の中で果ててしまうのには未だに抵抗がある。フリックは必死で唇を噛み締めて、込み上げる射精感に耐えていた。 薬で苦しいだろうに、何でそんなに意地っ張りなのかね、とビクトールは苦笑する。素直になったのは身体だけか、と残念に思う反面、フリックらしいと納得したり。 ビクトールはフリックの脚を持ち上げていた指をするりと滑らせると、まだ固く閉ざされた最奥をなぞった。 「う、んんっ……!」 濡れた指先がほんの少し強引に中に差し込まれると、フリックは大きく背を浮かせた。 「ああっ……痛っ…いやっ……っ!」 ぎゅっと強く締めつけて浸入を拒む入口を、ぐりぐりと左右に開かせ、少し強引に中へと指を飲み込ませていく。 「あ、ぁんっ……んっ…」 根元まで差し入れた指が、ゆるゆると奥を捏ね、引きだしてはまた差し込まれる。花芯を舐めていたビクトールの舌がその動きを助けようとするかのように、蕾の周りをぐるりと舐めた。 「あ、ひっ……あぁ…」 「気持ちいいか?まだぎっちぎちだもんな……ちゃんと時間かけて濡らしてやるからな……」 「いやだ…ぁ……ゆるし……て……」 おかしくなる……とフリックは呂律の回らない舌でビクトールに懇願する。 そう言いながらも、ビクトールの指が暖かな最奥を探るたび、フリックはびくびくと花芯を震わせ、その先端から透明な蜜を流した。その蜜をすすり上げる音と、蕩けきった内側をかき混ぜる音。フリックはびくびくと腿を震わせた。 「イくか?…ん?」 「い……っ…あぁっ…!」 ビクトールが知り尽くしたフリックの一点をぐるりとかき回すと、切羽詰ったような声を上げ、フリックは達した。とろりとした蜜がしとどに溢れ、ビクトールの口元を濡らした。生暖かいそれを、ビクトールの舌がぺろりと舐めとる。 「はぁ……はぁ……っ…」 フリックはじくじくと疼く下半身に、もう嫌だというように涙を浮かべた。 二度も射精して、それでもまだ足りないとでもいうかのように勃ち上がったままで、いったいどうしろというのだろう。 大きくしゃくり上げて涙をこぼすフリックに、ビクトールが身を乗り出し、ぐいとその頬を拭う。 「泣くな。最後までちゃんと付き合ってやるからよ」 「い、いいっ…も……触る、なっ……!」 「馬鹿言うなって、薬抜けるまではヤらなきゃ、辛いだけだぞ」 それなら気持ちいい方がいいだろう?と勝手なことを言って、ビクトールはフリックの身体をうつ伏せにすると、高く腰を掲げさせた。 「なっ……やめろっ!!」 「あーあ、こっちもモノ欲しそうにしてるぜ」 柔らかな双丘を押し広げるように撫で上げ、その奥にひっそりと息づく蕾を露わにして、ビクトールは欲情した眼差しをそこに注いだ。 「イヤラシイ色して……口広げて俺のこと誘ってんのか?」 「ビクトールっ!!」 「ああ?挿れて欲しいのか?」 違う…とフリックは言えなかった。 ついさっき、みじめなくらいあっさりとその熱を放ったというのに、それでもまだ中途半端に熱く疼く身体が、もっと別のものを求めている。否定できない。 「フリック……」 ビクトールは崩れ落ちそうに揺れるフリックの腰を片手で支えると、腕を伸ばしてチェストの中を探った。あのカミューのことだから、きっといろいろ役立つ道具を置いていることだろう、と目的のものを探す。 やがて見つけだした小さな瓶に、ビクトールは低く口笛を吹いた。 「こりゃすげぇ色だな」 「な……にっ…」 怯えたようにフリックが顔だけを背後に座り込むビクトールへと向けた。 「手っ取り早く濡らしてやるよ。