20000ポッチの愛


 城の一角に深夜12時から賑わう場所がある。
 その夜も、その部屋では一攫千金を狙う連中で溢れかえっていた。
「おいおい、もうそのへんでやめておいた方がいいんじゃねぇか?」
 タイ・ホーがどこか楽しそうに賭場を覗き込む。
 チンチロリンに興じているのはゲオルグ、フィッチャー、ホイ、リキマル、そしてシーナである。
 どう考えてもこの場に不似合いなのはシーナである。
 だいたい、ここは未成年は入室禁止のはずなのだ。
 それを知らない管理人のシロウではない。
「いいのか、シロウ。ハンフリーにばれると酷ぇ目に合うぜ」
「バレなきゃ平気だろぉが。だいたいな、ディランのヤツだってよく来てるんだぜ。もっとも、あいつは妙に勝負運が強いから、いっつもがっぽり稼いでいきやがる。来て欲しくねぇ客だがな」
 やれやれとタイ・ホーが苦笑する。
 今まで賭麻雀を楽しんでいたタイ・ホーはそろそろ帰ろうかと、他の客を冷やかして回っているところだった。この賭場ではチンチロリンの他にもいろいろと賭け事のできるゲームが用意されており、みな思い思いのゲームで自分の金を増やそうと目論んでいる。もっとも、そうそう簡単に勝てないのが世の常であり、ほとんどの者は負け込むものである。
 シーナもその例に漏れてはいない。
 かなり前からシロウ相手にチンチロリンの勝負をしているのだが、どう見ても勝っているようには見えない。
「げ、何だってそんなに強いんだよっ」
 シーナがやけくそ気味に手にした金を投げつける。
 毎度有りぃ、とシロウがその金に手を伸ばす。
「どうする、シーナ、もう一勝負するかい?」
「う〜〜ん…」
 ここのところ、ずっと戦闘に出ていたため、かなりの金が貯まっているのだ。自分の自由になるお金があると思うと、ついつい遊びたくなってしまうのは仕方のないことで、シーナは昨夜からこの賭場に入り浸っているのである。何しろ若いのである。誘惑に勝てないからと言って、誰が責めることができるであろうか。
 もちろんハンフリーには内緒である。
 何しろ、シーナが酒を飲むのでさえいい顔はしないのだ。賭け事なんて以ての外である。
 しかし今までバレたことはない。
 ハンフリーがこの賭場に来ることは絶対にないし、ここにいる連中には堅く口止めをしている。
「さぁ、どうすんだ、シーナ」
 シロウがにやにやと笑いながらサイコロを手の中で転がす。
「くそっ、こうなったらとことんまでやってやる」
「おいおい、シーナ、もうやめとけって」
 タイ・ホーがくしゃりとシーナの頭を撫でる。
「いいんだよ、どうせ思いもかけない臨時収入だったんだ。使うならぱっと使ってしまった方がいいんだよ。金は天下の回りものって言うだろ?」
「おお、さっすがシーナ、そうこなくっちゃな。んじゃ、掛け金上げるか?一勝負1000ポッチでどうだ?」
 シロウが嬉々としてサイコロを手にする。
 タイ・ホーにしてみれば、シーナが完全にカモにされているのは見え見えだ。
 シロウもこんな子供相手に何本気になってんだかな、とあきれてしまう。 
 しかしまぁ、傍から見てる分には楽しいもので、タイ・ホーは胡座をかいてその場に座ると、コトの成り行きを見守ることにした。
「んじゃ始めるぜぇ」
 シーナはポッチを握り締めて、最後の勝負に挑んだ。

 一文なし。
 何とも見事にシーナはすっからかんになってしまった。
 当然である。
 何しろ相手は城一番の賭博師のシロウである。勝とうと思う方が間違っている。
 おまけに一文なしくらいならまだいいのだが、シーナはつい調子に乗って借金まで作ってしまったのだ。
「くっそ〜、ついてない〜!!!」
 その場にへたりこんでシーナはがっくりと肩を落とした。別にお金には執着していない。ただゲームに負けたということが口惜しくて仕方がないのだ。この辺りがお金に苦労したことのない大統領の息子というところだろうか。
「ま、こんなもんだろうな。これに懲りたらもう賭け事なんかに首突っ込むんじゃねぇぞ」
 タイ・ホーが苦笑しながら立ち上がる。
「さぁシーナ、借金はどうする?けっこう負けが込んでるぜ」
「いくら?」
「あ〜最後の勝負で2000ポッチ負けたから…全部で20000ポッチだな」
