<HAPPY LIFE>


「さぁてと、あとはあっためるだけでオッケだな」
 シーナは鍋の中を覗き込んで満足そうに微笑んだ。
 何しろ、今夜は一ヶ月ぶりにハンフリーが単身赴任地から戻ってくる日なのだ。
 3日前、突然の電話で「戻る」ということを知らされてからというもの、シーナはずっとご機嫌であった。
 もともと料理なんて全くしないにも関わらず、思わずハンフリーの好きなものを作ってしまうほどにご機嫌なのだ。
 だいたい一緒になって3ヶ月もしないうちに、いきなり長期出向を言い渡されたのだ。そんな会社辞めちまえ、と喚き散らしたシーナにハンフリーは
「たかが1年だ」
 と言った。
 たかが1年?!
 1年も離れ離れで、どうしてそんなに涼しい顔をしていられるのか、シーナにはまったくもって謎だった。
「欲求不満で死ぬ」
 うるうると目を潤ませたシーナに押し切られ、最初のうちは週に1度は戻ってきていたハンフリーだが、さすがにそれも3ヶ月を過ぎた頃からは仕事が忙しくなったこともあり、半月に1回帰れればいい方になっていた。
 当然シーナは黙っちゃいない。
 さんざん喧嘩をしたあげく、深夜にタクシーを飛ばして遠く離れたハンフリーの元へやってくるという荒業をやらかしたこともあって、それ以来ハンフリーは、帰れない時には、電話でシーナの欲求不満を解消してやらなければならなくなった。いわゆるテレフォンセックスというやつである。
 しかし、耳元でハンフリーの声を聞きながら一人でするのも、そろそろ飽きてきていたのだ。まぁ毎日やっていればそれも当然である。
「電話の声と生身の身体じゃ大違いだからなー」
 ふっふっふ…と何を思い出してかシーナは含み笑いを洩らした。
「ハンフリー、今夜は寝かさねぇからな」
 シーナはぎゅっと握りこぶしをつくる。
 どうせ明日の夜にはまた戻ってしまうのだろう。いつも2日といられた試しがないのだ。それなら、嫌ってほど堪能しなくてはもったいない。
 今夜はどんなことをしようかなーと、妄想逞しくしていたシーナはふと思いついた。せっかく1ヶ月ぶりにハンフリーに会うのだ。うんとサービスして迎えなくてはいけないだろう。
 新婚、単身赴任、久しぶりの逢瀬!!……とくりゃ、答えは一つ。
 ずばり裸エプロンだ!
 シーナはそのアイデアにうきうきと履いていたジーンズを脱ぎ捨てた。
「エプロンなんてあったかなぁ」
 だいたい料理なんて滅多に作らないのだ。
 シーナはごそごそとタンスの中を引っ掻き回して、やっと目的のものを見つけ出した。
 誰かにもらったフリルつきの白いエプロン。
「うわー、こりゃ何か、マニアちっくだなー」
 だが悪くない。
 シーナはTシャツも下着もを脱ぎ捨て、素肌にエプロンをつけた。鏡の前で自分の姿を見ると、ちょっとマヌケな気もしたが、夫婦間のマンネリ化を防ぎ、さらなる情熱的な夜を手に入れるには、これくらいしなくてはだめだ。
 くるりと一回転して、シーナは笑みを浮かべる。
「さーハンフリー、これで欲情しないようじゃ男じゃねぇぞ」
 シーナがつぶやいた時、何とも運よく玄関先でチャイムが鳴った。
「あ、ハンフリーだっ!」
 ばたばたとシーナは部屋を飛び出した。
「おっかえりーvvvv」
 扉が開くと同時に飛びついてきたシーナに、ハンフリーはある程度予想していたこととはいえ、一瞬後ずさってしまった。
「会いたかったーvv」
 ぎゅうぎゅうとハンフリーの首に両腕を回すシーナのその格好に、ハンフリーは眩暈がした。
「………シーナ…」
「ただいまのチュウは?」
「シーナ、お前、何て格好してるんだ……」
 うんざりしたようにハンフリーが低く言う。
「裸エプロン!!どう?どう?似合ってる?」
 じゃーん、とばかりにシーナがハンフリーの前に仁王立ちになる。
 似合うとか、似合わないとかの問題だろうか?
