桃色遊戯 その日の戦闘メンバーは次の通り。 ディラン、ビクトール、フリック、カミュー、マイクロトフ、フリード・Y。 少々手こずるモンスターがいても、このメンバーであれば、何も恐れるものはない。 とにかく気持ちいいくらいに次々に敵を退治し、気がつくとすっかり日が暮れていた。 「こりゃ、今日は城まで戻るのは無理だな」 ビクトールが一番星の輝く夜空を見上げてつぶやく。 「仕方ないですね。近くの町に一泊しましょう」 本日はあまり出番がなく、たいして疲れてはいないディランではあったが、確かにこれから城まで戻るのは面倒だ。 全員の賛同を得て、30分ほどで近くの町へと到着した。 町はかなり賑わっていた。 どうやら交易商たちの旅のルートの途中にある町のようで、大きな交易所があり、宿屋と食事所が多く見られた。 とりあえず今夜の宿を確保しようということになり、通りすがりの人に尋ね、一軒の宿屋に入る。 「疲れた」 部屋に入るなり、フリックがどさりとベッドに座り込む。 城を出てからまだ2日であったが、昨夜は野宿だったのだ。今までも何度も野宿なんて経験しているので、それ自体で疲れることなんてないのだが、このメンバーで酒盛りにならないわけがなく、ほとんど徹夜の状態で今日は丸一日モンスター共と戦っていたのだ。疲れないわけがない。 「あ〜腹減ったな、聞いたかフリック、この町の名物は肉料理らしいぞ」 「肉か…それはちょっと重たいな…」 できればもっと軽いものがいい。 だいたい、ビクトールと一緒だといつも大量の食事を食べさせられることになるのだ。別に小食な性質ではないのだが、大食漢のビクトールと同じように食べていたら大変なことになる。 「しっかり食っておけよ、このあともまだまだ体力使うぜ」 にんまりと笑うビクトールにフリックはいやぁな予感がして、マントを脱いでいた手を止める。 「……寝るだけなのに、何に体力を使うって?」 「分かってるくせに、とぼけんじゃねぇよ」 とぼけたくもなる。 フリックはどうすれば穏やかに眠りにつくことができるか、考えることにした。 「そろそろ食事に行きましょうか?」 ノックのあと、扉が開いてカミューが顔を覗かせる。 ビクトールとフリックの部屋の隣にカミューとマイクロトフが、その向かいにディランとフリードという組み合わせで部屋を取った。 まぁ妥当な組み合わせである。 ディランとしては真面目だけがとりえのフリードと同室だと肩が凝りそうで嫌なのだが、かといって、完全に出来上がっているカップルの間に割り込むほど野暮でもない。 フリックたちが部屋を出ると、他のメンバーたちはもうそろっていた。 宿屋の主人に薦められた近くの食堂へ6人そろって足を向ける。 「う〜いい匂い」 席に着くなりディランが我慢できないとメニューを広げる。 「とりあえずビールを5つ。あとは名物料理を適当に持ってきてくれ」 ビクトールがディランの手からメニューを取り上げ、亭主に渡す。 「大雑把すぎますね」 カミューが冷ややかにビクトールを見やる。 「なぁに言ってんだ。腹が減ってる時は何だって美味いんだよ」 「確かに」 食堂は大入り満員で、どうやらこの町ではけっこう有名な店らしかった。ほどなくして出てきた料理はどれも絶品で、次々に注文を繰り返し、テーブルの上は隙間なく皿で埋め尽くされる。 「フリック、ぜんぜん食ってねぇじゃないか」 「食べてる。お前と比べるな」 「そうですよ。我々はあなたと違って、ちゃんと味わって食べていますからね」 「おい、カミュー、俺だってちゃんと味わって食ってるぞ」 「味わって食べてる人が、そんな食事の順番を無視して食べるものですか」 フルコースのセオリーを無視した食べ方に、カミューは眉を顰める。だいたい、いきなり肉料理から食べるなんてマナーがなってない。 「けっ、お上品にスープからなんて食ってられっかよ、なぁディラン」 「まぁね。確かにここの肉料理は美味しいし」 ぱくぱくと食べるディランの姿はどこにでもいる少年らしくて、フリックは思わず微笑む。 