「20000ポッチ??げ、そんなに?」
「どうする?俺と一晩付き合うなら、チャラにしてやってもいいぞ」
 すでに明け方近い。
 シロウは今夜のあがりを勘定しながらシーナにとんでもないことを言い出した。
「お前と一回できるなら、20000ポッチでも安いくらいだしよ」
「ん〜」
 以前のシーナならこの相談には飛びついたことであろう。
 別にシロウのことは嫌いじゃないし、たった一晩相手をするだけで20000ポッチがチャラになるならお安いことだ。
 しかし、である。
 今はハンフリーがいる。旦那持ちとなった今、そうそう簡単にシロウと寝るわけにはいかないであろう。付き合いだした当初は、それなりに貞操を守っていたシーナであるが、最近はハンフリーの目を盗んで街の可愛い女の子と適当に遊んでいるのも事実である。
 しかし、相手が男となると話は別だ。
 浮気は女としかしない。
 それがシーナの中にあるルールなのだ。
 まぁあまり威張れたものではないのだが。
 シーナはあまりに魅力的なシロウの誘いに首を横に振った。
 シロウがちっと舌打ちする。
「んじゃ、どうする?借金返済はいつまでも待てねぇぜ、三日以内に返せねぇなら、取り立てに行くぜ」
「取り立て?」
「おうよ、ハンフリーの旦那なら、がっぽり貯めてるだろ?妻の借金は夫の借金ってね。シーナの負けはまとめてハンフリーに請求させてもらうぜ」
「何だってっ!!!」
 シーナは青くなる。
 賭場でチンチロリンをしたうえに、20000ポッチも借金を作ったなんて知られたら、ただではすまないだろう。
 シロウの言葉にタイ・ホーは大声で笑った。
「そりゃいい。ハンフリーなら20000ポッチくらい即金で払ってくれるだろうさ。良かったな、シーナ。持つべきものは節約家の戦闘要員の旦那ってな」
「冗談じゃないよ、こんなことハンフリーに知られたらただじゃすまない。あんたたち、人のことだと思っていい加減なこと言うなよなっ」
「んなこと言われてもなぁ。借金作ったのはお前だし?知られんのがまずいんなら、やっぱりシロウに身売りするしかないんじゃねぇか?」
「う〜〜〜っ!」
 思わず「そうします」と言いそうになったシーナだが、はた、と気づいた。
「そっか、その手があったか」
 嬉々としてシーナが立ち上がる。
「シロウ、3日待ってくれよな。ちゃんと20000ポッチ耳揃えて返すから」
「いいぜ、返せなかったら一晩付き合えよ」
「しつこいんだよっ!」
 高笑いするシロウとタイ・ホーに下品にも中指を突き立てて、シーナは賭場をあとにした。


 昨日の夕方、帰ってきたハンフリーは、よほど疲れていたのかシーナに無事な姿を見せるとすぐに自室に引きこもってしまったのだ。
 シーナは手にした合鍵でそっとハンフリーの部屋の扉を開けた。
 中は薄暗く、どうやらハンフリーはまだ眠っているようだ。
 シーナは足音を忍ばせて、そっとベッドに近づいた。
 ハンフリーは上半身裸で、まるで死んでいるかのように眠っている。
「おいおい、ほんとに死んじまってるんじゃないだろうな」
 あまりに静かに眠っているので、シーナは確かめるようにそっと顔を近づけてみた。
 疲れてるのかな。
 そりゃそうだろう。
 何しろシュウからの密命を受けて、10日ほど城を開けていたのだ。いったい、どこへ行っていたのか分からない。出かける前にシーナがいくら聞いても答えてくれなかった。
『心配するな』
 たった一言で、シーナを残したまま旅立ってしまった。
 だからずっと心配だったのだ。
 ハンフリーがどこにいるのかも分からない。
 どんな危険な目にあってるのかも分からない。
 だからその不安を紛らわすためにディランに頼んで、小さな戦闘にずっと出ていたのだ。
 だけど、どんなにモンスターどもと戦って気を紛らわせようとしても、いつも心の端でハンフリーのことを思っていて、安心できなかった。
 ずっと不安だったのだ。
 自分の恋人がどこにいるのか、何をしてるのか、生きてるのか死んでるのか分からない状況なんて辛いだけだ。
 シーナは片足をベッドに乗り上げ、安らかな寝息を立てるハンフリーの顔を覗き込む。
 そして、そっとその唇にキスをしてみた。
