「別れは済んだのか?」

両手をぎゅっと握り締め、俯く一護に問いかける。

「……うん」

消え入るような小声と共に、一護が握り締めた両手を差し出し、おずおずと掌を開いた。

「早く家族に会えるように、って恋次がくれた」

小さな掌の上にあったのは、粗末な木綿地で作られた守り袋。
ところどころ擦り切れているのは、恋次が大切にずっと肌身離さず身につけていたからなのだろう。

「良い友に巡り会ったのだな」
「うん……」

袖でごしごしと両目を擦り、一護がぎゅっと抱きついてきた。
腰の丈までもない子供の頭を撫で、斬月はゆっくりと目を閉じ、忌まわしい過去へと思いを馳せた。

苦悶に満ちた悲鳴、血の匂い、燃え崩れる屋根。
どれだけ時間が経とうと忘れえぬ忌まわしい光景。
炎に包まれた居城から、斬月が救い出すことができたのは、まだ幼い世継の一護、たった一人だけだった。
だが、一護の父であった現当主は武芸に秀で、元は武芸者として諸国を漫遊していた人物だ。むざむざ敵の手に落ちたとは考え難い。
第一、一護が彼らの生存を何ら疑うことなく信じている。ならばきっと妹姫たちを連れ、どこかで生きているに違いない。

「そろそろ行くか。この村には長居をしすぎた」
「……うん」
「父君たちを見つけ出し、それからまたこの村に来ればよい」
「うん……」

斬月は一護を抱き上げ、村外れに続く道へと足を踏み出した。














もののふ斬月と亡国の皇子一護 (流浪譚より)



【KISS MISS】 行田 恵順さんより イラストイメージで逸話を書いてくださいましたvv
裏設定の方が遥かに膨らんでいるらしく(笑) そのなかから挿話をひとつ。

一護の髪が白髪になったエピソードとか むっちゃ気になるよ〜!!
お友だちの仔恋次も可愛いだろうなぁ、楽しみだわvv
私は一護双子説で白ちゃんと斬月だ!と密かににやけております…。すまぬ。

[2007/08/15/-myao-]



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