 相変わらずの突拍子のないシーナの行動に、ハンフリーは渋い顔したが、久しぶりに会うシーナの姿を思わずまじまじと見つめてしまった。
 白いフリルのエプロンの裾からすらりと伸びた脚。当然生脚だ。レースで飾られた胸元。白い肌が妙に艶かしく見えて、ハンフリーは手にしていた荷物を床に置くと、華奢なシーナの身体に両腕を回した。
「なぁんだよ、もうちょっと喜べよ」
 渋い表情のままのハンフリーに、悪びれない笑顔でちゅっとキスするシーナ。裸エプロンなどと、今時のAVでもないであろう格好を平気でやるあたり、ジェネレーションギャップを感じないわけにはいかないハンフリーである。
 だが悪くない。
「お風呂にする?食事にする?それともセックスにする?」
「………セックス」
「え?マジで?」
 思いもかけないハンフリーの返事に、シーナが目を丸くする。
「……と言わないと、お前はまた怒鳴り散らすんだろう?」
「さっすがハンフリー。俺のこと、よく分かってる」
 1ヶ月ぶりに交わす会話がこれかと思うと、少々頭が痛くなるのも事実だったが、餓えていたのはハンフリーも同じだった。毎晩、受話器越しに聞こえてくるシーナの声に、何度欲情したか分からない。
 ハンフリーはすっとシーナの背中で結ばれたエプロンのリボンに手をかけた。無骨な指が細い布を引っ張ると、はらりとリボンが解けた。
 くすっと笑ったハンフリーに、シーナが首を傾げる。
「何だよ?」
「いや……何だか、プレゼントを開ける時の気分に似ているなと思ってな」
「包み紙を取る手間は省いてやったぜ」
「包み紙を破る楽しみっていうのもあるがな」
 なるほどねー、とシーナが感心したように笑う。確かに、服を脱がせてもらうっていうのは独特の興奮を煽る。今度はそうしてみよう、とシーナは新たな楽しみに微笑むと、軽く爪先立ってハンフリーにキスをねだった。軽く触れた唇はしだいに深く重なった。
 ハンフリーはなめらかなシーナの素肌を慈しむように探った。細い腰からなめらかな背中をたどり、柔らかな双丘をゆっくりと辿っていくと、シーナが小さく身じろいだ。
「こ、ここでするの?」
 こんな玄関先で。ハンフリーがしたいというなら、場所なんてどこでだっていいと思っているシーナだが、一応聞いてみる。
「……ムードがないか?」
 ふいに、ハンフリーが身体を屈めてシーナの膝の裏に腕をかけた。
「うわっ」
 突然身体が宙に浮き、シーナは慌ててハンフリーの首にしがみついた。シーナを抱き上げたまま、ハンフリーは大股でリビングの扉を開けた。正面のソファに、シーナを抱いたまま腰を下ろす。
「乱暴だなー、そういうとこも好きだけど」
 笑いながらハンフリーと向かい合うように膝の上に座りなおし、シーナはハンフリーに口づけた。
「んっ……」
 最初から噛み付くように深く唇を合わされ、熱い舌先が口腔を嬲った。どちらからともなく舌をからめ、溢れた唾液を飲み込む。こくりとシーナが喉を鳴らし、それでも含みきれない唾液が唇の端から顎へと流れた。
 頭の芯がぶれるような口づけに、シーナはうっとりと酔った。震える手でハンフリーの衣服を脱がせにかかる。シャツのボタンを外すのがもどかしく、それは途中であきらめて、ベルトを緩める。ズボンのジッパーを下げたところで、その手はハンフリーによって掴まれた。
「なにっ!?」
 不満たらたらで、シーナがハンフリーを睨む。
「そんなに急ぐな」
「……いいじゃん、溜まってんだ、とりあえず一回やろうぜ」
「お前は……どうしてそう下品なんだ」
「でも下品なのも好きだろ?」
「………」
 言い返せず、深々と溜息をついてハンフリーがシャツを脱いだ。