 暖かい。
 大丈夫。ちゃんと生きてる。
 ほっとしたシーナの身体がいきなり反転させられ、ハンフリーの身体の下へと巻き込まれた。いったい何が起きたか分からず、シーナが目を見開く。
「ハ、ハンフリー…起きてたのかよっ!くそっ、性質悪りぃぞっ!」
「寝込みを襲おうなんて10年早い」
 寝起きの掠れた声でハンフリーがつぶやく。
 確かに、シーナがもし敵だったらハフリーは間違いなく死んでいる。ハンフリーがほんの少しの物音でも、微かな気配でも目が覚めることはシーナが一番よく知っているのに、すっかり忘れていた。
「どうした…もう朝なのか?」
 ハンフリーが柔らかなシーナの髪を撫でる。
「朝だよ。おはよ、ハンフリー」
 無精髭の伸びた顎先にそっとキスする。
 そして、両腕を首に回して、ぎゅっと抱きしめる。ハンフリーの匂いがシーナを包み込む。
 安心する。
 シーナは自分が本当に不安だったことに、今さらながらに気づかされた。
「で、こんな朝早くにどうしたんだ?」
 忘れていた。
 シーナは身体を起こすと、まじまじとハンフリーを見た。
「何だ?」
「ハンフリー、俺に20000ポッチの価値ある?」
「………何の話だ?」
「だからっ、俺に20000ポッチの価値あると思う?」
 真剣な目で訴えるシーナにハンフリーはやれやれと目を閉じる。
「ああ…たぶんな」
「じゃあさ、朝っぱらから何だけど、20000ポッチで俺のこと買ってよ。うんとサービスするからさ。ハンフリー疲れてるなら、寝てるだけでいいし」
 シロウに身売りするくらいならハンフリーに買ってもらえばいいのだ。
 何て単純明快な答えであろうか。
 しかし、シーナは肝心なことを忘れていた。
「…シーナ」
「なに?」
「どうして今さら金を払って、お前を買わないといけないんだ?」
「………」
 恋人同士ならセックスするのは当たり前で、今さらわざわざ20000ポッチの金を払う必要がどこにあるのだろうか?これまた単純明快な疑問である。ハンフリーに指摘され、自分の考えの盲点に今さらながらに気づいたシーナである。しかし、何としてもハンフリーに買ってもらわないことには、シロウに身売りしなければならないことになる。
 思わずしどろもどろになりつつも、シーナはなおも言い募る。
「あ〜、でもほらほら、たまには気分変えてさ、えっと…ば、売春ごっこなんていいかなぁって思ったりして…」
「……」
「だめ?」
「どうして20000ポッチなんだ?」
「え゛…?ええ〜っと」
「お前、何か隠してるだろ」
「や、やだなぁ、そんなわけないだろ、俺とあんたの仲でさ」
 ハンフリーは胡散臭そうな顔でシーナを見た。
 だいたいシーナは悪巧みはできても、嘘はつけない性格なのだ。どう見てもシーナが何かを隠しているのは見え見えなのだが、それを追求するにはハンフリーは疲れ過ぎていた。
「分かった、20000ポッチだな」
「え、いいの?」
「20000ポッチ出すから静かに眠らせてくれ」
 そう言うとハンフリーはブランケットを引き上げて再び眠ろうとしてしまう。
「ちょっと!!それはあんまりにも失礼だろっ。俺とエッチするより寝たいってことかよっ」
 シーナがブランケットを引きはがす。
 面倒くさそうに目を開けて、ハンフリーがため息をもらす。
「お前…金が欲しいのか、それともセックスがしたいのか、どっちなんだ?」
「俺、いいコだからさ、何もなしで金を貰うのが心苦しいだけなんだ」
 にっこりと笑うシーナにハンフリーは諦めのため息をついた。


 口づけは次第に深くなる。
 横たわるハンフリーに覆い被さるようにして、シーナが飽くことなくキスを繰り返す。
 よくよく考えれば10日間も肌を触れ合わせていなかったのだ。
 そう思うと、シーナは身体の奥が熱くなるのを感じていた。
「んっ…」
 うっとりするような甘い口づけを、もっと味わっていたいのは山々だが、それよりもっと欲しいものがある。シーナは身体をずらすと、ハンフリーのズボンに手をかけた。
「おい…」
 ハンフリーが肘をついて上半身を起こす。
「寝てていいよ。街のオネェさんたちに負けないくらいのサービスするから…いてっ」
「お前は…そんな所へ出入りしてるのか」
