拍手ありがとうございました!

【Un tournesol】その1
ヤバイ。」 
直輝一人称 15R






<送ったメッセージ>


コメント:(無記名/一言OK)
【お返事】

不要
おまかせ
連続拍手は 10回まで可能です。  コメント最大文字数は 無制限です。
お返事はこちらでさせて頂いてます。

- PatiPati (Ver 4.4) -

 









ヤバイ

−直輝−

注意:直輝一人称/独白15R
 ヤバイ。
 つくづく、ヤバイ。

 蒼衣の好意を断りきれなくて、いや、あの必死な姿を見てほだされたのは、マジに軽率だった。
 まさか……この俺が男とヤっちまう羽目になるとは。
 しかもあんな、今まで感じた事のない興奮や感情まで感じるなんて思いもしなかった。
 俺は悪いが今まで一度も、男に対してそんな目を向けた事もなけりゃ、冗談でも男にも女にもべたべたされるのは御免なタイプだ。
 大体女との経験も年相応にそこそこあるし、それに、自分で言うのもなんだが家の事や、元ボクサーって事で女には事欠かしたことはない。お陰でセックスに対してもそれ程興味や興奮を持つ事もなく、しかも寄って来る女は糞つまらない女ばかりで、いつしか恋愛やセックスそのものが面倒なモノだと思うようになっていた。
 だが、あの日、あいつを抱いて、俺の世界観は一変してしまった。
 俺自身の事もそうだし、あいつに対してもそうだし。
 元々あいつの事は、学校でよく見る根暗な男、ってだけの印象だった筈だ。
 ただ、その暗そうな雰囲気の中に、どこか人を避けているような印象と、その割りに時折寂しそうな辛そうな表情を見せるのが妙に気になって、ひっかかって、講義の時にそれとなく隣に座った事もあった。だがあいつは俺が隣に居る事にさえ興味を示さずただただ真面目に一生懸命に授業に打ち込んでいて。その姿勢に俺は妙な関心をしたのを良く覚えている。
 だが、ただの真面目で地味な根暗ヤローじゃなと言う事に、あの日嫌でも思い知らされてしまった。
 あいつはあいつなりに重い過去を背負い、それがあるからこそ倒錯した趣味に溺れ、人を避け、親しい人間を作らないようにしていたと知り、そんなあいつの内面に触れ、俺があいつを拒めなかったのは我ながら甘いとも思うし、軽率だったとも思う。
 だがそれでもあいつが俺に助けられた事を気負いする事もなく、俺にお礼をしたいというその気持ちが晴れるのであれば安いモンだ。
 そう自分を納得させ、“一回限り”という条件の元で抱いたあいつは、やけにそそるものがあって。妙に可愛くて、エロくて。
 結局、最初こそあいつ主導で始まったソレは、途中から俺が主導になってあいつを喘がせ鳴かせていた。
 ……それがマズかった。
 あいつとのセックスは、俺のセックス感を根底から覆し、劇的な変化をもたらせた。
 一回だけ。
 それが俺自身があいつに提示した条件。

 ヤバイ。
 凄くヤバイ。

 あいつとあんなセックスをしておいて、普通の友達だなんて絶対無理だと思った。だからって、セックスフレンドってー扱いもゼッテー無理だと思った。
 だけどあいつがあんなに顔を紅潮させて、必死になって、健気に俺に友達になって欲しいって、そう言ってきて。
 それでその要望を残酷に突っぱねることなんて、いつもの俺なら簡単な事だったかもしれないが、その時の俺にはとてもじゃないが出来なかった。
 あいつが落胆する顔が見たくなくて。これ以上、悲しそうな顔をみたくなくて。
 だから咄嗟に、もう友達だと思ってる、なんてそんな見え透いた嘘を吐いた。
 だが、あいつはその言葉をそのまま信じ込んだみたいで。
 本当に嬉しそうな顔で笑うあいつに、俺はもう後戻りが出来ないことを悟った。

