One more kiss(ビクトール×フリック)


「遅いっ!!」
 部屋に入ったとたん、ベッドの中からフリックが怒鳴った。
 ビクトールは水の入ったコップを手にしたまま、そんなフリックへと近づいた。
「水を汲んでくるだけで、いったい何やってたんだ」
 喉が渇いたから水を汲んで来い、とフリックはビクトールに命令した。
 いつもなら、命令なんてことはしないのだが、今夜はそれくらいは許されて当然だと思えるほどに、ビクトールは容赦なくフリックを手篭めにしてくれたのだ。
「あ〜悪かった。ほらよ、お望みの冷たい水」
 コップを差し出すとフリックがだるそうに身体を起こして、ごくごくとその水を飲み干した。嚥下するたびに上下するフリックの喉元がどうにも扇情的に思えて、ビクトールはコップを取り上げると、自分の口に水を含んでフリックの唇を塞いだ。
「んっ、ん―――っ!!」
 ごくりと口移しに流し込まれる液体に、フリックはきつく目を閉じた。水の次には熱い舌が入ってくる。
 フリックの冷たくなった舌を舐め取るようにして、ビクトールは何度も角度を変えて…。
「やめ…っ…」
 ついさっきまでさんざん抱かれていた身体はまだ熱を持っていて、些細な刺激にさえ反応してしまう。
 フリックは何とかビクトールの口づけから逃れると、ベッドの隅へと身体をずらし、シーツで身体を覆ってしまった。
「いい加減にしろよっ、もう…やるだけやって気がすんだだろ」
「んなことあるか。何べんやったって気がすむってこたぁねぇな」
 ニヤニヤと笑うビクトールにがっくりとフリックが肩を落とす。
 そんなフリックにビクトールは楽しそうに笑う。
 それでも、今すぐっていうのは負担が大きいだろうと思ったらしいビクトールは、ベッドの中に入り込み、フリックの身体に寄り添うようにして、その髪を撫でる。
「ジョウイも水を飲みにきててよ、で、ちょっと話し込んでたんだ」
「ジョウイが?あいつら夜更かししてんだな」
「あ〜それがなぁ…お前、知ってたか。ディランとジョウイがデキてたって」
「出来てたって?何が?」
 鈍いヤツだな、とビクトールが舌打ちする。
「あいつら、恋人同士っつうか、まぁどんな関係かは知らなねぇが、ありゃ絶対ヤってるな」
「はぁ?お前なに言ってんだ?」
 フリックが呆れたようにビクトールの耳を引っ張る。
「お前なぁ、あいつらがいくつか分かってんのか?仲がいいのは認めるが、そんなことあるわけないだろ」
「……賭けるか?」
 ビクトールがニヤリと笑い、フリックの身体を再びベッドに押し倒す。
「あいつらがヤってるかヤってないか、賭けるか?」
「ずいぶん自信たっぷりだな…何を賭けるんだよ」
「ん〜何がいいかなぁ…そうだ、まだお前からキスしてくれたことがねぇから、それにするか」
「ばっ…んなもの賭けるなっ!」
「んじゃもっと別のもんにするか?まだやってねぇことは山ほどあるから、商品に困ることはねぇぜ」
 ビクトールが低く笑いながらフリックの手首を舐める。ぴくりと反応したことに気を良くして、纏ったシーツを剥ぎ取って身体の上に圧し掛かる。
「ま、あいつらがヤってようが俺たちにゃ関係ねぇがな…フリック…もいっぺん、な?」
 な、じゃない!