自分よりもずっと歳の上の人間に囲まれても何の遜色なく会話をし、的確に指示を出すディランは、いつもどこか無理をしているように見えて、フリックは気になっていたのだ。 だから、こうして歳相応に見えるディランが目の前にいると、ほっとしてしまう。 和やかに食事が進み、そろそろ店を出ようかという時に、どこから現われたのか、背の低い男がビクトールの肩を叩いた。 「兄さんたち、ちょっといい話があるんだがよ」 どうやら、この近くの劇場でショーがあるらしく、チケットを買ってくれないかというものだった。 「ショーねぇ。どうする?」 「私は遠慮しておきます」 とフリード。 「私はどちらでも。みなさんが行かれるのならお供しますよ」 とカミュー。 「カミューが行くのなら、俺も行くが」 とマイクロトフ。 「俺も行きたい!!」 とディランが言ったとたん、フリックを除く全員がだめだ、と言った。 「何でだよっ!みんな行くんだろ、俺だけ仲間外れかよ」 唇を尖らせ、ディランが文句を言う。ビクトールがニヤニヤ笑いながらディランの頭をこづく。 「ガキが夜遊びするには10年早い。それに、お前だけじゃねぇだろ、フリードは行かねぇって言ってんだ。二人で先に寝てな」 「ずるい〜」 いつもなら、少々の夜遊びは大目に見るビクトールが、どうしたわけか今回は頑としてだめだと言う。それはカミューもマイクロトフも同じで、ディランがショーを見に行くことを許さなかった。 フリックはと言えば、特にショーなんて見たいわけでもなかったのだが、みんなが行くというのであれば一人だけ宿に戻ってもつまらないので行くことに同意した。 城にも舞台があって、そこではカレンがいつも見事な踊りを見せている。 他の町でそういう舞台というのは見たことがないし、まぁ話のネタにくらいにはなるだろう。 食事を終え、しぶしぶといった感じでフリードに連れられて帰るディランを見送ると、残った4人は手にしたチケットをひらひらと振った。 「さぁてと、んじゃあ行ってみるとすっか」 ビクトールがフリックを見る。 「それにしても、フリックさんが一緒に行くことを同意するとは思いませんでした」 マイクロトフがしみじみと言う。 「どうしてだ?俺だって、お前たちがショーを見る趣味があるなんて知らなかったぞ」 「別に趣味ではありませんよ。単に暇だからです。誤解しないでくださいよ」 カミューが小さく肩をすくめる。 「まぁまぁいいじゃねぇか。たまにはこうして夜のお楽しみに繰り出すっていうのもよ、な、フリック」 ビクトールががしっとフリックの肩に手をまわす。 「何、ニヤけてるんだ?お前」 「いやいや、ショーなんて久しぶりだからよ」 確かに城にいても舞台なんてあまり見に行かないものである。 それにしても、ビクトールに踊りをみる趣味があるというのも知らなかった。それくらいなら、酒場で酒を飲んでる方が好きだろうと思っていたのだ。 まぁチケットを売っていた男の話を聞いていると、かなり見事な踊りを見せるらしいから、一見の価値はあるのかもしれない。 町の外れにある劇場は思っていたよりも小さくて、入口付近には数人の男たちがたむろしていた。 「何だか怪しげだな」 フリックが胡散臭そうに辺りを見渡す。 「こんなもんだろ。さ、入ろうぜ」 ビクトールがさっさと中へ入ってしまう。そのあとにマイクロトフが続く。歩き出したフリックをカミューが引きとめた。 「どうした?」 「フリックさん、あなた、まさか…」 「え?何だ?」 じっとフリックの顔を見ていたカミューは、何か言いたそうにしていたが、先に入ったマイクロトフに呼ばれて、結局何も言わないまま中へと入ってしまった。 「何なんだ??」 フリックはわけが分からないという顔で、薄暗い店内へと足を踏み入れた。 店の中央に円形の舞台があって、その周りを取り囲むようにしてテーブルとイスが置かれている。フリックたちが通されたのは前から二列目というなかなかよい席だった。 