 ヤバイよ。
 マジでヤバイって。

 携帯の番号とメアドを聞き出し、その日から俺は折を見てあいつに連絡を取った。
 会える日は会って、それができない時はメールか電話だけ。
 なんで俺はこんなに必死になってんだろう。
 そんな風に自分を嘲笑いながら。
 あいつの顔が寝る前になったらやけにくっきりと瞼の裏に映し出される。
 友達だから、もう二度と抱くことはないだろうと、そう思っているあいつを、俺は。
 まるでそれがあいつを友達として見る為に必要な儀式だと言うように。
 毎夜、瞼の裏で。
 あいつを思う存分。
 犯して。
 抱いて。
 鳴かせて。
 泣かせて。
 イかせて。
 俺は何度も何度も自慰をした。

 ヤバイんだよ。
 本気で、ヤバイ。

 自分がどんだけ深みにハマり初めているのか。
 どんだけ今まで歩いてきた道から外れた獣道を進んでいるのか。
 嫌って程、わかっている。
 それにあいつは俺を本当に、純粋に、普通の男友達だと思っている。
 それは裏切れない。
 そして、自分の言い出した言葉も曲げられない。
 あれからあいつの女装姿は見ない。
 それをどこか物足りなく思う俺は、間違いなく可笑しい。
 だけどあいつは、蒼衣は、友達だ。
 これから先も、ずっと。
 触れちゃいけない友達だ。


 それなのに。
 ヤバイんだって。
 ヤメロよ。
 なんなんだよ。

 なんでお前は。
 俺に。
 そうやって。
 困ったように笑って。
 くっつくんだよ。

 抱けねーんだよ。
 友達なんだろ。
 なんだよ。
 なんでンなに俺を煽るんだよ。
 ヤメロよ。

 血液が沸騰しそうになる。
 あいつのやらしい顔が脳裏に蘇る。
 俺の理性は一体いつまで持つんだろう。
 だから、言い聞かせる。
 蒼衣は友達。蒼衣は友達。
 そんな糞くだらないマインドコントロールを、俺は馬鹿みたいに必死になってやってる。

 ヤベーよ!
 ヤベーんだって!!

 なぁ、蒼衣。
 それでも、いいのかよ?
 お前に嘘を吐き通してる俺でも。
 お前が何を求めて、何を欲しているか解ってるのに、それを見ないようにしている俺でも。
 なぁ、本当にいいのかよ?
 流されても。
 流れても。

 ヤバイって。
 ヤバイって!

 恋愛感情で好きだとか、どーだとか、そんな事は知らねぇ。わからねぇ。
 一回抱いたら歯止めが利かなくなる。
 だけど。
 ただ、抱きたい。
 お前を抱きたい。
 めちゃくちゃ抱きたい。
 こんな感情と欲求は初めてで、正直俺は凄く戸惑ってる。
 だが反面、俺は妙に今のこの状況を楽しんでいた。

 ヤバイよな。
 本当にコレってヤバイよな。

 深みにハマりそうなこの状況を楽しいなんて思うなんて。
 ハマってもいいか、なんて思ってるなんて。
 女装してない男のままの蒼衣まで可愛いとか思っちまうなんて。
 セックス以外で泣かしたくない、って思う、なんて。
 これが『愛情』だと言われれば、そうなのかもしれない。
 だけど『欲情』じゃないなんて言い切れねぇだろ?
 セックスがしたいだけじゃないなんて言い切れねぇんだよ。
 本当なら、あいつへの気持ちが固まるまではセックスしねぇ方がいいんだ。
 それなのにヤバイくらい、あいつに触れたくなる。
 あいつとのセックスに溺れそうになってる。
 感情よりも欲情が先走っている今のこの状況は、ヤバイだろうよ。
 いいのかよ。
 これでいいのかよ、俺。
 それでいいのかよ、蒼衣。




