第拾伍話 八乙女に明日はない(前編)
 

A-Part

「我らの京を征すると云う悲願はまだ達せられぬのか!」
 付喪神の幹部四人を前に、古文先生は阿修羅の如く激昂していた。
「手棒の荒太郎、高烏帽子の祭文の督、手拍子の神楽男、小鈴の八乙女……主等の謀(はかりごと)、あの船岡の一族の巫が山を降りて以来悉く潰えておるではないか。当座の目的として我等は先ず船岡の巫を倒さねばならぬのにそれすらも実現できておらぬのはどうした事じゃ!」
「申し訳ございません、古文先生。失態の段、四名を代表して高烏帽子の祭文の督が平にお詫び申し上げます。何分にも奴の後ろ盾には護法童子がおりまして……」
「そんな事は分かりきっておる!」
 古文先生は一段と声を荒げた。
「さもあらば主等は手段を選ばずして船岡の巫と相対し、あと一歩の所まで追い詰めて来た。そこまで達しながら、今日まで番狂わせの連続でおめでたい結果に終わっておる。それはまだ船岡の巫がのうのうとこの太陽の下を歩いておる事実が証明しておるわ。一度は京の民を恐怖に陥れながら、奴が来てからそれを邪魔立てされてばかりおるとはな。主等の実力など所詮その程度の物であったか……」
 古文先生の声音は次第に怒るのも阿呆らしいと言いたそうな物に変わっていた。幹部連が情けない思いで悔しそうな顔をしたままの中、
「お待ちください、古文先生」
 小鈴の八乙女が言った。
「八乙女か。言いたい事があるのか? ならば申してみよ。言い訳は聞かぬがの」
「此度は私自ら船岡の巫と一戦交えさせていただきます。譬え刺し違える事になろうとも、船岡の巫の首を先生に献上致しましょう」
「言うな。だが奴の後ろ盾にいるのは護法童子ばかりではないぞ。奴と懇ろにしておる人間も居れば、不埒にも奴の側に付く付喪神も出ておる。その辺りの対策も考えておろうな?」
「あら、腑抜けの神楽男さん。私がそんなお莫迦さんな女に見えて?」
 八乙女が恐ろしげな顔で神楽男を睨みつけ、神楽男は尻込みする。
「くっ……だがお前の目が自信の程を物語っているのは確かだな。矢張りその辺りの策も抜かりなく用意しておるのか」
「勿論。少しばかり貴方や荒太郎にも協力してもらうかもしれないけどね」
 長い沈黙の後、古文先生は一言。
「八乙女。船岡の巫と刺し違えようと申した程の覚悟を見せてもらおう。他の者も八乙女の頼みとあらば力を貸してやれ。主が船岡の巫の首を取るのを楽しみにしておるぞ」
「古文先生、ありがとうございます」
 八乙女は畳に手をつき、深々と頭を下げた。

「お兄様、出汁巻きをお召し上がりくださいませ、はい、あーんっ」
「お兄様、美味しいお煎茶もございますわ」
 朝もまだ暗いうちから大型のワンボックスカー三台に分乗して夏合宿へと向かう京都文科大学光画部の面々。昌彦の運転する車の中で健はその両脇に陣取った若菜と雪菜の熱烈歓待を受けていた。朝飯も食わずに出て来たとは言うものの、健は嬉しがるよりは当惑していた訳であり、
「うんうん、ありがとう。美味しいよ。でもそこまで気を遣ってもらわなくてもいいんだけどな」
「お兄様、何か私達の至らない所ございましたでしょうか?」
「お兄様、そう云う事も忌憚なく仰ってください。私達改めますから」
「ちょっと、若菜ちゃんも雪菜ちゃんもそんなにケンちゃんにくっつかないで。ケンちゃん困ってるじゃない」
「あら直美様、お兄様と私達の間に割り込まれてはそれこそ困りますわ」
「お兄様にお仕えして、癒しの一時を与えて差し上げるのが私達の生き甲斐なんですもの」
 直美はカチンと来るどころか、不敵な笑みすら浮かべて双子を見遣ると対抗策を出して来た。