そしたらすぐに挿れられるしよ、ちょっと冷たいかもしれねぇけど、我慢しろよ」 毒々しいピンク色のローションの入った小瓶の蓋を開け、ビクトールがフリックの腰の辺りをそっと撫でた。 「やめろっ!!」 「はいはい、暴れんなって……」 ヒクつく蕾に小瓶を傾ける。トロリとした液体が肌を流れると、フリックはひゅっと息を飲んだ。 つぅっと最奥を濡らし、脚の間を流れ、内腿へと零れ落ちた液体は、シーツをぐっしょりと濡らした。 フリックがその気持ち悪さに身を捩ると、収縮した蕾がぐちゅっと音を立てた。ビクトールは空になった小瓶を乱暴に床の上に投げ捨てると、いきなり二本の指をフリックの中へと突きたてた。 「ひぃ……あ、あっ…いたッ……!」 「力抜けって…奥まで濡らしてやるから」 すっかり柔らかく蕩けた入口を広げ、ビクトールはローションを奥へと塗りこめるようにして、ぐちゅぐちゅと指を回した。 淫らに濡れた蕾は一瞬ぎゅっと固く閉ざされたが、差し込まれた指を二本ばらばらに動かされると、やがて力なくビクトールの指を内部で締め付け始めた。 「中に誘い込んでるみてぇだな……欲しくて欲しくて、たまんねぇって感じだ」 「んっ…ああ……っ…はぁ…」 「ここか?それとも、こっちも好きだよなぁ」 一番感じるポイントを情け容赦なく擦られ、フリックはとうとう声を上げてその先をねだった。 「ビクトー……ルっ!もぅ…いいか、ら……あ、んぅ…」 「ん?ちゃんと口にしておねだりしてみな」 「は……ぁあ……挿れ……てくれ…もぅ我慢でき、な…」 ひっきりなしに襲いかかる快感は辛いだけで、フリックは自由にならない手首を必死で動かして放置されたままに己のモノに触れようと蠢く。 「そりゃ無理だろ……」 くくっと笑い、ビクトールがもう片方の手でフリックの花芯をあやすように軽く握りこむ。 「ああっ……は…ぁ…っ」 「あんだけイってもまだガチガチだな……」 いったいどんな薬飲まされたんだ、とビクトールは少し心配になったが、それでも目の前で乱れるフリックの姿に、いつになく興奮してしまうのは止めようがない。 ビクトールは再び腕を伸ばして、チェストの周辺に散らばった玩具の中から一つを選び出した。 「なぁ……ちょっと試してみるか?」 そう言って、ビクトールがフリックの目の前に差し出したもの。それが何なのか、一瞬分からずフリックは涙で潤んだ目でそれを凝視した。そして、それが何なのか理解したとたん、顔色を変えて声を上げた。 「やめろっ!おま…ぇ…何考えてんだっ……」 「使ったことねぇだろ、あぁ…こっちにするか、見てみろよ、けっこうな高級品だぜ、こりゃ」 だから何だって言うんだっ!とフリックはしげしげと怪しげな玩具を手にするビクトールを詰った。 目の前に差し出されたバイブレーター。 最初に見せられたものは、色も形も本物そっくりのそれで、次にビクトールが手にしたものは、グロテスクな色をしたイボつきのものだった。 「安心しろって、これくらいなら余裕だろ、俺のが飲み込めるんだから……」 「嫌だっ!!あ、ばかっ…やめろっ!!」 ビクトールはフリックの背後に座り込むと、自分の膝の上にフリックの脚を引き寄せ、淡く色づく窄まりをつっと指で撫でた。とたん、フリックが切ない声を上げる。 「俺だって自分のもんでお前のこと犯りてぇのは山々だが、今夜のお前に付き合おうと思ったら、ギリギリまで我慢しておいた方がいいだろうし…な……」 そんなことを良く言えたものだ、とフリックは熱く沸騰しそうな頭で毒づいた。いつも一回くらいじゃぜんぜん満足せずに、挑みかかってくるくせに。 「フリック、力抜け……」 「嫌だ……や……あっ…ああっ!」 