酒とつまみを注文して、ショーが始まるのを待つことにする。 「何だか薄暗いなぁ。こんな暗くて見えるのか?」 運ばれてきた酒を手に、フリックが周りを見渡して首を傾げる。 「あんまり明るいと興ざめするのではないですか?そこそこ暗い方がいいでしょう」 「マイクロトフ、ショーはよく見に来るのか?」 「え?そんなことはありませんが、昔、団員たちに誘われて何度か」 「ふうん、どこにでも劇場はあるからなぁ。でもやっぱり、うちのカレンほどの踊り子はいないだろ?」 そうフリックが言ったとたん、3人ががばっと一斉にフリックへと振り返った。 信じられない、といった表情で、全員がしばらくじっとフリックを見つめる。 「な、何だよ…」 何かまずいことでも言ったかと、フリックが思わず身を引く。 「おいおい、お前…冗談だろ?」 ビクトールが頬を引きつらせてフリックに尋ねる。おそるおそるといった感じで。 「な、にが?」 「やっぱり…フリックさんが一緒に来るなんておかしいとは思ったんですよ」 カミューが小さくため息をつく。 「どうしたんだ?いったい何なんだよっ!」 フリックはみんなが何を言ってるのかまったく分からず声を上げる。 「いや…そうだよなぁ…フリックのことをすっかり忘れてたぜ」 「でしょう?先に聞くべきでしたね」 「ディラン殿たちと帰ってもらった方が良かったのでは?」 ぶつぶつと3人が相談を始める。 「おいっ!俺を無視するなっ!」 「悪い悪い。いや、まぁいいだろ。フリックもそろそろ大人になるべきだしよ」 ビクトールがそう言って軽く肩をすくめる。 大人って何なんだ、お前は俺をいくつだと思ってるんだ…とフリックが言いかけた時、大きな音楽と共にステージに灯りがついた。 店にいた連中から喝采が上がり、綺麗な女性が登場した。 まだ歳若い女で、なかなかの別嬪だった。それに、驚くほど見事なプロポーションをしている。 しかし、そんなことよりも、フリックはその女の衣装にあっけにとられた。 どう見ても、肌が透けて見えているように思える。紋章師のジーンも真っ青というくらいの布切れしか身につけていないではないか。 いったいどんなショーなんだ?とフリックがビクトールに聞こうとした瞬間、舞台の上の女性が着ていた衣装を脱ぎ去った。 「!!!!!」 思わずフリックが席から立ち上がった。とたんに、背後から罵声を浴びせられる。 「なに立ってんだよっ!見えねぇだろぉが!!!」 「兄ちゃん、どうせ立つんなら、違うところ立たせなっ!!」 下品な笑い声が店を埋め尽くす。 力なくフリックがイスに腰をおろした。 そして、恐る恐る舞台に目を向けてみる。そこには、舞台に置かれたイスに座り、淫らな格好で客を挑発する踊り子がいた。 信じたくない。信じたくはないが、こ、これは…これは… 「ス、ス、ストリップじゃないかっ!!!」 フリックが同じ席にいる3人に怒鳴る。 食い入るように舞台を見ていたビクトールが、やれやれとフリックを振り返る。 「ああ、ストリップだが?」 「な、な、何でこんなもん…」 「フリックさん、ストリップは初めてですか?」 カミューが笑いを堪えた顔で尋ねる。 「当たり前だろっ、お前たち、知ってたのか?」 「当然でしょう。だいたい、男ばかりのグループにショーのチケットを買わないかと声をかけてきたら、大抵はその手のショーですよ」 「そうだな。まぁ店構えもいかにも、という感じだしな」 お堅いマイクロトフまでは同意する。 フリックはぱくぱくと唇を動かすだけで言葉にならない。 何なんだ、こいつらはっ! それでディランが行くと言ったのを強固に断ったのか。一応あいつは未成年だし。 そんなことをぼんやり考えている間にも、舞台では、それはそれは淫らなショーが繰り広げられており、フリックは耐えきれずにビクトールの服の裾を引っ張った。 「おい、ビクトール…」 「おおっ、もう一枚脱げっ!」 ビクトールは完全に身を乗り出して、食い入るように踊り子を見ている。