「(誰も私以上にケンちゃんの事分かってあげられてる女の子なんているもんですか)」
 と言いたそうに。
「ケンちゃん、暖かいコーヒーはどうかしら。これで眠たいの治ると思うんだけど」
「お、ありがてえな。いただくぜ」
 健は上機嫌になって、直美から魔法瓶の蓋を受け取った。
「んー、絶妙の味加減だ。ちゃんと豆から入れてくれてたんだよな。ありがとう直美」
 暖かいコーヒーを飲んで、直美に優しく微笑む健。
「どういたしまして」
 健に笑顔を交わす直美。だがその顔には若菜と雪菜に挑むような思いも込められていた。一本やられたと言いたそうな顔の双子。だが腹の底で彼女達は反撃の機会を窺っている。
「あーあ、何で山口ばっかりがもてるんだろうなあ」
 ワゴン車の後部座席で拗ねていたのは小嶋有二と稲森亮太である。二人とも健の悪友で、光画部専属のモデルと化した直美や西陣歌劇団の面々を付け狙っているので健は従妹に悪い虫が付きはしないかと不安を抱えていた。
「ねえ、若菜ちゃんに雪菜ちゃん。山口にばっかりベタベタしてないで俺や小嶋ともお話しようよ」
「お生憎様です、稲森様。私達はお兄様以外の殿方には興味はございませんの」
「千年来お慕いしていた清兵衛お兄様が逝かれた今となっては、その面影のある健お兄様は私達の大事な心の支えなのですもの」
 若菜と雪菜は素っ気無い態度で稲森を受け流し、健を見遣る。そして色っぽい声音で健の耳元に囁きかけた。
「「ねえお兄様、お兄様も若菜と雪菜の事好きですよね?」」
「え、ええ? ああ……そ、そりゃそうさ。直美や冴や篝ちゃんとも仲良くやってるんだし、お前等の事嫌いなんて事俺は思ってないよ(実際パッと見妖怪だなんて信じられないくらい可愛いのは可愛いんだしな)」
「「ですよね、お兄様にそう言っていただけるなら本望ですわ」」
 満面の笑みの双子。対照的に嫉妬の炎を目に浮かべる男二人と面白くなさそうに頬を膨らませる直美。健は困惑するばかりであった。
「(ああ、こんなだったら先に冴に来てもらえば良かったよ。冴ならこの場を丸く収めてくれただろうに……)」
 京都に残っていた冴は今日、明日と不在の健と直美に代わって元吉のウエイトレスを務め、明後日に直美と入れ替わりで伊根町に来る予定になっていた。夏場は稼ぎ時で、余りにも人手が足りなくなったら困るのでそうなったのである。俺はこれから直美や奈々香達の機嫌も取り結ぶ事ができるだろうかと云う不安に健が駆られている間に、車はパーキングエリアに入っていった。
「はーい、ここで一旦トイレ休憩だ。用を足すなり水分の補充がしたければそうするようにー」
 昌彦が空いた駐車スペースに車を入れて、後続の車もそれに続く。車が完全に停車するや、
「俺ジュース買って来るわ。あ、みんなの分も俺が奢るよ。何がいい?」
 シートベルトを解除して飛び出す健。
「ケンちゃん、私サイダーがいいわ」
 ここで双子に遅れを取るまいと若干慌てて直美が言った。
「直美はサイダーだな。他は?」
「俺はコーラ」
 と有二。
「俺は紅茶がいいな」
 これは亮太である。
「山口、ブラックコーヒーがあったら買ってきてくれんか」
「部長はブラックコーヒーと。若菜と雪菜は何がいい?」
「私達は……お兄様と一緒に行くのがようございますわ」
「ほんの一時でもお兄様と離れるのは寂しいですもの」
 双子はシートベルトを解除して健の後に続こうとする。健の気持ちを察して、双子を諌めたのは直美だった。
