ココ
「……落ち着いた? るちあ」

るちあ
「うん……。ゴメンね、ココ」

ココ
「ううん。私の方こそ無神経だったかな。
……海斗君の記憶、全然戻ってないんだ」

るちあ
「……少しずつ、前みたいに優しく接してくれるようには
 なってる、と思うんだけど。……でも、みかるが」

ココ
「……あーっ、もう、まどろっこしいわねっ!
 私が文句言ってきてあげようか」

るちあ
「や、だめだよそんなのっ」

ココ
「じゃあ、るちあはどうするつもりなの?
 海斗君の記憶が戻るまで、待ってるつもり?」

るちあ
「うん……だって、それしかないじゃない」

ココ
「でも、相手は一つ屋根の下に一緒に住んでるんでしょ。
 既成事実作られちゃったらやっかいよ」

るちあ
「き、既成事実、って……。
 だいじょうぶだよ、リヒトさんも一緒に住んでるんだもん」

ココ
「オーケストラの指揮者のお兄さんだっけ?
 でも、忙しいんでしょう?
 けっこう夜とか二人きりだったりするんじゃないの?」

るちあ
「そ、それは……でも……」

ココ
「グズグズしてちゃダメよ、るちあ。ガーッといかなくちゃ」

るちあ
「でも、だって、どうしていいかわかんないんだもんっ。
 わたしだって、海斗に早く思い出してほしいけど、でもぉっ」

ココ
「……ねえ、るちあ。海斗君の唇の感触、覚えてる?」

るちあ
「え……そ、それは、その……」

ココ
「恥ずかしがらないで、教えて?」

るちあ
「…………う、うん。はっきり、覚えてる」

ココ
「そう。たぶん、海斗くんもね、覚えてるはず。
 今は忘れてるけど、もう一回すればきっと思い出すわ」

るちあ
「か、海斗と、キス……でも……どうやって?」

ココ
「そんなの、話があるとか言って放課後の教室にでも呼び出せばいいじゃない」

るちあ
「えーっ、そ、そんなの、恥ずかしいよぉっ」

ココ
「るちあ。言いたいこと、したいことは、
 はっきりしないと相手には伝わらないわよ。
 そうしないと、いつか気持ちがすれ違って、悲しい結末に
 終わってしまうわ。……サラみたいに」

るちあ
「あ……」

ココ
「ね、るちあ、がんばって。
 私、るちあが悲しい顔してるの、見たくないから」

るちあ
「……うん。わたし、がんばってみる」

ココ
「そう、その意気その意気」

るちあ
「でも……。1回キスしただけで、思い出してくれるかな?
 変な女の子だって、思われないかな」

ココ
「1回でダメなら、2回でも3回でもすればいいじゃないの」

るちあ
「そ、そんなにしたら、エッチな女の子だって思われちゃうよっ」

ココ
「いいじゃない、思われても。
 『わたしがエッチになるのは、海斗の前だけなんだよ』とか
 言っておけば、男の子なんてイチコロよ」

るちあ
「うぅ〜、恥ずかしいよぉ〜」

ココ
「い〜い、るちあ。みかる、だっけ。
 ああいう病弱な、かまってオーラ全開の女の子に勝つにはね、
 遠慮しちゃだめ。どんどん攻めていかなくちゃ」

 むぎゅっ。

るちあ
「ひゃぁっ!? ちょ、ココ、どうして胸を触るのっ」

ココ
「ほら、るちあはこんなに立派なおっぱい持ってるんだから。
 武器は使わなくちゃダメよ」

 むぎゅむぎゅっ。

るちあ
「やぁっ、ココ、おっぱいそんなに揉んじゃダメェッ」

ココ
「うふふ、かわいい声。このおっきなやわらかおっぱいと、
 そのかわいい声があれば、すぐに海斗君も骨抜きにできちゃうわ」

 クイッ。

るちあ
「あ……や、やぁっ。キスなんてダメェッ!」

 ドンッ。

ココ
「ひゃっ」

 ドタンッ。

ココ
「あいたたた〜。もう、いきなり突き飛ばさないでよ、るちあったら」

るちあ
「だ、だって、ココがいきなりキスしようとするからっ。
 もう、ココの言ってることわけわかんないよっ。
 わたしと海斗のこと、応援してくれてるんじゃないのっ?」

ココ
「もちろん応援してるわよ。
 だから練習につきあってあげようかなって」

るちあ
「れ、練習って、おかしいよそんなのっ」

ココ
「あれ、知らないの、るちあ。
 私の王国では、女の子同士でキスするなんて、割と普通のことなのよ」

るちあ
「ええっ、う、うそぉっ」

ココ
「本当よ。どこの王国でもそうなんだと思ってたけど、違うのねぇ。
 ノエルとかれんも、こっちで再会してからけっこうブチュブチュキスしてるわよ」

るちあ
「ええ〜っ、し、知らないよぉっ、そんなのっ」

ココ
「まぁ、あんまりディープなのはよっぽど親しくないとしないけどね。
 私なんて、サラに海月さんとのキスの練習台にされて、キスされまくりだったんだから。
 おかげですっかり上手になっちゃったわ。
 本気のキスなんてする相手もいないっていうのにねぇ」

るちあ
「……そ、その……」

ココ
「うん? どうしたの、るちあ」

るちあ
「えっと、その……ココと……キスの、練習すれば、
 ……私も、キスが上手になれるかな。
 ……そうしたら、海斗も喜んでくれるかな」

ココ
「それは、下手よりはいいんじゃない?
 少なくとも、海月さんはサラのキスが上手になったのを喜んでいたみたいだし」

るちあ
「……ココ……私と、キスの練習、してくれる?」

ココ
「もちろん。海斗君の記憶が一発で戻ってきちゃうような、凄いキス、教えてあげる」