にやけきったその顔に、フリックの怒りが爆発する。 「っ!!俺は帰るからなっ!!」 我慢できずにフリックが怒鳴る。 「ああ?お前、まだこれからだぜぇ?あと3ステージもあるっていうのに」 「じゃ好きなだけいてろっ!」 とても付き合いきれない。 カミューもマイクロトフも平然とした顔で舞台を見ている。こういうものを見るのは騎士道精神には反しないのか?と思わず突っ込みをいれたくなるフリックであったが、とにかく、一刻も早くこの場から逃げ出したくて、賑わう店内を何とかすり抜け表に出た。 「いいんですか?ビクトールさん」 フリックの後姿を見送って、カミューが尋ねる。 「止めたって無駄だろ。ま、いいさ。帰ったら腰が抜けるほど可愛がってやるからよ」 「…ずいぶん怒っていたように見えましたが?」 マイクロトフの言葉に、ビクトールは唸った。 「あいつら……いったい何考えてやがるんだ…」 ぐったりとしたフリックは、ふらふらとした足取りで宿屋へと戻った。 ストリップなんて。 おまけにあのニヤけきったビクトールの顔ときたら! 「あれ?もう帰ってきたの?フリックさん」 部屋の前で出くわしたディランが、振り返ったフリックの顔を見て、くすりと笑う。 「好みの女の子いなかったんだ?」 「…お前も知ってたんだな」 「なにが?」 いや、いいと言ってフリックは部屋に入った。 まだ顔が火照ってるような気がする。 正直いって、ストリップなんて見たのは初めてだったのだ。 そういうものがあるというのは聞いたことがあったが、自分から行きたいなどと思ったこともなかったし、誘われたこともなかった。 それが、何の心の準備もなく、いきなりあんな所へ連れて行かれて、まともに見てしまった。 ほんの少しではあったけれど、踊り子の白い肌や、衣装の下に隠されていた胸の膨らみや… そのとたん、ずくっとした痛みが下半身を襲った。 「おいおい…冗談だろ…っ」 フリックは信じられない思いで、その場にしゃがみこんだ。 覚えのある疼きが身体の奥から湧き上がる 「か、勘弁してくれよ…」 あまりにも情けないことだが、フリックのソコははっきりと反応を見せていた。 よろよろとベッドの中にもぐりこみ、身体を丸める。 頭の中からいらぬ妄想を追い払おうとすればするほど、目の裏に焼きついた先ほどの踊り子の痴態がまざまざと思い浮かんでしまう。 「何で…こんな…」 あまりにも情けなくて涙が出そうになる。 あの手のショーは性欲を煽るためのショーなわけで、フリックの反応は正常な男としては別に何の問題もないわけだが、それでも、慣れていないフリックはどうしたらいいか分からずパニックになる。 ずきずきと鼓動が高鳴る。 どうしよう。 といっても、解決方法は一つしかないわけで。 おまけに、食事に行く前にビクトールが言っていた言葉が頭に浮かんだ。もし、本気で体力をつかう行為をするつもりでいるとしたら、この状態は非常にまずい。 まるで、期待して待っていたみたいではないか? 「くそっ…」 あと3ステージあると言っていた。 ということは1時間ほどは帰ってこないだろう。 フリックは意を決して、そろそろと自分の下肢に手を伸ばしてみる。 「ん……っ」 指が触れた瞬間、勃ち上がりかけていた花芯が硬度を増した。あからさまなその反応に羞恥がこみ上げる。しかし握り込んでみたものの、一体どうやってこの興奮を鎮めればいいのだろうか。 もちろん、フリックも自慰くらいしたことはある。 けれど、どちらかというと晩熟で性的なことには淡白な性質だったので、自分で自分を慰めたことは数えるくらいしか経験がないのだ。おまけに、ビクトールとそういう関係になってからは、そんなことしなくても十分すぎるくらいに欲求は満たされているから、ここ数年は右手のお世話になることなどなかったのだ。 そろりと撫でてみる。 「うっ…ん…」 こんなことしたくない。 それでも今、この熱を放っておかないことには、あとあと泣くことになる。 