冷たい玩具がフリックの後ろにひたりと当てられた。初めて経験するその無機質な感触にぞっとして、フリックは思わず身をすくめた。 「力抜けって……挿れっぞ」 「ああっ……んぅ……っ」 ローションでたっぷり濡らされ、ビクトールの指で散々解されていたせいで、ほんの少し押し込まれただけで、フリックは拒むことなく素直にそれを身の内に呑み込んでいく。 指なんかとは比べ物にならないほどの太さと長さを持ったバイブの質感に、フリックはしゃくりあげるようにして喘いだ。 「あぁ……っ…ぅん、んっ、んぁ…っ」 先端が入ると、ごつごつとしたイボが入口にひっかかり、その擦れ具合が絶妙な快感となって、フリックに襲いかった。 「ああっ!……やだ……もぅ…やっ……」 「すげぇ……」 ぺろりと唇を舐めて、ビクトールは目の前の淫らな様子に見入っていた。まだほんの半分さえも飲み込んでいないフリックの蕾は、ビクトールが少し力を入れただけで、ぐちぐちと音を立ててその口を収縮させた。そのたびに、中から溢れ出てくるローションが内腿を伝って落ちる。 男にしては細い腰が痙攣するかのように、小刻みに震えていた。それは痛みからではなく、明らかに快感によるもので、ビクトールはぐるりと回すようにして、バイブをさらに奥へと埋め込んだ。 「ああっ……あ、んぅ…いやぁ…っ」 「嫌じゃねぇだろ?え、どんな感じだ?気持ちいいんだろ?」 「……っ…ぁあ…」 フリックはゆるゆると首を振った。 少しでも力を入れると、露骨にその形状を感じとってしまう。柔らかな内壁を刺激するイボの感触に、むず痒いような快感を覚えないわけにはいかない。 「もっと挿るだろ……」 「あっ…やぁ…め…て……」 「ほら、ずぶずぶ挿ってくじゃねぇか、イヤラシイ音させて…淫らな身体だなぁ、フリック……」 ぐちゅっと音をさせて、最後まで押し込むと、ビクトールは素早くそれをギリギリまで引き抜いた。 「………っ!!」 フリックは突然の痛みに声にならない叫びを上げた。大きく息を吸い込むと、すぐに、それは再び内側へと埋め込まれる。 「やめ……やだっ……あ、ああっ!!」 次第にスピードを上げて、玩具の抜き差しが激しくなっていく。でこぼことしたその突起が、引っかくようにして内壁を擦り上げる。何ともいえないその痛みとも、快楽ともいえない刺激の強さに、フリックはやがて感じ入ったような甘い喘ぎ声を上げ始めた。 「……ぃあ…ん…っ…ああっ」 「こんなおもちゃに感じてんのか?え?」 奥まで含ませたそれを、今度は円を描くようにゆっくりと回して、ビクトールはフリックの前に手を伸ばした。 「あーあ、こっちもびしょびしょだなぁ……」 にちゃっと粘着質な音をさせて、止まることなく溢れ出る蜜を花芯全体に塗りこめて、ゆっくりと上下に扱き上げる。 「あ…っ…ぃい……っ…ああぁ…んぅ…」 上擦ったような声。 ビクトールがひと際きゅっと強く根元を掴んだ瞬間、フリックは息を飲んで、力尽きたように身体を弛緩させた。生ぬるい蜜がビクトールの手の中を濡らす。 ひくひくと収縮を繰り返す蕾から玩具を引き出すと、ビクトールはごとりと床の上にそれを放り投げた。 「…う…ッ……ひ……っく…」 解き放たれたフリックは込み上げた嗚咽を押さえきれず、声を上げて涙を流した。 「フリック?」 「……っで……気が済んだのかっ!」 「おい……」 ビクトールは慌ててフリックの肩を掴んだ。その手を振り払うように、フリックは身を捩る。 「俺のことっ……いいようにいたぶって、それで…お前の気はす、んだのかっ!」 