「ちょっと、ケンちゃんはそうしてあんまり女の子にベタベタされるのも好きじゃないんだし、たまには一人にさせてあげなさいよ。あんまりケンちゃんを困らせると冴さんに言いつけるから」
 この一言は覿面に効いた。彼女達も付喪神であるからには船岡の一族の事は知っているし、怒った冴の怖さも何度も目の当たりにしている。その矛先が自分達に向いた時の恐ろしさはいかばかりかと思って、双子はしおらしく席に戻った。
「(やれやれ……助かったよ。済まねえな直美)」
 直美に目礼して、車を降りて自動販売機に向かう健。そうして目的を達して車に戻ろうとした健を呼び止める者があった。奈々香である。
「あらケンじゃない。ケン!」
「おう、奈々香か。お前もジュース買いに来たのか?」
 奈々香はその質問には答えず、
「ちょっと待っててね、ケン」
 ニヤリと邪悪そうに笑うと自分の乗っていた車に取って返し、道枝の手を引っ張ってもう一度外に出て来た。
「やだやだ、私こんな所で嫌だってば」
「往生際の悪い事言わないで。ゲームで負けたペナルティは素直に果たす。あたし達の約束事でしょ? あたしだって負けたらそれくらい平気でやってるのに」
「あれは女同士でお家の中だからじゃないのよ。酷いわ奈々ちゃん……」
「何だ何だ、何か穏やかでないけどどうしたんだ」
「あ、け、ケン君……」
 健を認めた道枝は顔を真っ赤にして健の後ろに逃げ込もうとした……が、あっさり奈々香に羽交い締めにされてしまった。
「はーい道枝たん、観念して大人しくお仕置きされちゃいなしゃいね。いつまでも聞き分けのない悪い娘はお尻ペンペンでちゅよー」
 奈々香はふざけた口調で話し掛けながら、道枝の着ていたTシャツをペロンとめくり上げた。
「やだもうやめてよ奈々ちゃんのエッチ! ケン君も見ないで!」
「あわわわ……あれ、道枝。ちゃんとシャツの下に水着着てるんじゃないか?」
「あら、本当だわ……」
 道枝の着けていたブラジャーは白地に赤と青のボーダー柄で、一目で水着と分かる代物だった。
「じゃあこっちも……」
「きゃああ、やめてったらもうー、やだやだ、ダメぇ!」
 道枝が嫌がるのも構わず奈々香は道枝の短パンのベルトを外して短パンも脱がせた。ブラジャーと同じ柄の、サイドが紐になっているボトムが現れた。
「つまんないの。折角ケンにもっとサービスしてあげられると思ったのに」
「幾ら罰ゲームだからってケン君の前で酷いわ、もう嫌!」
 道枝は必死で奈々香の拘束を振り解いて、短パンとTシャツを元通り着ると顔を覆って泣きながら逃げるように車に戻って行った。
「奈々香、道枝を困らすなよな。あいつマジ泣きしてたじゃねえか」
 呆れる健。それでも奈々香は悪びれずに返す。
「あら、マリオカートやって負けた罰ゲームなんだししょうがないじゃない。あれくらい可愛いもんよ。もっと凄い事だってやってる事もあるんだから。ケンも参加する?」
「遠慮する。俺はもう用は済んだから車に戻るよ。また宿で会おうぜ」
 あいつら一体何やってやがる、想像するだに怖いぜと思いながらジュースの缶を抱えて車に向かうと……
 車の前で待っていたのは嫉妬に燃える有二と亮太、何してたのよと言いたそうな怒った顔の直美、そして彼らを意に介する事なく、
「「お帰りなさいませ、お兄様」」
 満面の笑みで健を迎える若菜と雪菜。
「お、お前、道枝ちゃんに何てことしやがるんだ」
「待て待て、そんなの誤解だってば……うわあああああああああああああ」
 それから伊根町に入っても、健は車の中で男性陣の拷問と直美の冷たい視線、若菜と雪菜のこれまで以上に積極的なモーションに悩まされる事になった。