 しかし言うより早くビクトールの手がフリックの内腿に伸びた。
「ばかっ…んっ…」
 その指がフリックの花芯に絡まる。先ほどの情交で濡れたままの股間をなぞるようにして指が蠢く。
「やめろっ…んぁ…はっ…!」
「濡れてるからさっきほど痛くはねぇって…それによ、お前だってもう…」
 軽く握り込まれたフリックの花芯はすでに勃ちあがり始めている。あまりにも早い反応にフリックは羞恥で頬を染める。ビクトールはそんなフリックに低く笑いを洩らして、唇を寄せる。
「口開けな、舌吸わせろや」
「はっ…ああ…」
 ビクトールの右手がゆっくりと花芯を扱き上げる。思わず仰け反ったフリックの白い喉元を舌でなぞり、そのまま薄く開いた唇を塞ぐ。
「んっ…ん…」
 熱い舌が絡まる。
 逃げようとしても許してもらえそうもなく、フリックは差し込まれた舌先を軽く噛んだ。
 ビクトールがフリックの唾液も何もかもを吸い尽くそうとするかのように、深く唇を合わせてくる。息ができなくなって、フリックは思わずビクトールの肩先をつかんだ。
「…っ…んん…ん…」
 鼻から抜けるような甘い声。
 その声に煽られるように、ビクトールが膝でフリックの脚を開かせた。指は相変わらず花芯を嬲っていて、フリックは込み上げてくる痺れるような快楽に、きつく目を閉じた。
「や……ぁ…」
「ぬるぬるだな。気持ちいいか?」
 あまりにも意地の悪い問いかけに、フリックは首を横に振る。それでも悦楽の蜜が先端からしとどに溢れだすのを止めることができない。
 もう何度イかされただろう。
 数えるのが嫌になるほど、今夜はビクトールの指と舌に翻弄されている。
「あっ…ああ…っくぅ…う…」
「おいおい、まだイくのは早いぜ…」
 びくびくと震えるフリックの根元をきゅっと押さえ、ビクトールは苦しそうに喘いでいるフリックの胸に顔を伏せた。ぴんと立ち上がった胸の尖りに舌を這わせると、フリックは大きく身を爆ぜた。
「やっ…あああ…っ…」
 ぴちゃっと乳首を舐める音が耳に入る。空いた左手でもう片方の尖りをなぞる。指の腹で押しつぶすようにして愛撫され、フリックはひくっと喉を鳴らした。
 耐えられない。
 襲いかかる快楽は底なしで、自然に腰が揺れるのを止めることすらできない。
「はぁ…あっ…ん…あああ…!」
 嬌声にビクトールが顔を上げる。
「おいフリック…あんまりでかい声だすと、やばいぜ」
「え?…んっ…ああっ」
「実はよ、ディランたちの部屋に丸聞こえみたいで、さっき嫌味を言われた」
 朦朧とした頭でフリックがその意味を辿る。
 そしてその意味が分かったとたん、がばっと身体を起こした。
「なっ、なっ、……!!!!」
「だから、声は出さずに感じてくれ」
「何だってっ!!」
「難しいわなぁ、今夜のお前、めちゃ感じやすいし。いや、俺は別にかまわねぇがな。お前の可愛い声が聞かれるのはもったいねぇがよ」
「違うだろ!!聞かれてたって…なっ…何で…そんな」
 確かにさっきは恥も外聞もなく、大声を上げてしまった。
 そのおかげで喉が渇いて、ビクトールに水を汲ませに行かせた。
 しかし…しかしバレてるなんて!!聞かれてたなんてっ!!!
 フリックはビクトールの身体を両手で押し返す。
「だめだっ…何もかも聞かれてるのに、できるわけないっ!!」
「今さらだろぉが、さっきさんざん聞かれてんだ」
「嫌だぁああ!!」
 思わず叫んだフリックの口をビクトールの大きな手が塞ぐ。
「んぐっ…」
「バカ、大声出すなって。他の連中まで起きちまうだろうが」
 バカはどっちだっ!だったら止めろ!!
 フリックはじたばたと暴れたが、ビクトールはそれさえも楽しんでいるようで、中断された続きを始めてしまう。フリックは信じられない想いで自分に圧し掛かる男の背を叩く。
「いってぇな…分かった分かった、あんまり焦らさずにヤってやるから」
 違うだろっ!!
 フリックは涙目で訴える。しかし、再び襲いかかってきた男の指先に身体の方が先に根を上げた。
「ふっ…うっ…」
 ビクトールがフリックの花芯から溢れ零れる蜜で自分の指を濡らし、そのまま後ろの蕾へと滑らせる。
「いっ…やぁ…」
 叫びかけたフリックが思わず口を閉じる。
 ディランたちに聞かれている、と思うと眩暈がしそうなほど恥ずかしさがこみ上げる。
 何で、俺がこんなことを、と思いながら両手で自分の口を塞いだ。そうでもしなければ簡単に声があがってしまう。
 息を殺すフリックの様子に薄く笑って、ビクトールはフリックの右足の膝裏に左肘をかけて大きく持ち上げた。下肢が開かされ、フリックのすべて目の前に曝け出される。
「すっげぇ、お前…もうドロドロじゃねぇか…」
 興奮したようにビクトールが喉を鳴らす。