 目の前に現われた見事な肉体に、シーナはペロリと唇を舐める。すぐそばにある体温に身体の奥が疼くのが自分でも分かった。手を伸ばして、触れようとすると、ハンフリーがあっさりとそれをかわした。
「ケチっ!」
 怒鳴ったシーナの指先を、ハンフリーは口に含んだ。
「うっ……」
 指先からねっとりとしゃぶられて、シーナは顔を火照らせた。軽く噛まれると、それさえも刺激になってもっと熱くなる。ふやけるんじゃないかと思うほどに舐め尽くされたあと、ハンフリーの口から自分の指が吐き出された。
「……不思議な味がするな……」
 ハンフリーの台詞に、シーナがちょっと笑った。
「さっき作ってたスープ零したんだ。指にもかかったから……」
「なるほど」
 ハンフリーはさらりとシーナの前髪をかきあげた。
 この笑顔を、何度見たいと思っただろう。
 だが、見たいものはもっと他にもある。
「シーナ」
「ん?」
「エプロンを自分で捲ってみろ」
 ハンフリーが一体何を言ってるか、一瞬分からなかったシーナだが、すぐにその意味を知り、くすっと笑った。
「こういう時ってさ、恥らった方が燃える?それとも、淫らに誘った方が燃える?」
「……どっちでも同じだ」
「ちぇ、つまんねぇの」
 だからといって堂々と捲ってしまっては、おもしろくも何ともない。ハンフリーとのセックスで恥らうことなんて何もないシーナだが、今夜は新妻っぽく恥らってみようかな、と決めた。ハンフリーの膝をまたぎ、ソファに膝立ちになったまま、ぎゅっとエプロンの裾を押さえ、シーナはハンフリーを見つめた。
「恥ずかしいからヤだ……」
 そんなシーナの表情はハンフリーの嗜虐心を煽るには十分だった。
「……自分でやれ。欲しいだろう?もう…溢れてるんじゃないのか?」
 低い囁きが耳元をくすぐる。
 ぬるりとした感触が耳朶を掠めた。ぶるっと身をすくめて、シーナはそろそろとエプロンの端を指で捲った。ハンフリーの視線を痛いほどに感じて、それだけで胸が高鳴る。
「もっとだ…それじゃ見えない…」
 白い太腿がひくりと震えた。
 今さらハンフリーに何を見られようと、恥ずかしいことなんて何もないはずなのに、久しぶりに会うせいか妙に恥ずかしい。それでも、促されるままに、ゆっくりとエプロンを捲る。ひんやりとした空気に花芯が曝されると、思わずハンフリーの首筋にその顔を埋めた。
 くすっとハンフリーが笑う。
「……もうぐっしょりだな…」
「ばかっ!変なこと言うなっ」
「だが、ほら……もう溢れそうだ…」
 そろりと、ハンフリーの指がシーナのものをなぞり上げた。それだけで、とろりと先端から蜜が流れ落ちた。素直なその反応に、ハンフリーは喉の奥で笑った。
「よっぽど溜まってたようだな…じゃあ、自分でやってみろ」
「なっ!」
「見ててやる」
 何が悲しくて、目の前に恋人がいるっていうのに、自分で慰めなくてはいけないのだ。そんなことはもうさんざんヤり尽くして、お腹いっぱいだ。
 恨みがましい目でハンフリーを睨むシーナの指から、ハンフリーはエプロンの奪うと、ゆっくりと持ち上げ、そのままシーナの口元へと運んだ。
「自分でやってる間、咥えてろ」
「………」
 ゆっくりと赤い唇を開き、シーナは促されるままにエプロンの端を咥えた。じっと見ているだけで何もしようとはしないハンフリーの視線は、シーナの花芯へと注がれている。その視線にひくひくと震えた自分のものに、シーナは指を絡めた。
 くちゅっと濡れた音を立てて、ゆっくりと上下に指を動し始める。
「ふっ…ん、んっ……」
「脚は閉じるな……」
「んっ…んぅ……」
