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What is he made of?



What are little boys made of?
What are little boys made of?


「随分ご機嫌ね」

デッキで海を眺めていたら、突然眼の前にチェリーレッドの影が落ちてきた。ルナマリアだ。

「私、レイが鼻歌を歌っているところなんて初めて見たわ」
「海が、うるさいから」
「静かに凪いでると思うけど?」
「視覚にうるさい」

小波すら無い凪いだ海を視線で指し、レイはぽとりと呟いた。
レイが見た地球は、極彩色だった。
樹木の色。花の色。
海ですら単色ではない。緑青、紺青、薄青、彩度も明度も異なる青がマーブルになって「海の青」を作っている。

「地球は騒々しい」
「確かに言われてみればそうだけど……」

一旦言葉を切り、ルナマリアはレイの顔を覗き込んだ。

「何故そんな風に思うの?」

思わせぶりな表情に、レイはぷいと顔を背けた。視線を向けた先では、水面に陽光が煌いている。金色の暖かな光だ。

「地球では光にも色があるから」
「プラントにもあるでしょ? 人工的にいくらでも彩色できるんだもの」
「無い………いや、一つだけある」

とてもキレイで、やさしい光。
大好きな光。
エリカの瞳、カナリアの髪、胡桃の肌。
ラズベリーの瞳、たんぽぽの髪、シナモンの肌。
プラントにいた頃は、彼だけがレイの視界の中で色を持っていた。
ミネルバが地球に降りたせいで会えなくなってしまったけれど、その色は宇宙できっと自分を待ってくれている。

(*1)
What is he made of?
What is he made of?
Heather, Canary, Chesnut.
Raspberry, Dandelion, Cinnamon.


地球の光はキレイだけど、欲しいのは自分だけの色。

「会いたい、な」

That's what he is made of.





END


*1 出典:マザーグース「What are little boys made of?(男の子って何でできてる?)」を改変。