京都現代妖討譚


 「御伽草子」に曰く、康保(西暦964〜967年)の頃、煤払いの折に京都の家々から棄てられた古道具が「付喪神」なる妖怪に化けて棄てられた仇を報じるばかりではなく罪無き人々や牛馬までにも仇を為し、京都の人々から恐れられた。
 彼らは大僧正の祈祷により降臨せし護法童子の手で調伏させられ、改心して真言密教の道に入ったとされていたが、それでも尚器物を大切にしない人間への恨みを断ち難く、彼らの残党の中に京都に災厄をもたらす者もあった。
 鴨長明の「方丈記」、芥川龍之介の「羅生門」に記されている通り、時が平安から鎌倉に移った後も京都は地震、台風、大火事、飢饉等の災厄に度々見舞われて京都はすっかり荒れ果ててしまった。京都にはまだ棄てられた恨みから民に仇為す付喪神 がはびこっているに違いない。そう考えたある真言密教の僧侶は古くから親交のあった神社に奉職する豪族の末裔で、嘗て統治していた一帯の妖怪を退治していた功績から時の帝より「船岡」の姓を賜った宮司の一族に救いを求め、以後彼らは人知れず京都にはびこる付喪神を成敗して京都の平和を守っていた。
 そして時は二十一世紀。京都の大学で二年目の春を迎えた光画部員山口健(やまぐちたけし)は従妹で同居人の橋本直美(はしもとなおみ)、彼がコスプレ写真を撮ったことから知り合ったレイヤーチーム「西陣歌劇団」の女の子三人組、そして光画部員と楽しい大学生活を過ごしていた。だがある日突然彼らの前に「妖を討つ巫女」と称する巫女の船岡冴(ふなおかさえ)が現れた。彼女は京都に出没する付喪神を退治するだけでなく、付喪を追って山を降りたきり行方の分からない弟を探しに来たと言う。そして彼らの前に今一度京都に自らの繁栄をもたらさんと企む付喪神が現れ、冴は付喪神に立ち向かって宣言した。
「京の罪無き民に仇為す悪しき付喪共、妾(わらわ)は許さぬ!」
 果たして冴の弟はどこにいるのか。そして船岡の一族と付喪神の戦いに巻き込まれた健達の運命は……?

 そんな訳でオリジナルの話を書いてみたいと思い立って、ラノベ風味の創作を始めてみました。物書きとしてはまだ若輩者であります故至らぬ点も多々あると思われますが、どうか頓挫せぬように温かく見守っていただければ幸いに存じます。

 尚、本作はフィクションであり、実在の人物、団体、事件等は一切関係ございません。

おしながき

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雑記 書きながら思ったことや構想メモ等をつらつらと……。


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