フリックはゆっくりと握り込んだ指を動かしてみた。すっかり形を変えた先端から、すぐにぬるりとした蜜が溢れ出す。 「ふ…っ…う」 情けない。 何が情けないといって、こうして指を動かしている時に思い浮かべるのが、ビクトールのことだということだ。動きだした指は、いつもビクトールがフリックに与える指の動きを知らず知らずに辿っている。 『フリック』 耳元で囁かれる低い声に、いつも痺れるような快感を感じてしまうのだ。 ビクトールの熱い肌を思い出すと、それだけで身体が熱くなる。 ビクトールの指がフリックの花芯に触れ、そしてどんな風にフリックのものを扱き上げるか、もう嫌というほどこの身体が覚えている。 その通りにすれば達けるのだ。 フリックは唇を噛み締めて、右手を蠢かす。 根元から先端へと擦り上げ、括れの部分で指を止める。親指でくすぐるように撫でると、それだけで痛いほどの快感が腰の辺りに湧き上がる。 「んっ…ん…」 とろとろと流れ落ちる先走りの蜜がフリックの指を濡らし始めた。 フリックは空いた左手をシャツの間に滑り込ませ、すでに堅く立ち上がっている胸の尖りをなぞってみる。いつもビクトールがしてくれるみたいに。 「ふっ…うっ…んっ…」 たまらない熱い快楽の兆しが背筋を駆け上る。 くちゅっくちゅっと淫らな音を立てて、右手の動きが速くなる。 「あっ…う…ビク…」 解き放たれる瞬間を思い描く。 痛いほどの、あの悦楽の瞬間を。 「はっ…」 フリックのつま先が緊張で震えた。 もう、イく。と思った瞬間、大きな音を立てて扉が開いた。 扉を開けたのはビクトール。 ベッドの中でうずくまるフリックとばっちり目が合ってしまった。 「……」 「……」 「……」 「うわぁああああああ!!!!」 フリックが肩の下に敷いていた枕をビクトールに投げつけた。 ビクトールは飛んできた枕を余裕で受け止めると、無言のまま扉を閉め、どかどかとフリックの横たわるベッドへと近づいた。 あまりの衝撃に、フリックは大きく目を見開いたまま言葉も出ない。身体は硬直したまま動かすこともできない。そんなフリックを見下ろしていたビクトールは素早い動作でフリックの右手首を掴むと、ぐいっと引き上げた。 「やっ……」 フリックの指先はしっかりと濡れていて、ビクトールは目を細めるとその指先をぺろりと舐めた。 「なっ…!!」 とたんに真っ赤になったフリックに、ビクトールは凶暴なまでの笑顔を見せる。 「お前な、先に帰ったお前が心配で、俺は残りのショーもすっぽかして戻ってきたっていうのによ、お前は一人で楽しんでたわけか?ああ?」 「……っ」 「ったく、しょうがねぇヤツだな」 それでもどこか楽しそうな顔つきで、ビクトールはフリックが纏っているブランケットを剥ぎ取ろうとする。しかしフリックがそれを死守する。 「いやだっ…」 「あん?何だ、もうイっちまったのか?」 「ちがっ…」 ビクトールは片足をベッドについて身を屈めると、右手をフリックの脚の間へと差し込んだ。 びくっとフリックの身体が震える。 「すっげぇ濡れてやがるな。お前、たったあれだけのストリップで、ここまで興奮できたのか?」 ビクトールが喉の奥で笑う。 フリックはもう死にたいほどの羞恥で何も考えられなかった。 まさかこんなに早くビクトールが戻ってくるとは思わなかったのだ。戻ってくるまでにさっさと興奮を鎮めようと思っただけなのに。それなのに。 「うっ…」 涙目になるフリックの表情はビクトールの股間を直撃した。 ストリップで興奮したのはフリックだけではないのだ。ビクトールは無理矢理にブランケットを剥ぎ取ると、フリックの身体に跨るようにして四つん這いになる。 「まだイってないんだろ?悪かったなぁ、途中で遮っちまって…」 「…いだ…」 「あん?」 「嫌いだ…お前なんて…」 デリカシーのかけらもない。こんな姿を見られることが、どんなにフリックにとって恥ずかしいことか知っているくせに。それなのに、わざと羞恥心を煽るような台詞を言う。