あんな玩具にさえ感じてしまう自分のことを笑いたかったのか? こんなみっともない姿……。 フリックはきつく唇を噛んで、溢れる涙を押し付けたシーツで拭う。 「ちょ……っと待てって…な、泣くなっ」 フリックの涙に、ビクトールは顔色を変えた。 つい調子に乗って、フリックの気持ちを少しも考えずにやり過ぎてしまったことに後悔の波が押し寄せる。 もちろん、そうしなければ薬で身体が辛いだけなのは事実だけれど、それでもこんなことはするべきじゃなかったと、ビクトールは小さく舌打ちした。 「悪かったっ!!お、俺が悪かったからっ」 「……っ…くしょう……」 ほろほろと泣き続けるフリックの顔を、ビクトールは恐る恐る覗き込んだ。 「なぁ…悪かったから泣くなよ……、その…お前があんまり色っぽかったから……つい……」 「………せ……」 「え?」 「外してくれっ!手……痛い……」 未だ拘束具に繋がれたままのフリックの手足の鎖を、ビクトールはのたのたと解いた。 すっかり痺れてしまった脚は閉じようとしてもままならず、フリックは忌々しそうに痛む手首を持ち上げて、ビクトールの頬を力なく叩いた。 「……俺は……お前のおもちゃじゃない…っ」 「……っ!」 「馬鹿みたいに……感じ…たのは……そうだけど……でも、こんなのは嫌だっ……やっ……」 最後まで言わせず、ビクトールがその両腕を広げてフリックを抱きしめた。 「いや……なんだ……」 小さくつぶやくフリックがたまらなく愛しく思えて、ビクトールは力いっぱい抱きしめると、汗と涙でドロドロになったその頬に口づけた。 「悪かった!本当に俺が悪かった。頼む、許してくれ」 「…………」 「フリック?」 フリックはどこか苦しそうにビクトールの胸を押し返すと赤い顔をして細く息をついた。 「も、いいから……頼む……腕を、解いてくれ……」 「なぁ……まだ苦しいか……?」 フリックがいつになく乱れたのは薬のせいだ。そうじゃなければ、とてもじゃないがあんな真似はできなかっただろう。 荒く息をするフリックは、どこかまだ熱に浮かされたような潤んだ瞳をしている。ビクトールは背中に回していた指先をそっと滑らせてみた。 「ひっ……あっ……」 びくっと身を震わせてフリックがやめろ、とビクトールの腕にしがみつく。 「……あんだけやってまだ足りないってのもすごいけど……なぁフリック……今度はちゃんとお前のこと抱きたいんだが、だめか?」 「………っ……」 「な、あんなおもちゃじゃなくて……俺がお前のことちゃんと抱いてやるからよ……」 返事を待たずに、ビクトールはフリックの唇を塞いだ。 すぐに絡んでくる熱い舌先に、フリックが嫌がっていないことが分かる。蕩けるように甘いその口づけに、しばし二人して夢中になった。音を立てて唇が離れると、フリックは追いかけるようにして顎を上げた。 反り返った白い首筋に舌を這わせながら、ビクトールは手早く衣服を脱ぎ捨てると、フリックの両足をぐいと押し広げた。 「は……っ…」 「悪ぃ……我慢できそうにねぇから、挿れていいか?」 ついさっきまで、さんざんフリックの媚態を目の当たりにして、もう張り切れそうなほどにそこは膨らみきっていた。 フリックは手を伸ばすと、その欲望に指を絡ませた。 「……熱い……」 ぐいと腰を押し付けられて、フリックは思わずつぶやき、そしてそのままゆっくりと根元から先端へと扱き始めた。いつもよりもずっと固く脈打つ雄が、自分の手の中でその熱量を増していくのに、ずくんと身体の奥が疼いた。 満たされたいと。 