 それでも光画部の一行は何とか無事に目的地である本庄浜海水浴場に到着した。ここは浦島太郎が龍宮城から帰ってきた後戻って来た浜辺とされており、程遠からぬ場所に彼を祀ってある浦島神社もある。当地の観光事業も近年盛んになっている事もあって、海水浴場は他のそれらと変わらぬ賑わいを見せていた。
「部長の言う通り、望遠持っておいて正解でしたねこりゃ」
 砂浜に出てきた健は、コシナ100−300ミリF5.6−6.7の付いたニコンF2のファインダーを覗きながら健が言った。
「まあこの人波だしな。お、ちゃんとフードも付けてるな。偉い偉い」
「コシナは安いしよく写るんですけど、フレアは出やすいですからね。無理言ってコンタックスのしっかりしたフード探して来たんですよ」
「山口はヲタだけにそう云う所はやたら凝るんだよなあ。ま、それで腕が立つんだから憎めないんだけどな」
「言っててくださいよ。俺は撮りたいように撮りますから」
 一平が揶揄っても健はヘラヘラ笑って意に介さず、露出を大体の所で合わせてセッティングして、辺りを見回した。
「そう言えば小嶋と稲森はどうしたんでしょうね? 俺達より先に飛び出したはずですけど」
「さあな。モデルの登場を待ちきれずにナンパでもしてるんじゃないのか」
「あの、私達用があるんで……ごめんなさい」
 一平の言った通り、女の子に声をかけては撃沈しまくっている二人を健は見つけて、苦笑していた。もしも彼らがそれに気付いたら又しても健は彼女持ちが余裕ぶっこくなと締め上げられていたであろうが。そこで彼らが見つけた、男女のただならぬ修羅場。
「あの、私友達と待ち合わせしてるんです。だから困るんです」
「ほんのちょっとだけでいいからさ、俺たちと付き合ってくれよ」
「そんな、取って食おうって訳じゃないんだから。ほら」
「嫌!」
 大男と優男の二人組から執拗に声を掛けられて嫌がっているのは、赤の露出度の高いビキニも眩しいナイスバディの女の子だった。
「あ、おい、有二、亮太!」
「おい、嫌がる女の子を無理矢理誘うなんてやめろ」
「そんな男の風上にも置けねえ奴、俺たちは許せねえ」
 焦る健の静止も聞かずに二人組と対峙する有二と亮太。
「あぁ、何か文句あんのか?」
「喧嘩か、来るならこっち来いよ」
「望む所だ、それっ」
 ドカッ、バキッ
 殴り合いに目を覆う健。ところが案に相違して一発で勝負は決まり、倒れたのはナンパしていた二人組の方だった。当事者の女の子はしばらく荒い息をしていたが、落ち着くと有二と亮太に向き直って頭を下げた。
「危ない所をありがとうございました。このままお別れするのも愛想がないですし、せめてお礼をさせていただけませんか?」
「いや、そう言われても俺達は俺達でんぐっ?!」
「そう言ってもらえるなら喜んで付き合いますとも」
 有二に口を塞がれて、健は抗議した。
「有二、お前何しにここへ……」
「分かってる、皆まで言うな。折角こんな綺麗な人とお近づきになれたんだ。ちょっと付き合うくらいいいじゃないかよ」
「そんなに言うなら勝手にしやがれ。俺は俺で撮影会に参加するさ」
「あの、よかったらそちらの方もご一緒にどうですか?」
 女の子は健も誘って来た。
「いや、俺はあんたの感謝の気持ちだけでもんぐっ!!」
 健が辞退しようとした所で今度は亮太が健の口を塞ぐ。
「山口、一緒に行こうぜ。こんな可愛い女の子の誘いを遠慮するなんて勿体無いぜ。え、それともいつも可愛い女の子に囲まれて免疫できてるってのかい? 憎いよこの色男」
 亮太がヘッドロックを健にかけてきた。
「あいてててて……あーもう分かった分かった。ほんの数分だけだぞ」
