<朝寝>

私は睡眠をこよなく愛している。
もちろん騎士として訓練されているから、数日くらいならば眠らなくてもちゃんと務めを果たすことはできるけれど、それとこれとは別である。
特に朝、一度目が覚めた後にもう一度眠る…いわゆる朝寝というものは格段に愛しいものだ。
朝寝は、私の最も愛しているものだといっても過言では……

「起きろ、カミュー」

思考を遮って、耳元で低い声が私の名を呼んだ。
もう幾度となくその名を口にしているくせに、いつも彼はどこか照れたような色を滲ませて私を呼ぶのだ。
気づかないフリをして無視していると、もう一度名を呼ばれ、そして大きな手がふわりと髪に触れた。
「カミュー、もう朝だ、起きてくれ」
その手触りを楽しむかのように、何度となくマイクロトフが髪を梳く。それが心地良くて、また眠りに引きこまれそうになる。
「しょうがないヤツだな……」
呆れたような声色に薄く目を開けると、眩しい朝の光とともにマイクロトフの姿が見えた。
「うー……ねむ…い……」
「夜通し本など読んでいるからだ」
「だってとても面白い本だったんだ。私の一番好きな作家でね…」
「それ以上にお前は朝寝が好きなんだな?」
「ああ、大好きだ…だからもうちょっと眠らせてくれ」
「……だめだ、起きてくれ」
困ったようなマイクロトフの声。こうして毎朝私を起こすのは大変な苦労だろうと思う。何しろ朝寝は私の最愛の友なのだ。
けれど……
「カミュー」
「わかったよ、起きるよ」
のっそりと身を起こすと、ほっとしたようにマイクロトフがその頬に口づけてくれる。まるで小さな子供に「よくできました」と言わんばかりのその仕種に、私は少しむっとしてみせる。
「私は子供か?」
「寝起きの悪さでは近いものがある」
「……」
ここまでひどいことをよくも恋人に言えるものだ。
「おはよう、カミュー」
「ああ、おはよう」
そんな不機嫌な気持ちも、軽く合わされた口づけで一掃されてしまう。もっともっと眠っていたいのに、いつもこうして彼に起こされてしまう。その理由は簡単だ。
それは朝寝以上に、私がマイクロトフのことを愛しているからに他ならない。なかなか素晴らしい発見だと思ってマイクロトフにそのことを告げると
「朝寝と比べられて負けるわけにはいかない」
とマイクロトフは憮然とした表情でつぶやいた。
「………」
「何だ?」
「いや、別に」
さすがに「かなり紙一重だったんだ」とは言えなかった。
それを口にした時のマイクロトフの表情が想像できて、私は思わず笑いを洩らした。




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