私の託された夢と私の託した想い

「さあルカ、着いたよ。どうぞ」
 鍵の束をカチャカチャ言わせて、プロデューサーはマンションの鍵を開けた。
「お邪魔します、プロデューサー」
 私はプロデューサーの後に続いて入っていった。初めて入った彼の家。そこは歌手の事務所の従業員らしく、壁一面私やミク、リン、レン、KAITO兄さんやMEIKO姉さん達のポスターで埋め尽くされていた。当のプロデューサー本人は何故か人目を憚るようにサングラスをかけていて、「怖い人」という印象がある男の人だ。本当はそんな印象とは真逆の優しい人だって私はよく知ってるけど。
 今夜のライブも大盛況のうちに終わり、終わってからプロデューサーと私とで打ち上げでも、という話になったのだけど渋滞で車が思うように進まず、仕方ないからライブ開場から車でならすぐ行けるプロデューサーのマンションへ行くことになった。プロデューサーがワイン(取って置きだったらしく、逆さまに立ててあったのを慎重に持ってきていた)の栓を抜いて大きなガラス瓶に移し変え、グラスに注ぐ。そうして準備ができるのを待つ間、私は部屋を見回していた。初めて通されたプロデューサーの住まいを。
 ふと私の目に、机の上にあった写真立ての写真が目に入った。ステージで歌う一人の男の人。見覚えがあると思って私がそれについて訊ねようとしたところでプロデューサーがやって来る。
「おいおい、あんまりジロジロ見ないでくれよ」
「あら、ごめんなさい……」
 恥ずかしそうに言うプロデューサー。私は謝ったけど、その照れ顔が意外だと思ったのが表に出ていたようで、
「笑うことないだろ、ルカ」
 プロデューサーは少し気を悪くしていた。それでもすぐ口元に優しい笑みを浮かべて、私の傍に座った。
「まあ、こんな雰囲気で飲むのもないよな。今日のライブの成功を祝って……」
「乾杯」
 私とプロデューサーは目を見交わして、カチンとグラスを当ててワインの杯を干した。酔いが回って、私は何だかいい気持ちになってきた。お腹と顔に小さな火が灯ったような、暖かい感じに私の体が包まれる。そして私は一緒に飲んでいる目の前のプロデューサーの顔を見ていて、何か引っかかるものを感じた私の口からツルリと疑問が出た。
「あの、プロデューサー」
「ん?」
「あの写真立て写真に写っている男の人って……」
 途端にプロデューサーの顔が強張った。私の思った通りかもしれないけど、それでももう口を噤むことはできない。
「プロデューサーなんですか?」
 私にそう言われて、プロデューサーは苦しそうな顔で下を向いた。一言も私に返すこともなく。
「あ、あの……プロデューサー?」
 プロデューサーは顔を上げたと思うと、無言でサングラスを取った。私はハッとなった。プロデューサーの目の周りに傷と痣がくっきり刻まれている。そのままポツポツと話を始めた。
「そうだよ。僕はシンガーソングライターだったんだ……」

「もう五年ほどかな。僕はこの事務所でソロシンガーとして活動してたんだよ。歌もそれなりのヒットを飛ばせば、ラジオのDJもやってたさ。けどな……」
 一息ついて更にプロデューサーは続けた。
「そろそろ上向こうかっていう時にその芽を自分で摘んでしまった。その証拠がこれだよ」
 プロデューサーは親指で自分の目の傷を指した。
「プロデューサー、その傷どうしたんですか」
「……あれは君の先輩のVOCALOID、そう、MEIKOと言ったな。彼女とユニット組んでライブした時だった。ライブが終わって帰る時、ワルの一団がMEIKOをナンパしようとした。間の悪いことにその時事務所の者は僕以外にいなくてね、僕が彼女を庇って『やめろ、手を出すな』って前に出たんだ。そのまま僕達は殴り合いの大立ち回りを演じて、喧嘩両成敗で一晩警察の厄介になって……」