この怖いほどに熱いもので身体の奥深くを穿たれたいと、そんなことを考えている自分が情けなくて、フリックは泣きたくなる。 「ああ……いいぜ…もっときつく……」 首筋に顔を埋めたままのビクトールが溜息をつくように低くつぶやいた。促されるままに少しきつめに握りこむと、先走りの蜜がぬるりとフリックの手を濡らした。 「ちょ、ちょっと待て……イっちまいそうだ……」 ビクトールはフリックの手首を掴んでそこから引きはがすと、改めてフリックの脚を大きく左右に開いた。身を割り込ませ、腹につきそうなほどに反り返った屹立を、濡れて口を開いているフリックの蕾に押し当てた。 「む……りッ……だ……」 周辺をぬるぬると焦らすように先端で擦られ、フリックはいやいやするように首を振った。 「何が無理だよ……さっきあんな太いの飲み込んでたくせに……」 ビクトールがかりっとフリックの胸の飾りを噛んだ。片方の腕に膝裏をかけて、身を乗り出すようにしてフリックの中へと浸入を果たす。いつもなら拒むように抵抗を見せる入口は驚くほどすんなりとビクトールのものを銜え込んだ。 「あーっ…んっ…ん、んぁ…」 「すげ……何か中……どろどろだな……」 軽く腰を揺するだけで、フリックは嬌声を上げる。生ぬるくなったローションでぐしょぐしょになった内部は、それでもビクトールの欲望を奥へ奥へと招きいれよう蠕動を繰り返す。 焼けるほどに熱い内壁に包まれ、ビクトールはぶるっと胴震いをした。少しでも動けばすぐに弾けてしまいそうな気がして、根元まで押し込んだあとは、しばらくじっとその感触だけを楽しむことにした。 「フリック……」 「うっ……ああっ……はぁ…んっ…」 目一杯広げられた蕾が収縮するのは無意識なのか。フリックは時折襲いかかる痺れるような快感に耐えていた。じわりと背筋を這い登る熱。湧き上げる愉悦と羞恥。その時のフリックを支配したのは愉悦の方だった。 「ビクトール……」 「ん……?苦しいか?」 もうちょっと我慢な、とビクトールがフリックに口づける。唇に軽く触れたそれを、フリックが振り払うように顔を背ける。 「もう……頼むから……焦らさな…いで…くれ……」 苦しい……と小さな呟きがビクトールの耳に聞こえる。 「……ぅ…いて……くれ」 フリックが震える指先を口元へと運んだ。それが何の合図か分かっているビクトールはわざとその指先を軽く噛む。 「ん?どうした?」 ビクトールがぺろりと細い指をしゃぶると、フリックはよせ、とふざける男の顔を押しやる。ほんの少し動いただけで中のビクトールが膨れ上がったような気がして、フリックは耐えられないとばかりに、大きく息をついた。 「ちゃんと言えよ。どうして欲しいのか……」 「…………っ」 くちゃくちゃと耳朶を舐め回され、フリックは眉をしかめつつ、シーツの上に投げ出していた腕を男の背に回した。 「いてっ……」 意趣返しのつもりか、フリックが汗で滑る背にがりっと爪を立てる。ビクトールは小さく舌打ちすると、それでもどこか楽しそうにフリックの額に自分のそれを押し当て、青い瞳を覗き込んだ。 「ったく、強情だねぇ……」 「うるさ、いっ……あ、はぁ……ビクトールっ!」 「はいはい……舌噛むなよ……」 言うなり、ビクトールはずるっと雄芯を引き抜き、再び強く突き入れた。その衝撃にフリックはぎゅっとビクトールの首を引き寄せ、刻まれる律動に身を任せた。 いつもよりもずっしりと重い質感、大きくて、太い固まりが身体を引き裂いていく感覚が、激しい愉悦となってフリックを極みへと追い上げていく。