その10:ぼくの召し使い(その1)

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ようやく、海の向こうの国との長かった戦争が終わりました。
戦争は、ぼくが生まれるずっと前から始まっていました。
でも、このあいだ、相手の国と、「もう戦争はやめよう。」という決まりが
できて、戦争が終わったみたいです。

ぼくの家は、戦争が始まってすぐに占領した海の真ん中の島にあります。
僕の国の兵隊さんがここを占領したときには、島にいた人たちは、みんな
船で、海の向こうの国に逃げていってしまったそうです。

僕のお父さんは、この島の村長として、7年前の正月に引っ越してきました。
この時、置いていかれた子供をみつけました。
その子供が、僕の家の召し使いのジムです。

ジムは、家の雑用や、僕の勉強のお手伝いなどをよくやっています。
でも、まだ、僕たちの国の人たちを嫌っているみたいで、
よく、僕たちの国の悪口をいったり、反抗的な顔をします。

ぼくは、お父さんから、「ジムが変なことをしたら、お仕置きしなさい。」
と言われています。「はいせんこくみんのくせに生意気だ。」ともいいます。

今日、僕の勉強を教えている時に、「わからないの。ばかだね。」
と、僕にいいました。お父さんに言ったら、「お前の好きなようにお仕置き
しなさい。」と言われました。

スパイごっこをやることにしました。
もちろん、ジムがスパイの役で、ぼくが特高警察の役です。

つづく