第拾六話補遺 戦い済んで夜も更けて
 俺が小鈴の八乙女から救出された日の夜。夕食と風呂を済ませた俺は宿の外に出て来た。特に行く当てもなかったけど、涼しい夜風に当たれるならと思って。
「健殿」
 俺が振り向くと、そこには浴衣姿の冴が立っていた。
「お主、こんな夜中にどこへ行くのじゃ?」
「いや、どこへ行く当てもないさ。ただ外に出たかった、それだけ。冴はどうしたんだ?」
「風呂から上がったらお主が外へ出て行くのが見えての、気になって追ってみたのじゃよ。 どうじゃ、外に行くなら妾も付いていっても良いかえ? 一緒に少し話をしようぞ」
「いいぜ」
 俺達は誰もいない海水浴場へ向かって歩いて行った。

 波打ち際に二人並んで腰掛けて、俺は言った。
「まだ俺は助けてもらった礼を冴にきちんと言ってなかったな。ありがとう」
「ふ、それには及ばぬ。悪しき妖から民を守るのは我らの務めじゃて」
「いや、俺はギリギリまで死ぬんじゃないかってくらい怖い思いさせられたし……冴は命の恩人だよ。感謝してもし足りない思いだよ」
「ふ、そうまで申すなら妾も嬉しいぞ。まして此度の戦いで、刀十郎を覆う霧は僅かながら晴れたようじゃ……」
「どう云う事だ?」
「お主は覚えておらぬかえ? お主が八乙女の拷問に耐えていた時、妾の前に刀十郎が現れたのじゃよ」
「え、そんな事ってあるのかよ。幻影じゃないのか?」
「あの刀十郎、確かに妾には覚えのある『霊気』を放っておった。此度ははっきりそれが感じ取れたのじゃよ。 いつぞやの偽者とは違うての。そして刀十郎は妾に力を与えると、お主と同化するようにして姿を消した。 『僕はいつも姉様の側にいる』と云う一言を残しての。健殿、初めて会うた時はお主と刀十郎を間違えて しもうたが、満更人違いとも言えぬようじゃな」
「何? じゃあ俺と刀十郎は二重人格とかそんなのだってのかよ。信じられねえけど」
「さあな、健殿の申しておる通りなのかは分からぬ。ただ……」
「ただ?」
「ただ一つ言えるのは、お主が刀十郎につながる手がかりを持っておるに相違ないと云う事じゃて」
「……」
「奴等もそれに感づいた節はある。そうなったからには恐らく奴等付喪神はこの先健殿も標的にしてくる じゃろうて。奴等は護法童子に仕える我等の存在を何よりも恐れておるでな。なれど案ずる事はない。もし もお主が命を狙われるならば、妾の全身全霊を賭けても妾は健殿を守る」
「……」
「うん、どうした健殿? あまり嬉しそうではないようじゃが」
「……」
「そないに仏頂面をするでない。妾は怒りはせぬ故、不足があるなら遠慮せずに申してみよ」
「俺が刀十郎だからか……」
「?」
 俺の呟きに首を傾げる冴。俺は考えるともなく、言いたかった事を吐き出した。
「俺が刀十郎と何か関係があるから、冴は俺を特別に守るってのか?」
「健殿……」
「別に今に始まった事じゃないじゃないか。冴が体を張って、俺や俺の大事な人達を付喪神から守ってくれ たのは。そりゃあ俺が死ねば冴は悲しいだろうさ。だけど冴だけじゃねえ。直美も悲しむだろうし、俺の両親 や伯父さんや伯母さん、若菜と雪菜、大学の仲間だって……逆に俺だって死んで欲しくない人だっているん だしよ」
「……」
 今度は冴が黙って俺の言葉を聞く番だった。
「冴が俺に弟の姿を重ねるのはそりゃ構わないさ。それ自体は別に迷惑って訳でもねえんだし。けどよ、だからっ てそんなんで特別扱いされるの、俺は嫌なんだ」
「……」
 長い沈黙の後、冴は眉をピクリと上げて言った。
「お主、ならば一体何を望……ん?!」