「プロデューサー……」
「手が後ろに回って、事務所をクビんなりかかったんだが、いろんな人が社長に掛け合ってくれたおかげで僕の首はつながった。裏方としてアイドルやミュージシャンをプロデュースするという仕事で、もう表舞台には立てなくなったんだけどな」
 少しの沈黙の後、プロデューサーの話は続く。
「だけど、僕は雇ってもらえることが決まった時決めたんだ。付いたミュージシャンには精一杯優しいプロデューサーとして務めていこうと。そして思ったよ。僕と組む人には、きっと僕の果たせなかった夢を叶えて欲しいって」
「プロデュー……きゃっ」
 プロデューサーが私に抱きついてきた。
「ルカ……君が僕の夢を叶えてくれようと頑張ってくれて嬉しいよ。君と会えて良かった……」
「私こそ、今のプロデューサーがいてくれて幸せですわ。貴方がいい仕事取ってきてくださるおかげで、毎回ライブで楽しく歌えるんですもの……」
「ルカ……」
 プロデューサーが嬉しそうに笑うと目を閉じて、そっと私に顔を近づけてきた。私はハッとなって、思わずプロデューサーを押しのけた。
「ごめん、嫌だったかい?」
「え、い、嫌じゃ……ないですけど」
「ああ、いきなりで吃驚させちゃったよね。でも今夜はゆっくりとルカを愛してあげるから……ね?」
 この人が今、私の全てを求めている。これから私は私の全てを見られ、そして全てを求められる。全てをさらけ出すのは恥ずかしい。そう思うと私の体は自然にキュッと強張った。
「怖いのかい? 心配しなくていいよ。優しくするから」
 私の思いに答えるようにプロデューサーは私に優しく囁いて、そっと頭を撫でながらソファに倒れこんだ。

 ソファに横になった私たちは、そのままもう一度唇を重ね合った。口の中で舌を絡め合って、その柔らかさと甘美な味を愉しむように。そのうちに背中で私を抱きかかえていたプロデューサーの両手がそっと私の胸に置かれるのを感じた。これから始まる甘く、そして恥ずかしい一時に高鳴る私の胸の鼓動を確かめるように置かれた手は私の双丘をさわさわと撫で回し、その指がやがて私の胸の中にめり込んでいった。
「ああ……」
 胸に触られ、そこから感じる何とも言えない心地。体中に甘美な刺激が広がっていく。
「あっ、ああっ、はああっ……」
「ルカのおっぱい、大きくて温かくて柔らかいよ。それに感じやすいし……」
「そ、そんなこと、ない、で、す……」
「ふうん、そうかな?」
 プロデューサーが悪戯っぽい笑みを私に向けて、私の上着に手をかけてきた。
「あ、やめて……」
脱がされるのを手でガードしようとしてもあっさり払いのけられて、私は裸にされていく。楽しみにしていたプレゼントの包みを解くようにゆっくりと。私の顔はそれだけで恥ずかしさの余り真っ赤になった。
「ああ、大きくて、形もいいきれいなおっぱいだね」
「プロデューサー、エッチです……」
「だろうな。だけどルカだって感じてこんなになってるよ。ルカのピンクの乳首、可愛い……」
 プロデューサーが片手の指先で私の乳房と乳首を弄んで、もう片方の乳首をチュッチュッと吸った。
「あっ、そんな、だめですよぅ……ひゃうっ、はぁ、ああん」
 私のおっぱいの味と柔らかさを愉しむプロデューサー。その度に何だか変な感じの痺れに私は苛まれていた。その内にプロデューサーの空いていた手が私の足に触れて、腿をさわさわと優しく撫でて、その手が少しずつ足の付け根に近づいていった。
「えっ、ああ、あの、どこを触ってるんですかっ」
「どこって……それを言わせたいの?」
 うふっ、とプロデューサーは笑って、パンツの上から私の大事な場所に手を添えた。
「ほら、パンツがもうお漏らししたみたいにぐしょ濡れになってる。感じてるんだ……ルカもエッチだね」