 次第に早くなる動きに、シーナは腰を揺らした。ハンフリーは白いエプロンの胸元から両手を忍び込ませると、ぷっつりと勃ちあがっている胸の突起を探り当てた。何度も指先で撫で、引っかくようにして擦り上げると、シーナは嫌々するようにゆるく首を振った。薄く開いた唇から零れる吐息に促されるままに、ハンフリーが身体をずらしてシーナの鎖骨の辺りに唇を寄せた。きつく吸い上げると、一瞬シーナが身体を強張らせた。赤く残った印に舌を這わせ、エプロンの紐を肩から滑らせ、ハンフリーは指先で摘み上げていた小さな尖りを口に含んだ。
「んっ…!」
 ハンフリーの濡れた舌先が執拗に尖りを舐め回し、軽く歯を立てる。ちくりとした痛みに、シーナは痩せた胸を大きく上下させると、耐え切れないというように口を開いた。
「も、うヤ…だっ……さわ、って…」
 言葉とともにはらりとエプロンの端が舞い落ちた。
 弱い胸への愛撫に目が潤んでくるのが自分でも分かった。ハンフリーが口づけた場所からじわじわと熱い疼きが広がっていく。くちゅっと音を立てて吸われるたびに、指の中のものがどくりと質を増した。
 このまま自分の指でイってしまうなんて、耐えられない。指を伝い、内腿を濡らしていく蜜。自分だけがこんなになって、ハンフリーが余裕なままというのも許せない。
 それでも止められない…。
 きつく花芯を扱き上げ、シーナがびくっと背を反らせた瞬間、ハンフリーがぐいとシーナの手首を取った。
「ぅ…!」
 あと少しでイけたのにひどい、と回らない舌で言いかけたシーナの身体は、ハンフリーによってソファへと押し倒された。シーナの片足をソファの背にかけさせ、ハンフリーは身を屈めた。今まで自分で慰めていたものが、ハンフリーの口の中に吸い込まれていくのを感じて、シーナは両手で口元を覆った。
「はぁ……っ」
 熱い口腔の中、ハンフリーの舌がシーナの花芯を根元から舐め上げる。喉の奥まで飲み込み、わざと音を立てて吸い上げ、唇と歯でゆっくりと扱いていく。
「……ハ、ンフリー…は、なっ…んっ!!」
 言葉にはできないほどの快感が、じわりと背筋を這い登った。少しでもそれを長引かせたくて、シーナは必死で意識を散らそうとしてみる。けれど、ハンフリーの指がシーナの柔らかな内腿を撫で、そのまま最奥へと滑り込んだ瞬間、シーナは勢い良くハンフリーの咥内でその欲望を吐き出した。
 しばらく味わっていなかった蜜を、喉を鳴らして飲み干したハンフリーは、放ったあともまだびくびくと震える花芯を飽くことなく舐め続けた。
「も、…やめろ…って……」
 シーナが力なくハンフリーの肩を押し返した。ここで二度もイってしまっては、あとが大変だ。それに、感じたいのはそこで、じゃない。身体のもっと奥深い場所で感じたい。ハンフリーの固いもので思う存分突かれたい。
 そんなシーナの想いが伝わったのか、ハンフリーは透明な蜜が滴る先端を軽く舌でなぞったあと唇を離した。
「ふぅ…っ…」
 大きく胸を喘がせ、シーナは胸まで折り曲げた脚を伸ばして、ハンフリーの肩をぐいと押した。
「くそ、これだから年寄りは嫌なんだ……」
 しつこいんだよ。
 ハンフリーはそんなシーナの悪態に低く笑うと、押し付けられた小さな踝に歯を立てた。
「これだから子供は困る。我慢が効かないからな」
 とたん、覆い被さってきたハンフリーの背をシーナが軽く叩く。
「人のこと言えるかよ」
 くすくすと笑いながら、シーナはしっとりとハンフリーに口づけた。


 シーナが根を上げるほどに十分に指で蕩かされた蕾に、ハンフリーがぬるりと滑る切っ先を押し当てた。ソファに浅く腰かけ、大きく両足を広げたシーナは力を抜いて熱い昂ぶりを迎え入れようと腰を揺らした。
「はや、く……」
 潤んだ瞳で訴えるシーナの喉元に口づける。
 物欲しげに収縮している其処は、先端を軽く押し入れただけで、待ちかねていたかのように、ハンフリーの張り詰めたものを飲み込んでいった。