 俺は冴の問いに答える代わりに、衝動的に冴を抱き寄せてキスしていた。慌てて冴は唇を離し、手で口元を 多いながら目を丸くして、そして怒ったような顔で俺の目を見た。
「嫌だったか? ならごめんよ。でも……今の俺の気持ちを伝えるにはこうするのが精一杯だったから」
「……」
 三度の長い沈黙。その間冴は訝るように俺を見ていたが、静かに微笑んで一言。
「お主、つくづく不器用な男じゃな」
「だろうな。その……男と女の間の事なんて少しも考えた事もなかったもんな。今の今までは」
「ほおん、お主も一人前に言うようになったではないか」
 冴は俺に妖艶に笑いかけてみせる。俺を揶揄う時とはちょっと違う表情で。
「妾とて健殿の事は嫌いではないぞえ。どうして芯の強い男なのじゃから。そう、刀十……」
 俺は人差し指を立てて、「シー」をするようにその指で冴の唇を押さえてやった。
「それは言わないでくれよ。俺の事が嫌いじゃないなら、それを見せて欲しいな。刀十郎の代わりじゃない、 この山口健が好きだって事」
 うわあ、柄にもなく流れに飲まれて言っちまったよ。凄い事言われて冴は怒ったりしないだろうか。最悪 張り飛ばされるだろうかと云う焦りと後悔を俺は感じていたが、冴は顔を赤らめながらも、「お主が望むなら それも良かろう」と言いたそうな目で俺を見てポツリと、
「……分かった」
 冴がしなだれかかり、俺の胸の中に体を預けて来た。

 俺は改めて、目を閉じた冴とキスを交わした。冴が舌を伸ばして、俺もそれに応えるように舌を絡め合う。 ねっとりして柔かく、そしてくすぐったい感じ。俺はそれだけでもう天にも昇るような心地だった。
「んふ……」
 冴が更に体を俺に寄せてくる。俺の左手は冴を抱き寄せ、右手は冴の浴衣の裾に忍んでいた。
「おや、そう来るか……お主もいい子ぶっておって好きじゃな。俗に云う『むっつり助平』か」
 俺を揶揄う時にいつも見せる、悪戯っぽい笑顔の冴。
「(こんな時に大人ぶってみせるのはねえだろ)」
 少し面白くないと思った俺は、浴衣の奥にある冴の秘密の場所にまで手を伸ばした。指先が触れた のはそこを覆い隠すように被さる布だった。
「お主も昨日見たろうが、妾は下穿きは何時も穿いておるぞ。激しく動いて袴がめくれる事も間々あるでな。 陰(ほと。女性器の旧い呼称)を誰彼の別なく晒す真似はしとうない」
「ふうん、じゃあ……」
 俺を好きだと言ってくれたんだし俺ならOKだよね、と続きの言葉を行動で伝える如く浴衣の裾をハラリとめくってやった。冴の穿いていたのはパンツと云うより、前垂れの付いた褌だった。デザインは浴衣風の花模様で可愛いけど。
「た、健殿……」
「冴、この褌似合ってるぜ。この下はどうなってるのかな」
 前垂れをめくってやると冴が抗うような声を上げた。俺は構わず、更に股を覆う布をずらす。
「ああ、ここが冴の……」
 ごくり、と生唾を飲んで俺は冴のあそこを眺めた。持ち前の勝気さを象徴するように黒々と濃く植わった恥毛。その下で女の印が恥ずかしげに震えている。
「そ、そんなに見るな健殿。恥ずかしいではないか」
「おやおや、冴らしくもねえ。俺なんだから別にいいだろ?」
「虚け者、健殿じゃから尚の事恥ずかし……きゃっ」
 俺は冴の抗議を遮るように褌の腰紐を解いて脱がせると恥毛を掻き分け、 その下にある秘密の場所を見ようとした。ぷっくりした割れ目。その奥に息づく可憐な花弁。そこからチョコン と出ていた雌蕊に俺はチュッとキスした。
「ひゃううっ、健殿……」
 クリトリスでよほど感じたのか、冴が甲高い声を洩らす。
「(これでいつもとは立場が逆転したわい。もっと攻め立てちゃおうか)」