耳を塞ぎたくなるほどの淫猥な濡音が繋がりあった部分から聞こえ、次第に早くなる抜き差しに、フリックは大きく背をそらした。 「あ、ぁあんっ……あっ……ひぁ……」 「ふぅ……くそ…っそんな締め付けんな……っ」 もたねぇだろうが、とビクトールがひくつくフリックの花芯に手を伸ばした。 「いやっ……あ、やぁあ……」 「いいか?気持ちいいか、フリック?」 「んっ…いい……っ…う、あぁ…あ、ああっ…」 がっしりと腰を掴み、ビクトールはこれでもかというように激しく腰を打ち付けてくる。荒い息と、肌を打つ音がやけに大きく聞こえ、フリックは我を忘れて自らも男の動きに合わせて腰を動かした。奥深くに男の…今にもはちきれそうなほどに膨れ上がった欲望をありありと感じる。 あまりの快楽の深さに、フリックは何度も意識を飛ばしそうになった。それを許さず、何度目かに、ビクトールがきつく奥を穿った瞬間、フリックは細く悲鳴を上げた。 「あ、ああっ……駄目……ぅあ…あ、ああっ!」 「くっ……は、ああ……」 ぞくっと身を震わすほどの快楽が背筋をかけあがり、ビクトールは動きを止め、フリックの中に飛沫を散らした。止めどなく溢れる白濁が、びっちりと繋がりあった隙間から音を立てて逆流してくる。ぬるりと太腿を濡らすその感触に、フリックは遅れて自らも欲望を放った。 さらりとした蜜が下腹部を濡らし、ビクトールの首に回していたフリックの腕がぱたりとシーツの上に投げ出された。 「ふぅ……ッく……」 ビクトールが満足したように息をつき、その身を離そうと腰を揺らす。 「や……っ……」 フリックが震える指でビクトールの肩をつかむ。 「んー?ちょっと待てって……」 ずるりと音をさせてフリックの中から引き抜き、ビクトールはどさりとフリックの上に圧し掛かった。 「重た……ぃっ…」 フリックががっしりとしたビクトールの身体を力なく押し返す。びくともしないその重みに眉を顰めながらも、合わさった肌の温もりに何故か安心する。ビクトールはその太い腕でフリックを抱き寄せると、深々と息をついた。 「すげぇ気持ちいい……お前、良すぎ……」 「ど、どうし……よう……」 そんなビクトールとは反して、フリックはどこか情けない声を出し、両手で顔を覆った。まだ身体の奥が疼いている。もう出すものなんて何も残っていない。それでも、こうして肌を触れ合わせているだけで、また形を変える花芯。物欲しげに腰が揺れてしまいそうな気がして、フリックはどうしたらいいか分からずビクトールを見つめた。 フリックが何を求めているのか分かったビクトールが 「………もう一回やるか?」 と、やんわりとフリックを握りこむ。 「……も…ぅ…嫌だ……こんなの……おかし…ぃ……」 「薬のせいだから仕方ねぇだろ……」 お前、本当に薬の効きやすい体質なんだなぁとビクトールは感心したように笑う。笑いごとじゃない、とフリックはビクトールの肩に額を押し付け、ゆるゆると与えられる刺激に甘い声を洩らす。 「ま、たまには餓えきってるお前ってのも刺激的でいいけどな」 ビクトールは勢いよく身体を起こすと、ぐったりとしたフリックの腕を引き、起き上がらせた。 「な、に……?」 「乗っかりな。自分で跨いで、好きに動いて、満足いくまで腰振ってみな」 「…そ、ん……っ…できな…ぃ……」 「できるさ。欲しいんだろ?」 「………っ!」 余裕たっぷりの言葉に、フリックはビクトールを睨みつけた。それでも、欲しくないと言うことはできない。むっとした表情を見せたまま、フリックは力の抜けた脚を開きビクトールに跨った。情けないと頭の片隅で思いながらも、満たされない身体はそんなフリックの理性を簡単に裏切る。 