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 〜「おねえさんだもん」エンディング アナザー1〜


 3月14日。世間一般ではホワイトデーとして認識されている日付だが、一部マニアな女子プロレスファンの間では、別の意味を持っている。そして今日この日をもって、その3月14日という日付に新たな歴史が付け加えられようとしていた。

「みんなーっ。あや、今日で25歳になったよーっ」
 ウオオオオーッ!!

 3/14(日) 岡山県・備前市運動公園アリーナ。
 うららかな午後の日差しの中、県立公園内に設置された特設リングの中心で、中学生はたまた小学生かと思しき少女が、マイクを通して舌足らずな声で告げると、リングを幾重にもグルリと囲んでいる熱気溢れる男たちから怒号のような歓声が上がる。少し離れた小高い丘の上、若い母親が何事かと押していたベビーカーを止めリングの上に視線を向ける。
「あら。アイドルのコンサートか何かかしら」
 この子もあんな風に育つのかしらね、などと親バカにも思いながらベビーカーの中でスヤスヤと眠る少女の頬をちょんちょんと突つき、その柔らかさに思わず頬を緩ませる母親。彼女は夢にも思わなかった。リング上のその女の子が、彼女自身と同い年だなどとは。

「今日はあやから、重大発表がありまーす。あたし、榎本綾は、今日でプロレスラーを引退しますー」
 ワアアァァーーッ!
 湧き上がる拍手と歓声。誰もブーイングなどは飛ばさない。なぜなら今日駆けつけたファンは皆、彼女のレスラー人生を父親、あるいは兄としての視線で見守っていたのだから。むしろ、よくこの団体の定年である25歳まで勤め上げたものだと感慨に耽っている者がほとんどであった。
「みんな! 今まで応援ありがとね!」
 綾のプロレスラーとしての最後のコメントに、大歓声と綾コールで応える観客達。その場にいる誰もが、次の瞬間には泣き崩れるであろう綾の姿を予想していた。なぜなら彼女は当代きっての泣き虫レスラーであり、そのキャッチコピーも『甘えん坊少女』とおよそレスラーとは思えない物で、事実試合中あるいは試合後に幾度と無く涙を零しているのをほとんどのファンが記憶している程であった。だがしかし、綾は人生最後の万雷の綾コールに包まれながらも、涙を見せる事無くニコニコと愛らしい笑顔を浮かべていた。
「それから〜。今日はもう一つ、あやから発表がありまーす」
 綾のその一言に、会場のファンだけでなくリング下で彼女を見つめていた同団体のレスラー達もどよめき始める。これから発表する事実を知っているのは、綾自身と団体の社長、そして一部のスタッフのみ。
「それは〜」
 綾はもったいぶったようにそう言うと、マイクを置いてリングを素早く下り、リング下に消えてしまう。下に滑り込む。そして、数秒後。なんと、リングの中央に穴が開き、下から綾が姿を現した。
「今日、あやは結婚しまーーすっ!」