 悪戯心がムクムクと頭をもたげて、俺は舌を伸ばして冴のあそこを舐め回してやった。わざとピチャピチャ といやらしい音を立てて、可愛らしい割れ目を広げて、桃色の花弁を隅から隅まで味わうように。
「美味しいよ、冴のここ」
「そ、そないにむしゃぶりつくでない。汚い陰等に……ああっ」
「汚くなんてないよ、冴のなら平気さ」
「虚け者、お主も助平じゃの。そこは……痛っ、こら、そないに強く触るでない」
「ごめん、じゃあ……」
 俺は冴を黙らせようとクリトリスを触ったつもりが、却って痛かったようだ。俺は改めて指の腹で優しく撫でるように クリトリスを転がして、舌先でそっとチョンチョンと突付いたりした。
「くふっ、そないにされたら……あ、ああっ、小根(さね)を弄るでない。やめてくりゃ、れ……んくっ、はああっ」
 冴がブルブルっと体を震わせるのが分かる。トロリと膣口から蜜がこぼれ、俺はそれを舌でぺロリと掬い取った。 ちょっぴり酸っぱい味。衝動的に俺はもっと冴の蜜が欲しくなって、ビチャビチャと冴のあそこに舌を這わせた。
「ふああ、妾は……妾はもう気持ちが飛びそうじゃ、んふっ、あ、ああ、ああああああっ」
 冴の体がビクンと跳ねて、冴はおしっこしながら達してしまった。
「ぶっ……」
 俺はシャワーをまともに顔に浴びてしまっていた。
「はぁ、ふう……」
 絶頂の後の余韻で冴は息を喘がせていたが、それでも一分と経たない内に落ち着いた声音で、
「ほらほら、いつまでも陰にばかりむしゃぶりつくでない。夜は長いでな、じっくり愛し合おうではないか」
 そして帯を解き、浴衣を脱ぐ衣擦れの音がする……と思うや冴は裸になっていた。
「ほら健殿、お主も魔羅を出せ」
「え?」
「下穿きの中にあるお主の魔羅を出すのじゃ。すっかり暴れ回る気でいるじゃろうに、下穿きに閉じ込められたままでさぞ辛かろうて。妾が宥めてやるでな、さあ」
 冴の言葉に合点がいった俺は忽ち赤面した。俺の下半身は今冴が言った通り、パンツの中で早く外に出せと言いたそうにパンパンに張り詰めている。 でも堂々とそう言われるとこっちも恥ずかしいもので、俺は下を向いてしまった。
「さいぜん妾の陰を舐っていた時のお主の威勢はどうしたのかのう。喜び勇んで脱ぐと思うたが……それなら妾が出すまでじゃ」
「な……お、おい、冴!」
「ふふふ……」
 冴は俺の肩を抱いて仰向けに倒すとズボンのチャックを開けて、パンツの中をまさぐって俺の息子を引っ張り出した。
「冴、そ、そんなに見るなよ……」
「それ見た事か。お主も妾を笑えまいて。こないに膨れて……解き放たれた悦びに獣の如く猛り狂うておるではないか」
「……」
「よしよし、そないにはしゃがず妾に身を任せるが良い。妾が心ゆくまで可愛がってやろうぞ」
 冴は優しく俺に笑いかけ、自分の涎をローション代わりに胸の谷間に垂らすと俺の息子をおっぱいでサンドウィッチにした。
「どうじゃ、気持ちいいか? 存分に感じて良いのじゃぞ……」

 それはボリュームたっぷりの、マシュマロのように柔らかくて弾力もあるおっぱいに包まれて、俺の息子は「おう、おう」と 感じて声を上げている俺自身と一緒に激しく雄叫びを上げそうな程歓喜に震えていた。冴はおっぱいを俺の息子に擦り付けながら 上目遣いに妖艶な目で俺を見て、舌先でチロチロと息子の先っぽを舐めている。気持ちよくしてもらってる上にそんな色っぽい光景 を見せ付けられたのでは堪らない。
「うっ、俺もう我慢できねえ……で、出るっ」
 俺は呆気なく発射してしまった。それでも冴は動じる気配もなく、口を開けて俺の精液を受け止めて、コクコクと音を立てて美味しそうに飲んでくれた。
「すまねえな、冴……」