 渋々付き合う事を承諾した健。
「それじゃあ私と一緒にこちらへいらしてください。すぐ近くに私の海の家がありますから」
 女の子に先導されて男性陣三人組が着いた先は、程遠からぬ場所にある海の家だった。
「それではちょっと待っててくださいね」
 女の子は三人に椅子を勧め、奥に引っ込んだ。風通しが良く、日光が遮られているので居心地は外よりはるかにいい。
「ふう、涼しい所に連れて来てもらって助かった」
「山口、お前も付いて来て良かっただろ」
「ああ、まあな……」
「どうしたんだ山口、冴えない顔して」
「いや、何か不安なんだよ俺……誰かが俺にそう言ってるような気がして……」
「まあいいじゃないか、俺達いい事した見返りに美女から礼してもらえるんだ。素直にその気持ち受け取ってこその男じゃないか?」
「……」
 健達が話している所へ女の子が箱の乗った盆を持って戻って来た。
「お待ちどうさま」
「あ、それは玉手箱じゃないですか」
「ああら、お察しのいい事。ここは浦島太郎のお話で有名なところですものね。だからちょっとそれにかけてみましたの。もちろんあのオチも、ね?」
 女の子は意味ありげに笑いかけ、玉手箱の蓋を開けた。
「やばい、みんな逃げろ!」
 慌てて立ち上がる健。有二と亮太もあの昔話の通り煙を吸って老人化させられてしまうと察して健の後に続こうとした。だが時既に遅く、有二と亮太はまともに煙を浴びて白髪と白髭の老人になってしまった。何とか難を逃れたのはそれなりの運動神経のあった健だけである。
「くそっ、よくも小嶋と稲森を……」
 健はこの椿事を報せなければならないと思った。もしかすると彼ら以外にも老人化させられる被害者が出て来るかもしれない。だが行動を起こす間もなく、健の前に大男に羽交い締めにされてしまった。
「あ、お前はさっきの……ぐっ、何しやがる!」
 健は必死にもがくが、大男の怪力に押さえつけられてなかなか逃れられない。
「我らはこれから船岡の巫と一戦交える前に力を蓄えておかねばならぬ。奴と互角に張り合うためにもな」
「何っ?」
「お前もその若さを小鈴の八乙女に供してもらわねばならぬ。さもなくばこの場で死ぬか、答えはたった二つだぞ」
「またお前等か。そうと知ったからにゃお前等に協力なんてできるかよ!」
「そうか。ならばお前は死ぬより他あるまい」
「お待ちなさい、荒太郎」
 健の前に女性が現れた。小鈴の八乙女である。
「貴方はこの坊やの事もう忘れていて? 船岡の巫といつも一緒にいる坊やよ。この子が網にかかったには作戦を変更するわ」
「作戦変更だと?」
「そう、最初はここに来る人達の若さを貰いながら向こうから来るのを気長に待つつもりだったけど、早いうちに手っ取り早く片を付けちゃう事にするわ。この坊やを餌に誘き出してね」
「だが八乙女、力をより蓄えておいた方が……」
「何もしないであの娘が来るのをチンタラ待つより、向こうから来るならその方がいいわよ。時間がかからないならそれに越した事ないしね。それに貴方達も協力してくれてるんだし……あとは私達の力を駆使するまでよ、そうでしょ?」
 八乙女は残忍そうに笑った。
「私は形振り構わず攻めるつもりよ。見せてあげるわ、私達のやり方を、ふふふふ、おほほほほほほほほほほほ」
 怜悧なトーンで笑う八乙女。荒太郎や傍らに控えていた神楽男すらもその恐怖に怯えていた。
「(こいつ、何を企んでやがる……)」
 唯一人健が怒りの念を込めて八乙女を睨み付けていた。


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