「そ、そんなこと……あ、そこ、触っちゃいやですっ、はぁんっ!」
「ふうん、でもルカ自身は嫌がってないみたいだけど? それじゃもっと気持ち良くしてあげる」
 プロデューサーは私の衣装の裾をめくって、私のパンツに手をかけて脱がせた。下も裸にされた恥ずかしさに私は顔を背けて、足をキュッと閉じて両手で大事な場所を隠す。けれどその手もプロデューサーに払いのけられて、プロデューサーの体が足の間に入ってきて、私は大事な場所をまじまじと見られることになった。
「ルカのここ、きれいなピンク色だね……」
「そんなとこ見ないでください……恥ずかしい……きゃっ」
 プロデューサーは私の足をグイッと押し広げ、私のあそこにキスしてきた。
 チュッ……レロッ、ピチャ、チュプ、チュルルッ
「な、何を……そ、そこ、だめです」
 私のあそこを舐め回すプロデューサーの頭を押さえて離そうとしても甲斐ないこと。それどころか私がそうすると一層プロデューサーは私のあそこに吸い付いてくるようだった。舐められるたびにゾクゾクと体は甘い痺れに苛まれて、後から後から愛液があそこから染み出してくるのを感じる。プロデューサーは私の愛液を味わうように舌で掬い取り、コクコクと喉を鳴らして飲んでいる。
「美味しいよ、ルカのあそこ……」
 プロデューサーは尚も私のあそこを舐めるのをやめない。割れ目に沿ってペロペロ、ピチャピチャとエッチな音を立てて、クリトリスを舌先でツンツンと突付く。
「いやぁ、あ、私、もう、変になっちゃいます……ああん、ああん」
 私は頭が真っ白になって、意識が飛んでいきそうになった……と思うとその手前で止めるかのようにプロデューサーが私のあそこから頭を離した。そしてカチャカチャとベルトを緩める音。プロデューサーはズボンを脱いで、「あれ」を私の前に晒していた。飢えた猛獣のように、私の体を味わう期待にビクビクと震えているのが怖い。
「怖いか? ならお腹の力抜いて楽にしてごらん。そんなに緊張してると痛いよ」
「えっ、あ……は、はい」
「って言ってもまだリラックスできないか。ほら歌う時みたいに深呼吸してごらんよ。ゆっくりとね」
 優しく囁かれた私は、プロデューサーに言われた通りゆっくり深呼吸を始めた。傍らでプロデューサーは硬くならないでと目で語りかけつつ私を見ている。
「ルカ、そろそろいいみたいだね。入れるよ」
そうして私の緊張が徐々に解れてきたのを見て取ったプロデューサーは腰を私に引き付けてきた。
 クチュン……
 粘っこい音と私のあそこに固い物が当たる感じ。それはやがて火傷しそうな熱と痛みに変わった。
「ああっ、い、痛いです……」
「ごめん、じゃあもっとゆっくり入れるよ。ちょっとの間我慢して」
 プロデューサーは私の目尻からポロポロとこぼれた涙を指でそっと拭って、少しずつ私を気遣うように私の中にあれを入れていった。
 クチュッ、プチュプチュプチュ……
 私の愛液とプロデューサーのあれが絡まる音。その間にも私の体は痛みに苛まれている。それでもプロデューサーが入ってくる間、痛みの中にもどこか心地いいような感じがあって、プロデューサーが腰を押し付けて来たときには痛いような、くすぐったいような感触に私は包まれていた。
「ああ、お腹が……お腹が熱いです……」
「ルカ……ルカのあそこの中、締まってきて気持ちいいよ」
 プロデューサーの手が私の背中に回ってきた。優しく、暖かい抱擁。そして今夜二度目の舌を絡めあう濃厚なキス。
「綺麗だね、ルカ……そんなルカが俺は大好きだよ」
「私も、プロデューサーのこと……ああっ」
「今夜は俺だけにルカの歌声を聞かせて欲しいな。そう、エッチで色っぽい、俺とルカだけが聞ける声を」
「そんな、恥ずかしいです……あ、嫌、動いちゃ、くふっ、あっ、あああん」
 クチュッ、クチュッ、クチュ……