「ふ、そないに早く終わって妾にどうしろと? ……まあ良い、今ならまだ仕切り直せるでな。 ほれ、恐縮するでない。これまでの威勢はどうしたかえ?」
 冴は情けなく縮こまってしまった俺の息子を手に取り、先っぽをレロレロ舐め始めた。
「うくっ、ん……」
 俺の背中に快感が走る。俺の息子も同時に少しずつ元気を取り戻して、ムクムクと膨れ上がって来た。 冴のためなら俺もう一度頑張るよと言いたそうに。
「うむ、お主はまだ行けそうじゃな。ふふ、愛い奴よ、健殿……」
 チュプッ、レロ、チュバ……
先っぽから根元まで冴は俺の息子を愛おしげに舐り、玉もキスしたり、袋越しに口に含んで弄んだりした。
「うくっ、さ、冴……」
 俺の強請るような顔を一目見て、冴は俺に静かに笑いかけた。
「うむ、頃合は良さそうじゃな。健殿、妾と一つになりたいかえ?」
 俺は黙って頷くと、冴は俺の息子を手に取って、俺の上に跨ろうとする。
「妾の初めて、心して貰うてくりゃれよ健殿……んっ」
 冴は膣口に俺の息子の先っぽを宛がうと、そのままきつそうに腰を沈めた。
 プツリ。
 膜が破ける感触。続いて俺の息子は冴が俺の上に腰を下ろすと同時に柔らかい襞に包まれていく。
「ん、んん、健殿の……逞しいの」
 冴は苦しそうに息を喘がせ、目尻に涙も浮かべている。破瓜の痛みは辛かったらしい。それでも 冴は俺とつながろうとして、とうとう俺と冴は一つになった。
「はうう、健殿の魔羅が……妾の奥まで来ておる……突き抜けそう……どうじゃ、妾と一つになれた思いは?」
「ああ、俺、凄い幸せだよ……冴の中、暖かくてきつくて気持ちいいぜ」
「そうかえ、良かったの。妾にももっと健殿を感じさせてくりゃれ……」
 冴はゆっくりと腰を浮かせた。クチュクチュクチュッと蜜が俺の息子に絡み付くエッチな音。そしてもう一度 冴が俺とくっついてズブズブッとエッチな音が響く。
「んんうっ」
 冴は体を震わせて、少しずつだけど腰を振る速度を速めていった。冴のおっぱいもプルンプルン揺れている。
「冴……」
「何じゃ……ちょ、健殿?」
 俺は両手で冴のおっぱいを掴んで、揉みしだいた。
「こ、こりゃ、乱暴に乳房に触るでない」
 怒声を飛ばしたかと思えば、すぐにガラリと違う調子で冴は言う。
「小根と同じでそっと……な」
 悪戯な俺の手を諌めるように冴は手を俺の手に重ね、優しくおっぱいを揉ませた。
「こうして柔らかさをゆっくり愉しむように……の。んあっ、あ、はあ、あああっ」
 俺は優しく冴のおっぱいを揉み、時々指で硬くしこってツンと上を向いた乳首を摘んで コロコロ転がした。
「うう、エロいだけじゃなくて凄く柔らけえおっぱいだぜ……」
「はああ、そないな事言うでない。妾は……妾はどうかなってしまいそうじゃぁ、ああ、 乳房が、乳房が疼くわ」
 どうやら冴は言葉責めや感じる部分を触られつつ羞恥心を煽られると弱いみたいだ。 それに媚薬代わりの効果も十分以上にあるようで、冴はグシュグシュと音を立てて淫らに 俺の上で腰を振っていた。
「(この際だからもっと悪戯してやろうか)」
 そう思った俺は体を起こして、冴のおっぱいに吸い付いた。今度は痛がられないように そっと、唇で軽く挟んでチュッ。
「美味しいよ、冴のおっぱい……」
「ああっ、巫山戯るでない。妾はもう、昇天、し……ああ!」
 冴の中の襞が一際強く俺を締め付ける。
「俺も、もう我慢できねえ……く、うう、で、出る……」
「良いぞ、健殿の精、妾にくりゃれ……」
 冴は俺にぐいっと腰を押し付けて、俺に抱きついて……
「「ああああああああああああああああああっ」」
 一緒に歓喜の声を上げつつ、俺は冴の子宮に大量の精を放っていた。
「はあ、ふう……」