 ぐっと力を入れて一番太い部分を押し込むと、シーナはびくっと背を仰け反らせた。
「ん、ひぁ…あっ……!」
 狭い内壁を押し進んでくる焼けるほどに熱い塊。ず、ずっと腰を揺らしながら最奥まで埋め込むと、ハンフリーは労わるように、シーナの青白い頬を指先で撫でた。
「痛いか?」
「んっ……へ、いき…でも…あっ!」
 軽く突き上げられて、シーナは思わず声を上げた。限界まで広げられた場所がずきずきと疼いている。ぴったりと合わせられた胸から響く鼓動に、ハンフリーも興奮しているのだということを知り、嬉しくなる。
 求められるままに唇を開き、濡れた舌を絡めた。緩慢な動きで、ハンフリーが抽挿を始めると、甘い痺れが身体中を走った。もっと、とシーナが無意識のうちに腰を振ると、ハンフリーがそれを与える。
「あ、ああ…ん…っ…イイ…」
 ぎりぎりまで引き抜いて、一息で奥まで突き入れる。そのたびに、ぐちゅっとぬめった水音が響いた。ハンフリーが滑らかなシーナの身体を何度も手の平で辿った。脇腹から、胸、肩、首筋、背中…。その存在を、自分のものだということを確かめるかのように、余す所なく撫で上げる。
 ハンフリーが触れた所から熱く火がついていくような気がして、シーナはぶるっと身を震わせた。小刻みに律動を繰り返すハンフリーの腰に手を回してきつく引き寄せると、シーナは小さな声で訴えた。
「もっと……っ…」
 もっと強く。もっと激しく。もっと奥まで。
 触れられてもいないのに、シーナの花芯の先からは白濁の混じった蜜が流れていた。とろりと幹を伝い、ハンフリーを飲み込んだ蕾までじっとりを濡らす蜜。獣じみた荒い息のまま、ハンフリーはシーナの身体を軽く持ち上げると、そのまま横向きに押し倒した。
「い、った…っ!」
 ハンフリーのものを奥深くまで飲み込んだまま、ぐるりと体位を変えられて、シーナは涙目のまま男を睨んだ。
「痛いだろっ!ばかっ…」
「馬鹿はどっちだ…もっと緩めろ…」
 ぎっちりと締め付けられ、ハンフリーは眉をしかめた。上になったシーナの脚をさらに押し広げ、交わった部分を露わにすると、ハンフリーはシーナの花芯に手を伸ばした。
「やっ……!」
 くちゅくちゅと、二三度上下に扱き上げられただけで、あっさりとシーナは白濁を放った。吹き零れた蜜はハンフリーの下腹部に飛び散る。
「シーナ」
「……さいてー…」
「どうして欲しい?」
「……」
 ずるりとハンフリーが腰を引く。逃すまいとするかのように、シーナの内壁が収縮した。なおも引きぬこうとすると、シーナがたまらず声を上げた。
「抜くなっ!や…っ…もっと…奥まで…」
「奥まで?」
「入れ、てっ……」
 張り出した先端ぎりぎりのところまで退いた塊が、再び押し込まれる。
「……擦って…」
 シーナの言葉に応えるように小刻みに内壁を揺らす。
「…入れて…もっと奥まで……」
 ぐぷっと音を立てて、根元まで飲み込ませる。深々と銜え込んだ固いものをシーナは無意識のうちに締め上げた。その心地良い締めつけに、ハンフリーは大きく息を吐いた。
「シーナ……動くぞ…」
「動いて……うんと…いっぱい…」
 その言葉にハンフリーは激しく突き上げを始めた。ハンフリーの太いもので奥を突き上げられるたび、シーナの口からは甘い悲鳴が上がった。がくがくと揺さぶられ、堪えようのない快楽が駆け抜ける。
 二人が交わっている部分から、ぐちゅ、ぬちゅっと粘液が掻き混ぜられるような音が部屋に響いた。
「あ、んっ、んっ、ああっ…!」
 頭の中が真っ白になる。
 一番感じる場所を容赦なく攻め立てられて、シーナはぱたぱたと涙を流した。身体中が、骨の芯まで溶けそうなほど熱かった。
「は、んっ…ああぁ…も、おかしくな……っ…」