そしてフリックの反応を見て楽しんでいるのだ、この男は。 ビクトールはフリックの頬に手をやると、先ほどまでとは打って変わった優しい声で言う。 「ばぁか、別に恥ずかしいことじゃねぇだろ。男なら普通の反応だって。ま、どうせなら、俺が帰ってくるまで待ってて欲しかったがなぁ。ていうか、お前が一人でやってるとこ、見せて欲しかったぜ」 「最低だなっ、お前」 「だな。けど、俺にそうさせてんのはお前なんだぜ、分かってんのか?」 ビクトールの指がフリックの花芯に触れる。 いきなりのことにすっかり勢いを無くしてしまっていたそれは、ビクトールに触れられたとたん、再び形を変え始める。 「うっ…」 「イク直前だったのか?なぁ…何考えながらやってたんだ?」 「あっ…ぁん…」 「フリック…」 どこか熱を帯びたビクトールの声。 慣れ親しんだ指の動き。さっきまでの慰めで、すでに直前まで高められていたため、二三度ビクトールがきつく扱いただけで、あっさりとフリックはその精を放った。 大量の蜜が溢れ出す。フリックは大きく胸を喘がせて身体を弛緩させた。うっすらと開いた唇からフリックの赤い舌が見える。その様子にビクトールはぶるっと身震いした。 「くそっ…」 ビクトールは素早く自分の着衣の前を緩めると、堅く勃ち上がった雄芯を引きだした。 「フリック…触ってみな…」 「あ…っ…」 身体中に残る甘い余韻に酔っていたフリックはビクトールの手に導かれるままに、その熱いものを握らされる。フリックが触れたとたん、びくっと震えたそれは、ぐんと硬度を増した。 「ああ、いいぜ…動かしてくれ…」 いつ弾けてもおかしくないほどに膨れ上がった欲望の証。 フリックは朦朧とした意識で、指を動かし始める。 ビクトールが両手でフリックの顔をはさみ、むしゃぶりつくようにしてフリックの唇を塞いだ。 「んっ…んん…」 いきなり深く舌を差し込まれ、苦しさにフリックが苦しげに喘ぐ。絡まる舌がぴちゃぴちゃと音を立てた。角度を変えて貪るようにして、お互いの唾液の甘さに酔う。 フリックの手の中のビクトールがびくびくと震え始めた。 拙い自分の指に感じてくれていると思うと、フリックの胸の内にたまらない愛しさがこみ上げる。自分に施してくれたように、動きを真似してビクトールを高みへと追い上げる。 「う…っ」 ビクトールが低く呻いた。熱い飛沫がフリックの下腹部から内腿にかけて飛び散る。 「ふぅ…っ…」 満足したようなため息に、フリックはのろのろと手を引く。濡れた手のひらをどうしたらいいか分からず、ビクトールに目で問い掛ける。 「それで濡らしてみな、自分で」 「?」 「後ろだよ…まさか、そこまで一人でヤっちゃいねぇだろ?」 当たり前だっ、とフリックが頬を染める。 ビクトールがフリックの首筋に舌を這わせながら、大きく脚を開かせる。 「ほら、フリック」 「で、きない…」 「んじゃ、俺がやってやろうか?ん?」 「いちいち恥ずかしいことを言うなっ!」 痛いくらいらに首筋に吸い付くビクトールを引き離そうとフリックが髪をつかむ。 「んっ…」 ビクトールの指がフリックの奥まった部分を探る。やわやわとくすぐるように撫でられ、フリックはその先に待っているであろう熱い交わりを予感して喉をひくつかせた。 どちらが放ったものか分からない蜜でしっとりと濡れていた襞の中へと、ビクトールの指が押し入ってくる。指一本が深く埋まってしまうと、ビクトールはゆるゆると中をかき回し始めた。 「あ…ああっ…!」 「ヒクついてんな…中…すげぇ熱い…」 興奮した荒い息で、ビクトールが乱暴に指を抜き差しする。 「うぅ…あっ…ああ…ぅ…」 「フリック…」 重なる肌の熱さに眩暈がする。 自分では決して得ることのできなかった強い刺激に、フリックは何度も頭を振った。 奥深くまで飲み込まされた指が、狭い入口を溶き解すように小刻みに動かされる。 「ひっ…や…め…」 フリックの腰が跳ね上がり、身をくねらせる。ビクトールがぱたぱたと蜜を溢れさせているフリックの花芯にも指を絡ませた。 