 俺の腕の中で暫し絶頂の余韻を味わっていたと思うや、
「晩熟としか思えぬお主がここまでするとはな……」
 いつもの俺を揶揄う時の口調で俺の耳元で囁き、更に一言。
「健殿のえっち……」
「なっ……」
 そ、そりゃ男のスケベ本能のままに快感をむさぼってたし、返す言葉なんてあるはずもない。それでも こんな時俺を揶揄うのは無粋も無粋だろ、と言う代わりに俺は冴を抱き締め、優しく髪を撫でてやった。
「健殿……」
「今はそんな事言いっこなしだぜ。せめて今夜は俺だけの冴でいてくれよ」
「慣れぬ台詞を口にすると舌を噛むぞえ……と言いたいがそれも止そう。その台詞に嘘は なさそうじゃわいの。お主はそれほどまでに妾を好いてくれておるのじゃから……」
「冴……」
「忝い事じゃ、健殿。お主が望むなら、妾はお主の彼女でおっても良いぞえ」
「冴、ありがとう。俺今凄く幸せだよ」
 俺は冴の裸身をこのまま離したくないと云う程きつく抱き締めた。

 翌朝。昨日の夜お盛んに励んだ所為で体がだるい。でもまあ昨日の今日で俺がテンション 低かったら皆絶対心配するだろうし、何よりせっかくの合宿をお通夜などにはしたくない。 そう思って元気の出る物を一杯引っ掛けようと、宿の先にあるコカコーラの自販機に行ったら…… 冴と奈々香に出くわした。
「おはよう、健殿」
「おはよう、ケン」
 俺が何か言うより先に俺に気づいた女の子二人組は挨拶して来た。
「えっ、あ……お、おはよう……」
 冴がいつもと変わらない調子だった事に戸惑って、俺はぎごちない感じで挨拶を返す。
「ケン、何慌ててるのよ」
 奈々香は訝り、そして悪戯っぽくニヤリと笑う。
「ちょっと窶れ気味な所を見ると、さては昨夜は冴さんとオールナイトでお楽しみだった……ってとこかしら。ズバリそうでしょう」
「な、何言い出しやがる。俺は……」
 そこで助け舟を出してくれたのは冴である。冴は「お主は黙っておれ」と俺に目で警告しておいて、奈々香に言った。
「確かに健殿は妾と夜中に散歩したわ。じゃが健殿が妾に助けてもろうた礼を言うてくれただけじゃて。お主の考えておる ような疚しい事等何もなかったのじゃよ、のう?」
「そ、そうさ。エロゲじゃあんめーし、何でも短絡的にエロい方向に持っていったら又直美に怒られるぜ?」
「何だつまんない。でもまあケンが無事帰って来てくれて良かったわ。安心して写真任せられるのってケンだけだもん。 ほら、気持ち切り替えてしっかりしてくれないとダメだぞ。折角の合宿が台無しよ」
 バシーン
 奈々香が俺の背中に渾身の力を込めた平手打ちを決めた。飛び上がる程痛かったけど、眠気が吹っ飛んだのは事実である。
「そうじゃ、妾とてお主に撮ってもらえるのを楽しみにしておるのじゃぞ?」
 冴が俺の両肩をバンと叩く。そして俺の耳元に顔を寄せて一言。
「男がこれしきの事でオロオロするでない。いつもの通りに振舞えば良いではないか」
「そう言う冴はよくケロっとしてられるな(あんな事があった昨日の今日だってのに)」
「妾はいつも言うておるじゃろう? 女子はいかようにも変われる生き物じゃと」
 俺が小声で言った事に冴は笑顔でそう返し、
「さあ、いつまでも沈んでおらんで元気な顔を我等に見せてくりゃれ」
 テンションも高く俺を激励してくれた。
「そうだよな。俺だってこの合宿を楽しみにしてたんだから。じゃあ俺コーヒー飲んだら朝飯食いに行くよ。又後でな」
 俺は冴と奈々香に笑いかけて別れた。そうさ、今日こそはこの青空の下で撮影会なんだ。頑張るぞ!


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