「まだだ…」
 ハンフリーの声もどこか上擦っていた。力をなくしたシーナの足裏を両手で押し上げ、身体を開かせると、自分の雄で容赦なく抉りあげた。
「ああっ…あ、あっ…いや…っ!」
 がんがんと腰を打ち付けられ、限界を超えたシーナがぎゅっとハンフリーのものを締め付けて、三度目の蜜を放った。弛緩するシーナの身体を抱えて、ハンフリーがさらに何度か大きく突き上げた。
「……っ!」
 蕩ける内部を味わい尽くしたところで、ぴたりと動きを止め、息をつめて、シーナの中に飛沫を散らす。解き放ったあとも、まだ足りないというように、ハンフリーは何度か小刻みに腰を動かした。ねっとりとからみつく秘肉を楽しむかのように、奥を揺さぶる。
「んっ…う…」
「シーナ……」
 柔らかく耳元で囁かれ、その心地よさに、シーナはうっとりと息を吐いた。やがて満足したのか、ハンフリーがずるりとシーナの中から己のものを抜き出した。シーナの内腿を生暖かい精液が伝い落ちた。




「え、単身赴任終わったの?」
 ソファの上で、ぐったりとしていたシーナが顔を上げる。
 冷たい飲み物を手渡すハンフリーが、怪訝な顔を見せた。
「そう言っただろう?3日前の電話で」
「え?ただ戻るからって言っただけじゃんか」
「いつもは『帰る』だろう。出向は解除になった」
 『帰る』と『戻る』の違いなんて、説明してくれなきゃ分かるかよ、とシーナはぶつぶつと文句を言いそうになったが、やめた。
 これからはずっとそばにいるという嬉しさが一気にこみ上げたからだ。
「風邪引くぞ」
 半裸のシーナの肩にシャツをかけ、ハンフリーは床に腰を下ろした。小さなテーブルには、シーナが用意していたスープの皿。
「美味しい?」
「ああ…」
 そのハンフリーの肩に顎を乗せて、シーナが甘えたような声を出す。
「なー、一つ聞いてもいいか?」
「何だ」
「あっちにいる時にさ、浮気とかした?」
「………」
「なーってば」
 ハンフリーは手を伸ばしてシーナの髪をくしゃりと撫でた
「お前がいるのに、どうして浮気なんてしなくてはいけない」
 というか、そんな暇も体力も残っていないというのが正しい。
「………だよな」
 ハンフリーの返事に満足そうに笑うシーナ。
 分かっていて聞いたのか、とハンフリーも笑う。
「おかえり」
 シーナがハンフリーの頬に口づける。ああ、といつもの愛想のない返事を返すハンフリー。けれど、そこに限りない優しさが混じっていることに気づけるのはシーナだけだ。
「さ、じゃそろそろベッドに連れてってもらえる?このままじゃ風邪引いちゃうからさ」
 シーナがぎゅーっとハンフリーの首に両手を回す。
 もちろん、連れていくだけではすまないだろうことは、ハンフリーも十分分かっている。分かってはいたが、それは自分も望むところだった。
 ハンフリーに抱き上げられたシーナが、
「でもさ、テレフォンセックスも楽しかったよな」
 と、にっこりと笑う。
 ハンフリーはしばらく考えていたが、やがてぽつりと言った。
「………いや、やっぱりちゃんと触れる方がいい」
「んじゃさ、隣の部屋同志で、子機を使ってするってのはどう?我慢できなくなったら、すぐに触れるしさ」
「……いや、遠慮しておく」
 何でー!と文句を言うシーナを黙らせるために、ハンフリーはシーナの唇を塞いだ。


単身赴任中の旦那と、団地妻シーナ。あまりのアホ話に、書いてて何度も倒れそうになりました(笑) 今回のツボは「テレフォン○ックス!」 し、してたのか、お二人さんっ!!ハンフリーいったいどんな言葉を言ったんだろう……淫らなひよこは愛するマスターへ押しつけます。返品不可!!(爆笑)

イラストをちゃんと見てみる?

BACK