「………ちゃんと勃つんだろうな……」 精一杯の強がりのつもりで言った言葉に、ビクトールが低く笑いをもらした。 「自分で確かめてみちゃどうだ」 「…………」 フリックは眼下の男のものにごくりと喉を鳴らした。自分を満たしてくれる唯一のもの。 フリックはほんの少し身体をずらすと、すでに形を変え、頭をもたげ始めたビクトールの欲望を口にするため、ゆっくりとその頭を下げていった。 どかっと乱暴にイスを蹴り飛ばして、ビクトールがカミューを睨みつけた。 「おや、お疲れさまです」 読んでいた本を膝の上で閉じ、カミューはいつもの柔和な笑みを浮かべてビクトールを見上げる。 ビクトールはそんなカミューの向かい側に座ると、しばらく無言でカミューを見ていたが、やがてむっとした表情で言った。 「死ぬかと思ったぜ」 「フリックさんが?それともあなたが?」 「………」 嫌な野郎だ、とビクトールが毒づくと、カミューは楽しそうに笑った。 「何にしろ、二度とフリックにあんな薬飲ませるんじゃねぇぞ、それから、フリックに触るなよ」 「分かってますよ。ただ、あなたと喧嘩して落ち込んでいるフリックさんがあんまり痛々しかったので、楽にしてあげたかっただけですから」 「余計なお世話だぜ」 ビクトールのつぶやきに、カミューは片眉を上げた。 「ですがビクトールさん、あの手の薬は一種の毒薬で、だけど毒薬だからこそ、そこらで売ってる毒消しを使えば少しは身体が楽になるってこと、フリックさんはともかくあなたが知らないはずはないでしょう?それを知っていて、何もしなかったということは、あなただって立派に私の共犯者だと思いますけどね」 「………まぁ……フリックのあんな姿は滅多に拝めるもんじゃねぇしよ……」 図星をさされ、ビクトールはぶつぶつと言い訳をした。 カミューの言う通り、毒消しを使えば、あの手の薬の効き目はほとんど無くなる。だが、それを使おうと思うほど、ビクトールはまだまだ枯れてはいないのだ。 「とにかく、もう絶対にあんな薬フリックに使うなよ!」 「……そうですか?」 カミューは小首を傾げると、胸のポケットから琥珀色の小瓶を取り出すと、テーブルの上に置いた。 「では残念ですが、これは捨てることにしましょう。まだ少し残っていたんですけど……」 媚薬の入った瓶。蓋を開け、中の薬を捨てようとするカミューの手から、ビクトールが間一髪でそれを奪い取る。 「おや?」 「………くそ、もったいねぇことすんなっ」 フリックには言うなよ、と念を押すビクトールに、カミューは共犯者ですから、とくすくすと笑った。 「ところで、お前もその薬使って、マイクロトフと楽しんだことあんのかよ」 「私が?ありますよ。もっとも、飲んだのは私ではなくて、マイクの方ですけどね」 「え?」 「あの薬飲ませると、いつもよりイイんですよ。その残った薬、今度はあなたが飲まれて、試されてはいかがですか?」 フリックさんも喜ばれるんじゃありませんか?と微笑むカミューに、ビクトールはうーんと唸った。 喜ぶ、か、もしくはめちゃくちゃに怒るか。 どっちにしてもそれなりに楽しめることに違いはないか、とビクトールは手の中で小瓶を転がした。 |
2002年の闇オンリー(という名のオフ会)用に必死で書いたエロ話。エロ本持参が参加の条件だった(倒)参加者がツワモノばかりだったので、すっごい大変だったのを覚えてます。 もう今じゃ書けないです、こんな話。それにしてもカミューがフリックにいたずらしててびっくりした!そんな話だったなんて忘れてたよ!(笑) |