 エエエエエェェッ!?
 公園内に響き渡るどよめき。綾の言葉だけでは事態が理解できなかったファンも、リング下から現れた彼女の姿を見て、その事実を突きつけられる。なんと、綾は純白のウェディングドレスを身に纏っていたのだ。
 リーン……ゴーン……。
 会場のどよめきを鎮めようとするかのように、特設会場内に大きく鳴り響く鐘の音。そして、次に大音響で流れ始めたのは、ウェディングマーチであった。
 次の瞬間、芝生の上に作られた赤絨毯の花道にスポットライトが集中する。そこに立っていたのは、この団体の社長。事態を収拾する為に現れたのだと一部のファンは胸を撫で下ろしたが、しかしすぐに異常に気づく。なぜなら今日の彼はビジネススーツではなく、タキシードを着ているのだ。うずまくどよめきの中、ゆっくりと花道を進み、そしてリングインする社長。
「しゃちょー。……ううん、おにいちゃん。あやの、お婿さんになってくださいっ」
 綾がペコリと頭を下げ、エヘヘと愛らしく笑う。そして社長が深く頷きかけた、その時。
「ちょーっと待ったぁーっ!」
 リング下からマイクを通して大きな声が響く。マイクを握り締めていたのは、成瀬唯であった。
「おおーっと! 成瀬、ここで懐かしのちょっと待ったコールだぁーっ!」
 今の今までポカンと口を開けてリング上を見つめていたリングアナが、その声に金縛りを解かれたかのように放送席のマイクを握り締めて絶叫する。成瀬はマイクを握り締めたままリング内に滑り込み、言葉を続けた。
「あやっぺセンパイ、そら抜け駆けってヤツやで。せっかくの引退セレモニーやから花持たしたろう思ってたけど、こればっかりは見のがされへん。社長は……」
 成瀬がパチンと指を鳴らす。するとリング下から大きな布が投げ入れられ、成瀬をスッポリと包む。そして次の瞬間。
「ウチのもんやっ!」
 その布を跳ね除けると、そこにはウェディングドレス姿の成瀬が立っていた。成瀬お得意の早着替えに、会場から驚きと歓声が上がる。
『待って待ってーっ!』
 すると今度は、花道の先から声が聞こえる。リング上から移動したスポットライトの先に浮かび上がったのは。
『ジャーンッ!』
 渡辺智美であった。そして響き渡る、ウェディングマーチをアレンジしたディスコミュージック。
『こーんないっぱいのお客さんの前で結婚式なんて、ずるーいっ。あたしもあと一週間で引退だしー、最後は社長と結婚して派手に引退したいなっ』
 だいたんにカットした純白のミニドレスに身を包み、踊りながらマイクを掴んで花道と言う名のヴァージンロードを歩く渡辺。
「ちょ、ちょっと待って、あたしもっ!」
「ボクもっ!」
「真帆もだっ! ……ところで、ケッコンって美味いのか?」
 彼女達に触発されたかのように、次々にリングインするうら若き女子プロレスラーたち。いつの間に着替えたのか、皆ウェディングドレス、あるいは白無垢を身に纏っていた。新春バトルロイヤルよりも大人数である十数人の美女が赤コーナーに陣取り、青コーナーの社長を取り囲む。
「さあ、社長」
『誰を選ぶのっ?』
 美女達に詰め寄られ、社長の額を流れ落ちる一筋の汗。どう答えても、今後社長に安息の日々が訪れる事は無いであろう。ある意味で、団体崩壊の危機であった。
「……なんや社長、決められへんのかいな。しゃあないな、こうなったら」
 成瀬がマイクを握り、会場をグルリと見回し、大きく息を吸い込む。
「社長争奪、バトルロイヤ」
「ダメーッ!」
 成瀬のマイクアピールは、少女の叫びに掻き消された。見せ場を奪われ、思わずズッコケる成瀬。
「あんもう、なんやねんあやっぺセンパイ。ウチらレスラーにはこれが一番の解決方法やのに。なあ、みんなー!」
 リングを包む拍手と歓声の渦。
「だってもう、あやプロレスラー引退しちゃったもん」
「あ〜……まあ、そういやそうやな」
 綾は一歩踏み出し、成瀬からマイクを受け取る。
「それにね。みんな、ケンカしちゃヤだもん。だってあや、おにいちゃんも大好きだけど」
 綾は小さな体で目の前の成瀬に抱きつき、チュッと小さくキスをする。
「ゆいちゃんも……トモちゃんも……」
 さらに渡辺や、他のリング上のレスラー達にも抱きついてキスをしていく。全員の名を挙げキスを終えると、マイクと手にしていたブーケをキュッと抱き締め、目をつぶる。
「みんな、み〜んな大好きなんだもん。だから」
 そして、綾は社長の前に一歩踏み出し。その大きな瞳をウルウルさせて、言った。

「みんないっしょじゃ、ダメですか?」

 〜

「という引退セレモニーはどうだろうか」
 組んだ手に顎を乗せて社長の妄想を黙って聞いていた井上霧子が、ゆっくりと椅子を立ち上がると社長の隣に立ち、ニコリと天使の微笑みを浮かべる。
「社長」
「お、霧子君も参加したいのかい。それなら」
「せっ!」
 ズビシッ!
「目がっ! 目がぁーっ!!」
 霧子のサミングをもろにくらい、社長は転げまわった。
「何をバカな事を言ってるんですかっ。そんな事したら、会場で暴動が起きますよっ」
「そうかなぁ。いい考えだと思うんだが」
 口を尖らせる社長に溜息を吐く霧子。
「それに、他の子たちが了承する訳が無いでしょう。そんなハーレム展開」
「ハッハッハ。大丈夫。霧子君は夜の第一秘書として、てててっ、手がありえない角度にぃーっ!?」
 井上霧子52の殺人技の一つが炸裂した。
「まったく。綾さんを悲しませるようなマネをしないでくださいね。……とりあえず、社長と綾さんには近しい方のみの結婚式を南の島で行い、そのまま新婚旅行に出掛けてもらいます。飛行機やその他諸々の手筈は全て整えてありますから」
「き、霧子君……私達の為にそこまで……」
 感動した社長が、霧子の手をガッチリ掴み、目を潤ませる。霧子はニッコリと天使の微笑みを浮かべ、続けて告げた。
「そうそう。その準備に当社の資金の50%が掛かりましたので」
「今月の空き巣の50%はそれかーっ!」
「それと、来月は全員に失恋イベントが発生して練習の効率が下がりそうですので、バカンスに行くのが良いと思われますよ」
「借金生活確定ーっ!?」
「さらに、成瀬さんがショックのあまりGWAに移籍しました」
「海外移籍は勘弁してくれぇーっ!!?」

 〜BAD END〜

「二人一緒じゃダメですか?」
 ってのは双恋ってアニメのCMかなんかのキャッチコピーだった気がするんですが(うろ覚え)、
俺なら3秒で答えますね。
「お願いします」と。

ボクはエロゲ脳なんで、三角関係の対処方法は3Pだと思うんです。
ハーレム万歳!(死

そんな感じで、Nさんの書かれたSSを台無しにしてみました(笑)
Nさんスマン!

というかSS書く為に同期のトモちゃんの誕生日を調べたら、ちょうど今日だった。
それでという訳でもないけど、ちょっとオイシイ役回りで登場。
ある意味で智ちゃん記念SSかもw

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