「挿れていいか、蒼衣?」

 俺の言葉に蒼衣はいつも通りにコクンと恥ずかしそうに、だけど、どこか嬉しそうに頷く。
 解りきっていた蒼衣のその頷きに、俺は満足そうに笑うと、もう一度蒼衣の唇にキスをした。そうしながら蒼衣の足を開き、その間に体を滑り込ませる。
 ゆっくりと蒼衣の後ろに俺の欲望を押し当て、その窪みにそれを埋め込んでいく。
 すっかり蕩けきっているそこは俺を柔らかくその肉で押し包み、俺自身にまで快楽を与えた。
 蒼衣の喉が仰け反り、快楽に染まったいやらしい声がその薄い唇から漏れる。
 俺が腰を動かすとそれに合わせて蒼衣は淫らに腰を振り、俺のモノに強い快感を与え俺から余裕をどんどんと剥ぎ取っていく。
 何度も何度も蒼衣の中を擦り、突き上げ、その柔らかさと気持ち良さを堪能する。
 そして蒼衣の可愛くていやらしい顔と声と姿態に更に余裕をなくし、俺は獣のように蒼衣を求め、その中に自分のDNAを注ぎ込むことに意識を集中していった。
 散々蒼衣の体を貪り、喰らいつくし、俺は蒼衣のナカに孕めばいいと狂った事を思いながら、精液をぶっ放す。
 途端に例えようのない快楽が下半身から湧き上がり、俺は、蒼衣に種付けをした事にめちゃくちゃ喜びを感じた。

 コレって、ヤバイよな。
 ヤバすぎだよな。

 欲情に感情が引き摺られて、俺はすっかり自分を見失っている。
 なんだかんだ理由をつけたって、今の俺は蒼衣を手放すことは出来ない。
 きっともう、俺は後戻りが出来ないくらい蒼衣に、蒼衣の体にイカれてるんだろう。

「蒼衣。可愛いぜ。」

 俺がそう蒼衣の耳に囁くと、蒼衣は顔を真っ赤にする。
 それがまた酷く可愛くて、俺は蒼衣にキスをした。

 本当に、ヤバイって。
 とにかくヤバイんだって。

 ――何がヤバイって?
 答える事を先送りにしてでも、こいつとこうして居たいって思う事がヤバイんだよ。
 はっきりとこいつに対して恋愛感情を抱いてるのかどうか解らないってのに、こいつを独り占めしたいって思ってる事がヤベェんだよ。
 しかも、ふとした瞬間にその感情が爆発する。
 それを必死になって押さえつけ、俺は相変わらずマインドコントロールを自分に施す。
 蒼衣は友達。蒼衣は友達……。
 いっその事、俺がこいつに思ってる事をぶちまけてしまえたらどんなにか気持ちが軽くなるだろうか。
 だけど、それは。
 確実に今以上にヤバイ事態を引き起こすだろう。
 だからさ。
 もう暫く、俺はお前に答えを言えない。
 この胸に渦巻く、蒼衣に対するヤバイくらいの感情を、俺はお前には伝えられない。
 あの時、軽い気持ちであんな事を聞いた俺を許してくれ。
 そして。
 身勝手にお前を求める俺を。

 憎んでくれたら、どんなにか楽だろうか――。

 こんな事をお前を抱きながら思う俺は、もうすでにヤバイ所まで踏み込んでしまっているのかもしれない。
 あぁ、本当に。
 なんつーヤバイ相手と関係持っちまったんだろう。

 なぁ、蒼衣。
 お前くらいなんだぜ?
 俺がこんなにも冷静さを無くす相手は。
 我慢出来ねぇ相手は。
 それが『欲情』のせいなのか『愛情』のせいなのか、自分を見失ってる俺にはやっぱりわからねぇ。
 だけど、ヤバイくらいお前と一緒に居たいと思う。
 だから。

 やっぱりヤバイよな。
 本心なんて、俺がお前に余裕なくしてるなんて、お前にはまだまだ伝えられねぇ。

「蒼衣。……可愛いぜ。」

 だから、違う言葉で蒼衣に伝える。
 真っ赤になる蒼衣を、愛おしいと思いながら。

▲上へ戻る