遠坂凛は絶句していた。
「な、なによ…なんなのよ、これ…」
いつものお気に入りのスカートに足を通し、腰まで上げる。そしてチャックを閉めようとしたその時、彼女は気が付いてしまった。
「き、……きついわ…」

ズガーンと脳内に稲妻が落ちた。
なによなによなによ、なんなのよー! 今までこんな事なかったのにー。
なに?なに?何が原因だと言うの!? そう。こうなったのには何か原因がある筈だわ!
落ち着いてよーく思い出すのよ、遠坂凛。
仕様が無いので穿きかけのスカートをまた脱いで、パンティいっちょでベッドに腰掛けた。
むぅぅと、額に手を当て何故こんな事になってしまったのか記憶を手繰る。
「聖杯戦争が終ったからって鈍ったとでも言うの?いいえ。トレーニングだって毎日欠かさず行っているわ。それに…」
それに、毎晩アイツとあんなに激しい事してるっていうのに…って、バカバカバカバカバカバカ!私のバカ!何を考えてるのよーー!
光速よりも早く赤面する。
でもでも、もっと痩せていいはずよ。だってあんなに激しいのに…ってまたバカバカバカバカ!ちがーう!
部屋で一人ボケツッコミをする。
そうよ。ご飯だわ。アイツの作る料理が美味しいからついつい食べ過ぎちゃうのよ!
一人暮らしの時はどちらかと言えば粗食だったわ。明らかに衛宮家に御呼ばれ(居候だけど)され始めてからよ。
大人数だと会話も弾むし、セイバーや藤村先生に釣られて私もついつい大食になっちゃうのよね。
こういう賑やかな食卓は子供の頃からの夢だったもの…。
もう寂しい生活には戻れない…。戻りたくない…。フフ。私も随分弱くなっちゃったわね…。
ふぅ、と、一息。溜息を吐ききるとパンパンとほっぺたを叩いて気合注入。
そうよ。食べたなら食べた分だけ動いて消化すればいいだけの話。なにも今の生活を手放す事なんて無いんだわ。
今晩から士郎にはもっと頑張ってもらわなくっちゃ!
だってだって仕様が無いじゃない。アレが一番運動量多いんだもの…。気持ちだって良いし…。
毎晩の事を思い出し、また赤面してしまった。
美味しい物を食べて、気持ちいい事して維持出来るのなら万万歳じゃないの。
両方実践してこそ遠坂凛だわ!
グッっと拳を天に向かってガッツポーズ。
「気が楽になっちゃったら何だかお腹が空いてきたわね。今日は士郎が夕食当番だわ。献立はなんだろう」
「士郎ー。今日の夕食は何を作るつもりー?」
台所まで聞こえる大きな声で凛はドアを開ける。
一度吹っ切れてしまった凛は強い。一度決めた事は並大抵の事では捩じ曲げない。
遠坂凛は今日もゆく。幸せへと向かって一直線。
穿き忘れたスカートを置いて――
またお馬鹿だ…。
この後、士郎に「ななな、なにやってんだ、バカ!」と怒られるのは当然の事。
ここ一番で失敗する女。それが遠坂凛。
すっかり平和になり、幸せ太りになる凛様でした。
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