 殴られた頭をさすりながら、シーナはムゥと唇を尖らせる。
「自分だって行ったことくらいあるだろっ」
「……」
「あれ、ない…とか?」
 まさかねぇ。とシーナはハンフリーを見る。ハンフリーだっていい大人だし、そういう経験があってもおかしくはないと思し、そんなことで嫉妬するつもりもぜんぜんない。
 しかしハンフリーがその手の女とどうこうなるっていうのは想像できない。
「まぁいいや。20000ポッチ分、たっぷり楽しませてあげるよ」
 シーナはズボンを引き下すと、まだ柔らかいハンフリーのものを手にし、するりと口腔に含み込んだ。ぬるりとした暖かい舌の感触にハンフリーが小さく身じろぐ。
 口をいっぱいに開き、喉の奥まで招き入れたそれは、唇で二三度扱いただけで、すぐに硬度を増した。シーナはゆっくりと舌を使い始める。
「ふぅ…んっ、ん、ん…」
 ハンフリーの脚の間でシーナの頭が上下に動く。
 くちゅくちゅと唾液が絡まる音が聞こえ、ハンフリーは手を伸ばしてシーナの髪を撫でた。
 裏側を何度も舌が舐め上げる。先端からにじみ出てきた先走りの蜜を恍惚とすすり上げるシーナの表情は、まだ眠り足りないハンフリーを興奮させるには十分だった。
「んっ…」
 喉の奥を軽く突き上げられ、シーナは苦しげに眉を顰める。
 それでも唇を離すことなく、舌を蠢かす。すでに全てを口腔に収めることができないほどに大きくなったハンフリーの肉棒を横から咥えるようにして愛撫を繰り返す。
「シーナ…」
 少し上ずったようなハンフリーの囁き。
 どくどくと脈打つそれがきつく喉の奥を穿ち始める。咽返るような雄の匂いに、シーナは眩暈がしそうな気がして、必死でその動きについていこうとした。
「……っ!」
 軽く歯を立てた瞬間、どくっと音を立てて、快楽の証がシーナの口の中で弾けた。二度、三度放出される苦味のある精液をすべて飲み込み、シーナはやっと唇を離した。
 そして、先端に残る白い残滓をぺろりと舌で舐めた。
 汚れた口元を指で拭って、シーナが顔を上げハンフリーを見てニヤリと笑う。
「お客さん、溜まってただろ。すっげ濃い…いてっ!」
 再び殴られ、シーナは不満げに頬を膨らます。
「もうっ!いちいち殴るなよっ」
「下品なことを言うな」
「下品ったって、俺の口でイったくせに」
 シーナは身体をずり上げると、ハンフリーに口づける。すぐに潜り込んできたハンフリーの舌が、たった今放ったばかりの精液を舐め取るように口腔を犯す。
「んぅ…んっ…」
 ハンフリーの両手がシーナの身体の線をなぞり始める。シャツの裾から忍び込んできた指が胸の尖りを探り当て、何度も擦り上げるようにしてくすぐった。
「あっ…ん…」
 首筋に吸い付かれ、シーナが思わず仰け反る。
「シーナ」
「ん…な、に?」
「下だけ脱いで上に乗れ、20000ポッチ分、ちゃんと満足させてみせろ」
 ハンフリーの言葉にシーナは望むところだとばかりに微笑んだ。

 湿った音が部屋中に響く。
 言われた通り下半身だけを曝け出したシーナがハンフリーの胸に手をつき、濡れた蕾に猛った雄芯を受け入れていた。
「うっ…ん…ンッ,あアッ…」
 自ら淫らに腰を動かし、快楽を追いかける。
 先ほどさんざんハンフリーの指で嬲られたそこは、何なくハンフリーの昂ぶりを飲み込み、シーナが動くたびにぐちゅぐちゅと淫らな音を立てる。
「ふぅ…っん…」
 ハンフリーがシーナの腰を掴みその動きを助ける。
 下からの激しい突き上げに、シーナは息を飲む。身体の奥にハンフリーの熱を飲み込んだまま、しっかりと勃ち上がった自分の花芯を慰めようと伸ばした手をハンフリーが掴んだ。
「だめだ、先にイくのは許さない」
「だって…ああっ…もう…」
「サービスするんだろ?俺より先にイってどうする?」
 低く笑うハンフリーに小さく悪態をついて、シーナはシーツについた膝に力を入れて、腰を浮かせる。ギリギリまで引き抜いたあと、一気に腰を落とす。
 ぬかるんだ蕾がイヤらしい音を立てて最奥までハンフリーを飲み込む。
「ああっ…ぅん…」
 何度かその行為を繰り返すうちに、シーナは耐え切れないというように上半身をハンフリーへと倒した。
「くっ…」
 きつく締め付けられハンフリーが眉をひそめる。