 たらたらと涙を流すかのように溢れている蜜はフリックの腿を伝い、ビクトールを待ちわびている蕾へと流れている。ビクトールは目を細めて、人差し指を中へと突き立てた。ぐぷっと音を立てて難なく指が最奥へと飲み込まれる。中はついさっきビクトールが放った残滓ですべりが良く、何の抵抗もなく抜き差しが繰り返される。
「んっ、んっ…んぁああ…」
「一本だけじゃあ足らねぇよなぁ」
 言うなり中指をからめて再び奥へと浸入を図る。フリックの蕾は無意識のうちにその指を締め付け、さらに奥へと迎え入れるために収縮を開始する。指が出入りするたびに、ぬちゅっと卑猥な音が響く。次第に早くなるその注挿にがくがくと脚が震え、フリックは小さく息を吐く。
「ふぅ…んっ…んん…」
 痛みはない。あるのはひたすら怖いほどの快楽だけである。
 フリックは上半身を仰け反らせ、きつく目を瞑り唇を噛み締める。
「はっ…んぁ…んっ…ビク……も、いい…から」
 延々と続く指での苛みに耐えきれず、フリックがとうとう泣きを入れた。
「ん〜?どうした?」
「いいからッ……あっ…も…焦らすなっ…!」
 呂律の回らない口調で強請られ、ビクトールはうっそりと笑うと、自らの着衣の前を緩め、痛いほどに張り詰めた怒張を引き出した。フリックの両足を大きく開かせ、ぴたりと濡れそぼった蕾に押し当てる。
「フリック…欲しいって言ってみな…」
 ビクトールはすぐにでも突き入れたい欲望を押さえて、先端でフリックの熱い秘肉の周りを擦り上げる。にじみ出た先走りの液がさらにフリックの情欲を煽る。
「うっ…ん…やっ…」
「入れて欲しいだろ?言わなきゃずっとこのままだぜぇ?」
「ああ…っ…ん…」
 つぷっとほんの少し先端を潜り込ませてはすぐに引き出し、再び周りを刺激する。
 熱くて硬いビクトールの欲望の証。
 フリックは眩暈がしそうなほど頭の芯が熱くなるのを感じた。
「…て…っ、お願…ぃ…いれ…」
 聞き取れないほどの小さな声ではあったが、フリックの口からその言葉が聞けたので、ビクトールは許してやることにした。もっとも、これ以上は自分自身も持ちそうになかったのだ。
「ひっ…ゃああ…あっ…アア…」
 ずんっと一気に最奥まで飲み込まされる。
「はっ…!ああああっ…」
 ビクトールがフリックの肩を両手で掴む。がっしりと固定され、上半身をずり上げることもできない。
 叩きつけるようにビクトールが腰を打ち付け、そのたびにフリックの蕾からはぐちゅぐちゅと音を立ててどちらのものとも分からない蜜が溢れる。
「ああっ…あっ…いい…ん…んっ」
「くそっ…吸い付いてきやがる…」
 我慢できずに、ビクトールは乱暴に抜き差しを繰り返す。中はねっとりと熱く、きつい位にビクトール自身を締め付ける。
 最高だぜ…ビクトールが耐え切れないような吐息でフリックの耳元で囁いた。その瞬間、フリックの花芯から絶頂の蜜が迸った。
「ふぁ…ああっ…」
「気持ちいいか?」
 ぐちゅ、ぐちゅっとビクトールが腰を動かすたびに聞くに堪えない粘着質な音がする。
 フリックはもう嫌だというように首を横に振った。
 ビクトールはもうこれ以上は無理だという奥へと肉棒を突き入れ、せわしなく腰を動かした。
「うっ…」
 低く呻いて、フリックの中でその欲望を放つ。
 ぶるっとその身を震わせ、さらに残りの蜜もすべて注ぎ込む。
「ふぅ…フリック…」
 どさりとフリックの上に汗ばんだ身体を重ね、ビクトールが息をつく。フリックがのろのろとそんなビクトールの背中に手を回した。
「んっ…」
 与えられる口づけは思いの他甘くて、フリックは情事のあとの余韻に逆らうことなくその身を任せた。


「絶対聞かれてる…」
 絶望的な気持ちでフリックはベッドの上に座り込んでがっくりと肩を落とした。
 コトの後半はほとんど何も覚えていないのだが、カラカラに乾いた喉からして、声を上げていたのは確実だ。ビクトールはだからどうした、という顔でそんなフリックを見る。
「くそっ、どんな顔してあいつらに会えばいいんだよっ」
「知らん顔してりゃいいだろ。それとも壁に耳当てて、あいつらの声も聞いてみるか?それでおアイコだろ」
 ニヤニヤと笑い、ビクトールがフリックの背中に唇を落とす。
「んなことできるかっ!」
「だよなぁ」
 それはそれでいい刺激になっていいかもしれない、などとビクトールが本気で考えていることなど、フリックには想像もできないことである。
「なぁフリック…」
「うるさいっ!…喉が渇いた、水汲んでこいっ」
「……へいへい」
 真っ赤になって命令するフリックがどうにも可愛らしくて、ビクトールは笑いを堪えながらベッドを降りた。
 


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