「やぁああ…っは…あ…」 びくびくとフリックが痙攣する。ビクトールは無言のまま、前と後ろを同時に責めたてる。 だんだんと滑りのよくなる指の動きが、フリックの内壁を痛いくらいに刺激していく。 溶けてしまう… ビクトールが触れている場所から、身体がどろどろに溶けていくような錯覚に襲われ、フリックは震える手をビクトールの首へと巻きつけた。 「も…ゆるし…っあ…はぁ…ああ…」 「挿れていいか?なぁ…フリック…」 虚ろな目をするフリックの耳朶を舐め上げる。 がくがくとフリックがうなづく。もうこれ以上は耐えられないとばかりに、さらにきつくビクトールに抱きつく。 ぴたりと押し当てられたビクトールの肉棒は焦らすようにフリックの入口を突つくだけで、浸入を開始する気配を見せない。 「はっ…やく…」 フリックは涙声でビクトールに訴える。 満たされない欲望が勝手に腰を揺さぶり始める。ビクトールの下腹部に濡れそぼったフリックの花芯が擦りつけられる。らしくない、フリックのその仕草にビクトールも限界を超えた。 荒々しく両足を抱え上げると、一息に昂ぶりを飲み込ませる。 「―――っ!」 何度か前後左右に揺さぶり、一番奥まで埋め込んでしまうと、ビクトールはしばらくその締め付けを楽しむかのように、フリックの上で動きを止めた。 「ふぁ…あっ…ビ、ビクトール…?」 「ああ俺だ…お前ン中に入ってのは俺だ。分かるか?」 ゆっくりと引き抜かれる。それを嫌がるようにフリックの中が収縮した。 「い…や――っ」 堪りかねてフリックが叫ぶ。 「あっ…ああ…あ、あ…」 再び埋め込まれる。 その繰り返し。 気が狂う。 呂律の回らない舌でフリックが訴えた。 その一言でビクトールの律動が激しいものに変わった。打ち付けるように腰を使い、フリックの花芯をも扱き上げる。 「あっ――あっ…」 フリックがビクトールの動きに呼応するように自らも腰をうねらせた。 身体も心も、この痺れるような快楽には抗えないのだ。 ビクトールが与える快楽に。 決して一人では…満たされない。 「あ…ああ…だ…めっ…」 溶ける… ぐんと強い力で突き入れられた瞬間、フリックはふわりとその意識を手放した。 ひんやりとした感触にフリックは目を覚ました。 「気がついたか?」 横たわるフリックの横で胡座をかいたビクトールが濡れタオルでフリックの身体を拭っている。 なに…してたんだっけ? フリックは靄のかかったような頭で記憶を辿る。 「うわっ…なっ…」 フリックが情けない声を上げる。 ビクトールがフリックの膝に手をかけ、左右に広げたのだ。 「何するんだっ!ばかっ、離せよっ…」 「気持ち悪ぃだろ?べとべとだぜ?」 「〜〜〜〜っ!!」 思い出してしまった。 思い切り体力の使うことをしてしまったのだ。嫌だ嫌だと言いながら。 その事実にフリックは深い自己嫌悪に陥ってしまう。 ビクトールがフリックの脚の付け根を拭おうとした。慌ててフリックがそれを止める。 「じ、自分でやるからいいっ!手…離してくれ…」 「これくらいサービスするぜ?お前、今日めちゃくちゃ可愛かったしよ」 「……っ!!」 「けど、俺のこと飲み込んだまま飛んじまうなよな。あのまま抜けなかったらどうしようかと思って、一瞬焦ったぜ?」 ニヤニヤと笑うビクトール。 最悪だ。 「まぁお前が意識がないのをいいことに、いろいろヤっちまったがな」 「なっ……!!!」 真っ青になって起き上がるフリックにビクトールは大声で笑う。 いったい何をやったんだっ、と、いくらフリックが詰問しても、ビクトールは笑うばかりで答えない。 その答えは次の日、妙なところが筋肉痛になっているフリックの身体で判明されることになる。 そして、ストリップ劇場でニヤけていたということと、意識のない自分におかしなことをしたという二重の罪に腹を立てたフリックによって、ビクトールの夜のお楽しみは、しばらくの間お預けを食らうことになってしまったのであった。 |