 プロデューサーが腰を動かし、私のお腹の中であれが蠢く。その度に私は何だか変な感じになった。まだ感じたことのない、くすぐったいような、甘やかな痺れ……。
「はああっ、い、嫌、そんなの、駄目、です……あっ、あはああっ、あん」
 だんだん変な気持ちになっていくのが私は怖かった。プロデューサーは腰を私のあそこをかき回すように揺すぶって、仰向けで喘いでいる私の裸を惚れ惚れと眺めている。恥ずかしさに私は顔を背けて、それでも自然に出てくる喘ぎ声は上げ続けていた。
「ああ、凄く気持ちいいよ。ルカの中……おっぱいがプルプル揺れてるのがエッチだね。お、俺、もう止まらない」
 グシュッ、グシュッ、グシュッ……
「嫌、ああ、は、恥ずかしいです。私、も、もう、どうかなっちゃいそう……ああ!」
「僕ももう、我慢できない……んん、で、出る……」
 プロデューサーが腰をグッと押し付けたと思うと、私の中でプロデューサーのあれが震えだした。
 ビクン、ビクッ、ビクビク……
 雄叫びを上げるように震えるプロデューサー。その度に熱いシャワーがお腹に当たって、私は体が宙に浮いて、そのまま彼方へ飛んでいきそうな感覚を味わっていた。
「あ、ああ、熱い、熱いです……プロデューサー……」
「ふう……ルカ、凄く綺麗だったよ。ありがとう」
 プロデューサーが私に抱きついた。私もプロデューサーと抱き合って……その後の夜のことは覚えていない。

「先週の36位からいきなり今週は2位にランクインですか。いやーこれは18年前ー、ですか。森中雪菜さん以来の快挙ですよ。おめでとうございます」
「ありがとうございます。それでも私はまだこれからですし、たくさんの方のお力添えがなければここまで来れませんでした。ファンの方やスタッフの皆様にはいくら感謝してもし足りない思いです」
 今日は歌番組の撮影。司会者と楽しそうに談笑するルカをカメラマンと共に笑顔で眺める僕の横に誰か来る気配があった。
「さすがに熱い心で手塩にかけて育てられた娘は違うわね。あーあ、今週でとうとう私もルカに抜かれちゃったか。それも信じられないランクアップだもんね」
 聞き覚えのある声に振り向いた僕の目に入ったのは……
「だ、誰かと思えばMEIKOじゃないか」
「こんばんは、久しぶりね」
 MEIKOは上機嫌で俺にウインクまでしてみせたが、僕は思わず顔を背けた。
「ちょっと、せっかくお話に来たのに何よその態度は。まだトラウマになってるの? あの事件のこと」
「……」
「黙ってても分かるわ。でも過ぎたことでいつもクヨクヨしてたってしょうがないじゃない。現に貴方は今ルカを一流に育て上げた敏腕プロデューサーでしょ? もっと胸張って生きなさいよ。それに……」
「それに?」
「私、あの時怖かったけど貴方には感謝してるんだから。私のために貴方が体を張ってくれたこと。貴方が変な色眼鏡で見られないようにって社長にお願いしたのは私もなんだから」
「そうなのか?」
「ルカも『みんなの力がなかったらここまで来れなかった』ってさっき言ってたでしょう。その力をあの娘に上げた人たちの中には貴方もいるんじゃなくて? あの娘の目を見れば分かるわ。貴方と同じようにキラキラしてるもの。そのサングラスの下にある、みんなのために歌うのが何よりも楽しいんだって輝きが、ね?」
「……ふっ」
「さあ、ルカのステージがもうすぐ始まるわ。貴方が見てなくてどうするの」
 MEIKOが僕の背中をポンと押した。そしてその直後に司会者がアナウンスする。
「それでは早速歌っていただきましょう!」
 一礼してステージに向かうルカ。僕はその背中に強いエールを心の中で送っていた。精一杯楽しんで歌って来い、と。


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