 慣れ親しんだ身体は容易にお互いのイイ所を探りあて、そして痺れるほどの快感を生み出していく。ぱたぱたと蜜を滴らせるシーナの花芯が切なげに震える。ハンフリーは半身を起こすと、いきなりシーナの身体をベッドに引き倒した。
 シーナの中からずるりと欲望の証が引きぬかれる。その引きつるような感覚に、シーナはぞくりと身を震わせた。
「…腰を上げろ」
 ハンフリーが冷たく言い放つ。
 身体中が熱を持っているかのように、じんじんと痺れている。中途半端に放り出された蕾がひくつくのが自分でも分かった。
 両肩をシーツにつけたまま、シーナはのろのろと腰だけを高く掲げる。
 早く挿れて欲しくて。
 早く満たしてほしくて。
 ハンフリーの手がざらりとシーナの腰のラインを撫で、そのままさらに高く腰を引き上げた。
「いやっ…」
「もっと脚を広げろ。見えないだろ」
「も…やだっ…早くっ…」
 ゆるゆるとシーナが脚を開く。赤く色づいた蕾がひくひくと収縮する様子に、ハンフリーは目を細め、その華奢な身体に圧し掛かった。
 背中から抱きしめ、今にも弾けそうな花芯に手を伸ばす。
「ぅん…んっ…」
 くちゅっと淫らな音が聞こえ、シーナは大きく息を吐く。ハンフリーの指が先端をかすめ、放出を促すように軽く扱き上げる。
「んっ…んん…」
「…挿れるぞ」
 ぐいっと内腿を割り広げ、ぴたりと背中に肌を合わせたまま、濡れた粘膜の入口に堅く猛った自らの欲望を押し当てる。
「っ……ッ…」
 ひゅっとシーナの喉が息を吸い込んだ。
 一息に最奥まで突き入れられ、その重量感に自分がやっと安心していることに気づく。
 ハンフリーはここにいる。
 シーナはその事実に泣くたくなるほどの安堵感を感じる。
 ゆっくりと注挿が始まった。
「んっ、ん……ハンフリーっ…あっ…」
 身体の奥に熱い楔がのめりこむたび、ベッドが軋む。がくがくと揺すぶられ、シーナはずりあがる体を肩で支えた。
「あ、あんっ…ああ…いい…そこ、もっと…」
 自らも腰を揺すり、その瞬間を待つ。
 きつく突き上げられ、シーナの花芯から悦楽の蜜が零れた。
「ああっ…ん…んん…」
 ひくりと身を震わせ、シーナ目を閉じため息をついた。
 脱力したシーナの腰を掴んだまま、何度か小刻みに突き上げを繰り返していたハンフリーも、やがてシーナの中にその精を放った。


「20000ポッチのサービスにはほど遠いな」
 さらに2回交わったあとで、ハンフリーがぐったりとベッドに横たわるシーナに放った言葉である。その言葉に、シーナがきっ、とハンフリーを睨みつける。
「さんざんヤっといて、それはないだろっ!ちゃんと20000ポッチは払ってもらうからなっ、ヤり逃げなんて許さねぇぞ」
「わめくな。ちゃんと金はシロウに払っておいてやる」
「え?」
 固まるシーナにハンフリーが軽く肩をすくめる。
「お前が賭場に入り浸ってることくらい、最初から全部知ってたさ。シロウがお前にご執心だと、親切にも教えてくれる連中がいてな。これに懲りたら二度と賭け事なんてするんじゃないぞ」
 ぺちんとシーナのおでこを叩いて、ハンフリーはベッドを降りる。
「ちょっと…待ってよ」
「ああ、今のサービスじゃ20000ポッチの価値はないから、貸しにしておく。まぁ、利子はつけずにおいてやるから、せいぜいがんばって借金返済に励むことだ」
 あっさりと言い放つハンフリーにシーナは呆然とする。
 ひどすぎる。
 それではシロウよりもひどい取り立てではないか。
 いったい何のために…
 まぁ半分は自分もシたかった、というのもあるのだが、それでもハンフリーのイジワルぶりには腹が立つ。
「あんた、俺のことからかって楽しい?」
「ああ、最高にな」
 いつになく楽しげに笑いを漏らすハンフリー。
 くそっと毒突いてシーナは大きな枕を抱きしめた。
 すっかり子供扱いされたことは腹立たしいのだが、どうしようもなく暖かな幸せを感じてしまうのも事実だった。
 そして、やっぱりシロウの誘いを断って正解だったと思うのだ。
 この幸せは20000ポッチでは買えないものだから。
 


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